転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第十四話 敵であり、友であり、隣人

 

「はあ、はあ、久しぶりに唸った気がする」

 

「そ、そうか。しっかりしてくれよ」

 

「ああ、だが本当に大丈夫何だよな?実は怒ってたりしないよな?」

 

「王様の方なら大丈夫だから。むしろリベンジに燃えてるから」

 

「本当か?裏で何か手を回そうとかしてないか?」

 

「疑心暗鬼すぎるって!大丈夫だから!」

 

 俺ことメルト・ダウンは珍しく駄々をこねた。人生で駄々をこねたことは子供の頃に一度だけだ。

 

 後は本当にどうしようもなくて人生を悟った事だが…………

 

 リムルは本当に恵まれている。いや、そんな世界から転生した時点で恵まれてはないか。

 

 くっそ、うらやましい!美味しいものがたくさんあっただろうし、伝説的なゲームも一切のネタバレなしでプレイできてたんだろうなー!

 

 俺の時代はマジでネタバレの宝庫でちょっとでもレビューページを開いたらネタバレしかない民度最低のやつだったしな。法的に訴えられないのがおかしいくらいだったが。

 

 俺とリムルの転生した時代が違うということで新たな疑問が湧いて出る。

 

「落ち着いたか?」

 

「一応はな。それに気になる事も増えた」

 

「気になる事?」

 

「なあ、転生する時はどんな感じだった?」

 

「いきなりだな。でも、具体的にどのタイミングだ?」

 

「そうだな、身体が死んでいく最中で声が聞こえたタイミングだ」

 

「ああ!あの時か。たしか死ぬ前に色々考えてたらスキルが一つずつ手に入ったんだ」

 

「…………なんかおかしいな。スキルって死ぬ前に考えてたら手に入るものか?」

 

「俺はそうだったけど、メルトは違うのか?」

 

「俺は死に際に何を望むかって言われただけだ。その時にこの身体、ゲームで鍛え上げてたキャラになりたいって言ったらポンとくれたんだ」

 

「随分太っ腹っだな…………」

 

 俺もそう思う。やりこんだキャラを与えるというのも裏で何らかの力が働いているような気がする。

 

 それに、『レイドボス』という肩書は伊達じゃない。

 

 非公式レイドボスとか公式チートとか言われたこの身体、その過程も非常に大変なものだったんだぞ?

 

 装備品は自分に合った素早さと攻撃力に特化、逆に範囲攻撃以外には雑魚で実は近接攻撃を一度でも受けたらば即死するほど防御力は終わっているビルドにしている。

 

 即死するリスクが非常に高いからこそ、逆に相手を早く倒せる攻撃力をが必要だった。

 

 なので、あえて魔術職を極めて超位魔法である『星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)』を習得したことが全ての始まりだった。

 

 努力の方向性が間違ってると言うな。俺もあの時は熱意があってテンションがおかしかったんだ。

 

 この魔法は経験値を犠牲にしてランダムな選択肢によって効果が変わる。その中に出てくる選択肢の中に永続的に近接攻撃の強化という魔法使いとしては全く役に立たないものが噂で存在しており、それを狙って何度魔法リセマラした事か。

 

 他にもワールドアイテムというやべー道具もあったが、この時の俺には流石に入手できなかった。

 

 かなり初期の頃だったし、まだやり直しが効く時期かつ異業種狩りで魔法職に見せかけた近接物理特化とかいうアホみたいな初見殺し事をして経験値とアイテムを稼いでいたなぁ。

 

 やめろ、ヤバいやつを見る目で俺を見るな。

 

 そして課金アイテムも使い何度も頑張って唱えた結果、まさかの重ね掛けが出来るバグを発見してしまい、手刀が次元切断(ワールドブレイク)級になってしまった。

 

 流石に威力がおかしくなったと焦った俺は運営に問い合わせて修正するように仕向けたのだが、効果の重ね掛けは修正したものの既に叶ってしまったものは放置という確実に間違った選択をしてしまった。

 

 『星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)』を何度も使って狙ったものを重ね掛けした馬鹿は幸いにもごく少数で、他の人物はチートを疑われて引退したため公にならなかったのだ。

 

 そして俺は折衷案として運営に引き込まれて誤魔化すために、悪ノリで『レイドボス』になる事とその他特典と引き換えに真実は闇に葬られた。

 

 こうして元々の才能と運営の悪乗りにより公式チートが出来たわけだが。

 

「と、言うのが『メルト・ダウン』の経緯なんだが」

 

「その運営って馬鹿じゃないのか?」

 

「馬鹿じゃなきゃあんな運営やってられねえよ」

 

 不備が多くとも運営して金儲けできたのは企業としていい方なのかもしれない。

 

 だが、今はそれよりも重要な事がある。

 

