ここだけマコト議長の神秘が仕事し過ぎている世界線 作:サルミアッキ
「ホシノ先輩の位置、確認できました!あそこです!あのバンカーの地下に!」
「…行こう」
「はい、急ぎましょう…!」
■
ユメの時間は終わり
マコトは嘘に塗れ
ホシは堕ち
ソラは曇る
■
苦しい。辛い。嫌。逃げ出したい。生きていたくない。無かったことにしたい。駄目。……できない。責任を果たさなきゃ……。何の?
息をするたび、世界が淀んでいくようで苦しいよ。息をするたび、喉が渇いて苦しいよ。
おかしいな。どうしてだろう。どうしてこんなことに?どうしてここにいるの?……思い出せない。何が、私の始まりだったっけ?どうしてユメ先輩との思い出が、出逢ってからの記憶が、思い出せないの……?
どうして私は、ゲヘナ学園の二人と友達になったの?どうして、あんな日々だったのに、笑えていたの?今も昔も、アビドスの借金を抱えて苦しんで、心から笑えない毎日で、どうして……こんなにも恐ろしい明日を迎えられていたんだっけ……?
未来が見えないのは怖い。今まで、明日なんて考えられないくらい、ボロボロになるまで利用されて来た。幸せな未来なんて手にできるか分からない。未来を奪ってきた大人が、嫌い。でも、私もきっと、そんな大人になってしまう。だって……同じことをした。
みんな■のせい。あの時全てを失ったのは■の……。
そうだ。だれにも頼れない。頼っちゃいけないんだ。私のしたことで、友達が傷ついた……、傷つけてしまった。もう二度とあんな間違いはしちゃいけない。
心配してくれたかけがえのない友達。ユメ先輩との仲を裏では気遣ってくれていたその友達の先輩。その二人に、私は何をしてしまった…?
今になって分かる。私は二人を……私が楽になるための、悪者にした。
過去は、覚めることのできない悪夢だ。手を伸ばしても変えることができない、私の罪だ。ユメ先輩、ごめんなさい。ごめん、なさい…。みんな、ごめん。ごめんね……。
—————刹那。その一瞬————。誰かの腕に掲げられた光が、見えた気がした。暁の中で瞬くような、一条の光————が—————。
—————ねぇ、ホシノちゃん
—————私ね、ホシノちゃんと初めて会った時、これは夢なんじゃないかなって思って、何度も頬をつねったの。ホシノちゃんみたいな、可愛くて強くて、頼れる後輩がそばにいてくれるなんていう夢みたいなことが、本当に嬉しくて……。
—————だからね、ホシノちゃんに友達ができたって聞いた時は、本当に良かった、って思ったの。いつも私はホシノちゃんに頼ってばかりだから、ホシノちゃんにも頼れる友達がいてくれたらなって。
—————え?何か言いたいの、マコトちゃん?何々……じゃあお前が頼れる先輩としてちゃんとしろ、って?ひぃん、それは、そうなんだけどぉ…。努力は、してるんだよ?うぐ、でもね、それは………うひぃ、はぅん……。
—————うーん、とにかくね?上手く説明できてないかもしれないけど……。ただ、こうしてホシノちゃんと……みんなと一緒にいられることが、私にとっては奇跡みたいなものなの。
『毎日毎日、こうして一緒にいるじゃないですか。……その、“みんな”で。昨日も今日も、明日もそうです。こんな当たり前なことで、何を大袈裟なことを』
—————はぅ……だって……。
『「奇跡」というのはもっとすごくて、珍しいもののことですよ』
—————……ううん、ホシノちゃん。私はそうは思わないよ。ねぇ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんにも可愛い後輩ができて、それで、いろんな学校の、沢山の人と仲良くできたら、その時は—————。
「……」
何か大事なものが……大切なものが、目の前を過ぎっていった。何で、だろう……。我慢なんて、していなかったはずなのに。とっくに枯れ果てたと思っていたのに、目から温かいものが垂れてきた。
(先輩はすぐそこにいるはずです‼)
(ん、壊れない……もう一度……)
(どいてください!)
(……え、アヤネちゃん?)
