ここだけマコト議長の神秘が仕事し過ぎている世界線   作:サルミアッキ

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私が明日死ぬなら covered by 梔子ユメ


星空ノサキ、夢カ真カ

 ブラックマーケットの最奥、ヴィッテンベルク総合学習塾の塾長室。そこには、無貌の仮面を被った黒髪の人物がいた。顔の横……仮面に覆われていない側頭部からは黒い翼が生え、さながら堕天使を思わせる。

 対外的に、『元トリニティの生徒』だと自身を称する彼女。とある出来事で不随になったらしい腰の黒翼が、だらしなく椅子の背もたれから垂れている。

 

「おや?」

 

 彼女—————『メフィストフェレス』は、手元の書類から顔を上げた。目を出す隙間さえない無貌の仮面越しに、部屋を来訪した人物と向かい合う。

 

「……これはこれは。お早いお着きで。あなた方の議長殿とは、未だ交代の刻限ではないのだが?」

「事情が変わりましてね、メフィストフェレス。マコトちゃんに()()()()もらえるかしら?」

 

 ヴィッテンベルク総合学習塾にやって来たのは万魔殿議員の一人、京極サツキ。彼女は豊かな胸の谷間に手を突っ込むと、懐中時計を取り出した。

 

「あー、分かった分かった。『メフィストである私』の疑似人格を停止する。そちらで合図を送れ」

「はぁい。じゃあこの時計を見てちょうだい」

 

 鎖を持つ手が揺れている。左右に振れる、秒針を刻む時計に眠気を誘われる。

 

「—————」

 

 意識が途切れたことで、ヴィッテンベルク総合学習塾長メフィストのヘイローが消える。そして、……—————『私』が表に出ることになる。

 黒髪のカツラとオーパーツ染みた多機能仮面、悪魔の角を覆うための翼型カバーを外して、私は本来の自分に戻る。既にヘイローの形状も、金星のマークを模した赤黒いものに戻っていた。

 

「—————、何かトラブルか?サツキ」

「マコト議長。……風紀委員が先生に接触、捕縛を試みて返り討ちに遭ったわ」

「—————……は?」

 

 寝耳に水に、何してくれてんだ?

 

 

 

 

 

 

「空崎ヒナ風紀委員長。貴様がどうして万魔殿に呼び出されたか、理由は分かるな?」

「—————ええ」

 

 ゲヘナ学園、万魔殿の執務室。私は目の前に立つ空崎ヒナに視線を向けた。

 

「天雨アコの独断行動によって、風紀委員会の主戦力がアビドスに動員された。その理由は便利屋68の捕縛—————を建前とした、アビドスで活動中である『S.C.H.A.L.Eの先生』の身柄の拘束、だったか」

 

 ああ、頭が痛くなってくる。エデン条約に関してはお前ら蚊帳の外だろうが。逆にトリニティに突っ込まれる要因作ってどうするよ。

 

便()()()()()()()を吹っ飛ばした後に、アビドス高校とことを交えたらしいが、それでカイザーから苦情と賠償請求が来ていてな。いやまあ、その程度の支出は些末なことだが。問題は、やはりアビドスの土地の大半はカイザーのものになりつつあるということだ……最早、現在のアビドス高校のみが最後の土地と言っても良い有様なのだろう」

 

 知っていたとはいえ、ここまで情報が絞られると、かつて調べ続けていた諸々が繋がるわけで。つーかカイザー、ほんとがめついな。知ってる顔だから遠慮とかしねぇのか、あの理事は。

 

「アコは今懲罰房で反省文を書かせているわ」

「そうか。では、罰則は万魔殿の決めた規定に則って実施する。監視役として親衛隊から一人派遣するので貴様も手続きを進めておけ。異論はないな」

「ええ……」

 

 —————さて。もう一つだけ聞いておくか。

 

「…………ところでヒナ。アビドスに行ったのなら、—————会ったな?」

「—————。随分と、雰囲気が変わっていたわ」

 

 

 

 

