転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第九話 留守番も悪くないのかもしれない

 

 リムル達が出陣した。

 

 リザードマンとの同盟を結ぶことに成功したようで早速救援に向かうらしい。

 

 言っちゃ悪いが、俺は当事者じゃない。むしろ俺も同行して戦ったら全てが簡単に終わってしまうことがほぼ確定してしまう。

 

 それでいいのか?簡単に手を貸したら成長しなくなってしまうのでは無いか?

 

 そんな日和った考えのもと、俺はしっかり留守番する事になった。

 

 幸いにも子供達と遊んだ事がきっかけで多少の信用を得られたことが大きい。

 

 何かあった時には頼るように、とリムルから言われるくらいには任された。

 

 …………いや、それはそれでいいのか?少し前に来たばっかりの他人だぞ?

 

 何というか、人がいいというか、悪意が少ないというか。

 

 そもそも村単位で存在していたとはいえゴブリンに常識とかあったりするのが今更ながら驚きなんだがな。

 

 ゲームのNPCみたいに知性がないわけではないし、最初からかなり知性があった?

 

 しかも割と簡易に参加できるみたいな話を小耳に挟んだが、この世界の理屈が未だに分からん。

 

 彼らだけが極端に悪意が少ないだけなのかもしれない。

 

 人の悪意なんて、恐ろしいほど底なしだから、それを知らないだけなのかもしれない。

 

「メルトおじさーん、昨日のやってー」

 

「いいぞ、ってもう列ができてる!?」

 

 確かに昨日の振り回しは結構長い時間やった。スタミナも人間だった頃と比べて遥かに高くなっていて、何時間やってもいい疲れすらしなかった。

 

 そういや状態異常(バッドステータス)に疲労があった筈だが、それも装備で回避することは可能だ。

 

 しかし、その装備をあの時は付けていない。レイドボスになった際に殆どの状態異常にならない仕様にしたのが原因と思われる。

 

 状態異常に関しては相当駄々を捏ねたからな。

 

 行動不能になりさえしなければヨシの範疇で、みんな色んな抜け道を探すから対策も大変だった。

 

 それでもなお俺の危機感知の方が上回ったのは謎だ。

 

 本能は何事にも強く出るってのはハッキリ分かった。俺だって死にたくは無いしな。

 

「ま、結局魔王だか何だかでよく分からんのが生まれるかもしれないのに、そんなこと言えるのかねぇ?」

 

 ぐるぐると子供達が腕にしがみついたまま回転しながら口に出してしまった。

 

 一応、元から保有している広範囲に敵勢力を確認できるマップを視界の端に展開しているので警戒には抜かりない。

 

 例え隠密でマップに映らないよう侵入しても危機感知が勝手に作動して見破ることもできるが、今回は村のみんなを守らなければいけないからな。

 

 与えられた仕事は遂行する。特に何も悪意とかなければ必ずな。

 

「おう、今日もやってるのか。ここの子供たちはわんぱくだろう?」

 

 特に辛くもなく楽しんでる最中、身長の低い男性達が通りかかった。

 

 あれは、ドワーフか?肌の色も人と違い濃い感じだし、蓄えているヒゲも年季が入っている。

 

「ああ、こうして遊んだことはないから楽しいな。体力に関してはまだまだいける」

 

「そうか、動けるのはかなり羨ましいな。しかし、お前さんはどうしてここに?」

 

「旅人だ。飯の恩で今日くらいいいかなって」

 

「リムルの旦那がしくる訳がないが、万が一があれば大軍がこっちに押し寄せてくるんだぞ?」

 

「問題ない、凌いでみせるさ」

 

 ケラケラと俺は笑った。それに釣られてドワーフもガハハと笑う。

 

「ま、豚頭帝(オークロード)と言っても魔王に進化するわけじゃないし、大丈夫か!」

 

「そうだな…………ん?魔王に進化だって?」

 

 なんか不穏なフラグが立った気がする。

 

 そもそも進化って?成長したら強く、新しい種族に…………

 

 あ、そうじゃん。この村だってゴブリンがホブゴブリンに進化しまくってる訳だし、不測の事態が起きる可能性だってある。

 

 俺だってレイドボスをやってる際に偶然思いついた組み合わせを一か八かでやってジャイアントキリングされた事もある。

 

 不安といえば、不安が残るが…………まあ大丈夫か。

 

「可能性はあっても、まあそれは無いだろ」

 

「そうだそうだ、兄者は冗談がうまい」

 

「…………」コクコク

 

「それによ、前に聞こえた『れいどぼす』ってのも気になるが、全く存在感もないし介入することもないだろ」

 

「まあ確かに…………今なんて?」

 

「お前さんは知らないか?『れいどぼす』って奴を」

 

「し、知らないなぁ。その、何だっけ?『レイドボス』とやらは」

 

 待って?待ってくれ、今の聞き間違いじゃ無いぞ?

 

 そもそも前に聞こえたって何だ?レイドボスの心当たりは死ぬほどあるんだが?

 

「覚えてないか?眉唾だが世界の声が告げてきたからな」

 

「ああ、何でも倒したら名誉が貰えるって。何処にいるかは知らんが」

 

「そう、かぁ…………」

 

 やっぱり俺じゃね?いや、でも『ユグドラシル』にはレイドボス結構いたし、ソシャゲにレイドボスは付きものだから確定ではない…………と思いたい。

 

 めっちゃ動揺しているが、何らかのスキル、恐らく精神系のスキルが発動しているのか思ったより動揺が表に出てない。

 

「ま、ゆっくりしてリムルの帰りを待とう。何も起きないって、絶対」

 

「そうだな。俺もそろそろ仕事に戻る。今度酒でも一緒にどうだ?」

 

「酒は好きじゃなくてね。でも行こう、ドワーフが飲む酒は興味がある」

 

 本当は飲んだことがない、というのが正解なんだけどね。

 

 …………しかし、世界の声?話を聞く限り全員が知ってそうな話だった。

 

 『レイドボス』は世界の敵みたいなものだ。

 

 つまり、俺は…………

 

 深く考えないでおこう。まだ取り繕える時間はある。

 

 グルグルと子供達と回転しながらずっと考え続けた。

 

 結局、答えは出ず日は暮れたが、無事豚頭帝(オークロード)は討伐できたリムルが帰還した。

 

 え?豚頭魔王(オークディザスター)に進化したって?

 

 …………フラグ立ってたけどある意味折れてよかったな。

 





 メルト、遂に『レイドボス』の件を認知する。

 今回は原作通りリムルが丸く収めたけど、次からそうはいかないでしょう。

 だって、彼女(魔王)が来るのだから。

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