転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第二十一話 英雄のはじまり

 

「何だお前」

 

「リザードマンにしては、なんか野生的すぎないか?」

 

「何か問題でも?」

 

「いや、別に…………」

 

 なんかいつの間にか増えていた人間にじっと見られたので睨み返してみた。

 

 まあ、リムルがいろんなカバーストーリーのために育成し始めた人間のヨウムだ。

 

 実力はそこそこ、人間の中でも少し上くらいで大したものではない。

 

 なので短期間で一定以上の実力を付けようという訳だ。

 

 彼、いや彼らは都合よくつかわれてる傭兵団のようなもので今回個々の調査に来たのは豚頭魔王(オークディザスター)の件で、都合よく消えてもらったらいいと思われている面子を連れてきたようである。

 

 だが、かなり男らしいヨウムの人格にほれ込んだ彼らはヨウムについていくようで、彼らの安全を確保するためにカバーストーリーの英雄を作り出す作戦に同じく参加しているのだ。

 

 そんな彼らをしごいているのがハクロウなのだが…………彼、やっぱり厳しいね。

 

 偶に訓練所の近くを通りかかると死屍累々の戦士たちが種族関係なく転がっている。

 

 本当に強いんだなと思いつつも、かつてオークの大軍に負けたことを考えると数の暴力は厄介なのだなと感心する。

 

 圧倒的な物量も時に悪くないという証明か。だが、それを簡単にひっくり返せる存在も居るのは違いなく、結構殺伐とした世界だな。

 

 でも前の世界よりは自由と責任が伴ってるからマシだ。

 

「では、メルト様に訓練の手伝いをしてもらいましょうか」

 

「えっ」

 

「メルト、っつうとそこのリザードマン?確かに体格はいいが、丸腰じゃないか」

 

「武器ならここにあるが?」

 

 そういって右手を出してみるが『何だこいつ』という顔をされた。

 

「今回は時間内にメルト様に一撃でも、かすり傷でも与えられたらすぐに終了という事にしましょう」

 

「その様付けはやめてくれないか?流石に年上にそう言われるのはちょっと気が引けるんだが」

 

「あの魔王ミリムを押しとどめられる実力がある者をどうして下に見るのでしょうか。まして、子供たちが世話になる人物を下手に扱えますまい」

 

「むむむ、難しい理屈だな」

 

 最近は俺を様付けで呼んでくる奴らが多くなっている。全く、俺は別に重役でもないってのに。

 

「その、なんだ、メルトって言ったな。こいつに一度でも武器を当てたらいいって話でいいんだな?」

 

「武器だけでなく、手も足も十全に使ってでも当てなさい」

 

 しれっと訓練に巻き込みやがったこの爺さん。ガゼル王の時もそうだったが人のことをけしかけるのが好きなのか?

 

 だが、いいだろう。ベニマルらのような中堅ではなくビギナーの訓練に付き合うのも悪くない。

 

「よし、準備は出来たか?いつでも、どこからでもどう…………」

 

 どうぞ、という前にヨウムからの攻撃が来た。不意打ちで、横なぎで振るわれる剣だ。

 

 普通なら有効なのだが、相手が悪い。

 

 剣が降りぬかれる前から既に後ろに飛べるよう足を動かしており、鱗どころか簡易に纏っている衣服にかすりもしない。

 

「いい攻撃だ。大体の奴らなら当たるだろう」

 

「でも、当たらなけりゃ意味がないんだよ!」

 

 その不意打ちを皮切りに全員が俺に襲いかかってくる。

 

 しっかりと抜き身の刃を使って、この野郎、全部ハクロウに誑かされたな。

 

 絶対に俺の実力を測ろうとしてるだろ。正式な友好的声明も出してないしいつ脅威になるかわからないからな。

 

 他の皆はいつの間にか俺がいることに馴染んでいるが、完全な味方とも言ってない。

 

 でも、俺がレイドボスである限り全てが敵なのは間違いない。

 

 それに、この年齢の人間が今から鍛えてどれほど強くなるのかも気になる。

 

 今は模擬戦ばかりだが、いずれ実践や血を血で洗う戦争に駆り出されるはずだ。

 

 『ユグドラシル』は死んでもデスペナくらいで何度でも戦えたからな。そういった意味で俺のような修羅になる事は難しい。

 

 俺も蘇生アイテムはあるが、物が物だけに時間制限があったり課金アイテムで他者に使えなかったりと制約が多すぎる。

 

 そこまでハイクラスな魔法を使う人材は今のところ目の前に現れてないし、この世界では無いのかもしれない。

 

 ままならないな、やりたいことに地味に手が届かないというのは。

 

「くそっ、全部避けられる!」

 

「後ろにも目がついてるのか!?」

 

「うわっ、的確に尻尾で足払いしてくる!」

 

「何者なんだよ、こいつ!」

 

 30分くらい遊んでいたが(他の奴らを除く)そろそろ飽きてきたぞ。

 

 こっちも両手を使わず尻尾でなんかできないかなと思って試してみたが、足払いくらいしかないからな。

 

「そろそろいいか?俺も暇じゃないんだが」

 

「この後の予定は何もないとお聞きしてますが?」

 

「一体誰が…………ソーカか!」

 

「ほほ、誰でしょうなぁ」

 

 くそっ、割と遊んで暮らしてるのバレてる!ずっと監視みたいなのはついてるのは知ってるけど、何も掴めないから腹いせだろこれ!

 

 リムルにも全部教えてないとはいえ、全く教えないからって拗ねるな全く!

 

「どうやら余計な事を考えてる様子。私も参戦いたしましょう」

 

「もう逃げるからな!」

 

 俺は逃げた。絶対意図的にからかってるのは分かったし、もういいだろ!

 

 ヨウムには悪いが、俺はこの場から颯爽と逃げた。

 

「…………何なんすかね、あのリザードマン」

 

「未だに謎多きです。さて、そろそろ訓練も厳しくいきますか」

 

 最後でヨウム達の悲鳴が聞こえた気がした。

 

 





 ナムサン、ヨウムさんはメルトが存在ていることで遥かに高い攻撃命中度を求められる!

 上澄みが近くにいたらちょっとでも求められるのって酷だけど、近くにいたら仕方ないよね。

 それはそれとして死んでも気軽に復活できるゲームキャラって修行という点に当たって理不尽と思う。

 死んだ数だけ先に行かれるというのは、あまりにも無体な話じゃないのだろうか。

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