【ホシ ソラ ノ サキ ユメ カ マコト カ】

 

 

 私—————空崎ヒナは、純然たる事実として『最強』だった。今まで私に比肩する存在はいなかった。それが私にとっては当たり前のことだったし、誇るべきことでもないとも思っていた。それはただの個性。肌の色や髪の色の違い、その程度でしかなかった。

 けれど、周囲の存在は色眼鏡をかけて私を見ている。厄介ごとを勝手に持ってやって来て、力があるのだからそれ相応の責任を果たせと言外に伝えて来る。

 

 ……—————めんどくさいなぁ。

 

 ……—————何でしなきゃなのかなぁ。

 

 ……—————自分のことは自分でするから、あなたたちはあなたたちでしてくれないかな。

 

 そう思っていたからなのか、それとも自分の都合だったのか。当時は一学年上の先輩だったマコトは、学校にいるのも億劫だった私を、無理やりアビドス砂漠に連れて来た。なんでも、雷帝の遺産を片っ端から探し出して壊すつもりらしい。そのための、護衛の為の戦力だという。

 文句の一つでも言おうとしたが、その時だけは『まぁ良いか』と思った。こうしている時間だけは、マコトの指示に従うだけで他の面々は圧力をかけて来ないのだから。

 

 アビドス高校の二人組と知り合ったのは、その時だった。

 

「へえ。変わっているのね、あなた。そこまで真面目にしてたら、昼寝をする暇もないでしょう?面倒事をしてて楽しい?ええと……『小鳥遊ホシノ』」

「『空崎ヒナ』さんでしたっけ?風紀委員の癖に無責任なんですね。流石は不良のゲヘナ生なだけはありますよ」

 

 …………。

 

「「—————は?」」

 

 ファーストインプレッションは、まぁまぁ険悪だったけれど。

 

「わーわーわー!?待って待ってぇ!?」

「勝手に戦うな‼お前らは砂漠化以外でアビドスを滅ぼしたいのか!?お前らの戦闘の余波でビル街なぞ簡単に倒壊するわ‼」

「「……この人、そんなに強い(の/んです)?」」

 

 その時はまだ、私たちの傍に先輩がいて…………とても楽しかったのだ。

 

「はぁ……、何故私が子守りなど……」

「でもホシノちゃんってば、ちょっと楽しそう!」

「これ見てそれを言うのか…?マコト様、大困惑なんだが」

 

 それはまるで奇跡のような、半年にも満たない青い春の記憶だった。

 

「さぁ行くぞ!今回のアビドス&ゲヘナの共同宝探しはアビドス砂漠の最奥!ビナーの復活も情報にある!今回こそデカグラマトンの鍵と天を飛翔する本船を————」

「……あ、待ち受け変えたのね?小鳥遊ホシノ」

「うん、シロナガスクジラ」

「聞けーッッ‼」

 

 アビドスを調査する傍ら、お邪魔するだけでは悪いから、いろいろな企画を考えたりもした。ラクダレース、デーツの植え付け、オアシスの源泉探索のためゲヘナの一部活に資金援助…………。

 

「ちょ……危ないですね!荷電粒子砲で攻撃しますか普通!?」

「……そんなに柔らかい防御なら盾でも持ってみたらどう?」

「必要なら私の貸そっか、ホシノちゃん?」

「……盾?それなら其処らに落ちたカイザー連中の残骸を盾にすればいいだろう。リサイクル、というやつだ」

「「「…………(この人、人の心無いわ)」」」

「確かカイザーのロボットの構造は、この配線とコネクタを強制的に接続させれば……よし爆弾になった。キヒッ、頭上注意だ!」

 

 アビドス高校が抱える借金問題の巻き添えもあったっけ。私が後方、友達になった()()()()()()が前衛、ユメさんがタンク役でマコトが司令塔—————。急造チームだったけれど、下手なPMCを壊滅できるくらいには皆強かったわよね。

 

「ひぃん………ホシノちゃんやり過ぎは駄目だよぉ」

「そうですね…………。チッ、借金も暴力で解決できれば良かったのに」

 

