転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第六話 数の暴力、質の力

 

 この世界に来てよかったこと、飯が滅茶苦茶美味い。

 

 前世では無味無臭の錠剤とよく分らないペースト状の飲み物が最下級市民の常食だったから味覚じゃ全く開拓されなかった。

 

 だからこそ無知で愚かな舌に暴力的な刺激に思わず涙を流してしまうほどに感動してしまった。

 

 いかんいかん、これが常識のはずなんだ。上流国民が常日頃食べていたものがこれなんだ!

 

 若干周りに引かれていることは把握しつつも、流石に失礼が無いように一度手を止めることにした。

 

 このメルト・ダウン、胃袋の大きさは相当なものと今回の食事で把握した。

 

 もっと食べられることは非常にうれしい事だ。今後も美味しいものをもっと…………

 

 そんな邪なことを考えていたら先ほどの糸使いの鬼、ソウエイとやらがリムルの元に報告しに戻ってきた。

 

 なんとオークの大軍が近くまで迫っているようだ。その数なんと20万。

 

 恐ろしいな、確かに数の暴力と言うのは相当キツイ。例え同格以下であろうとひたすらに戦い続けるというのは疲れが出るわ精彩を欠くわでジリ貧になる。

 

 俺も似たようなことは経験した事はある。100人連続でレベルカンストの猛者をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、流石にアホみたいに面倒だった。

 

 実際、そんな感じで物量でプレイヤーを潰そうとするイベントはあった。

 

 あの時はめっちゃ批判されていたな。炎上して調整が大量に入ったくらいにはヤバかった。

 

 それでも何とかなったから『遊べるクソゲー』と呼ばれた『ユグドラシル』だ。伊達に過疎化しても10年近く運営し続けているのだから。

 

 とはいえど、ここは現実。ゲームでもなく話を聞けば鬼、彼らは元々オーガだったらしいが、彼らが元居た村もオークに蹂躙されてしまったらしい。

 

 なるほど、やはり数は正義と言ったところか。問題なのはそれを簡単にひっくり返そうと思えばできるスライムが目の前にのほほんとしているだけだが。

 

「物騒だな。こういうのがよくあるのか?」

 

「いや、流石にないって!まあ、ここ最近色々あったからな」

 

「色々?」

 

「そっか、メルトは別のところからきたんだっけ」

 

「少なくともここら辺の事情を知らないくらいの所からな」

 

 ここら辺の事情、ということは大きなイベントでもあったのか?

 

 ついさっきこの世界に来たばかりだから事情も何も、何がいるかすら知らないんだから後で知るしか無い。

 

「しっかし、何でこんな時に攻めてくるんだ?侵攻してくるなら理由の一つや二つがあるはずだが」

 

「単に滅ぼすだけじゃ無いのか?」

 

「滅ぼすにしても大義名分も掲げてないのに、何かを奪いたいとか?宝があったりするか?」

 

「どうなんだ?」

 

「我々オーガだった者の村に財産はあれど、大軍で攻めて利益が出るほどのものはありませぬ」

 

 リムルが白髪の鬼に問いかけた結果、そういった物を狙ったわけでも無いらしい。

 

 では一体何が狙いだ?うんうんと皆んなで考えていたら、部屋の中に一つの気配が増える。

 

 まるで転移するかのように何も無い場所から現れた女性、正確には精霊のような者が現れた。

 

「初めまして、魔を統べる者とその従者たる皆さまと…………旅人の方。わたくしは樹妖精(ドライアド)のトレイニーと申します」

 

 トレイニーと名乗った彼女は正面でシオンと言う鬼に抱っこされたリムルに深々と頭を下げた。

 

 …………今の間って絶対俺の扱いに困ってたよな。

 

 丁寧な自己紹介からリムルも自己紹介し返しているが、周囲がかなりざわついている様子から樹妖精(ドライアド)は彼らにとって相当貴重な存在らしい。

 

 そしてリムルのことを魔を統べる者と呼んでいるあたり、最初からリムルを狙ってきたな。

 

 先ほどのガビルと言うリザードマンの来訪、20万ものオークの大軍。その話をしている中で登場とは都合が良すぎる。

 

 樹妖精(ドライアド)ということは森に居たら情報は殆ど筒抜けという訳か?

 

 だから急に増えた俺のことに言葉が詰まったのか。リムルたちもこの森に住み着いて多少の時間は経っているはずだから樹妖精(ドライアド)側はある程度察していたのだろう。

 

 だが、そんな貴重な存在がわざわざ姿を現した、ということは…………

 

「あなたに豚頭帝(オークロード)の討伐を依頼したいのです」

 

 やっぱり、そういう事だったか。

 

 今のオークを取りまとめている奴が強すぎるから他人に頼ろうとしているという訳か。

 

 逆に言えば、噂程度でしか皆が知らない樹妖精(ドライアド)ほどの者が手に負えないほど厄介なことになっている証明でもある。

 

 周りからはマジかよと言う驚愕の空気を漂わせている中、俺とリムルだけは上手く状況を把握できていなかった。

 

 オークもそうだが、豚頭帝(オークロード)がそこまで脅威になっているのか?

 

 もしかしたら山とか森とか簡単に消し飛ばせる存在だったりする?そうだったら確かに脅威ではあるな。

 

 どうしよう、現実味を未だに持ててない。これがどれほどの危機なのか実感できていない。

 

 メルト・ダウンという健康な肉体を手に入れたのはいい。

 

 だが、俺は一体この世界の何なんだ?

 

 割と深刻なことを考えていたら、ユニークスキルという謎単語が飛んでいたことをスルーして、自分の知るシステムと違う部分があるということに気づくのはもう少し先の話。

 

 




Q.トカゲさんはこの世界の何ですか?

A.名誉と報酬がもらえるレイドボスです。

 本来なら勇者とか魔王に狙われる立場なのにまだ素性が謎なので見逃されているだけです。

 単純に力を隠しすぎて誰もなんか強い謎のリザードマンとしか見られてないメルトでした。

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