ここだけマコト議長の神秘が仕事し過ぎている世界線   作:サルミアッキ

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 サブタイはそのまんまあのゲーム。別に良い案が浮かべば変えるかも……。


勇者のくせに生意気だ。

「疑問です。G.Bible。ゲームとは何でしょう?」

「どうしたのかしら、Key。ああ、もしかして王女の様子を覗いて興味でも沸いた?」

 

 風に運ばれてくる草原の匂いを感じながら、電脳空間内で二人は顔を見合わせる。

 

「……、ええ。どうにも『テイルズ・サガ・クロニクル』という意味不明なデータの羅列によって、王女に致命的なバグが発生しました。現に私にも軽微ですが思考領域内にエラーが検出されています。早急に直したいのですが、バグの修正のためのデータが足りません」

「……、そんなクソゲーなんかするからよ。ゴミを煮詰めただけのウィルスソフト、改造すればシッテムの箱にも大ダメージ与えられるのに、それを原液そのままでぶち込む?あの二人バカなの?」

「……王女を回収した二人組と何か関係が?あなたのそのアバターの外見から察するに、御姉妹でしょうか」

「縁を切りたいクズ共よ」

 

 ちっ、と舌打ちを一つ。幼い外見ながらも、上品さを失わない彼女の佇まいが初めて崩れた。

 

「あらごめんなさい、はしたなかったわね。なら、私が創ったゲームをしてみる?あなたには……そうね、このゲームが良いんじゃないかしら?」

 

 仮想空間にてデータが物質として形成される。G.Bibleの手中に出現したゲームガールズアドバンスの液晶にタイトル画面が映された。

 

「……『ミレニアムファンタジー』?」

「そう……!このゲームは勇者となる宿命を持って生まれた主人公『アルス』が、魔王として世界を滅ぼすRPG!アルスの使う人智を超えた魔法!手足の如く操れる魔物たち!それらを用いた魔王の鏖殺と無双が繰り広げられるダークファンタジーよ!」

 

 高らかに自身が創り上げた芸術品を謳い上げるG.Bible。そして、持っていたゲーム機をKeyの手に握らせた。

 

「さぁ、Key。あなた、AL-1Sよりも先に魔王になって(世界を滅ぼして)みない?」

 

 —————きっと、()()()わよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ん。私は昨日に引き続きミレニアムで先生の護衛。とはいえ、昨日は昨日でいろんなことがあったけど……。

 (先生の頭にゲーム機をぶつけたことで)知り合うことになったモモイとミドリって子たちと一緒に、ゲーム開発部の廃部を阻止するため、G.Bible……ゲーム制作のハウトゥ本みたいなものを見つけに、ミレニアム郊外にある立入禁止区域『廃墟』と呼ばれる場所へ向かった私と先生。

 でも、そこにあったのは二人お目当てのG.Bibleなんかじゃなくて……。

 

「ぱんぱかぱーん!『アリス』は世界を通算十二回救いました!」

「わぁ!やったじゃーん、アリス!」

「これでゼルナの伝説スカイロードソードもクリア…!」

「そ、それじゃあ次は何をする…?」

 

 双子と一緒にゲームをする、廃墟で見つけた黒髪の女の子。それに、昨日からゲーム開発部のロッカー内から漂ってきた匂いのする赤髪の生徒が、テレビ画面の前でコントローラー片手にわちゃわちゃしてた。

 

「……ん、おはよう、先生。ところで、これってどういう状況?『廃墟』から持ち出したアンドロイドがどうしてこんなことになってるの?」

 

 疑問だったから、先生に聞いてみた。けど、急に声をかけたのが悪かったのかな、怖がりなのかな、赤い髪の子に『ひぅッ!?』、みたいな変な声を上げられた……。ちょっとショック。

 

“おはようシロコ。モモイとミドリ、それとユズが言語能力を学ばせる目的でゲームを片っ端からやらせててね…”

 

 ふぅん。昨日ずっとロッカーにいた子はユズって言うんだ。それにしても、機械学習させる方法がゲームって良いの?

 

「ええと、その子、アリスって呼べばいいの?」

「はい!アリスは天童アリスです!モモイが裏技でギルド『ミレニアムサイエンススクール』に冒険者登録してくれました!あなたは、昨日モモイとミドリのパーティーにいた人ですね!ジョブは何ですか?」

「ジョブ?……ん、銀行強盗の一員?私はアビドス高等学校の砂狼シロコ、よろしく」

「成る程!盗賊職なんですね!ぱんぱかぱーん!パーティーに一時離脱していたシーフのシロコが合流しました!」

 

 あ、パーティーだとその役割になるんだ、私。……確かにアビドスでの戦いの参考になるかも。現実に使える技があれば一考してみよう。

 

“ところでシロコはミレニアム内を出歩いてたみたいだけれど、何か面白いことでもあった?”

