転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第十三話 同じ星、しかし過去と未来

 

「……………………」

 

 森の中で、ただ座禅を組んでいた。

 

 ガゼル王をぶっ飛ばしたことには後悔はない。逆に吹っ切れるきっかけを与えてくれて感謝もしている。

 

 だが、それはそれ、これはこれ。俺は『レイドボス』として手加減して相手をした。

 

 腕を使うと言いながら足を使ったとなれば何を言われるだろうか?

 

 そもそも王様を足蹴にしたんだ、もしかしたら指名手配かも?

 

 そうなったら遠慮がいらなくなってしまうな。

 

 『レイドボス』、の意味をずっと考えていた。

 

 聞き込みをしていたが、全員が世界の声を通じて共通の敵のような感じで伝わっていたんだな。

 

 これは完全に世界の敵だな。名誉が報酬でも完全に倒せと言わんばかりのものと見て間違いない。

 

 全く、大出世だ。ゲームで強力なボスを演じていた最下級市民が世界の敵(レイドボス)まで上り詰めるとはな。

 

 そんな俺が存在を許されるという事は、同等もしくはそれ以上の戦力がこの世界に存在している可能性が高い。

 

 恐らく、将来的にはリムルもそうなる予感がある。

 

 そして、そういう存在がわんさかいるのだろう。

 

 正直な事を言うと、物凄く楽しみにしている。

 

 『レイドボス』になってから闘技場(PVP)は基本出禁、大型のイベントも基本的に参加しない。むしろ運営側に回ることが多かった。

 

 だから他のレイドボスと戦う機会はなかった。

 

 一応、運営の方々からは『お前とNPCのレイドボスを比べたら知恵が回る分、お前が強い』とは言われてが、実際はどうだったのだろうか?

 

 あの世界には魔王がいた。そして神もいた。

 

 そして、それらを倒すプレイヤーを倒す俺もいた。

 

 全て世界の敵だった。神魔に混じって俺もその1人だった。

 

 だが、今はちがう。

 

 全てが未知だ。全てが無知だ。

 

「よう、リムル。少しは考えが纏まったか?」

 

 俺は構えることにする。

 

 この世界全てと戦う覚悟を決めた、俺に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルの目の前にいるメルトはとても落ち着いているように見えた。

 

 座禅を組んでいる場所は切り株、その切り株は周囲の中でも大きい木を切り倒したもので作られていた。

 

 切り倒された木はその近くに転がっており、切り口はとても滑らかで綺麗だった。

 

 自力で切り倒したのだろう。だが、メルトは武器を使うところは誰も見た事がない。

 

 素手で切り倒したのか?そう思いながらもリムルは臆すことなく近づいてくる。

 

「ドワーフの王様は怒ってたか?」

 

「いや?部下の方は怒ってたけど、どう懐柔しようか考えてたよ」

 

「そうか、ずいぶん強かなことで。他のみんなは?」

 

「やっぱり強かったのかってさ」

 

「言っただろう?腕っぷしには自信はあるって。まあ出たのは足だが」

 

 メルトはケラケラ笑う。その笑い声を聞いてるのはリムル1人。

 

 彼が何処にいるのかは樹木人(ドライアド)が把握していたが、護衛どころか盗み聞きもしないようリムルが言いつけたのだ。

 

 もちろん反対意見が出た。物凄く出た。

 

 何せようやく正体の一端が見えたと思ったら、まだ底が見えないのだ。

 

「なあ、やっぱりあんたも転生者だろ?」

 

 リムルから先に切り込んだ。

 

「そういうお前も異世界、いや、日本から転生してきたんじゃないか?」

 

 メルトも確信を持って言う。

 

「いつから気づいたんだ?」

 

「まあ、一番は飯だな。今まで食ってきた料理の殆どはカタログとかで見たことがあるやつだった。それを再現したら当然美味い。だが、それを作るのに知識がなく隔離されているはずの大森林でなぜ出来るのか、というのが最初だ」

 

 指輪一本立ててメルトは根拠を述べる。

 

「次に名前。特にリグルを除いたゴブリンの住民に名前をつけたのはお前だ。ゴブタ、ゴブゾウ、ゴブイチ…………ゴブの部分はともかく後ろの方は明らかに日本人がつける名前だと思わないか?そういう奴らが多かったのも気になったんだよ」

 

 当然のように2本目の指を立ててそう述べる。

 

 リムルとしては隠してるわけでは無いが元人間という事を黙っていたのでバレないと思っていたらしくショックを受けていた。

 

「(俺ってそんなに露骨だったか?)」

 

『告、今まで提案していた内容はこの世界では異質でありました』

 

「マジかよ」

 

「マジだぞ。そもそも森で貴重な油で物をつくるやつがあるか。下手すりゃ火事になって大変になるのに」

 

「配慮してなくてすいませんでした」

 

 火を使う文化はあっても油を採取する技術は少ない。それを可能にした上に美味いということでトレイニーがドはまりするのは無理もないといった話だろう。

 

「まあ、見ての通りとはいかないが、俺も中身は一応日本人だ。最下級市民だがな」

 

「最下級市民?」

 

「知らないのか?もしかして上級市民だったのか。いや、スライムになってるという事は死んで転生したという事か。まあ恨みを持ってテロを起こす人間は多いしな」

 

「上級市民!?テロ!?」

 

 現代社会に生きていたリムルからするとゲームでしか聞かないような差別用語が飛び出してきた気がして驚きが隠せなかった。

 

 そして何か齟齬を感じているようにも思えた。

 

 ふと、リムルのオタク魂がささやく。

 

 メルトが少し語ったヤバそうな世界観って基本的に未来で起こる話だよな、と。

 

「…………なあ、メルトが転生したのって何年だ?」

 

「西暦なら2XXX年だ。それがどうかしたか?」

 

「俺、死んだの20XX年なんだ」

 

「…………へ?」

 

「やっぱり来た時の差はあるんだな」

 

 ようやく納得した、メルトはディストピア化した未来から転生してきたため現状を楽しみながらも達観したようなことをよく口にしていた、

 

 そして未来はかなり残酷な世界になるのかと悲しくもなった。

 

 リムル、三上悟は死んでしまったが残してきてしまった家族や後輩たちが生きづらくなるかもしれないと考えると憂鬱になりそうだ。

 

「…………るい」

 

 メルトが座禅を解いて立ち上がる。

 

「…………ずるい!その時代って黄金の時代じゃんかよぉ!好きなもの食べられて、好きな職につけられて、好きなこと無限に出来る時代じゃんかよぉ!」

 

「指摘する所そこなのか!?」

 

 そして寝そべって子供のように駄々をこね始めた。

 

 100年程度の差ではあるが、それくらい羨ましがられるほどの未来って残酷なんだなと思いつつ、なだめるのに30分はかかった。

 

 ジェネレーションギャップと言うのはこのことなのか。

 





 そら(命と不正の軽さを比べたら)そう。

 結局何も進んでないようで周囲の反応はやっぱり強者だったかという反応で意外と反感はなかったりする。

 映画とかでもあるやばい世界に比べたら一般市民もしっかり人権あるからマシよね。

 なおリムルとメルトは同じ世界から転生したわけでは無い模様。

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