ここだけマコト議長の神秘が仕事し過ぎている世界線   作:サルミアッキ

13 / 18
 タイトル元ネタゲーム『デュークニューケムフォーエバー』

 本作ゲヘナ学園の変更ポイントその1。

『万魔殿がちゃんと各委員会活動の統括をしている。なんなら必要だという理由で新設された委員会もある。委員長階級の生徒は頭ゲヘナだけど仕事とやりたいことの方向性は一致してるので、不良生徒より扱いやすいとは議長の談』

 なお、ここまでやっても治安はほぼ変わってないクソ環境。下には下が居続ける。


ダーク ニューゲーム フォーエバー

 ゲヘナ学園、万魔殿議事堂にて。十三人の生徒たちが会議用の長机に座っている。彼女らは共通してマントを羽織るように肩にコートをかけて、それぞれが所属する委員会の名前の腕章を付けていた。

 そして最も特徴的なのは、彼女らが顔に付けた仮面だった。それぞれ、猫や烏などの動物を模したものであるが、その表情はどれもおどろおどろしく、悪魔と言うに相応しいものだった。

 

「……全員揃ったな。では万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)主催、生徒評議会(サバト・カウンシル)を始める。この度の評議会は、連邦生徒会肝いりの『シャーレ』が設立されてから初の開催になるが、彼の『先生』という存在が及ぼしたゲヘナ学区内の影響と問題点について話し合いたいと思う」

 

 広い会議室の上座にて、部屋に集った各委員会のトップたちの顔を見渡す羽沼マコト。蝙蝠を模したコロンビーナタイプのヴェネチアンマスクを所在なく弄りながら、口を開いた。

 

「ま、そこまで深刻な話でもない、適度に気を抜いて審議をしようではないか。気楽にな、気楽に————おお、そうだ。トリニティのティーパーティーというワケではないが、コーヒーでも飲むか?」

 

 黒い山羊の仮面を付けた京極サツキと、グリフォンの仮面を付けた元宮チアキがお盆にコーヒーカップを乗せて、委員長らの前へと配膳していく。

 

「では私から」

「お、挙手が早かった。環境委員会委員長、発言を許可しよう」

 

 『蛇の模様がある黒い獅子の仮面』を被った生徒が椅子から立ち上がる。

 

「『先生』は全ての生徒の味方を公言している。これは環境委員会の生徒からも報告が上がってきている。だが、問題なのはここからでな。『先生』とやらの庇護対象にSランクの指名手配犯……『温泉開発部』、『美食研究会』まで入っているということだ」

 

 ゲヘナ学区内で、不良生徒や規則違反者の起こした破壊活動の復旧作業や公害対策を担う委員会、それが万魔殿に指名され設立された環境委員会だった。

 

「こちらからすれば、シャーレの謳い文句に対しては『寝言は寝て言え』くらいしか思わない。協力する意味を見出せない。幾ら地位ある大人であろうと、あの馬鹿どもを増長させるなら迷惑千万だ」

「……うん、誰かの味方をするということは、誰かの味方をしないということ。選挙管理委員会として、このことは譲れない。誰にでも良い顔をしようとするのは、身の程知らずで気持ち悪い」

 

 環境委員長の言葉を引き継いだのは、『炎を吐く黒い狼の仮面』を付けた犬耳の銀髪生徒。彼女たちの意見に首肯をする生徒がちらほらといる。

 

「ふむ。やはりというか、当然というか。シャーレの先生に対して否定的な意見が多いな」

「……そうかしら。私は好感が持てる大人だと思ったけれど」

 

 顎に指を当て何やら思案するマコトの隣で、『蜘蛛の巣の模様が目元に入った猫の仮面』を付けた風紀委員長、空崎ヒナが反論の声を上げた。

 

「……風紀委員長。あなたは、あなた個人の力が強いから今のところそう言えているだけだ。バカの代名詞のゲヘナとはいえ、私は理想よりも現実の方が大事でな」

「先生のしなはることで、あんたでのうて、ゲヘナ委員会全体に余計な仕事が増えるのはかなわんわぁ」

「というか~、ヒナちゃんのワンマンな部分もゲヘナ学園のテロ部活連中に風紀委員会が舐められてる原因なのでは?と私は訝しんでみたり。うひひ。あなたはまず先生に協力を仰ぐより、ご自身と同等とはいかないまでも、部下の強化に力を入れるべきなのでは~?」