(こんの‼)
一体、何が……体が自由に……?夢でも見てるのかな……。みんなの声が聞こえたし、夢か……。
「声……こっちの方、かな……」
目頭を押さえて、立ち上がる。夢でもいいから……最後に、もう一度だけ……。
白い光が差し込んだ。
—————あ、まぶ、しい……。
「「「「ホシノ先輩‼」」」」
「……—————————え?」
目の前の砂漠には、数多くの生徒が立っていた。まるで、誰かを出迎えるみたいに。ゲヘナ学園の制服を着た子たち、便利屋68の社長ちゃんたち、ブラックマーケットで出会った子たち、一風変わった大人の先生。
そして……。
ノノミちゃん。セリカちゃん。アヤネちゃん。シロコちゃん。対策委員会のみんな。
「お…—————」
何で、どうして—————。
「「「「おかえり((なさい))!」」」」
■
「み、んな……?な、んで……」
ポカンとした顔で、呆気に取られている小鳥遊ホシノ。夕暮れ時の砂漠にずらりと並んだ、場違いなほど多い人影に眩暈さえ感じている。
“それだけじゃないよ。ホシノに伝えたいことがある子が来ていてね”
S.C.H.A.L.Eの先生が優しい声音で後ろを指し示した。
「…?」
「ちょ…、マコト押さないで…、あっ」
一人の生徒が、人ごみの中から対策委員会の面々の隣まで押し出されてくる。その生徒は、白髪に覆われたばつが悪そうな顔で、小鳥遊ホシノと向かい合う。
「—————」
「……、う。……その」
一呼吸をつくと、少女は意を決して真一文字になった口を開いた。
「……小鳥遊ホシノ。あなたに、ずっと言いたかった」
その少女から紡がれる言葉に、誰もが口を噤んでいる。固唾をのんで見守る者もいる。
「—————私と違って、あなたは強かった。それはあの頃に、ずっと思っていたことだった。そして……どんなに辛く悲しいことがあっても、あなたは夢を引き継いで、そしてやり遂げようとした。頑張ろうとしていた。私だったら……独りになったら、きっと投げ捨ててしまっていたと思うから」
淡々としていながらも、感情が綯い交ぜになったその言葉。後悔、羨望、そして……。
「私は弱かった。頑張れなかった。そんな私だから、あなたに聞いて欲しい」
彼女は潤むアメジストのような瞳を細め、小鳥遊ホシノのオッドアイを真っ直ぐ見つめる。
「あの頃の時間はもう取り戻せないけれど、言わせてほしい」
そして……、空崎ヒナは小鳥遊ホシノに向かって首を垂れた。
「だから、本当にごめんなさい。小鳥遊ホシノ」
夕日が空崎ヒナの白髪を照らして、絹のようにきらきらと輝いている。
「友達でいてあげられなくて、ごめんなさい」
白い髪の隙間から、何かが砂上に輝きながら零れていく。
「独りぼっちにして、ごめんなさい」
再び顔を上げ、ヒナは改めて目の前の少女に語り掛ける。
「心のどこかで、私は思っていたのかもしれない。強いあなたなら、私なんかいなくても大丈夫って……。だから、あなたの心に一歩も踏み込まなかったのかもしれない」
彼女は眦に残る涙を拭い、その一歩を踏み出した。その一歩は、許しを請うためではなく—————。
「私は臆病で、面倒くさがりで、拒絶されることが怖くて、躊躇ってばかりで……手を伸ばせなかった。私はきっと、自分が楽をするために、あなたと距離を取ったの」
それは…………あの時、言いたかった言葉。それは—————あの時、揮いたかった力。
「本当の友達だったら…—————、嫌われたって良い。友情を終わらせたって良い。だけど、友達を苦しめたままにしちゃ、絶対にいけなかった」
二年間抱え続けた後悔を、そして友達に与えてしまった苦難を、肩を貸せなかった無力さを。彼女は楽になるためではなく…………分かち合うために言葉を紡ぐ。
