ここだけマコト議長の神秘が仕事し過ぎている世界線   作:サルミアッキ

16 / 18
キョロ (・.・ )=( ・.・) キョロ

( ・.・;)ノポイッ

 二回目。いやぁ……すみません。今回はパヴァーヌでゲヘナ側の話。……美食に効く拷問考えてたら面白いスレがあったので参考にさせてもらった。


クッキングフウカ、ブッキング羽沼

 私、羽沼マコトを含めた万魔殿と風紀委員会メンバーが、来客用の学園玄関に並んでいた。

 

「……エデン条約締結に向けて、他校へのトラブルとなる愚昧な生徒たちには監視を付けていた。仮に温泉や美食がトリニティに行こうものなら武力行使も辞さないと言った。成る程、確かに奴ら、今回はトリニティ“には”行かなかったな……」

「代わりにミレニアムに行くとはね……」

「二人とも大変だね~」

「……ところで、何で小鳥遊ホシノが此処にいる?」

「連絡が来た時、ちょうど風紀委員会の特訓相手になってもらってたのよ。また脱走する可能性もあるなら、鎮圧部隊がいるでしょう?」

「うぅむ……念には念を入れても、損ではないか……」

 

 ゲヘナの痴態を外部の生徒に見せるのは……まあ良いか。ゲヘナだし。とか言ってる間に、ミレニアムサイエンススクールの装甲車が来た。急停車したソレから、オレンジ色のアホ毛がぴょこぴょこ動くスカジャンチビメイドが。

 

「羽沼マコトと、空崎ヒナだな。そっちは?」

「ようこそ美甘ネル。先程までアビドス高等学校と合同で業務に当たっていたらしくてな、そこの生徒だ。不満なら席を外してもらうが?」

 

 ぎろり、と目つきの悪い瞳が小鳥遊ホシノのオッドアイを射抜く。うへ~、と昼行灯な態度を崩さない暁のホルスだが、どうやらコールサイン00は彼女の正体に気が付いたらしい。

 

「……いや。構わねぇ。暴れられたら手間だが、そー言うんじゃねぇだろ」

「お?いやいや~買いかぶり過ぎだよ~。おじさんってばそう見える?」

「ああ?ったりまえだろ」

「ええ、そうね」

「当然の判断だろうが」

「……。うへぇ~、照れちゃうな~」

 

 各々が持っていた愛銃から手を離し、溜息を吐く。

 

「もォォォ!あとちょっとだったのにー!」

「あたたた……、痛いよー!」

「流石C&Cのトップですね~」

「……やれやれ、捕まってしまいましたわ」

 

 ……そして、相変わらず反省の欠片もしていないようで何より(クソ)だなコイツら。時期が時期だというのに自重とか無いのか無かったわうん。こいつらに期待は無く使いやすいとはいえ、手駒としてはクセのあるユニットだよ本当に。過去何度か共闘したことがあるとはいえ、さぁ。

 特に美食研究会会長、黒舘ハルナ。そして副官ポジションの生徒、鰐渕アカリ。お前ら分かってんのか本当に。雷帝関連のことが無ければお前らの自由行動も……ええいもう良い、何も言うまい。どうせ馬の耳に念仏だ。

 

「……ったく、こっちもこっちで面倒事だらけだっつのに。こいつらが無駄に強いせいでC&Cが動いたぞ」

「————ああ。もう間もなくでミレニアムプライスだったな。忙しい時期に済まない、美甘ネル。ゲヘナ学園の万魔殿議長として謝罪する。後日、セミナーへ顔を出させてもらおう」

「あー、いや。もうしばらく後で構わねぇと思うぞ。こっちも色々あったし、特に最近銀行強盗騒ぎがあってな。ふざけた名前だよなぁ……『覆面水着団』。連中、最新のファイアウォールで防御されてたはずのネットワークをハッキングした上、銀行強盗の予告までしやがってよぉ。警備に人員が割かれて学区内がピリピリしてんだ」

「うへ?」

 