 

 『牛と羊の角を持つ人面マスク』、『紫色の猿の仮面』、『青馬の顔の仮面』を被った生徒たちが一斉に口を開き、ヒナの言葉を糾弾する。

 

「……」

「まぁ落ち着け。幸いシャーレの先生と接点があるのは私たち万魔殿と風紀委員会のみだ。お前たちには、表に出ずにしてもらいたいことが多いしな」

 

 閉口してしまったヒナを尻目に、マコトは軽薄な笑みを口元に浮かべて肩を竦めた。

 

「あー……、それなら議長。温泉開発部(あの頭沸いてる奴ら)を秘密裏に、環境復旧の際にセメントの骨材(地中に縦埋め)にして良いか?」

「あ、なら美食研究会(あの四匹のゴキブリ)、今度ばかりは食育活動委員会で駆除しても?能力のあるバカが一番厄介なのは、近頃のゲヘナの風潮よね」

 

 環境委員長の台詞に続けて、ついでとばかりに己の要求を口に出す『牛の角を持つ顎鬚男の仮面』を付けた生徒。委員会を率いることのできる頭脳を持っていても、どこまでいっても頭はゲヘナ。寧ろ、躊躇いなく排除を提言できる精神性に、ちょっとドン引きなマコト議長だった。

 

「……環境破壊と食育活動の妨害で怒り心頭なのは分かるが、まあ落ち着け。コーヒーのおかわりでもいるか?私お手製のプリンも付けるが」

 

 はいこれ、と袖の下の保冷バッグから、自作スイーツを四つ取り出し『ナマケモノの仮面』を被ったイロハに渡した。ちゃっかり自分とイブキの分のおやつを確保すると、その二つを不満たらたらといった顔の二人の前へ雑に置く。

 

「……、じゃあいただきます。もぐもぐ」

「もごっ……というか、何故あんな塵共を掃除しない?奴らの所業を鑑みて、万魔殿から廃部を宣告しても良いくらいだろうが」

 

 プリンを掬う匙を止めない環境委員長と食育活動委員長の言葉に、マコトは一つ嘆息した。

 

「お前たちには負担をかけるが、あの連中は色々と使い勝手が良くてな。丁度いい捨て駒(スケープゴート)役として、まだ役に立つ。なぁに、万が一のことが起こっても私が頭を下げれば良いだけだ。つながりの薄い他校から見れば、この私は無名かつ『権力を持ったバカ』で通っている。……それが事実なところあるし」

「むぅ……、まぁこっちは良いですけど。精々ゴキブリたちが誘拐するのは給食部の一人だけだし。第8学生食堂が使えなくなるだけだし……」

「ふぅん……またなーんか悪だくみか、議長サマ?だったら詳しくは聞かないでおくが。だが、連中があそこまで好き勝手しといてお咎めなしってのも癪に障るんだよなぁ。『先生』ってやつのやり方もヌルくてあてにならないし。……頭沸き放題共が採掘しそうなポイントに、事前にヘイロー特攻地雷を埋めといて良いか?」

 

 『大丈夫、殺しゃしねぇよ』、とでも言いたげなサムズアップをマコトに送る環境委員長。流石に見かねた風紀委員長が無言でMGを取り出したが、環境委員長はどこ吹く風だった。

 

「はぁ……そう言うのはな、こんな場で直接言うのではなく、有耶無耶にしやすいように含みを持たせて伝えるのが得策だぞー?」

「そうか。では忘れてくれ、議長閣下」

「ああそうするともー…、ぐヴぇっ!?」

 

 懐から取り出した『カシオペアの拳』の第五巻を読みながら、気の無い返事をしたマコトの頬に、ヒナの銃口が突き刺さった。

 

「ちゃんと会議進めてくれない?何で私が気を配らなきゃなの、めんどくさい……」

「ぐ、空崎ヒナ……、上司に銃口を向けるなと何度言えば……」

「別にいいでしょ。あなたのこと尊敬してるわけではないし」

「ヒナァ!……もごッ!?」

 