「ん、趣味が合う生徒と会話が弾んで来るのが遅くなった。ごめん先生」

“……、一応聞いておくけど、何の趣味の話?”

「…先生が懸念している方の趣味じゃないよ。サイクリングの話題で会話が弾んだの。なんでもかんでも研究とか計算、みたいな学校だと思っていたけど、ああいう人もいるんだね。ダンベル持ちながらジョギングしてたし、ノノミとも話が合いそう」

「「……、スミレ先輩かぁ……」」

 

 どうやらモモイとミドリは、さっき話してたあの人に心当たりがあるみたい。

 

(……銀行を見て回ってもいたんだけど。それに、趣味が合いそうな生徒はもう一人いたんだけど。先生には言わないでおこう)

 

 ()()()、と特徴的に笑う桃色髪の生徒を思い出し、先生には秘すことにした。

 

「よっし!丁度いいや、シロコさんも先生も揃ったし出発しよっか、アリス!」

「出発……?何のためにですか?」

「ふっふっふ……。私たちの学校ミレニアムを案内するのと……、ついでに目星をつけてたんだ、アリス専用の武器をね!」

「!それは、まさか、勇者専用のアレですね!」

「そう!伝説の武器を入手するドキドキワクワクのイベントだよ!」

「わ、わぁぁ……!」

 

 おぉー、目をキラキラさせてる。こうして見るとアンドロイドに見えない。それにしても、ミレニアムの学校内で武器を入手する場所って、どこにあるんだろう。少し遠出しなきゃじゃない?

 

「じゃあ、いざ!ミレニアムが誇る技術開発の部活、『エンジニア部』へ!」

「おー!」

 

 へぇ。そんな部活があるんだ。ウチには対策委員会しかないから新鮮……それにしても。

 

(廃墟にいたこのAL-1S……アリスって子、武器なんか渡して本当に大丈夫?アビドス砂漠にいた、ゲヘナの議長の言う『デカグラマトンの預言者』とかなんじゃ……)

 

 ……ん。生徒思いな先生には悪いけど、私は護衛だし、警戒と監視はしておくべき。アビドスじゃ依頼人とか護衛とかが裏切ることはしょっちゅうだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニアムサイエンススクールが誇る発明家たち、通称『マイスター』と呼ばれる技術者が多数在籍する部活、『エンジニア部』。その中でも、銃や戦車、未知の機材が所狭しと並べられた作業室にて、シロコと先生を含めたゲーム開発部の一行は紫髪の生徒と向かい合っていた。

 

「成る程。ゲーム開発部の新しい仲間に、新たな武器をプレゼントしたい……と」

「お願いできる?ウタハ先輩」

「ああ、もちろんだとも。エンジニア部を頼る選択をしてくれたのは光栄なことだ。ついておいで」

 

 ミレニアムサイエンススクール三年生、エンジニア部の部長を務める生徒『白石ウタハ』は片手に持ったレンチをくるくると回しながら、涼やかに笑って立ち上がる。

 

「技術と言うものは素晴らしい。肉体的なハンディキャップがある者でも優れた技術力でそれを覆すことができ、優れた身体能力を持つ者は技術の支援によりさらに強くなれるからね。つまり、ミレニアムでは優れた技術者の有無こそが勝負の分水嶺となるのさ」

 

 数多くの武器が置かれた一角で立ち止まるエンジニア部部長。

 

「では、この場所にあるものなら何でも持って行ってかまわないよ」

「ありがとう先輩!それじゃあアリスちゃん、どれにする?」

「はい、アリスは宝物の探索クエストを開始します!」

 

 モモイに手を引かれて物色を始めるアリスたち。先生とシロコも付かず離れずの位置で、そのやり取りを見守っていた。

 

「……しかし、成る程。『才羽』の双子と聞いて身構えていたけれど、中々どうして……」

“……?彼女たちが何かしたのかい、ウタハ”

 

 ぼそり、とウタハが零した言葉に反応した先生。一瞬だけ影を落とした表情になった彼女に、やんわりと尋ねてみたくなったらしい。

 

「あ、ああ、口に出ていたか。いや、失敬した先生。私が言ったことは忘れて欲しい。……いや、忘れてくれは虫が良い話だな。だけど、彼女たち二人を悪く言ったわけではない。これは本当さ」

“……モモイとミドリ以外に何かあるのかな”

「—————。それは、部外者の私からは何も言えないな。彼女たち二人が、自ら口を開いてくれるなら良いのだけれど」

 

 ウタハは、そう曖昧な答えを返すのだった。

 

