「おんおらぁ!」
「ハァ!」
ある地で青年と少年が殴り合っている、または技を掛け合っている――組手をやっていた。
「おっ……」
「!隙ありぃ!」
身を崩されかけている青年を見て少年はその隙を逃さずに拳を叩き込もうと――
「……甘いな」
「へ?」
ニャリとする青年が少年を返り討ちにした。
●
「やられちまったなぁ……アクノロギア」
「フッ……まだまだだな……カイ」
組手を終えた2人は身体を休ませていた。
青年――アクノロギアにしてやられた少年――カイは悔しそうにした。
「まぁ、さっきのアレもアリだよな……って事はこうやって……ああやって……」
早速自身の戦闘時の身体の動きを考察し始めているカイにアクノロギアは微笑む。
「まぁ、ぜいぜい考え抜いておくんだな……オレは少し離れる」
●
「ハッ!ハッ!」
カイは思案に耽ながらパンチとキックの練習を続けてきた。
そもそも普通なら遊び盛の年齢である少年は身体と技を鍛えるのに集中だ。なにせ彼は――
「(アクノロギアに勝ってみせる!)」
打倒アクノロギアに燃えていた。
彼は男の子らしく強さに餓えてて、それで自身にとっての強さの象徴といってもいいアクノロギアを倒すつもりなんだ。
その為には――
「鍛える、鍛える――鍛える!」
カイはそう気合を入れていた。
すると――
「フハハ……ガキが一匹……」
「ん?」
突然声が響いた。その方向にカイが視線を移すとドラゴンがいた。
ドラゴンがカイを見てニャニャしていた。
「ククク……腹の満たしになれるかなぁ?」
ドラゴンがカイを喰うつもりだった。
自身を喰おうとするドラゴンにカイは怯え――
「声がするまで近づいていたのに気付かないなんて……本当にまだまだだな、オレは」
「……舐めてるのか?」
怯えない――それどころか自身のミスを反省するカイにドラゴンはビギッとする。
見下している人間にそういう態度をとられるのに怒りを燃やすドラゴンをカイは冷める目で見つめる。
「別に?」
「ウガァァァア!!!」
カイの言葉につい怒りを爆発させたドラゴンは彼を喰おうと――
「黒竜の剛拳!!!」
カイが黒く光り輝く右拳をドラゴンに叩き込んだ。
「……あ、あが……」
胸に穴を開けられたドラゴンはこの状況を信じられないのか、目を大きく開けた。
「あいにくな――ザコに用はねぇんだ」
そう呟いたカイはドラゴンに口を大きく開ける。
その奥から黒い光が輝いて――
「黒竜の咆哮!!!」
「ギャアアアアア!!?」
カイの口から放たれた黒い光線によりドラゴンは一欠片さえも残されずに消滅させられた。
「はぁ……さて!続き続き!」
カイは修業を続け始めた。
――そして、その始終を見ていた影が一つ。
「……フッ、カイを舐めたからだ」
アクノロギアだ。
さっきの出来事に満足気な笑みを浮かべていた。
「そもそもカイは――」
「皮膚だけに済んだが……赤ん坊の頃にオレの身体を食べやがったガキだぞ」
「お前ごときがかかれる訳がない」
――どうやらカイは常識を超えているらしい……
●
「今から出るか?」
「あぁ、一時も早く世界を見てみたいんだ」
多くのものをまとめているカイにアクノロギアはそう声掛ける。
カイは今からアクノロギアの元を離れて世界を旅するつもりなのだ。
世界の未知なところに興奮を抑えられなくて、少々ワクワクしている我が子の姿を見て、つい頬が崩れてしまうアクノロギアは続いて声掛ける。
「たまにここに顔を見せに来い……いつまでも待つぞ」
「おう!そうするぜ!」
――だが、この日を最後にカイは姿を完全に消す。
――それから長き時が流れた。