野宿とは意外と居心地が悪いものだった。
土って思ったよりも固いんだなって。よく本やゲームで出てくるようなふかふかな土ではなかった。
初めてだ、ベッドが恋しいと思ったのは。こんなところで文明の便利さを感じたくなかった。
さて、
オークとの戦争に向けて準備してるんだろう。リザードマンと話さえついたら後は迎撃するだけだもんな。
俺も特にする事ないし、のんびりしておくか。
…………と言っても、こういうのは滅多にない。
前世ではサービス残業当たり前で休みなんて月に4、5日ある程度。休みも殆どの『ユグドラシル』をやってたから何もしていない時間なんてほぼ無かった。
何もしていないのがもどかしいという訳わからない状況に陥ってしまった。
流石に散策でもするか。
大自然の中に存在する村とはいえ、木製で立派な家がたくさん存在している。
街を歩いてみると、ゴブリンの子供が狼と遊び賑やかな様子で、不満を挙げるなら飲食店みたいなのが無いということくらいか。
そもそも、俺はこの世界の通貨を持ってないし、何かと換金しようにも『ユグドラシル』では低レートであってもレベルが全体的に低そうなこちらの世界では相当な価値になりそうな予感がして無理に提供できない。
困った、マジで小遣いもない。
でも何もする事ないしなぁ。力仕事でもあれば喜んで手伝えるんだが。
「そこに居るのはメルト殿で間違いないですかな?」
ぼーっと歩いていたら後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこにはかなり筋肉質なホブゴブリンの男性が立っていた。
「そうだ、俺がメルト・ダウンだ」
「挨拶が遅れましたな。私は村の村長を勤めていましたリグルドと申します」
「これはご丁寧に、あいさつどうも」
ホブゴブリンと言ったが、それにしては大柄でかなりマッチョな体型だ。もしかしたらさらに上の種族かもしれん。
「いやはや、この村で退屈しているのでは無いかと思い声をかけさせていただいた次第ですが」
「そうか?見てるだけでも楽しいが」
「日常風景ですよ。まあ、リムル様がいらっしゃってからこうなった訳ですが、昔はこのような繁栄を想像できませんでした」
「その言い方だと、まるで年寄りみたいだな」
「元ゴブリンの中では最高齢ですよ」
はっはっは、としれッとマッスルポーズを取りながら若さをアピールしてくる。
なんだ、この肉体自慢を披露しているのは。こうなったら俺も見せつけるしかないぞ。
「そうか、また争乱が来たが平和なのは何より、だっ」
ムキっとこちらも負けじとポーズを取った。リザードマンとしてのアバターは何度も再構築したが、最終的に『筋肉で素早いのが面白いしかっこよくね?』という結論に至って今の姿に至る。
こちらが対抗してきたことに目を丸くしたリグルドは、意図を読んでニヤリと笑った。
「ええ、この戦いも早く終わらせて皆で宴でも開きたいものです、なっ」
「たしかに、美味いものはいつでも心の栄養剤だもん、なっ!」
「そう言っていただけると、ゴブゾウも喜びます、ぞっ!」
「ママ―、村長なにしてるのー?」
「負けられない戦いがあるのよ」
変な茶々が入った気がしたが、彼の身体はかなりいいだろう。しいて言うなら種族の強化からどのように進化するのかが分からないってところだ。
スライムも相当強くなることだし、ゴブリンにも何らかのテコ入れがあるという事を考えておこう。
リグルドとのマッスルポーズ対決を繰り広げられていたら、いつの間にか子供たちに囲まれていた。
当然、ゴブリンの村なので緑肌のゴブリン達だ。
何をしているのか興味津々だったのだろう。村長が変なことをやっているから気になるのも仕方ない。
よし、どうせ暇だしやってみたかったことを試してみるか。
「よーし、振り回してほしい奴はいるか?俺の腕にしがみついてどこまで耐えられるか試してみよう」
子供と遊ぶのは、子供の頃以外ない。そもそも小学校中退で働きに出たから直接なかった。直接遊ぶ機会も外が環境汚染で無理だった。
こうして遊ぶというのも初めてのことで、正直誘い文句はこれでよかったのかと内心大量に汗をかいている。
心拍もかなり上がっている気がしてならないが、大丈夫か?対応間違えてないか?
「ふりまわし?」
「ぐるぐる?」
「それなーに?」
「…………確かにやる機会はないか。リグルド、試しに子供役やってくれ」
「何故!?」
この後、ダブルラリアットでリグルドを振り回し、この遊びを子供たちに偉く気に入られて大行列が完成した。
思っている以上に子供が集まったため全員が満足するまで昼を過ぎることになる。
なんならリムルもこっそり抜け出したゴブタも混じったんだよね。
唐突に始まるマッスル対決ってなんかいいよね。
感想や評価を頂けるとモチベにつながるのでよろしくお願いします。