今日も散歩するのにいい日だ。よく考えたら雨の日って結構少ない気もする。
酸性雨が降り続けるよりマシか。空気も汚染されてないって非常に重要なんだなって、つくづく実感する。
今日も特に何もなく一日が過ぎるのもいい。いや、魔王がいるから無理か。
トテトテと歩いて何かいいものがないかと考えていると、ミニマップに四つの反応が出た。
敵対的ではあるが、脅威度は低い…………いや、魔王ミリムのせいで感覚がマヒしてるな。
今のところは何も起こってない。ただ、ずかずかと街中を歩いているだけだ。
大したことはないとは言ったが、この街の住民からしたら結構危険だろう。
暇だし足を運んでみるのも悪くない。
珍しく野次馬根性を発揮して四人の様子を見に行ってみた。
街の住民から距離を取られているが恐れられていると思われているのか、真新しい街並みをぐるりと見回っている。
完全に偵察で来てるって言いふらしているようなものだ。この街は来るものを拒まないような性質をしているせいで変な奴もよってくることは多い。
それらをシオンが正面からぶん殴り、復讐を考えたらソウエイが裏で恐ろしい目に合わせるという二重のセキュリティを強いてるが、最初から入り込める時点でダメだろう。
「ここはいい町だ、魔王カリオン様が支配するにふさわしい、そうは思わんか?」
傍にたまたまリグルドがいたため問いかけたらしい。
元々ゴブリンの村の村長だったリグルドだったからこそ声をかけたのだろう。そういう風格が未だに残っているらしい。
前の姿はかなりよぼよぼのおじいさんと聞いていたが、今の姿からは想像が付かない。
とはいえ、既にリムルが治めている街に新たな支配者は要らないとみんな考えている。
だから、返す言葉は『否』以外にあり得ない。
「ご冗談を…………」
その瞬間、俺の体は動いた。
リグルドに向けられた攻撃は、そのまま放置していたら顔面に大怪我をさせてしまう。
そう予感したから動いた。
腕から魔素を出しながら腕を振ろうとするのを、後ろから掴んで止める。
「お客人、それは無作法というものだろう」
「っ!?なんだお前は!」
掴んだ左腕を振り払い、即座に右手で攻撃する当たり、やはりこの世界は血の気が多すぎる。
本当に良くも悪くも弱肉強食だ。ちょっと文明を学んでくれ。
もちろん攻撃は回避する。わざわざダメージを受けてやるつもりは無い。
「何だお前は!クソ、何故当たらない!」
「それはお前の攻撃が遅いからだろう」
「ほざけ、クソトカゲが!」
どうやら相手の怒りを買うだけだったらしい。
身体から迸る魔素はベニマルと同じ、いやそれ以上のものを持っているのは間違いない。
となると、名前持ちか。他の三人も同時に俺に襲い掛かってきたが全部回避している。
うーん、やっぱり刺激が足りないというか。命がけにはまだ足りないと思ってしまっているのが実情だ。
必死に攻撃してくる彼らを物足りないと考えるのは失礼だろう。
何せ、
「そろそろいいか?厄介なのが近づいてる」
「何が厄介だ!スライムじゃなく、お前がこの街の…………!」
ドドドド、と誰かが走ってくる音が聞こえる。
全く、5分も満たないのに我慢が出来ない奴だ。
そうまでして俺と戦いたいか?
なあ、魔王ミリム。
「な、魔王ミリム!?」
俺を攻撃し続けていた男が走ってきたミリムの方を向く。
そしてリグルドを攻撃してきたものより強力そうなものを放とうと、いや、放った。
しかし、暴風の前にそよ風程度の魔素は簡単に吹き飛ばされる。
あっさりと上に吹き飛ばされて地面に落下した。
痛そうだ、俺もあんなの受けたくないってのに。
それに伴って他三人も硬直してしまい、残念ながらこれでおしまいらしい。
結局、話し合いで解決することは出来なかったな。本当は普通に攻撃をやめるように言いたかったんだが…………
何でも試すべきだな。俺も戦闘は出来ても外交とかは全くの未経験、なんなら交渉もしたことは無い。
木っ端職員じゃ交渉もほぼ無意味だったからな。上級職員の身に危険がない限りは重すぎる腰は上がらない。
なのであえて危険を演出することで粗悪な装備を新調するようなことはよくやった。
まあ、所詮演出だから危険はほとんどないからな。肉体は放射線に蝕まれ続けたけど、がはは。
「ワタシがいるのに喧嘩するのはだめなのだ」
「喧嘩じゃなくて説得だったけど聞く耳持たなくてな。一応感謝はしておく」
「ふふん、感謝するのだ!」
自慢げにしてるから何も言わないでおこう。
しかし、こいつらは結局何だったんだ?魔王カリオンといっていたが、ミリムとは別の魔王?
この世界、意外と魔王が多いな。
「何の騒ぎだ?」
俺とミリムと謎の4人組を視認したリムルが歩いてきた。
半目になって呆れながら寄ってきた辺り、俺らが問題を起こしたと思ってるのだろう。
実際、その通りであるから言い訳のしようがない。
「俺はただ避けてただけだ。正確なことは其処ののされた奴に聞いてくれ」
面倒になった時の奥義、丸投げだ。
マジで分んないからな、こいつらの目的。街の視察なのか、それとも侵略か。
恐らく後者だろう。魔王の名前を出してやって来たのだから。
「むむむ、すぐに終わらせなかったメルトが悪いのだー!」
言い訳しようとして失敗したミリムの叫び声が街に響いた。
暴力が一番の世界にリムルの理想は通用するのだろうか?
一蹴されるフォビア君たち。いや、蹴られてもないからあしらわれてると言える。
この頃はこういう無礼があっても裁き切らないのがリムルの良さであり弱いところと思ってます。
その相対として生物の、人間の醜さを知るメルトが何か手助けできたらいいなと思ったりもしてます。
止められるのだろうか?
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