転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

1 / 25
自身の過去作の主人公の設定を流用した作品になります。

それでもよろしければゆっくりしていってね。


第一話 ゲームキャラで転生はありきたりなのか(ディストピア未来感)

 

 眠い、死と言うのはこういった風に訪れるのか、と何処か他人事のように感じていた。

 

 俺は…………もう名前もいらないだろう。この資本主義蔓延る社会で捨て駒にしかならないのだから、誰にも覚えてもらえるわけが無い。

 

 企業が経済を支配し、国はほとんど機能停止して腐りきった政治をしている中で俺は生きていた。

 

 その中で原子力発電所の管理と言う職に就いていたのだが、人間を道具以下にしか扱わない、一昔前の言葉でディストピアな世界と言う奴で死ぬことが前提とされていた。

 

 誰もそんなところに居つきたくはないのだが、貧困と環境汚染で飢え死ぬか、それとも放射線で死ぬかの二択を迫られてしまえば後者を選ぶ。

 

 働く必要はあるとはいえ、放射能汚染以外で苦しむ事はないのだから。

 

 そうして可能な限り危機回避をしつつも働いたが、とうとう限界がやってきてしまった。

 

 もはや身体はろくに動かず最低限の水分を取ってVR空間を眺められるヘッドギアを付けたまま横たわることしかできない。

 

 心残りとしてずっとやり続けていたVRゲームにログインで来たことだけが唯一の幸運だったか。

 

 職場には事前にバックレることを電話で言い残しておいた。

 

 人生の最期を悟ったからと理由を伝えたら「そうか、明日も来い」と言われて切られた。

 

 職場の上司がカスなのはいつものこと。当然俺も後のことは無視して人生の最期をゲームで迎える。

 

「あーあ、懐かしい。もうだいぶ過疎ったもんなぁ」

 

 『ユグドラシル』と呼ばれたゲームは最盛期をとっくに向開けたファンタジーなオンラインゲームだったが運営の方針が常に悪い方向とおふざけとカッコよさに向けられていたので『遊べるクソゲー』として名をはせていた訳だったが。

 

 この俺も何を隠そう先が真っ暗な人生のため貯金など持たんと言わんばかりの廃課金者。それに加えて危機察知能力も何故かゲームに持ち込めたので強さだけはあった。

 

 どうせなら運営とグルになってボスになってみてぇなぁ、という要望をダメ元で送ってみたら通ってしまった時はひたすら困惑したなぁ。

 

 リザードマンと言う人外種族で素手で無双できるMMOがあるかと思ったが、実際楽しかったので文句はない。

 

『…………か?』

 

 既にゲームでアバターを動かす気力もない。

 

 ただ棒立ちしているだけだが、2度と現実世界では見られない空をただ眺めていた。

 

 走馬灯のように、過去の思い出がよみがえる。

 

『あな………にを………で……?』

 

 家庭が貧乏で小学校中学年まで通えて、あとは生活のために働き始めた。

 

 クソみたいな環境で、父が死のうが母が死のうが生きるために働いて税金を払って食費を何とか確保して。

 

 現実逃避でこのゲームに出会えてなければとっくの昔に発狂して死んでいただろう。

 

 …………そっちの方が楽だったか?

 

『あなたは……を、望んで……か?』

 

 そんなことは無い、人として意識を持ち、ベッドの上で最期を迎えられるだけマシだ。

 

 唯一楽しかったゲームは全盛期が過ぎてからこうなってしまったが、『非公式レイドボス』とか『公式チート』とか言われていた時が最も楽しかった。

 

『あなたはなにを、望んでますか?』

 

 死に際のせいか幻聴が聞こえる。

 

 何を望むか…………来世なんてどうしようもないだろう。

 

 まあ、しいて言うなら…………

 

「健康な体で、こいつを、メルト・ダウンで世界を駆け回りたい…………」

 

『承諾。これより個体名■■■■をアバター「メルト・ダウン」に再構築』

 

 妙な声が聞こえ続けている。まあ、幻聴なら仕方ない。

 

 徐々に暗くなっていく視界の傍らに、幻聴でも誰かがいると思ったら安心して…………

 

 やっと…………休める…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『告、全生命体に告げる』

 

 

 

 

 

 

『この地に「れいどぼす」出現』

 

 

 

 

 

 

『討伐者には栄誉が報酬として渡される』

 

 

 

 

 

 

『ただし、「れいどぼす」は非常に強力な個体であることを証明されています』

 

 

 

 

 

 

『命の保証はありません、皆の健闘を祈ります』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん?」

 

 目を開けるとそこは草原だった。

 

 奇跡的に目を開けられたわけでは、無さそうだ。

 

 苦しかった胸が解放されて無限に活動できそうだし、全身に力がみなぎっている。

 

 もっと力を籠めたら爆発しそうな気がするから流石にしない。

 

 どうなっている?ここが天国なのか?

 

 自分の両手を見る。

 

 その両手はアバターとして見慣れた指輪を付けたリザードマンの手だった。

 

「…………んんんんん??????」

 

 頭の中が疑問符でいっぱい過ぎて混乱した。

 

 ペタペタと顔を触ると人肌ではなく爬虫類特有の肌、つまり鱗がびっしりとついていた。

 

「…………え、マジで?まさか、これは」

 

 匂いもする、太陽の温かさも肌で感じる。

 

 つまり、これは、これは!

 

「俺が『メルト・ダウン』になっちゃったってコト!?」

 

 俺、異世界にて転移?転生?する。

 

 

 

 

 




プレイヤー名「メルト・ダウン」

 原子力発電所で働く自分を皮肉った名前である。
 動体視力と命の危機が発生する際の第六感が強く、企業の利益のために劣悪な環境と劣悪な装備しか入手できないため、通常2〜3年しか持たないところを10年勤め上げた猛者。なお給料。

 かなりのVRゲームプレイヤーでありFPSゲーはかなり得意。たまに出禁になる。

 産まれが一般市民なので立場が低く、ベテランであろうと簡単に切り捨てる企業には呆れどころか達観しており、早く滅びたほうがいいよこの世界と思ってる。

 人外転生とはいえまだ人の形を保った転生のため健康体に大喜びする。

 なお、素手で『次元切断(ワールドブレイク)』に相当する技をバンバン放つレイドボスでありながら回避特化かつ範囲攻撃のダメージをほぼカットするというクソオブクソな性能になっちゃったのでエンドコンテンツ扱いされている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。