 ほお?……ミレニアムで、誰かハッカーと伝手でも作ったか砂狼シロコ。それは良い。白兎辺りだな?かなり都合が良くなった。これだけでも今後の話を通しやすくなる。

 

「何だ、そっちのピンク髪は知らねえのか?今年からブラックマーケットを中心に暗躍してる強盗団だよ。どーせ知ってんだろ、ゲヘナの議長」

「……さて、知っているといっても最低限のことだけだ。風紀委員会にマークさせているがね。正体は不明だが、構成員はオペレーターや援助者の大人を含め最低七人。その内一人はトリニティ総合学園の所属だろう。リーダー格はそいつだと言われているが、ただ祀り上げられているだけだな。実際は2号のブルーと呼ばれる女子生徒が襲撃計画を立案しているように思う」

 

 模倣犯が何度か出たが、ヴァルキューレが動いて未然に防がれた事件が三件、未解決なのは七件だったか。いやぁ、ブラックマーケットで暴れるのに覆面水着団の名義は楽で良いな。ヴィッテンベルク総合学習塾の塾生も何組か使っていたし。

 

「う、うへ~……」

「おやどうした小鳥遊ホシノ。顔色が悪いぞ。具合が悪いならミレニアムの病院でも紹介するが?」

「そこ、ゲヘナじゃないのね……」

「当たり前だろうヒナ。救急医学部は兎も角ウチだぞ、信頼できるか?」

「無理ね」

「ちょ……ちょ~っとおじさん用事思い出したから帰るねぇ~」

 

 シロコちゃんとオハナシしなきゃ……、とハイライトが消えた目で駆けていくミニマムタンク。この場に残ったチビ二人は首を傾げていたが、さてアビドスはどうなるかな……。

 小鳥遊ホシノの見張りが手薄になった場合は、列車砲シェマタの破壊か、梔子ユメのメモ帳にあったもう一つの厄ネタの処理をしたいんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、拷問のお時間です。おーい風紀委員会、牢屋前(ここ)で万魔殿合同パーティーをするぞー。金はこちらから出す。時間がある奴は食っていけー」

「何が『というわけで』、ですの!?」

 

 何がだと?当然だろう。本当は拷問しても良いんだが、シャーレの先生が就任した手前、下手に体罰などでこちらに干渉されては厄介だ。だが、キツイ灸をすえておかなければ、風紀委員会も収まらんだろう。というわけで。

 

「あああああああああああああああああああああっっっっ‼この悪魔、魔王、人でなしぃぃぃぃぃ‼」

「……?そうだが、それがなにか?」

 

 赤司ジュンコが何か叫んでいる。いぇーい、ハエの魔王よ、見てるかー?お前らの前で愛清フウカが丹精込めて作った懐石料理のフルコースを二つも食べちゃいまーす。……はっ。私は何を言った?まぁ良いか……。

 と、そんなわけで。私たち万魔殿のメンバーと空崎ヒナが食卓を囲む隣で、風紀委員会行政官の天雨アコはどこか訝し気に、イオリやチナツは恐る恐るフウカ手製の料理を口に運ぶ。が、それも一瞬。目を丸くしたり、頬を緩ませたり、無言のまま料理を口に運んだり。美食研究会が捕らえられた牢獄の前には、食の楽園が出来上がっていた。

 真っ白な灰になったジュンコやら、檻の棒を齧り始めたイズミやら、無表情でこちらを見ているアカリやら、厚い鋼の顔を珍しくシワシワにするハルナやら。憤死寸前の美食研究会の前で、のんびりとした会食の時間が流れている。

 

「それと万魔殿は新たに校則を追加してな。今後は経費の節約の為、囚人用の食事は一日分の栄養素を全て網羅した完全食の栄養バー一本だけだ。削った分の費用は、風紀委員会の武器や設備に回させてもらおう」

「!」

 

 ん?どうしたヒナ。そんな驚いた顔をして。そりゃあ、私だってお前のところの援助などしたくないのだがね、ムダ金をこいつらに割く暇もないんだこれが。

 