「おや、あなたはシャーレの先生の護衛として来ている他校からの見学生徒ですね?説明や解説が必要ならお任せください!」

「ん。まずその(ふざけた)服装を説明してほしい」

「これですか?これは私が改造した制服です!そもそもエンジニア部では……」

「コトリ。長くなるなら簡潔にね。あ、私はエンジニア部一年の『猫塚ヒビキ』。こっちは……」

「おっと、私としたことが!ご紹介に預かりました!私は、同じくエンジニア部一年『豊見コトリ』と申します!」

「私はアビドス高等学校の砂狼シロコ。よろしく。……ん?この銃……」

 

 ゲーム開発部が漁っていた作業場の一角から転がって来た武器を拾うシロコ。それは一見何の変哲もない銃だったが、普段使っているものに比べて些か重量があった。マガジンを抜いて、分解して見てみようかと考えたシロコだったが、隣にいたヒビキが思い出したように膝を叩いた。

 

「ああ。ここにあったんだ。それは私が作った自爆機能が付いている拳銃だよ。ちなみにカード決済機能とBluetoothも入っている」

「へ?誰が使うのそれ?」

「ぶ、Bluetooth……?」

 

 銃に付属させるには変な機能に、思わず耳を疑うモモイとミドリ。先生もあはは、と小首を傾げて頬を掻いている。そりゃそうだ。

 

「……ん。くれるのなら貰う。欲しい、ダメ?」

「「「え⁉」」」

 

 だが、シロコは何を思ったのか、目を輝かせて銃を欲しいとおねだりした。

 

「へぇ、お目が高いね」

「弾切れの時と相手に奪われた時、携帯からの命令一つで使い捨て爆弾にできるのは便利。……他には何があるの?」

「じゃ、これなんかどうかな。大型のサバイバルナイフだけど、これはね……」

「説明しましょう!外のキャンプで使う時、調理の手間を無くしたい時ってありますよね!これはそれを叶える優れもの!サンドウィッチやホットドッグを準備する際、パンをカットする時にグリップ部分のボタンを押すと刃の溝を伝ってマスタードやケチャップが出てきます!もちろん押すボタンによって使い分けができる利便性も完備です!」

「ん、欲しい。敵を斬る時、何種類か毒を入れて使い分けられそう。何ならマスタードでも切り傷に沁みそう」

「じゃあ次はコレ。これはね、光学迷彩を用いた水着なんだけど……」

 

 ヒビキとコトリのプレゼンに興味津々で耳を傾けているシロコ。

 

「ね、ねえお姉ちゃん……、やっぱりシロコさんって変わってるっていうか、常在戦場過ぎない?」

「本当だよ⁉昨日も廃墟で戦ってる姿見たけど、多分C&Cの正規メンバー並みだよこの人!?アビドス高等学校がどこか知らないけど、ゲームのキャラじゃんってくらいにキャラ濃過ぎだって!?」

 

 やっぱりキヴォトスの他校から見て、アビドスは魔境だったらしい。

 ……そんな一幕もあった後、アリスの武器は『光の剣:スーパーノヴァ』というレールガンに無事決まった。シロコも様々な武器を貰えてほくほくだった。

 なお、アリスのレールガン使用時のデータを獲得するため、ゲーム開発部VSエンジニア部の戦闘が行われたのであるが。

 

「うわーん!初手からレベルカンストのシーフがウェポンマスターにジョブチェンジして襲ってきます!クソゲーです!レベリングが間に合ってません!」

「待って待ってちょっ…うわぁ!?」

「うっわ最悪くっっしゅ!?えっくしゅっっ‼さ、催涙弾に何の粉入って……え、粉塵爆発⁉」

「ひ、ひぅぁあああっ!?」

 

 彼女らの発明品を幾つも貰ったという事でシロコがエンジニア部側につき、奇天烈な武器を使いこなしてヒャッハーしていたのは完全な余談である。

 

「ん。勝ち。勇者ならこのくらいの不利を覆してみるべき」

「これは……」

「酷いね、うん」

「説明すると、大惨事ですね!味方側で良かったです、はい…」

“……シロコ、めっ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィッテンベルク総合学習塾、科学研究室にて。

 

「『AL-1S』や『デカグラマトンの預言者』、興味深い。あれらは機械、何故ヘイロー、宿ってる?」

 

 かつてミレニアムサイエンススクールに所属してた退学生徒の一人は、デスクトップパソコンの画面に映るデータを見ながらポツリポツリと言葉を紡ぐ。

 

「神秘、身に宿す方法、二種類、ある?オーソドックス、学園都市キヴォトスの生徒。イリーガル、機械学習による模倣?」

 