 アビドス高校の脳筋さに呆れたり。私もマコトも二人には振り回されてばっかりだった。

 

「マコト……あなたの性格そんなだから、最悪の策略家とか呼ばれるのよ」

「キキキッ、私にとっては誉め言葉だな!あの一件から付いて回ることになったが、気分が良い!」

 

 マコトのえげつない罠で不良を一網打尽にしたり。アビドスの二人は『うわぁ…』という表情でドン引きしてたわね。

 

「わぁー!星がきれいだよホシノちゃん、ヒナちゃん!」

「へぇ。砂漠と言っても、夜は冷えるのね……」

「そうですね。……その、()()()()()。これ、どうぞ。毛布です」

「皆、マグカップを出せ。ブラックマーケットで手に入れたワインがあってな。アルコールをとばして作ったホットワインだ。未成年でも飲める…温まるぞ」

 

 夜の砂漠でキャンプをしたり、星を見たり。四人で過ごした短い青春の記憶は、今でも忘れることができない。

 そう、その青春の終わりも—————忘れることができない。

 

 

 

 

 

 

「先輩なんて知りません!」

 

 

 星が堕ちた日、死に直面する時が来た。

 

 

「…………随分と荒れていたな、小鳥遊ホシノは。また失敗でもしたか?」

「うーん、また大人に騙されちゃって……今回はこっぴどく怒られちゃった……」

「まあ、小鳥遊ホシノが言いたくなる気持ちもわかる。あなたのことが心配なのだろうな」

 

 暢気にしていた私が、マコトからそのあらましを知ったのは、全てが終わった後だった。

 

「—————そうだな。比較対象が小鳥遊ホシノというだけで霞んではいるが、あなたもキヴォトスの上澄みであるくらいには強い。……大丈夫だろう。くれぐれもコンパスと水筒は忘れるなよ」

 

 

 

 

 予期せぬ不幸が訪れた。

 

 —————オシリスは、『()()()()()』と相まみえる。

 

 

 

 

「ユメ先輩?ユメ先輩…!?ユメ先輩!?」

「ホシノ、ちゃん……?あれ……おか、しいな……目が、霞んで————見え、ないや—————」

 

 その名の因果を討ち破るも、梔子ユメは疲労と脱水によって砂塵に倒れ……生命は既に尽き果てていた。それでも、星を掴むような、奇跡のような夢に手を伸ばして…………。

 

「喉、渇いちゃって…ごほっ、ごめ、んね…………聞き、取り、づらくて。学校、…………ちゃんと、行ってね?私は、途中で辞めちゃうことに、なるけど…………」

 

 青い春の空が広がるアビドス砂漠に、一滴の雨が降る。

 

「可愛い後輩ができたら…………その時は……私みたいな、ダメな先輩なんかじゃなくて……ちゃんと、…………」

 

 震える手がホシノに伸びて、—————そして触れることなく地面に落ちた。

 

「ホシノ……ちゃん……あなたに……逢えて……」

「ユメ先輩…………?ユメ先輩………!?ユメ先輩‼」

 

 答えはもう、返ってこなかった。

 

「ぁ———————————————————そん、な」

 

 滂沱の涙に、開いた瞳孔、悪鬼のようにやつれた顔。ホシノはそんなこの世の絶望全てを煮詰めた顔で、目の前の光景を眺めていた。眺めるしかなかった。

 譫言として零れ墜ちた言葉。どこかユメにかかった霞のようで、他人の視界を介して情景が見えているような、壊れた錯覚。

 

「わた、し——————————まだ、謝って…………」

 

 小鳥遊ホシノの心は、…………—————彼女の受けた苦しみは、誰にも推し量れるものではなかった。推し量っていいものではなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「は、バカ……な。何故————?」

「ね、ねぇ……一人になったホシノちゃんは大丈夫なの……!?ねぇ、マコト先輩!?」

「……—————」

 