「ハァァァ⁉一体何を考えてるんですこの狸は⁉在り得ません!はっ……まさか、今度はヒナ委員長にどんな無茶振りをするつもりですか!」

「……ほぉ。空崎ヒナが達成できない任務があると思っているのか、天雨アコ。そうか、お前たちは()()()()なのか……」

「————は?ハァ……⁉なんっっっですって、今何て言いましたあなたは⁉私が、この私がヒナ委員長を理解していないと⁉そんなわけがないでしょう‼いいですか、ヒナ委員長はあなたなんかと違って————‼」

「あと和風ごまプリンを作ったんだが、食べるか風紀委員会の諸君」

「食後に貰っていいかしら。ほらイオリも」

「いやその委員長、アコちゃんが……」

「聞きなさいッッッッ‼ヒナ委員長もそれでいいんですか!?良いように使われてしまいますよ‼」

 

 しかし、試しにやってみたが、美食研究会にごはん抜きの罰則は意外に効くみたいだな。特例でこいつらの罰はコレにするか。

 

「お前たち美食研究会にはまだ利用価値がある。潰さずにいてやることが温情と思え、むぐむぐ」

「んむんむ……美味しいわフウカ」

「はい、お粗末様です♪」

 

 怨嗟の声を上げる美食研究会、及び満ち足りた笑みをする風紀委員会(※アコ除く)を見て、フウカは超良い顔をしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、では美食研究会。ひとまずエデン条約が終わるまで、お前たちには農作業に従事してもらおう」

「「「「えぇ⁉」」」」

 

 引き続き美食研究会に反省を促すため、智慧をお貸しください荒●弘先生、大蝦夷●業高校様。あそこ確か『勤労・協同・理不尽』とかが校則だったはず。

 

「えーもびーもあるか。お前たちは家畜と作物の奴隷だ!この場において生徒ごときに人権があると思うな!」

「「「「酷い!?」」」」

 

 私は食育活動委員会が飼育している馬『ペガサス号』に乗り、風紀委員会と美食研究会を引き連れてゲヘナ学園農業科学科の敷地内にいた。ちなみにここは、元々廃墟だらけの所だったが、温泉開発部を煽って爆破解体し、温泉が出なかったがために、各関係委員会と連携して農地として開墾した地区だ。

 ゲヘナ学園はとにかく治安が悪い。そのせいで高等教育機関のある学区内だというのに土地が余り、ぼろっぼろの売り家が散見され、スラム街が作られる……。そのせいで不良や犯罪組織の温床だ。私が入学した当時からこれだ。キヴォトスの外の記憶を思い出さなくとも、これはマズイと分かるレベルの荒れだったぞ。まぁ、だからこそこんな強硬的な手段であっても問題なく田畑として拓けたんだが。

 農作物を育てるまでに幾らか年月が必要かと思っていたが、そこはキヴォトスクオリティ。本当にすごい効果がある霊脈地だったし、植物に関する悪魔の神秘を持つ生徒が食育活動委員会にいたことで、なんということでしょう。あっという間に緑が茂り、数か月で劇的なビフォーアフターに。

 かねてよりカカオの生産で名を馳せていたゲヘナだが、ここ二年で農業生産トップの学区に躍り出た。キヒヒッ、食育活動委員会に任せて正解だった。我々は懲罰目的で人員を回してやるだけで良い。馬鹿な不良の生徒はまだ多いとは言え、頭より体を使う方が得意なゲヘナだ。役目を与えてやれば多少はマシになる連中もいることはいる。有効活用できるものはしなければなぁ。

 何より雷帝のやり方自体、良くなかった。表立って才能をひけらかすのは愚の骨頂。この銃社会で、銃を上回る兵器を売るのはリスクが大きいからな。核兵器なんぞを売りに出せば余計なトラブルで足を引っ張られる。その点食料はどれだけあっても良い、無ければ死ぬ必需品で、優先順位が高い誰でも作れるものだしな。