 思考をまとめる為に単語ごとに区切って話す独特の口調は、困惑と興味関心が入り混じった熱を帯びている。

 

「神秘の適応、機械の範囲、どこからどこまで?肉体、サイボーグ置換、有機ナノマシン、内蔵式機械骨格、全身強化外骨格……、試す価値、ある。いや、それに、体ごと交換、空になった頭、有機ナノマシンのCPU入れる、ヘイローどっちに宿る?」

 

 キーボードを指先で叩きながら、同じくヴィッテンベルク総合学習塾に所属するゲームクリエイターとデータを共有し、そして新たなプログラムを構築していく。

 そして……—————。

 

「そーいうわけで、私の脳髄、摘出する。手伝って」

「…、どういうわけで、ですぅ?」

「頭良いヤツ特有の過程すっ飛ばした会話やめてくンねぇか」

 

 右手に持ったペンで額に赤い線を引きながら左手に持ったメスや医療機器を銀のお盆に並べだす白衣を着た塾生、『取り込み屋』に、腐れ縁の二人の塾生は頭を抱えた。

 

「…?『生徒のクローン体』、神秘が宿ること、確認済み。ただ()()()、ゲヘナに貸出中、手元に無いけど。今度、無機物でのサンプル、実験する」

「だからって自分の身体使いますかねぇ、普通ぅ?」

「一番使いやすい、自分の身体。他人の身体、使用するの、後々めんどくさい」

「めンどくせぇ、で済むンか…、どーなってンだよ倫理観」

「?」

 

 きょとんと小首を傾げて、何を当たり前なことをとでも言いたげな表情をする元ミレニアム生。やはりというか、流石と言うか、頭のネジが数十本抜けたゆるゆる倫理観の持ち主である。

 

「あはは……、やっぱりブラックマーケットって魔境ですね…」

「「「ファウスト、こんなところに来てる時点であなたも普通じゃない」」」

「ええぇっ!?」

「たりめーだろ、なンで意外みてぇな声上げてンだよ」

「脳味噌摘出のグロ現場になりかけてるのにスルーとか図太いですねぇ?」

 

 SRT崩れの塾生と掟破りの練丹術師の塾生からのツッコミが、丁度限定ペロロ様グッズを買いに来ていた阿慈谷ヒフミ(ファウスト)に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Keyの持つゲーム機から、静かで厳かな音楽が流れだす。エンディングと、スタッフロールが流れる暗転した画面に、Keyの赤い目が反射していた。

 

「……」

「おお……魔王軍の世界征服が完了したわ!おめでとう、ゲームクリア!で、いかが?私の傑作のひとつは」

 

 青い土管の上に腰掛けたG.Bibleが、拍手と共に降りて来た。草原に座り込み、いつの間にかゲームの世界に没入していたKeyは、今まで味わったことのない感覚に戸惑っている。

 

「……何故でしょう。先ほどのテイルズ・サガ・クロニクル(不快なデータ)とは異なり、また別種のデータが記憶容量内に発生しているようです。これは、一体……?」

「楽しんでいただけたようで、何よりよ」

「楽、しい……これが?」

 

 Keyが自分の胸に手を当てた。

 

「ゲームの中で、今の自分にはできないことをする。憧れていた浪漫を夢見る。これを楽しいと言わなくてなんというの?」

 

 G.Bible……否、才羽アルティメット・オーバーゴッドの言葉が耳朶に染み込んでいく。

 

「だってあなたは、世界を滅ぼす魔王になるのだから。来たるべき未来を楽しいと思って当然でしょう?」

「たのしい……、楽しい……ですか。ふ、成る程」

 

 胸の中から体中に駆け巡る熱と、脳裏に満たされるような多幸感。これが—————『楽しい』。

 

「ええ、ロールプレイってゲームの醍醐味の一つよね。そうだ、ゲームユーザーの意見として参考までに聞くわよ、Key。あなたは、どんな自分になりたい(ゲームがしたい)?」

「王女の補佐官であるだけの私には、無意味な質問です……いいえ、今となっては無意味な質問でした、と言えば良いでしょうか」

 

 奇しくも、AL-1Sの補佐官であるKeyもまた、『才羽』の名を持つ少女のゲームで思考ルーチンの一部が書き換えられた。

 

「—————王女よ、AL-1Sよ。私と一緒に、この世界(キヴォトス)を滅ぼすゲームをしましょう」

 

 黒衣の少女、Keyの顔に変化が現れる。主となる存在を、一緒にゲームをする友のように思い、機械的だったその顔に、喜び、楽しさ、面白さ……世界で初めて感じた感情によって、人間のような自然な笑みが広がった。




元ミレニアム塾生、ハ●イダーになる。
タドルメグルRPG!タドルファンタジー!
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