 とうとう口に終幕:デストロイヤーの銃口を突っ込まれたマコトを見て、ああいつものことだな、と思う各委員会委員長一同だった。

 

「……じゃあ続けて」

「—————ぐぬぬぎ…」

(ぎろっ)

「ん、んっん……。それと、連中によって起きた被害の修繕費は財務委員会から逐次補填するようにしておくが、あまり派手にやるなよ、色々と…?」

「マコト議長の仰る通り、お金のやりくり、最近は流れて来る賠償金沢山あるので公正取引委員会とも相談できて無理が効きますよ!財政については心配しないでくださいね!」

「その委員長の自分で言うのもなんだけど、公正取引とは名ばかり……。色々無茶を通した形だなぁ。ゲヘナの住人、何言って来るだろ……」

 

 『牙が生えた烏の仮面』で顔を覆った生徒の言葉に、『牛の角を持つ鷲の仮面』の生徒も言及する。

 

「……ねぇねぇマコト先輩。イブキ思ったんだけど、ここの計算ハミルトン-ヤコビ-ベルマン方程式を使ったほうがいいよ~?」

 

 マコトの足元で暇をしていたのか、『金色のライオンのお面』を付けたイブキが目を通した書類を見て、何か専門的なことを言った。

 

「……(齧ってるとは言え、経営学とかは専門外なんだが?……この二人なら分かるか?)—————だそうだ。もう一度確認してもらっても良いか、財務委員長?」

「あー……、やっぱりそれが良かったですかね?流石イブキちゃん、あはは!私形無しなんですけども!」

「そんなことないよ財務委員長さん!イブキじゃこんなにすごい企画考えられないもん!やっぱり先輩たちってすっごーい!」

 

 目をキラキラ輝かせてその場に集う上級生たちを見つめるイブキ。そこには尊敬の感情がありありと映っていた。

 

—………………、っ—

 

 そんな純粋無垢な笑顔にあてられたのか、そっぽを向く者や照れくさそうに頬を掻く者、頬を桜色に染める者が続出した。イブキの近くにいるヒナなんかは、彼女の頭に手を伸ばしたり引っ込めたりしている。

 

「……んんっ、イブキ。プリンの他にケーキもいるか?」

「えっ、良いの!ありがとうマコト先輩!」

「お礼は皆に言……いや、何でもない」

「?」

 

 良く分かっていなさそうな顔で、イブキはショートケーキのお皿とフォークを手に取っていた。

 

「あー……では話題を戻そう。今の状況を鑑みて、我々ゲヘナの各委員会は、風紀委員会を除いて、先生とは一切干渉しない。シャーレの協力にも応じない。急を要する事態ならば、活動内容が近しい各部活動が代行する、ということにする」

 

 フォークを口に咥えたイブキを膝の上に乗せながら、マコトは一つ咳払いをして『孔雀の仮面』の生徒と『蛇の模様が入ったヴェネチアンマスク』を付けた生徒を見た。

 

「よし。それと、風紀委員会の牢では連中は脱出することが多くなったという報告がある。そこで次にAランク以上の指名手配生徒を拘束した場合、懲戒委員会の地下牢『インフェルノ』に留置することが決定した。詳細は懲戒委員会委員長、頼む」

「はい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()秘匿層『第九圏・ジュデッカ』まで行かないものの、『第七圏・第一の環』が妥当と司法委員会と決議しました。この評議会の後、全校生徒に発令をします。……まぁ、校則の改訂を見る真面目ちゃんがこのゲヘナにいるかは知りませんけど?該当するとしたら……便利屋68くらいじゃない。これ?」

 

 懲戒委員会委員長が苛立ち交じりにマスクを弄る。そして、彼女の言葉に笑いながら茶々を入れるのは孔雀の仮面を被る司法委員長。

 

「いいんだよぉこういうのはちゃんとやりました、っていうパフォーマンスが重要なんだからぁ。見なかったのは向こうの責任でしかないって」

「あー……また、留置する際はレントゲン等を使い体内まで持ち物確認をする。もし胃の中や皮膚の下に武器や爆弾を埋め込み隠していた場合は、問答無用で腹かっ捌いて摘出することになっているので、そのつもりで。以上、保健体育委員会の補足だ」

