――古く、古く……それはとても古く――まだ人と竜が暮らしていた古の時代。
そこにその竜はいた。
それは黒く――すごく黒くて、そう…まるで闇のように――漆黒の竜だった。
その一頭は他の竜とはどこか違う雰囲気を晒し出していた。
その名は「アクノロギア」。
または〝闇の翼〟とも呼ばれている。
恐るるなかれ、その竜は世界最強の竜である――竜の王といっていいだろう。
それも魔法界の歴史上、最も凶悪だったといわれる黒魔導士ゼレフですら慄いてしまう程だ。
その竜は心の中に燃え続けている竜への憎しみにより滅竜を目指している。それ故に他の竜を血祭りにあげていこうとしてきた――今まで、そしてこれからも。
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「ガアアアアアアア!!!」
今もまた一頭の竜がアクノロギアの手によって滅ぼされていった。
「ア゛ア゛アア゛アア゛ア゛!!!」
竜を滅ぼした――滅竜をまた一つここに果たせられたのに対してアクノロギアは雄叫びを上げていた。
そんな彼だが、ふと近くに建てられている、恐らく滅ぼされた竜のであろう祭壇に目を向ける。
そこには――
「スヤァ……」
なんと赤ん坊が寝ていた。
実は先程アクノロギアが滅ぼした竜は一つの村を支配していて、その村には竜からの恩恵にあやかり続ける為に生贄を捧げなければならない因習が存在していたのだ。
そして今回の生贄として選ばれてしまったのが祭壇に寝ている赤ん坊であった。
最も不幸の中の幸いとして赤ん坊が喰らわれろうとする前に竜がアクノロギアに滅ぼされたのだが――
「……」
その赤ん坊の姿を目にしたアクノロギアは自身の姿をドラゴンの姿から人間の姿に変え、祭壇に近付き――赤ん坊の前に膝をつく。
そして……
赤ん坊を優しく抱き上げた。
「……悪いようにはしない」
アクノロギアは赤ん坊を微笑みながら見つめ――そう呟いた。
彼は赤ん坊を育てるつもりなのだ。
そもそも、竜への強い憎しみに心を焼き付かれていた彼だが、それでも慈しみの心をまだ失っていないのだ。
それ故にアクノロギアが赤ん坊を見捨てずに愛おしむ事ができたのだ。
「…おっと、お前に名前を与えなければな…」
しばらく赤ん坊を微笑みながら見つめていたが、ふと赤ん坊に名前がないのに気付いたアクノロギアはしばらく思案に耽けて――
「…よし、「カイ」…お前は「カイ」だ」
――赤ん坊、「カイ」は〝闇の翼〟と呼ばれし漆黒のドラゴン「アクノロギア」の子として育てられる事になる。
――そして、これは〝黒竜のカイ〟の始まり。