転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第七話 任せる

 

 豚頭帝(オークロード)、数百年に一頭出現するオークの上位個体、らしい。

 

 正直な事を言うとそこまで珍しいものなのかと思ったりする。

 

 だってこの村はゴブリンの上位種であるホブゴブリンやオーガの上位種である鬼人がわんさかいる訳だし。

 

 とはいえど樹妖精(ドライアド)達では対抗できないみたいでリムルに助力を求めてきた訳だ。

 

 20万は並の強者では対抗できないだろう。なにせ数で潰されるのだから。

 

「依頼ってことは報酬も出る訳だよな。脅威ばかり知らせて、メリットはあるのか?」

 

「はい、オークロード討伐の暁にはジュラの大森林におけるモンスターが傘下になる事を誓います」

 

「他の奴らは説得してるのか?」

 

「納得させます」

 

 横から口を出させてもらったが、随分と思い切りのいい事で。

 

 俺もリムルの強さを全て把握できてるわけじゃないが、本人を置いてどんどん事が大きくなっている気がする。

 

 リムル当人も巻き込まれたくはないのは当然で、様子見をしようという意見を出していた。

 

 俺もそうだと思っていたが、ピンク髪の巫女っぽい鬼が待ったをかけた。

 

 彼女らオーガの村にあるものがなくなっていた。それは死体、倒した敵だけでなく倒された同族の死体すらなくなっていたのだ。

 

 説明されて納得したが、あんな大軍を動かすのに食料が足りなくならないわけが無い。

 

 敵味方の死体区別なく食するとは、戦争って恐ろしい。

 

 …………俺も前世で飢えに耐えかねなければ似たような事をしてたかもな。

 

 倫理観もほぼ薄まったあの世界がどれほどの地獄だったか改めて心にくる。

 

 そんな事を考えて一部聞き逃したが、食料になる生物が集まるこの村も標的になるのは確定らしい。

 

 となれば彼等の長であるリムルが逃げる訳にはいかない。討伐を約束しすぐにて作戦会議に入る。

 

「やっはりリザードマンとの同盟はいるよな」

 

「だけど、使者があれじゃあ…………」

 

 みんなの頭に浮かんでるのは俺ではなくお調子者のガビルだ。

 

 俺もあの態度はどうかと思う。絶対に使者を間違えただろあれ。

 

 もし何かあった時のためにソウエイがリムル側の使者となって行くらしい。

 

 まさか向こうも自身の手駒の落ち度で破綻したとは思うまい。

 

「じゃ、俺は邪魔になりそうだから何処かで野宿するわ」

 

「待て待て待て」

 

 抱っこされてるのに腕、いや手?のようなものを滅茶苦茶伸ばして俺の肩に置こうとした。

 

 ちょっとキモかったので避けた。

 

「何を待つんだ?俺関係ないし」

 

「一応さ、リザードマンだろ?そういったので仲間意識とかないのかーって?」

 

「一匹トカゲだから分からんなぁ」

 

 ぷぴー、と全くできていない口笛を吹いて誤魔化してみる。

 

「言っちゃ何だが俺の出る幕でも無いだろ?そもそも完全な部外者で飯食って感動はしたが、それだけの関係で手伝えと…………」

 

「じゃあこうだ、これからもっと美味いもの用意するから力を貸してくれ」

 

「…………簡単な報酬で釣られるとでも?」

 

「まあまあ、もしも何かあった時のために滞在してくれるだけでもいいから」

 

「いざという時に逃げるかもしれないぞ?」

 

「不利になったら逃げるのか?」

 

「20万程度の雑兵に遅れをとるとでも?」

 

 煽られたからつい言い返してしまった。まあ舐められる訳にはいかないし、多少凄んでおかないと自信がない奴に思われるだろう?

 

 せめて番犬代わりにはなってやろう。飯の義理くらいは果たすさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「20万程度の雑兵に遅れをとるとでも?」

 

 その言葉を発した瞬間、全身が凍り付くような感覚を覚えた。

 

 去ろうとする少し特殊なリザードマンと思っていた人物の全身から尋常なない剣気が発せられた。

 

 ほんのわずかな時間、この場の全員を瞬時に殺せるぞということを暗に伝えているのだろうか。

 

 下手な奴より逆らってはいけない。通りすがりにしては異常な力を持つ何者か。

 

 魔王?もしかしたら本当にそうなのかもしれないが、彼らの知識ではそんな存在は聞いたことがない。

 

 本格的に何者かと思案した際に、ふと引っかかるのが少し前に聞こえた世界の声。

 

 『レイドボス』、突然現れたそれの意味を知らない者がほとんどだ。

 

 異世界転生者、転移者を除いて。

 

(でも、アイツはどう見てもレイドボスっていうでっかい壁には見えないよな?やっぱ隠してるのかもしれないけど…………)

 

 この場ではリムルのみが意味を知っていた。

 

 ゲームで突発的に現れるイベントボス、普通のボスと比べて特殊でありかなりの総力戦を強いられるソシャゲなどで見かける名前だ。

 

 大抵は大層な雰囲気と隠しきれないオーラを纏っているものだが、普段のメルトにはそんなものはなく、普通のリザードマンと比べて筋肉質なくらいで何も変わりなかったように見えた。

 

 だが、さっきの瞬間に放たれた気迫は疑惑を生むくらいには感じられた。

 

(なあ大賢者。メルトがレイドボスと思うか?)

 

『告、「れいどぼす」と言う基準が理解できません』

 

(理解できない?どういうことだ?)

 

『告、魔王という基準はありますが「れいどぼす」は世界より通告されるまで存在していません』

 

(…………せめて敵じゃないことを祈っておこう)

 

 リムルはそう思っておくしかなかった。

 

 こうしてリザードマンに若干の不安を残しつつ戦いの刻は近づいていく。

 





突然別概念を持ち込まれて大賢者も困惑だよ。

元の世界と違うシステムを持ち込んだメルトも八欲王と変わらないのでは、と思ったり。

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