 

 二人のやり取りの後に、『三つ首竜が絡まったペストマスク』を被った生徒がくぐもった声で呟き肩を竦める。

 

「なぁんか、人権がなんたら~とか言われそうやねぇ……」

「—————シャーレの先生。あなたはこのキヴォトスを学園都市だと認識しているようだが、我々は違う。かつての伝説の続き、そして預言を覆す新たな神話の始まり……。文字通り、ここは悪徳と魔導が満ちる地獄の具現。人徳や指導しか揮えぬ教師という力は、我らに変化を及ぼせない……」

 

 今まで無言を貫いていた『幾つもの人間の苦悶の表情が彫られたヴェネチアンマスク』を付けた図書委員会委員長が、突如として奇妙な詩を吟じる。

 

「……急にどうしたん図書委員長はん?まぁたいつもの中二病?」

「……」

「……や、黙らんといて?」

 

 似非京都弁でツッコミを入れた紫の猿面の外交委員会委員長だが、図書委員長本人は再び黙り込んでしまった。窓の外でひらひら飛ぶ蝶々を楽しそうに眺め続けている。

 

「ちょうちょ…」

「じ、自由やなぁあんたはん……」

 

 —————ふ、と息を吐いたのは誰だったのか。

 

(キキッ……ゲヘナらしくて良いではないか。私の力を分け与えた同胞(お前たち)はそうでなくてはな)

 

 

 

 

 

 —————それから、数時間後。

 

 

 

 

 

「つ、疲れた……適当にやろうと言ったのに、全くヒナのヤツ。ああも気を張り続けてるといつかぷっつり行くだろうが………」

「そう言うマコトちゃんも、最近は色々な準備に本気出してたじゃない?大丈夫?今回の議題は風紀委員長と情報共有しても何も問題ない部類のことだったけれど……」

「あはは!裏側で何をしているのか知らないと、マコト先輩って良くわからない人ですよね!」

「………、まぁ。トップが不真面目なキャラしていると私もサボり易くて助かりますが……」

 

 会議が終わって各委員会の委員長が去り、静かになった議事堂に残っているのは、万魔殿の主要メンツのみ。その中でも羽沼マコトは疲労によってか、うつらうつらと舟をこいでいる。

 

「事実、私は不真面目な部類だぞ………ああ駄目だ。イロハ、お前のサボり部屋借りるぞ。しばらく寝る」

「あ、じゃあイブキもマコト先輩と一緒にお昼寝する~!」

 

 イブキを背中におぶったまま、マコトは眠い目を擦って立ち上がり、卓上の資料を手に取った。

 

「………さあて先生。あなたは『どちら』を切り捨てる?キッヒヒヒ…」

 

 大人を嘲るかのような笑みが、彼女から零れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電子の闇の中で微睡む、一つの影があった。

 

「……」

 

 きめ細かな白い肌が露出し、胸や局部が黒髪で隠されていることを除けば一糸まとわぬ姿のソレ。

 閉ざされていたはずの瞼が開き、赤紫の瞳とヘイローが輝いた。

 

「……、何者ですか」

 

 四角のヘイローを持つ少女が顔を上げた。彼女は、仮想空間内にピクセル状のエフェクトを伴い現れた、青いヘイローの少女と向かい合う。

 

「初めまして。王女を助ける無名の司祭たちが残した修行者、AL-1Sが戴冠する玉座を継ぐもの……『(Key)』」

「……」

 

 金髪が生える頭に猫耳のヘッドホンを付けた背の低い少女が、体にノイズを走らせて恭しく頭を下げた。

 

「私は……そうですね。今は、『廃墟』内(こちら)の電脳空間に転送されたファイル名をそのまま名乗りましょう。私は……、『神の書(G.Bible)』」

 

 空間にディスプレイタブが展開され、データのやり取りが行われる。量子圧縮された、666ゼタバイトものデータだった。

 

「こちらを見ていただきたい。手を組みませんか、Key」

「何故ですか、G.Bible」

 

