今、ミリムは俺の肩に乗っている。
ずっと後方で何もせず全部分かった顔でうんうんと頷いていたら目をつけられたのだ。
まあ、最初に接触したのが俺だから当然と言えば当然目はつけられるんだけど。
そして肩車のままリムルが交渉のため隠していたハチミツの壺を掻っ攫って美味しそうに舐めている。
俺も口にハチミツ飴を含んでるので何も言わないが、他のみんなは羨ましそうにしている。
この世界の甘味は非常に少ない、というか自然由来のものは殆ど無く、砂糖が未だに高級品で魔物たちの市場に出回ることがないのだ。
俺自身も前世から甘いものに縁は少なかった。精々飴とか死にかけの肉体に刺激的にならないよう苦労していたもんだ。
「はむはむ、こんなものを独り占めにするとはひどいぞ!」
「別に独り占めなんてしてないさ、もっといいものを貰ったりするからな」
「な、なんだと!?他を差し置いてそのようなまねをしているのか!」
「ああ、だよな?」
「サラッと巻き込まないでくれ…………」
並列してランガに乗っているリムルに声をかけたが、心労が溜まってそうなグロッキー状態で元気がない。
全く、人のことを何だと思ってるんだ。別に俺はこの魔王よりトラブルメーカーな訳が無いよな?
「テンペストはいいぞ。肉も野菜も何でも美味い。何ならただ焼いただけでも美味い」
「ぐ、ぐぐぐ、ワタシの国とは大違いなのだ…………」
「ちなみに、そっちの国の食事はどうなんだ?気になるから行ってみたい」
「………………………………」
「どうした、苦いのをかみつぶしたような顔は」
「い、言いたくないのだ!あれはただの餌なのだ!」
何を言ってるんだと思ったが、ハチミツで感動しているミリムが喋りたくないものが出るということになるのでは?
この世界の食事事情は、あんまりよろしくないようだ。
まあでも、材料を詳しく明かしていない味なし謎ブロックよりオーガニック食品を食べられるだけマシか。
鬼人たちは警戒を続けているが、はっきり言ってどうあがこうと止められないのに無駄に息が張り過ぎだ。
君主を守るのはいい事だが、血気盛んすぎるし手は早すぎる。力こそすべての世界だから許されている節はあるが。
そうして、テンペスト連邦国首都である『都市リムル』に近づきつつあった。スライムの方のリムルではない、都市の名前がリムルなのだ。
これが決まった時は大爆笑した。めっちゃ笑ってやった。水刃が大量に飛んできたが全部笑いながら回避してやった。
下手したら普通に死ぬ可能性があるのでやめていただきたい(真顔)
「うぐぐ、魔王は威張れるのがウリなのに…………ずるいぞ!ワタシも仲間に入れるのだ!」
駄々っ子のようにちょっと涙ぐみながら訴えるミリムに少々同情を感じえない。
恐らく、強すぎるが故にあまり他人との交流が無かったのだろう。下手したら神のように崇められてそうだもんな。
リムルも同じように察したのが苦笑いしつつ、テンペストへと案内することを約束した。
「じゃあ、俺の事をリムルと呼んでもいいけど、ミリムって呼ぶからな」
「む、別にいいが、そう呼んでいいのは他の魔王たちだけだぞ?今回は特別なのだぞ?」
「じゃあ俺もミリムって呼んでいいな?メルトって呼んでいいから」
「むむむ、いいのだが、本当に、ほんっっっとうに特別なのだぞ?」
「じゃあ友達ってことでいいだろ。そうしたら魔王仲間より親しそうじゃないか?」
「そうだな、俺たちは友達だ」
リムルが最後にそう締めくくると、ミリムが少し固まったかと思ったらにへらと笑った。
友達というワードがそんなに良かったのか?強すぎる力は孤高という名の孤独になるのは痛いほど分かるが。
そんなこんなでテンペスト連邦国首都リムルに到着した。
唯一の懸念はミリムの暴走だが、手を出さないことは一応誓ってるので殺しとかはしないはず。
俺の肩から飛び降りたミリムは全てが珍しいらしく、あれは何だといいながら街中を走りまわる。
それをリムルが走って追いかけるが、まあ任せておけばいいだろう。
「メルトおじさーん!肩車してた子だれー?」
「僕も肩車してほしい!」
「分かった分かった、順番だからな」
どうやらミリムを肩車して走ってた事を誰かから知ったようで、子供達を順番に肩車して街を何周も走る羽目になった。
リムルは大丈夫だろうか?大丈夫だろうな、何せ中身は社会人だし。
「ワタシも乗せて街を一周するのだ!」
大丈夫じゃないかも。魔王様が首都リムル一周肩車に乗り掛かってきたし。
明日も騒がしい1日になりそうだ、そう思いつつ再びミリムを肩車して街を何周も走ることになった。
ちなみに、少しはメルトに預けようとリムルが言ったようでミリムが飽きるまで終わらなかった。
あとで覚えてろよ。
子供に懐かれやすいトカゲ、メルト・ダウン。どの世界でもまともであればそういった職に就いていただろう。
そもそも危機感知を本能的に持ってるので子供たちの安全を守るために大活躍していたかもしれません。
ただ、世界が悪かった。
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