「私には、もう友達の資格も無い。だから、これは……罰を受けるための謝罪。あなたのためにできることを探すための言葉」
「「……本当に、ごめんなさい」」
「————え、ホシノちゃ……小鳥遊ホシノ?何で、あなたが謝るの……?」
その時……間違いなく。過去に歩み寄れなかった二人が、ようやく
「もしかしたら、あの時……私はあなたが羨ましかったのかもしれない」
小鳥遊ホシノが、心の奥底に沈んだ血を吐き出すように、俯いた顔を歪めて独白する。
「私は今こんなにも苦しんでいるのに、なんであなただけ頼れる先輩がいるのって……、今となってみれば情けない逆恨みだった。私の弱さで、あなたを傷つけた。だから、ごめん。ごめん、なさい…」
先ほどまでの空崎ヒナと同じように、彼女もまた深く腰を折った。彼女の桃色のヘイローが伏せられた瞳のようだった。
「私があなたみたいに優しかったら、あなたみたいな他人を思いやれる心を持っていたら…」
「…—————そんなことは無いわ。だってあなたには、あなたの為に傷だらけになるまで戦って、迎えに来てくれる後輩たちがいるのよ」
—————それが、『奇跡』だった。
(……そうだ。私がいなくなったら、みんなに私と同じ悲しみを与えることになる。あんなに苦しかったのに、悲しかったのに、寂しかったのに……なんでこんな間違いを選んだんだろう。私にとって、『奇跡』みたいなことがすぐ近くにあったのに—————)
「いってあげて。あの子たちの元に、相応しい言葉を」
……振り返ることなく、空崎ヒナは小鳥遊ホシノを送り出した。
「みんな……」
覚束ない足取りで、手を伸ばす。呂律の回らない口で、望まれた言葉を切り出そうとする。
——————————ただいま
……そう言おうとして。
「ただ、いま……た、だい……ぁ、ああああ……」
漏れた声は、言葉にならず……。
「う、ぁ……ぁぁぁぁぁ——————————あぁぁぁぁぁぁ————ぁぁん」
ただ……わんわんと、とめどなく零れるのは別のもの。流れていく涙が止まらない。息をする苦しみが、痞えが消えたとは言わない。けれど、…—————。
「な、泣かないでよホシノ先輩!先輩を、しっかり叱りに来たのに、そんな顔されたら……!こっちだって、こっちだって泣きたかったんだから……ッうぅ、ぐすッ」
「あらら~、泣き虫さんだったんですね~ホシノ先輩☆」
「よ、よかったです…うぅッ」
「ん、ホシノ先輩は泣き虫。でも、弱虫じゃない。今までのアビドスは、ホシノ先輩のおかげ。だから、助けに来た」
後輩たちが、助けてくれた。自分にとっての奇跡が起きていたのを、小鳥遊ホシノは今————理解した。
「あれ?アルちゃん泣いてるの?」
「う、うるさいっ…!」
「…ほんと、うちの社長は……」
「アル様、こちらご迷惑でなければ……ど、どうぞ」
子供のように泣きじゃくり終え、やがて目頭を腫らした自分に気が付き、小鳥遊ホシノの顔が真っ赤になるまでの束の間の時間。万魔殿親衛隊や風紀委員会の生徒たちはアビドスからの撤退の準備に取り掛かっていた。
だが—————、突如として警報が鳴り響く。
「………ッ!?マコト議長!索敵班からの連絡です!砂漠に—————デカグラマトンが!」
その言葉に顔を青くする複数名の生徒たち。先ほどまで泣いていたホシノもヒナも、弾かれたように顔を上げた。
「……何ィ!?こんな時にか!?……、S.C.H.A.L.Eの先生ッ!連戦で悪いが、情報を共有する!」
“……分かった。君がそういうほどの案件なんだね”
「アビドス砂漠に廃墟になったビル街がある!流石に砂漠の真っ只中でスナイパーの姿を晒すわけにいかん!そこで決着をつけるぞ!」
“詳細の説明は移動中にするよ!行こうか、皆!”