 ここまで私が声を荒げたことは無かった。初めて、ここまで狼狽したマコトを見た。それほど、アビドスとの交流は私たちにとって掛け替えのない時間になっていたのだろう。気づけば、私たちはアビドス高等学校の自治区にいた。

 ———————そこは、誰にとっても地獄だった。

 

「う—————あ、ぁ、ぇあ—————?」

 

 一睡もせず、小鳥遊ホシノは不良狩りに明け暮れていた。行き場のない感情を押し付けるために、優れた肉体と戦闘技能を無理にでも用いて…………誰も、彼もを蹴散らしていく。紛れもない蹂躙だった。紛れもない怒りがあった。

 

 —————誰に、対して?

 

「んな、もの……こんなもの—————こんなものォォォォ‼」

 

 見ていられなかった。私は、友達が壊れていくのを見ていたくなかった。

 

「やめ…!やめて!やめてよホシノちゃん!」

「ッッッッッッ————‼ガァァァァッッッ‼アアッッッ‼邪、魔ァッッッ‼」

 

 —————何の、為に?

 

「う…ぅ、ホシノ、ちゃ…?」

「死ねッ、死ねよ…何なんだよ‼あぁ『私』の馬鹿が、役立たずがッ‼『私』なんて死ねよッッ‼死ねッ、死ねッ、死ねよッ……生きる価値もない『私』なんか————、あ、ああああああッッッ‼」

 

 あの時のホシノちゃんの慟哭に、私は何て声をかければ良かったのだろう。

 

「……—————、死にたい。死にたい、死にたいです……でも、死んだら……、ユメ先輩の、願い————は」

 

 —————どうして、何もできなかった?

 

「私のせいで、なのに—————私だけが楽になるだ…、なんて……グ、————、えぇェェェェ……ぁぁぁぁぁ—————」

 

 マコトは、黙っていた。何を考えているのか分からなかった。

 

「あれは、不慮の事故よ……!何故そうまでして、責任をとろうとするの……、っ!?」

 

 ぐるり、とホシノちゃんの顔がこちらを見た。落ち窪んだ瞼の奥、青と橙、二色の瞳には光が無い。

 

「—————何も、知らないくせに……」

 

 —————私って、友達一人も助けてあげられなかったの?

 

「だって……、ユメ先輩を殺したのは—————」

 

 ホシノちゃんの桃色の髪が、まるで燃え盛るように蠢いていた。友達だったというのに、私はホシノちゃんに……『恐怖』を感じた。

 

 

 

【ホシ ノ ソラ ノ サキ ユメ ハ マコト ニ】

 

 

 

「…—————自分だ、とでも言うのか。下らんな」

 

 え?と思った。どうして、マコト先輩は嗤っているの?

 

「…………は?なん、ですか…?」

「まあ良い。お前が梔子ユメを死に追いやったと思うのは勝手だ。いや————寧ろこちらとしては幸運だな。こちらから謝罪する必要が無いとはありがたい」

 

 マコト先輩は、何を言っているの?

 

「………ぇ?」

「————なんだ。梔子ユメに聞いていなかったのか。何故梔子ユメが砂漠で遭難したのか、その理由を考えなかったのか?」

 

 どうして、そんなに悪者ぶっているの?雷帝失脚の時と、同じように…………?

 

「キキッ……少し助言をしたのだよ。アビドスを救うためにどうすればいいか。砂漠化の原因、その理由を。やつは意気込んで出立していったよ。私の、助言通りに。だが、—————まさかあの程度のことで死ぬとはな。最後まで梔子ユメは、奇跡に縋るだけで、何もできない役立たずだったな」

 

 どうして、そんなことを言うの?

 

「なぁ小鳥遊ホシノ……お前の理屈なら、まず怨むべきなのは、私だろうな」

 

 待って。待って、待ってよ。

 

「お—————まぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

 どう、して————?

 

「おっと、良いのか?ゲヘナとアビドスの学区間の外交問題になるぞ。あぁ、もう生徒は一人……それも今となっては自殺願望者で、生きる気力もないのだったな。もうアビドスを救う気もない、か。失敬失敬」

 

 止めて、止めてよ二人とも!