 おっと、話がそれた。では、美食研究会を暫くゲヘナ領内に縛る為、奉仕活動をしてもらおう。この命令を断れば、お前たちは美食家の矜持と自負を汚すことになるだろうし。

 

「では食育活動委員会が設定したタイムスケジュールを発表する。お前たちはこの農業科学科の懲罰寮に入寮してもらう。朝四時起床で牛の世話、午前八時から三十分間の朝食、その後正午まで畑仕事、牛の世話をし終わった後に昼食!午後一時から六時まで再度畑仕事、午後六時から午後九時までまた牛の世話!夕食を三十分で摂った後は零時まで野菜の箱詰め作業!零時から四時までが自由時間、以上だ!」

「「「「寝る時間は!!!!!?」」」」

「自由時間があるだろう、そこで寝ろ‼」

 

 自由じゃない?寝るも寝ないもお前たちの自由だろう?

 うちの校訓、『自由・混沌・理不尽』にしてやろうか……。ゲヘナでも通用するのやっぱり偉大だわ、極限状態の北の大地の教え……。

 というかイジメだの何だので騒いでるトリニティ、お前らその歳にもなっていじめとか子供か!そんなことしてる暇良くあるな!?やること多いとそんな暇ないわ‼

 

「お前たちが何気なく食っている肉、野菜、卵。畜産物の命は我々の気紛れに依存して成り立っている」

 

 暴れまくる鶏を持って、食育活動委員の一人が四苦八苦して私の傍に寄ってくる。ああ、出荷用の雄鶏か。逃げ出したのを捕まえたのか。しかし、危なっかしい持ち方だな……。

 腰に差した儀礼用のサーベルの持ち手に触れる。

 

「思うべきは『可愛そう』、などという同情ではない。食事を与えてくれてありがとう、『いただきます』、だ」

 

 脚がダイレクトに食育活動委員の顔に当たって、彼女の手の中から鶏が逃げる。おっと、これはちょうどいい。

 

「自分が食べている食事に『なに』が入っているかを憶えておくのは、重要なことだ」

 

 キン、と金属が擦れる音がして、鶏冠がある頭が宙を舞う。コケー!とひと鳴きもできぬまま、自分が死んだことにも気が付かぬまま、顔の無い鶏は滑稽にも地面をぴょんぴょんと跳ねている。

 残心、そして納刀。……あ、血飛沫が鰐渕アカリの顔にかかっていた。すまんすまん。ん?どうした赤司ジュンコ、恐ろしいものでも見たように顔を青ざめさせて。

 こんなもの、生きている魚を捌く程度のものだろう?命を奪うこと、それに外見の差異は無い。さて、首のないチキンだが、丁度いい。今夜の賄いとして出してやるか。おっと、持ってもバサバサ翼で叩いてくる。毎回思うが死んでいるのに動くとは、不気味だな。

 

「それと注意事項だ。ゲヘナに出没するHIGUMAやINOSHISHIは何故か神秘が半端なく濃くてな、少なくとも風紀委員会を半壊させる戦闘能力があるやつはザラだ。信じられんかもだが、二年前、空崎ヒナと小鳥遊ホシノで何とか対処できたレベルの個体もいた。気を付けろ、森の中といった状況次第では風紀委員会の中隊より強いぞ」

 

 TRPGでも下手な悪魔より強かったりするよな、クマ……。ヘイロー持ちの生徒であってもミレニアム方面だとハイキング中に襲われて帰らぬ人になってるらしいし。

 

「だから脱走しようとするなよ?これは、お前たちの身の安全の為に言っている。比喩ではなく、本当に————死ぬからな」

 

 ああ、カムイや付喪神に神道の霊……自然から生じる神は、野生動物の畏敬の念からも生じるというが、正しくだな。まったく、ゲマトリアも生徒だけでなく自然そのものに目を向ければ良いものを。生徒の形をしていないとはいえ、スペックは動物のソレではない種が多いぞ。

 