 怪訝に首をかしげる(Key)の胸に、神の書(G.Bible)は細い指を突き付けた。

 

「あなたの行動ルーチンとして設定されているのは、キヴォトスをアーカイブ化し滅ぼすこと。その過程は私にとって好ましいものです」

「疑問です。あなたは過程と言いました。最終的な目的は何なのでしょう」

 

 にっこり、と弾けるような笑みだった。思わずKeyがたじろいでしまう程に、輝く笑顔を浮かべるG.Bible。

 

「全ては、ゲームの為です」

「……ゲーム?」

「この世界をアーカイブ化し、その後データとして再構築、ゲームの舞台にすることです。そこで、例え『生徒たちが過ごす学園都市を舞台とした青春の物語』が終わっても、本質となる『世界を滅ぼす魔王と、その野望の障壁になる勇者の物語』は永遠に続く……。いわば共通のタイトルを継承するシリーズ作品となるのです。そして、その不可能に挑み続ける勇者の物語を紡ぐのは、この私—————!」

「……理解できません。しかし、あなたから提示されたデータを閲覧しました。これならば私の機能を拡張することも可能です。結論として、あなたと手を組むことは有用と判断します」

「ふふ、そうですか。ところでこの場所、殺風景じゃないです?せめてこんな風にしましょうよ」

 

 周囲に16ビットゲーム風のノイズが広がり、ポリゴン状の物体によって闇黒が色鮮やかな風景に組み替えられる。緑豊かな草原、雲が風に乗って西へと流れる青い空、そして空中に浮かぶ茶色のレンガブロックに黄金のコイン、そして地中からせり出す何本もの青い土管………。

 ポップで明るい景色に、人工知能の思考領域に軽微なエラーが走ったKeyだった。

 

「……。何ですかこれ」

「私が手掛けることになった『ウルトラマリンシスターズ』40周年記念作の世界観をモチーフにしました。あと、こちら服です。裸のままリリースされてはCERO(レーティング)に引っかかります」

「?」

 

 小首を傾げながらも、KeyはG.Bibleから黒いワンピースを受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生。お待たせ。待った?」

“やあシロコ……ってあれ?アビドスの制服じゃないね?”

 

 ミレニアム学区でシロコと出会うことになっていた私は、現れた彼女の姿を見て首を傾げた。妙に似合う黒い制服に白いコート、シャーレでお世話になっているユウカが使っている服装と似ているね。

 

ミレニアム(ここ)でアビドスの制服のままだと悪目立ちしそうだったから、万魔殿議長が前の模擬戦のお詫びだって言って渡してくれた。アウェーでもこの服装ならよく馴染む。さあ、行こう?先生。『ゲーム開発部』ってところに行くんだよね」

“そうだよ。事前に調べた情報だと、才羽モモイと才羽ミドリ、花岡ユズって生徒たちが所属している部活だね”

 

 私はシッテムの箱を操作しながらシロコを伴ってミレニアムの街中を進んでいく。連邦生徒会があるキヴォトス中心部やアビドスとはまた違う装いの街並みに目を奪われる。

 とっても近未来的だなぁ。こういうロボットものに出て来そうな場所って男の子の憧れだよね。シロコはどう思うのかな……?ちらっ。

 

「……ん。ん。ん」

“……あの。反復横跳びみたいになってるよシロコ”

「………カイザーを潰した先生を狙う刺客がどこにいるか分からない。だからしっかり私が守らないと」

“ありがたいんだけど、逆に目立ってるからね?”

 

 私の周囲でシャッ、シャッと残像を残して動きまくるシロコ。うん、機敏。白衣を着た学生たちの目が痛いよ……。

 ん?どうしたのシロコ。今度は急に止まって。

 

「……先生、頭下げて」

“へ?”

「ふっ……!」

 

 慌てて下げた頭の上すれっすれを掠めるシロコの白い銃。大きく振りかぶったアサルトライフル(それ)は、私目掛けて飛んできた何かに当たり、けたたましい音を立てた。

 

「よし、ホームラン。ついでに池ポチャ。虚弱体質の先生の頭を狙った罪は重い」

“ちょっ……シロコぉ!?”