 

「ッッ、待って!」

「…………お、前もォ!邪魔をするなぁぁぁぁぁ‼」

「違う!私は!私————は………っ‼」

 

 咄嗟にマコト先輩の前に出て、ホシノちゃんのショットガンを弾き上げる。

 

 そこから先は、記憶がない。無我夢中に戦って、ホシノちゃんと殴り合いになって。最後はどうなったかも、忘れてしまった。だけど、ずっと心の中で叫んでいた。

 

 ————ねえ、どうして、と。

 

 

 

「マコト先輩は、どうして、あんなことをしたの‼」

「生きる理由が何でも良い場合だってある。憎悪や復讐など、ピカレスクでは実にありふれたモノだろうに」

 

 ……ホシノちゃんと戦って、傷だらけでゲヘナに帰って来た。私よりも酷い怪我をしたマコトは、何故だか飄々と、あっけらかんとして笑っていた。

 

「わざと自分の身を悪役にしてまで?」

「さて、何のことだ?私は元よりこういう性格だ。どう思われようが知ったことではない」

 

 ……嫌だった。

 

「下手な証拠を残さないあなたが、『そういうことをする』ってつまり————」

「そんなわけがないだろう。私は利益があるからこの行動を選んだだけだ。利用できるものは何であろうと使う……私はそういう生き方を良しとした」

 

 ————どうして、私は力だけしか持っていないの?助けられる言葉を、持ち合わせていなかったの?

 アビドスを逃げ回りながら脱出する時、ホシノちゃんの慟哭が聞こえて来ていた。

 

『そっか…。心が邪魔になるなら、消してしまえばいいんだ————…………う、へへぇ、ヘハハハ、ハァ…………ハハハハハハハハ!』

 

 聞こえていたのに、聞こえていたのに…!そこにいたのは私だったのに、友達を助けることもできなかった…!

 私は、頑張ることをしなかった…!本当の友達なら、もっと……もっと、大切なことがあったはずなんだ……!

 

「—————歩き疲れてしまった者、道に迷ってしまった者には、立ち止まることも必要だ」

 

 ホシノちゃんに殴られた頬を撫でて、マコトは呟いた。マコト、あなたはどんな気持ちでホシノちゃんにその言葉を投げかけたの……?

 

 

【ユメ ト マコト カラ ホシ ノ サキ ヘ】

 

 

 

『ねぇマコトちゃん。もしもホシノちゃんが道に迷ったりしたならさ—————光を掲げて見せてあげて。私にしてくれた時みたいに、一度でいいの。ホシノちゃんの手助けをしてあげてくれないかな?』

『……はッ、何故ゲヘナの私が他校の内情を慮る必要が?』

『だって……—————あなたは親しくなった人の為になら、神様にだって喧嘩を売れる、天使のような人だから』

『…—————?なにを、言って……』

 

 

 

 

【ホシ ハ ユメ ニ ソラ ハ マコト ニ】

 

 

 

 そして二年ぶりに、ホシノちゃんに……いや、小鳥遊ホシノに逢った。目の前にいた、ユメさんの願っていた後輩たちを背に庇い、私は小鳥遊ホシノと相対していた。

 

「うへぇ~、こんな姿でごめんね~。『風紀委員長』ちゃん」

「……『小鳥遊ホシノ』。あなた————」

 

 かつての私たちとは逆だった。あんなにも真面目で、真っ直ぐだったあなたが昔の私のようで。怠惰で、無責任だった私が昔のあなたのようで。

 

「…—————そう。もう、あの頃には戻れないのね。あなたも、私も」

 

 

 …………—————あなたは強かった。自分の心まで強すぎた。だから心を壊すという簡単なことさえ、できなかった。

 

 ……—————だから、心を過去に捨てることをしたのね。

 

 …—————割り切ってしまったのね。

 

 ……もうあの時みたいに、友達として呼んでくれないのね……。当たり前、よね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「約束だよ」
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