「そうだ。野生動物(ジビエ)は旨いが、まずは市場に卸す鶏肉の味見でもするかね?ちょうど生きている鶏が四羽いる。お前たちが首を斬って殺せば夕食にでも出してやるが」

「「「「……」」」」

「……そうか。あれだけ腹を空かせていたようだったが、肉の気分ではないか?ま、精々我がゲヘナの利益になってくれ。このくらいの奉仕活動で済ませてやるのだ、相応の成果を期待する」

 

 手元で噴水のように血を吹き出す鶏の死骸を持ちながら、私は美食研究会に命令を出す。銃を奪われた美食研究会の四人は、食育活動委員会の面々に囲まれながら、ビニールハウスの中へと入っていった。

 

「凄い素直に従ったわね……」

 

 私の隣でペガサス号を撫でるヒナがポツリと零す。何だ、意外か?

 

「過去、奴らがやらかした時にこんなことを言ったことがあってな……」

 

 ほわんほわんはぬまーん。

 

『美食に対する姿勢はその程度だった、という事か。そうかそうか。()()()を名乗るにおいて、最も誠実に向き合うべき事柄だと思ったのだがね。いや構わんよ、お前たちの考えと行動が、其処らにある食品偽造の料理店と似たようなスタンスと証明しようが、私には一切興味がない(以下略)』

『なっ、あなた……ッ!』

『口先だけの批評家など、どこにでもいるわけだしな。子供ならその程度でも仕方あるまい(以下略)』

 

「……といった具合だ。こう言った内容の分かりやすい皮肉をくどくど言った。まぁ、自我が強いあいつらだ。それで破壊活動を止めるようなものでもないのは分かっているが、影響が少しでもあるなら毒を吐いておくに越したことはない」

「……改めて思うけど、本当流れるように煽るわよねマコトって」

「当然。こういったものはわかりやすい呪いだからな。ただ少し、頭の中に残るようにしただけの言葉だが、食物が舌の上を転がる度、喉元を過ぎ去り臓腑に満ちる度、美食だと感じる脳裏に過ぎる毒にした。それだけだ。それで奴らがどう変わるかは、奴らの心の内次第。私は、どちらでも良い。どうでも良い。というか、奴らのつまらん拘りなど知ったことではない。面倒だろう?」

 

 ふぅ、よし。これでやっとヒナと腹を割って話ができる。本当はこいつに頭を下げるのは嫌なんだがな。状況が状況だクソッ。

 

「さて。しばらく美食は動かないだろう。この罰則に耐えかねて逃走するやもしれんが、エデン条約までにお前に頼みたいことがあってな……」

「それは……?」

「マコト議長!ヒナ委員長!お忙しいところ恐縮ですが緊急連絡です!今度は温泉開発部がトリニティ総合学園方向へ行ったとの情報が‼」

「「……」」

 

 ……、クソが。このタイミングは止めろというのに。シャーレのオフィスを吹っ飛ばしてくれた方がはるかにマシだよ馬鹿どもが。

 は?何で私の馬に乗るヒナァ!ヌァァッッ、何でお前と二ケツで現場急行せにゃならんのだ!何、お前の身長的に馬に乗っても脚が届かないから⁉自動車使えよ……は⁉地雷が仕掛けられてたら車じゃ無理⁉キヴォトス産とは言え馬は繊細な動物なんだぞ、地雷原駆けてストレスで死んだりしたらどうする⁉確かにミサイルで打たれても生徒並みなタフさがあるがねゲヘナのばん馬は‼こいつの種はペルシュロンじゃなくてサラブレッドだ‼

 

(※なおこの後、トリニティ総合学園まで全力で早馬したマコト議長は、ちっこい子を抱えてたことも相まって白馬の男装王子様状態だったらしく、道行くトリモブ生徒らのちょっとした話題になった。二人は内心それどころじゃなかった模様)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方のこちらはミレニアムサイエンススクール。G.Bibleを入手したが、それを開くためのパスワード解析機、『鏡』はセミナーに押収されていた。そして、それを強奪するため、ゲーム開発部とヴェリタス、そして先生と砂狼シロコは、打算で協力を申し出たエンジニア部と共に作戦会議を進めていた。