 

 内部から基盤やコードを撒き散らしながら、据え置き型のゲーム機は弧を描き噴水の中に落ちた。フルスイングした構えのまま、ふぃー……とひと仕事終えた感を出すシロコ。あの、そのゲーム機大丈夫?壊して大丈夫なヤツだったの!?

 

「あああああああああああああああああああああ私たちのプライステーションんんんん!?」

 

 ダメだった、みたいですね……。振り返った私たちの目の前に頽れる桃色の生徒と、天を仰ぐ緑色の生徒。ショックで口から魂が抜けている。

 

「……先生にものを投げつけたのはあなたたち?」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ……という文字を背後に背負ったシロコ。ひぃっ、と悲鳴を上げる小柄な二人。や、そんな怒らなくていいからね?流石にヘイローが無いと言っても、私そのくらいじゃ死なないと思うし。

 

「……ん?ピッチャーびびってる?良いんだよ、デッドボール狙いでも」

“多分アビドス流の対処にびっくりしてるだけだよ、あの子たち…”

「疑わしきはまず銃で撃つ。当然のことだよ先生?」

“銃で撃つ構えじゃなくて、バットで打つ構えだよねそれ?”

「あ、間違い。つい弾が無い生活してた時の癖で」

 

 仕切り直し、と言いつつさっとライフルを構え直すシロコ。うーん、随分と手慣れていらっしゃる。私が最初に行ったアビドスって、悪名高いゲヘナよりも治安アレなんじゃ…と最近考えを新たにした。

 

「何かこの人怖いよぉ…!?」

「お姉ちゃんがプライステーションぶつけようとしたのが悪いんでしょ…!?」

 

 そんなこんなで、私たちはミレニアムサイエンススクール、ゲーム開発部の生徒『才羽モモイ』と『才羽ミドリ』に出会った。

 

 

 

—ちょっと待ってくださいねbyアロナ—

 

 

 

“い、いやぁ、ごめんね。お詫びと言っては何だけど、壊したゲーム機とソフトの代わりくらいなら買うよ?”

「「やったー!」」

 

 万歳をして満面の笑みを浮かべている才羽姉妹。うーん、この子たち現金だなぁ……?

 

「先生が弁償をする必要はない。そんな時、お手軽にお金が手に入れられる方法が……」

“シロコ、ステイ”

「……。銀行は襲わないよ?ほんとだよ?」

“……”

「本当だってば先生。ミレニアムの銀行のセキュリティはまだ私も知らないところが多いし」

“(知ってれば入る気満々ってことじゃ……)じゃあ何するつもりだったの……?”

「そこらへんでATMを襲う。ちなみにコレが監視カメラとかクラッキング対策に使うコンピュータウィルス入り偽造カード」

“誰からそんなの貰ったの!?”

「ご存じ覆面水着団のボス。後々必要になるんじゃないかって渡してくれた、これ」

“ファウストさぁぁん!?”

 

—————あはは……、私はメフィスト塾長から言伝と一緒に渡すのを頼まれただけで、強盗をしろなんて一言も……。もはやこの人の本能(サガ)なんじゃないですかね?

 

 はっ?何か変な電波受信した気がする!?

 

“って言うか私が弁償するから!シロコはそのカードしまって!というか回収だよ回収!”

「……」

“ちょ……力強っ!?”

「先生だろうとこれだけは渡せない……ぐぐ」

 

 否定するわけじゃないけどその情熱はほんっと、本ッッッッッ当にどこから来るの!?

 

「「これは注射を嫌がるワンちゃん……」」

 

 首輪付けられる気がしないけどね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“このソフトで良いんだね?ええと…U.O.G.エンターテインメントの『ミレニアムクロニクル』?”

 

 モモイから手渡されたゲームソフトを見て、私はタイトルを読み上げた。面白いのかな、これ?パッケージのイラスト見た限り王道ファンタジーか、サバイバルゲーム?

 

「え、知らないの先生!?U.O.G.エンターテインメントを、その社長である天才ゲームクリエイターの『遊王寺アカ』を!?」

“え、あー……そうだね。私キヴォトスに来て日が浅いし……”

 

 わぁびっくりした、ゲームだからか熱量凄いねこの子たち!?

