転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第二十三話 厄災の姿か?これが?

 

 少し、時間を遡る。

 

「いいのですか?あの男を自由にさせておいて」

 

「まあまあ、本人がやりたがってるならいいじゃないか。別にミリムみたいに魔王とかの立場じゃないし」

 

「そのミリム様も彼の隣にいますが」

 

「あれぇ?」

 

 周りの圧力によりミリムに頼ることが非常に難しくなった今、リムルは内心ビビっていた。

 

 一応だがみんなが協力したら時間はかかるが何とか死者を出さないように終わるというのが『大賢者』の結論であったが、ミリムが参戦したらもっと簡単に終わるだろう。

 

 そんな有効な一手を使えないことを、リムルは嘆いていた。

 

 ただし、そんな彼らの団結という名の圧力を跳ねのけた一名を除いては。

 

「よく見たらガビル達も向こうに行ってるじゃん。全く、待機しておけって言ったのに」

 

「仕方ありません。メルトとガビルは友人の関係、何かあった時の姿を見たくないのでしょう」

 

 困惑しているリムルに苦笑いしながらも答えてくれたベニマルにそういうものなのかなぁと思いつつ、街道の先にいるメルトらを眺めていた。

 

 リムルの計画では、最初はベニマルの『黒獄炎(ヘルフレア)』である程度ダメージがはいるか様子を見て、総攻撃の開始とする。

 

 メルトが何かしそうなため、計画の修正は多少必要になると考えていたその時だった。

 

 前方から尋常じゃないプレッシャーが襲い掛かる。

 

 まさか『暴風大妖渦(カリュブディス)』が急に接近したのか、と思ったが一瞬だけ感じた事のある気配とすぐに分かった。

 

 メルトだ。陣地よりもはるか前にいるメルトがエメラルドグリーンに輝き、とてつもない存在感を放っている。

 

 あれが本気モードなのかとスライムながら汗をかいた。

 

 今まで訓練では回避しかしていなかったメルトが初めて攻勢に出る。それだけでも一大イベントであり『大賢者』で解析する機会でもある。

 

 そこから一体何が繰り出されるのか?異世界でレイドボスを務めていたと唯一知っているリムルが興味でそう思っていた時だった。

 

「『手刀聖剣・エクスカリバァ』」

 

 まず最初に空が裂けた。

 

 まだ太陽が高いはずなのに、横一線に深い、深い混沌を宿した宇宙の裂け目が出来たように、カリュブディスの上顎と下顎が綺麗に裂け目の上と下に分かれた。

 

 次に、恐ろしいまでの暴風が全員に襲い掛かる。

 

 恐らく、いや、間違いなくメルトが放った『何か』の副産物だ。

 

 圧倒的な、暴力的すぎる攻撃は周囲の空間にまで影響を与えて多大なる二次被害が起こっているのだ。

 

「うわあああ!」

 

「みんな耐えろ!」

 

「と、飛んじゃうっすうううう!」

 

「ゴブタが飛んだ!」

 

「きゃああ!」

 

「な、何のこれしきぃ!」

 

 全員が阿鼻叫喚。もしかして暴風竜が降臨したのかと言わんばかりの暴風に皆が耐えようとする。

 

 次第に暴風は落ち着き、土煙もようやく収まってきたところで皆が目を開けることが出来た。

 

 そして、夢を見ているのではないかと全員が疑った。

 

「何だ、あれは」

 

「空が本当に、割れて…………」

 

 カリュブディスはそこに居た。ただし、下半分は地面に落下し、上半分は裂け目の上に乗っかっているという異常な様相でだが。

 

 誰もが思う。強力で恐れられていた厄災がたった一撃でやられたのか、と。

 

 この世界ではやろうと思えばやれる者は少ないとはいえ存在する。

 

 それでも実際に目にすると現実味を失ってしまうのだ。

 

 呆然と裂け目を眺め続けていた彼らだったが、ゆっくりと裂け目が閉じていくことに数秒、数分かけてようやく気づく。

 