「さて、情報の擦り合わせはこれくらいでいいだろう。問題は俺の立ち位置だ」

 

 俺は起き上がり、ようやくまん丸なスライムと向き合う。

 

「どうする?追い出すか?それとも『挑む』か?」

 

 腕を組んでドン、と背後に効果音が出てそうな立ち方をしつつリムルに問いかけた。

 

 この街で一番強いのはリムル。それを超えてるであろう俺。

 

 思ったよりも弱肉強食な世界、力こそ全てに近い世界だからこそ俺はかなり余計な存在になる。

 

 リムルよりも強い奴が近くにいていいのか、という問いかけだ。

 

 最悪のことを想定すると、俺とリムルの派閥で分かれて争う可能性がある。

 

 もちろん俺を倒せば覆せる。その勝算があるのかは知らないが、挑戦は必ず受け入れる。

 

 もはや一個人の意思で決めていいのかという話だ。

 

 この数ヶ月の交流で気前のいい兄ちゃんみたいな立ち位置だったのだが…………

 

 自ら立場を捨てるとなると、意外と辛いものがある。

 

「別に何もしないさ。隣人として、いい感じの距離でいよう」

 

「…………ん?いや、でも大きい力を持った奴が2人いたら混乱が生じるだろ?」

 

「そこら辺は確かにあるよ。だけど、みんなにも話をして近くで見てる方が安全って話も出たんだよ」

 

「いやいやいや、だとしても派閥とか」

 

「ここは俺たちの街、いや国だ。誰も拒まないし問題が起きたら一緒に解決する、それだけの事だよ。それにヴェルドラの威光もまだ強いし意外と固まってなかったりするんだよ」

 

「俺が、魔がさして何かしでかさないという保証もないぞ?」

 

「だから一緒に解決する。だってメルトはようやく解放されたんだろ?だから、その自由を少しでも守らせてくれ」

 

 ………………………………こいつなぁ。

 

「お人よしも程々にしろ。絆されるやつもいるが、俺の時代のように絶対に信用出来ない人間もいる。後で痛い目に合うぞ?」

 

「ははは、性分なんでね」

 

 …………敵わないな、これが人格者か。

 

 周りの魔物達も人がいいのが集まってる。過激だが。

 

 それが眩しかった。ゲーム内という顔が直接見えない相手しか適度に信用できないあの世界から来た身としては、この世界は眩しすぎる。

 

 これは大変そうだ。人の黒さを知らないスライムを補佐する人材も、まあある程度の距離を持って接する奴も必要か。

 

「はぁー、まあいい。『レイドボス』として、お前の街に滞在するよ」

 

「そうか!よろしく!時代が違っても同郷が居たら安心するよ!」

 

「もしかして、本音はそっちか?」

 

「な、何のことかなー?」

 

 誤魔化すの下手だな。そういえば人になれるのも誰かを食べて吸収したからとか聞いたことはあるが、人間形態も顔つきは女だが、若干日本人のような気もした。

 

 そういう意味では寂しかったのか?そこら辺は後で聞くとして、他のみんなへの申し開きを考えないとな。

 

「改めて自己紹介でもしよう。人間の頃の名前も持ってるが、それは捨てた。俺はユグドラシルというゲームで『レイドボス』をやっていたリザードマン。『世界の襲撃者(ワールド・レイダー)』のメルト・ダウンだ、どちらかの命が尽きるまでよろしくな」

 

 『レイドボス』の基本的な出現地点が決まった。

 





 メルトが阿保みたいに強いレイドボスになった理由、運営の怠慢(バグ)

世界の襲撃者(ワールド・レイダー)
 世界の名を冠する超級職。闘技場のような公式で行えるPVP以外でプレイヤーを多く倒すことで取得条件を満たす。
 襲撃者というだけあって攻撃力と素早さに特化しており相当な耐久力がない限り攻撃に耐えることは難しい。だが、防御力はかなり低いので持久戦に持ち込めば何とかなることも多い。
 そもそもデスペナルティで貴重なアイテムを落とす可能性が高いのでリスクを恐れて条件を満たすまで戦う人間はほぼ居らず、実質メルト専用の職業になった。
 なお、メルトが条件を満たした理由は今回出たように異業種狩りで死ぬほど返り討ちにしたから。
 バグがなければ『たっち・みー』より少し弱い程度の評価に落ち着く。

 レイドボス特典として魔法、範囲攻撃一回で体力は三分の一まで抑えられるが近接攻撃は一撃で倒されるほど紙装甲。初見殺し魔法職で『星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)』を唱えまくった後に鍛え直して今のビルドに至る。全部バランスをぶっ壊すワールドアイテムとか考える運営が悪い(責任転嫁)

メルト「さあ来いヒナタアア!7回攻撃しなければ死なないと思ってるようだがオレは実は1回刺されると死ぬぞオオ!」

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