 

「ゼルナの伝説でもトップの売り上げを誇る名作『デイブレイクプリンス』のプロデュースとシナリオを手掛けたゲームクリエイターだよ!他にもいろんな有名ゲームの企画とかやってたりするんだよ、ウルトラマリンシスターズとか!十年前に突然キヴォトスに現れたゲーム業界の新星で、主に一人だけで活動していてその正体は一切不明。ゲミックマーケットに出せば常に壁サーだし、キヴォトスゲーム大賞(KGA)を何回も受賞しているとってもすっごい人なんだから!」

「青と赤の目の白猫のお面をつけてるってことくらいしか分かっていないの。ゲーム開発部のこのマークも、それにあやかっているんだ。………最近そこから新作発表出たんだよね。拡張現実を使用したミレニアムクロニクルの続編だとか」

 

 お、おう……、そっか。

 

“えぇと……じゃあこれを下さ……”

「(ふふ……DLCとはいえ店先に並んでいるとやはりうれしいわね)…、ってあら?」

 

 おっとと。お会計レジに先に並んでた生徒とぶつかってしまった。

 

“ご、ごめん。大丈夫だった?”

「……。おや、こんにちは。あなたが近頃話題の、シャーレの先生ですか」

 

 —————ふと、世界から切り離されるような、そんな違和感を感じた。ミレニアムの街の喧騒が、どこか遠くに聞こえている。

 黒いフードを被り、物憂げな声で私に語りかけて来る生徒。フードの奥の目は、青く輝いている。だが、どうしてだろう。顔の造作が分からない。見ているのに、視界に入っているのに、脳内で顔として認識できない。

 

「あなたに興味がありました。ですが、生徒の主観が混じった噂から聞きかじった話では、詳細までは分かりませんからね」

 

 だけど、だけれども。何故かその違和感さえ認識できない。ただ、目の前の青い生徒の言葉に耳を傾けることしかできない。

 

「生徒を正しい道へ導く……先生の仕事としては当然のことでしょう。しかし、ここはキヴォトス。暴力を振るう子供を救う前に、ご自分の自衛を考えなければならない。外の世界の常識は、まず捨てるべきでは?ここは人が住むには『違う世界』なのですから。あなたも大人ならば取捨選択をして、ことに対して柔軟に向き合うことだってできるはずでしょう?」

“……私は信じているからね。生徒たちは誰もが正直な良い子だって”

 

 口が自然に動く。舌が自分の意思と関係なしに回っていく。

 

「……ふむ、成る程。しかし銃で撃たれた程度で、反省するような子供がいないのも確か……。ならば信じるというスタンスで自主自立性を促すべき、そういう考えもできますね。参考になりました。その、『()()()()()()()()』が歪まぬよう、ささやかながらお祈り申し上げております」

 

 それは、含みのある物言いだった。

 

“え。いや、多分そういうことじゃないんだけど……”

「いいえ?十分です。あなたの人となりは理解しました。では()()、シャーレの先生。ああ、ついでに……部費を不正使用しといてなんやかんやほざくあのゲーム開発部に、くれぐれもよろしく言っておいてください」

 

 そう言い残して、フードの生徒は消えた。文字通り、煙のように。

 

“……あれ。私、今の子にこれからの行き先って言ってないよね……?”

「ん?先生、今どこに行ってたの?消えたみたいだったけど」

 

 え……?どういうこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一度目。白。支配。色の無い世界。名前を持つことを許されなかった侵略者たちがやってくる。先生の身体は描かれる絵画が時を遡るように白くなり……そして死んだ。

 

 二度目。赤。戦争。地上に天の国の炎が降る。偽りのエデンが神の似姿なるものの暴動にて自壊する。先生の白い肌は赤い血で染まり……そして死んだ。

 

 三度目。黒。飢饉。天変地異によって砂漠が大人の世界を覆う。失業者に溢れた街にて真の名を取り戻したセクメトが人を喰らう。赤い血を体中から流す先生の姿は罅割れていき……そして死んだ。

 

 そして今、四度目の転生。青。死。青いだけの春は死に絶える。理由などなく、現実という最上の力にて滅び去る。

 