「(な、なあ大賢者、何が起こったか分かるか?)」

 

『告、個体名メルト・ダウンの何らかの攻撃によって空間ごと切断した模様。詳細は解析中』

 

「(じゃあ、あの裂け目は?)」

 

『告、不明』

 

 大賢者でも分からないことはある。いや、情報が少なすぎて確信にも至っていないからこそ伝えられない。

 

「(これが、アイツが隠してた実力か。そりゃ下手に攻撃出来ないよな)」

 

 ぞくっと丸い背中に寒気が走ったリムルだが、思いのほか納得することができた。

 

 メルトはゲームのキャラをそのまま持ってきて転生した存在というのを知っていて、なおかつ神々がいる中でボスの役割を果たしていたのだからパワーや技はそこらの生物とは段違いなのは間違いない。

 

 でも空間を大規模に切り裂くのはやりすぎだろ!というのがリムルの感想である。

 

 幸いにも空に出来た空間の裂け目は時間と共に閉じるタイプだったため、様子見で眺めていたら完全に消えた。

 

 その瞬間に上半分だけ残っていたカリュブディスが遅れて落下した。

 

「メルトさんって、あんなに強かったんだ」

 

 

 

「訓練の時も避けるだけだったから、本当に手加減だったんだ」

 

「見る目変わるよ、どうしたらあんなに強くなれるんだろう?」

 

 ミリムの遊び相手くらいになれる程度に強くて子供の遊び相手みたいな保育士としての側面しか知らない皆は彼の評価を改める。

 

 意外と嫉妬は少なく、畏怖はあれど尊敬と憧れが強く勝る。

 

 力を至上にしがちな魔物にとって、あの一撃は魔王や神に等しい存在が放つものでありメルトを格上として見るには十分だった。

 

 ただ、そうなれば疑問が出る。

 

 ドドドドド、とメルトが彼らに向かって走ってくる。

 

 そこそこ距離があったはずなのにかなりの速度で戻ってきたのだ。

 

 その身体はいつものくすんだ緑の鱗ではなくエメラルドに輝く鱗であり、そして誰か1人担いでいた。

 

「リムル、これさっきのやつの依代だから処理よろしく」

 

 ぽいっ、とカリュブディスの依代だった男、フォビオをリムルの前に捨てて超高速で森の中に走っていった。

 

 まるで逃げ込んだような、そんな風に感じとった彼らの前に、もう一つの暴風が飛び込む。

 

「メルトは何処に行ったのだ!?」

 

 そう、ミリムである。

 

 メルトが何をするかワクワクして見てたら予想外のものを出されてぼーっとしていた間に逃げられたのだ。

 

 そのぼーっとしてる間に暴風を思いっきり浴びたり、メルトがカリュブディスの上半身を素手で解体してフォビオを救出したりとそこそこ時間が経っているが。

 

「あ、あっちかなー?」

 

 リムルが指を刺した方向にミリムが飛んでいく。

 

 何をしたかものすごい勢いで詰めるつもりなんだろう。しっかりと木々を薙ぎ倒しながらメルトを探し始めた。

 

「…………リムル様、わざと反対側を教えましたね?」

 

「わ、悪気はなかったんだよ…………」

 

 メルトを逃がそうとしたため逆方向を押して、森林破壊に貢献してしまったリムルに呆れながらトレイニーが詰める。

 

 この状況をどうしようかと考え、とりあえず『大賢者』の提案でフォビオからカリュブディスの核を取り除くことから始めた。

 

 メルトは1週間戻ってこなかった。

 





 手刀聖剣・エクスカリバァ。簡単に言うと崩壊スターレイルの黄泉が放つアレ(ネタバレ)。

 発生した暴風はメルトにとっても予想外だし、それをモロに受けたガビルらは気絶で済んだ。

 そしてミリムは今まで手を抜かれてたことに怒ってたので追いかけた。これは雪山でも追いかけっこが続きますわ。

 そして覗き見していた魔王の方々やその他の心境はいかに。

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