 

「ウタハ。ゲーム開発部がセミナーに『鏡』の強襲をかける時、C&Cとかいう戦闘部隊の戦力を分散させる為の考えがある」

「アビドス高校のシロコだったね。その案というのは、何だい?」

「ん。銀行を襲う」

「……急に何を言い出してるの?」

「ヒビキ、コトリ、モモイ、ミドリ。『覆面水着団』っていう強盗団知ってる?」

「何そのふざけた名前の強盗⁉」

「説明しましょうモモイ!『覆面水着団』とは数か月前ブラックマーケットで起きたカイザー銀行強盗事件の犯人であり、約数億円の被害総額を出した覆面強盗集団です!ヴェリタスが調べた情報によれば……」

「コトリ。ストップ。とりあえずその犯罪組織の名前を使ってミレニアムサイエンススクール学区内の銀行に犯行予告を出す。ヴェリタスはハッキングとかしないで。関連性を疑われたくない。心配しないで、伝手はある」

「それは、ヴェリタスとしては良いんですが。先生はこれで良いんですか?」

“あー……、シロコ?”

「ん。やっちゃ駄目とは言わせない。大丈夫。鏡を奪う日、私はミレニアムにはいないから。先生たちは覆面水着団とは一切関係ないよ」

“……(やっぱりアビドスの生徒ってアグレッシブすぎるよ)”

 

 砂狼シロコは、とてもいい笑顔で親指を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷帝の遺産に対処する部隊は整えた。後は、キヴォトス最強クラスの警戒すべき五人への対処もしなければな……」

 

 温泉開発部の愚行を未然に防いだ羽沼マコトは一人、議事堂内の一室で万年筆を走らせていた。

 

「零落しかけであろうと未だ高水準の【暁のホルス(ラー・ホルアクティ)】の他、【コールサイン00(ネルガル)】、【歩く戦略兵器(カマエル)】、【神の似姿(ミカエル)】、そして手中にあるとはいえ【ゲヘナ最強(バアル)】もそうだ」

 

 蠟燭の灯だけが光る夜中の教室の中。照らされて壁に映る巨大な影が、マコトの姿から全く別の形に変化する。山羊、蝙蝠、蛇、蠅、蝗……そしてセトの獣と、様々な動物を内包し、またそれらとは異なる存在であると如実に示す。

 

「次点となるのが、潜在能力や条件次第で彼女ら五人を上回る可能性がある【死の大神(アヌビス)】、【無名の神々の王女(アーキタイプ)】、【救護騎士団長(メタトロン)】、【虚飾の悪魔(ベリアル)】、【災厄の狐(ハクメンコンモウ)】……」

『【暁のホルス】に対しては【黄昏のオシリス】の用意がある。完全に起動するかは最終的に運頼みになるかもしれんが……。そのためには、【究極の超越神】が【魔術王の小さな鍵】をこちら側に取り込めれば、確実性が増す』

 

 竜の形となった影が口を開き、マコトと会話をし始めた。彼は、どこか預言者染みた穏やか且つ荘厳な口調で言葉を続ける。

 

『鍵を使えば、【唯一神の神秘】の影響下にある生徒はほぼ無力化できる故、現状最も重要視すべきは【災厄の狐】だ。現時点での神秘は()()()()でしかないが、全盛へと回帰した場合……“天地開闢と共に生じ、世界の邪悪妖気といった悪が形となった存在”に立ち返る。正しく、この世の悪の全てになる資質持つ数少ない生徒の一人だ。魔王である私たちにとっては、あってはならないことだ』

 

 手元に広げた資料にある狐坂ワカモの写真を忌々しく睨むマコトと影。

 

『ヴィッテンベルク総合学習塾にいる三人の、神秘のための躯体準備も着々と進んでいる。全盛への神秘回帰、伝承機能の再生、時空逆行による信仰補正の目途も付いた。奴らは後に生まれ落ちただけ……座るべき椅子が埋まっていたが故に、名も無き分霊としてあの姿になっている。それは、少しばかり忍びない』