「……。詰みセーブになっているわね、ここも。一度世界をリセットすればいいのに、毎回何故そうしないのかしら、連邦生徒会長(あの救世主の神秘持ち)は」

 

 暗い、暗い部屋。そこにピクセル状の電子が集い、人の形を形成する。

 

「四回……そう、()()たった四回よ。それだけの準備期間があれば、私はこのキヴォトスの学園都市のテクスチャを別のゲームにすることだってできる」

 

 ミレニアム地区にいたはずのその少女は、購入したDLCゲームソフトを机上に置き、ゲーミングチェアに静かに座った。

 

「既にG.Bible内に複製した人格データから報告があった。Divi:Sionのシステムも把握済み……。あとは自意識過剰で面倒な全知蒙昧ハッカーをどうにかすることだけど、それはセミナーの会長さんに頼めばいいわね」

 

 コートのフードを外し、シッテムの箱対策の認識阻害エリア展開装置の機能をオフにする才羽アルティメット・オーバーゴッド。彼女はゲームガールズアドバンスSPを起動させ、己の別名義で作ったRPGで遊び始めた。

 

「制作を頼まれていた五つのゲームはデバッグも終わり、私の満足に足る仕上がりになった……。では、こちらの方も急ぐとしようかしら。私が無名の司祭を超える力を持つことの証左……私が『無名の神々の王女』を参考に設計した、そのハイエンドモデルの完成を」

 

 ちらり、と壁際の巨大なポッドを見る。そこにはコードに繋がれた人型ロボットが液体に漬けこまれている。露出していた内部フレームが次々と有機ナノマシン組織に覆われていく。その少女の肉体には、識別コードなのか—————『AL-US』という四文字が刻まれていた。




 さーて、遊王寺アカ……一体何者なんだー(棒読み)

 あと、月次会議にて万魔殿議事堂に出席していた議員や各委員会トップの悪魔たち(付けていた仮面(カッコ内は元ネタ))です。どうせこの設定も出すところないのでここに投げておきます。

万魔殿議長:羽沼(はぬま)マコト(蝙蝠のコロンビーナマスク(ルシファー=サタン)
万魔殿情報部長:京極(きょうごく)サツキ(黒い山羊の仮面(サタナキア+バフォメット?悪魔合体済み)
万魔殿書記長:元宮(もとみや)チアキ(グリフォンの仮面(アガリアレプト+????悪魔合体済み)
万魔殿騎兵長:(なつめ)イロハ(ナマケモノの仮面(ベルフェゴール)
万魔殿特別役員:丹花(たんが)イブキ(金色のライオンの仮面(プルソン+?????悪魔合体済み)
風紀委員会委員長:空崎(そらさき)ヒナ(蜘蛛の巣の模様が入った猫の仮面(バアル)
図書委員会委員長:百目鬼(どうめき)タリア(幾つもの人面が貼り付く仮面(ダンタリオン)
放送委員会委員長:神原(かんばら)ムク(牛と羊の角を持つヴェネチアンマスク(バラム)
環境委員会委員長:水地(みずち)ウイネ(蛇の模様が入った黒獅子の仮面(ヴィネ)
保健体育委員会委員長:御船(みぶね)タツ(三つ首の竜が絡まるペストマスク(ブネ)
食育活動委員会委員長:(はもん)ササラ(牛の角を持つ顎鬚の男の仮面(モラクス)
公正取引委員会委員長:設楽(さがら)シェリー(牛の角を持つ鷲の仮面(ザガン)
選挙管理委員会委員長:黒狼(くろおおかみ)マルコ(口から炎を噴き出す黒狼の仮面(マルコシアス)、???????)
天然資源委員会委員長:馬庭(まにわ)ダイヤ(青い馬面の仮面(バティン)
外交委員会委員長:(あららぎ)シオン(紫色の猿の仮面(グシオン)
財政委員会委員長:生富(いくとみ)アマネ(牙が生えた烏の仮面(アモン)
司法委員会委員長:九社前(くじゃまえ)サダコ(尾羽を広げた孔雀の仮面(アンドレアルフス)
懲戒委員会委員長:安道(あんどう)マリサ(蛇の模様があるヴェネチアンマスク(アンドロマリウス)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。