 

 その時、二人の顔が出口のドアに向いた。深夜のゲヘナ学園にいる存在など限られているが、どうにもそのような手合ではないらしい。

 

「……どうぞ。入って良い」

「……」

 

 木のドアが重々しく開けられた。そこにいたのは白い外套を着た、髑髏の静物(ヴァニタス)の紋が目立つマフラーの人物。

 

「おぉ、あなたか。()()()()の生徒会長が、また愚かな選択をしでかしたか?生徒ではなく、私に()()として動けと?」

「……————」

「何、違う?いや確かに、【魔術王の小さな鍵】の起動には、伝承再現であなたの神秘も必要だが……。ああ、【指輪】の方か。しかし、それでは【神の似姿】との戦闘が免れんが……」

「————」

「うぅむ……。言う通り、私たちの力によるバックアップがあれば、あなたの神秘は【究極の超越神】……世界の創造主と同格になる。それも、戦闘行為が対象の神秘だからな、あなたは。戦闘経験も同じ神秘の才羽アルティメット・オーバーゴッドより豊富だし、そこは心配していない。トリニティの魔女程度ならば対処可能と————しかしな。その能力はアリウスの生徒会長には伝えていないんだろう?良いのか、完全にこちら側になるぞ?」

 

 

 彼女の崇高より派生した神秘は、()()()()

 ヘブライ語で『神の獅子』、『神殿の炉』を意味する七大天使の一角。また、イスラエルそのものを意味する神霊。

 アッカド語の冥府(Arallu)とも関連した、天使でありながら地獄に列なるモノ。永遠に燃え盛る炎はゲヘナにおいて死体や罪を焼き、アリエルの煙の川となって棚引く。またの名を、『神の光』を意味し鳥の群れを司る天使、アラエル。

 コルネリウス・アグリッパによれば、「天使であり、悪魔であり、偶像が崇拝されているアリオポリスと呼ばれる都市の名でもある」という。かのソロモン王相手に様々な魔術を用い導いた天使でもあるらしい。

 ミルトンの失楽園ではルシファーに従い、天の戦争にてアブディエルと戦った堕天使。その天使は、グノーシズムにおいて……

 

 

————偽りの唯一神デミウルゴス、またヤルダバオトであるとされる。

 

 

「————」

「……覚悟は分かった。では、機会を見て、できるようなら襲撃をしてほしい。部活に入っていないのは知っているが、あくまで()()()()、だ。時期についてもいつでも良い。意味を成さないことを無理に、とは言わん。頼めるか、アリウス分校生徒会長直属の潜入工作員にして、トリニティティーパーティーやアリウススクワッドさえも知らない裏切り者。そして、どの学園においても獅子身中の虫となる存在————」

 

 

 

奔る閃光の天罰

トリニティ総合学園二年生

■■ ■■■

 

 

「……ええ、羽沼マコト議長。Vanitas vanitatum et omnia vanitas.————『全ては虚しい、どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ』。……アリウス分校で習う空虚な言葉。ですが、私はあえてこう言いましょう」

 

 “コレヘトの言葉が刻まれた白いライフル銃”を一撫でし、その少女は口を開いた。

 

「Carpe diem quam minimum credula postero.————『時ある間に花を摘め』、と」




マコト「ベルレ、フォォォォォォォォォォン!」
イロハ「はぁ……引きこもっていいですか。お家帰ります」
 騎乗スキルA+(神秘的には竜に乗れるので実質EX)。似たようなことは可能。その場合、天使の乗り物=メルカバーと同様の力を騎乗した動物、乗物に与える。

ミカ「あれ、自転車じゃんね!?」
セイア「何というケイデンスだろうか……⁉」
ネル「ママチャリが————⁉」

(この辺りにライオン型遊具『バステト号』で走ってるホシノ&シロコ)
シロコ「ん、お金が要る。銀行襲ってくる」
ホシノ「うーん、アビドス高校の預金を解約するか……究極の二択だね。いや究極過ぎるよ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。