信用するに値する先生と万魔殿の長の掛け声に、アビドスとゲヘナの生徒たちは一斉に駆けていく。
「……ムツキ、カヨコ、行くわよ!ハルカ、遅れないでね!(な、なにが起きてるのよーっ!?)」
「くふふ♪これはまたタダ働きかもね~?」
「あ、あの…風紀委員会の方々がこちらにやって来てます…ど、どうしましょう。ば、爆弾を…」
「物騒なことを考えるなよ便利屋…!お前たちをしょっ引く権利が今の私たちに無いのを感謝しておけよ…!」
「ぐぬぬ……あの変な犬が私やイオリ扱いになっているのを思い出し…うがぁぁぁぁぁぁぁッッ!?」
「……ねぇ、アコってどうしたの?頭抱えて…」
「聞かないで上げてくださいカヨコさん。マコト議長にしてやられまして……」
便利屋68と風紀委員会が足並みを揃えて走り出す。
「此処から撤退って……どーいうことよ⁉」
「わ、分かりませんが……でも大丈夫です!きっと…!」
「そうですね~☆だって、今は全員揃っているんですから~☆」
「ん、今の私たちなら大丈夫」
アビドス対策委員会の生徒が、どこか晴れやかな表情で駆け抜ける。
「うへぇ……ねぇ、風紀委員長ちゃん。友達の資格が無いって、言ったよね。ごめんなさいが、おじさんのためにできることを探すための言葉だって、言ったよね」
「—————ええ」
夕暮れ時の砂漠を、小鳥遊ホシノと空崎ヒナは地平に向かってひた走る。
「ならさ、あなたが『おじさん』の友達じゃないっていうなら……、『私』からのお願いを聞いてくれる?」
互いに顔を見ることなく言葉を交わす。それは顔色をうかがう必要もない、懐かしい、かつての青い日々のように。
「もう一度…—————、『私の友達』になってくれないかな」
小鳥遊ホシノはオッドアイを困ったように細め、恥ずかしいやらむず痒いやら、形容しがたい笑みを浮かべていた。
「私からも言って良いかしら—————」
■
ユメ見た未来は訪れ
嘘はマコトに
ホシは昇り
ソラは晴れる
■
「—————。おかえり、ホシノちゃん」
「—————。ただいま、ヒナちゃん」
デカグラマトン、ビナーがアビドス・ゲヘナ・ブラックマーケット連合に撃破され、静寂が訪れたアビドス砂漠に日が落ちる。
「梔子ユメ。あなたが『奇跡』を起こしたのかは分からない。だけど、これはあなたが……砂粒程でもあなたが少しずつ積み重ねて来た、確かな『軌跡』だと、私は思う」
破壊された白い蛇の機体の上に座り、羽沼マコトは空を見上げていた。
「だが、私も一つ聞いてみたかった。私にこれを託したのは、どうしてだ?どうしてこれを小鳥遊ホシノに渡さなかった?」
羽沼マコトの手元には、『
「正しく死人に口なし、死者の書……か」
彼女の指が所在なくその手帳を捲っていく。次第に、過ぎ去った日々を巻き戻すように、かけがえのない日々を思い出すように、ゆっくりと捲られていくページ。
梔子ユメは、この手帳を日記やメモ代わりにしていたらしい。びっしりと書き込まれたページもあれば、走り書きだけが残るほぼ白紙の場所もある。だが、その一つ一つが梔子ユメにとっては借金返済の足掛かりとなる大切な情報だったらしい。現に、この手帳に記された情報によって、アビドスに眠る雷帝の遺産の探索はレッドウィンターや百鬼夜行方面に比較して容易だった。おかげで複数の遺産の廃棄が完了している。
「カイザーを欺くこともできたのは、あなたのおかげだ…………ありがとう」
最後のページには、在りし日の四人で撮った写真が挟まっていた。
「……あなたがどこまで分かっていたのかは知らん。だが、ここに記された情報を精査するまで、これを小鳥遊ホシノに渡せない。あなたも酷なことをするな……」
懐に手帳を隠し、伸びをする。水筒からカップに注いだ液体が湯気を立て、夜の砂漠の寂寥の空気に溶けていく。唇に触れる黒々とした液体が、喉を伝って臓腑に滲みる。
「嗚呼……今日は一段と苦いな、アコの珈琲……」
「クックック……流石のあなたでもその苦さは飲み下せませんか?」
不意に、声がかけられた。
「—————、盗み聞きとは趣味が悪くなったな」
「それは申し訳ございません、クックック……」
羽沼マコトが振り返ると、そこには夜の帳の闇とは異なる黒があった。
「しかし、驚きました。今まで見て見ぬふりをしてきたあなたが、アビドスに干渉してくるとは」
「何だ?カイザーへの干渉はしたが、それは契約に抵触していないだろう。お前の邪魔は、私は一切していない。現に聞いた話では、先生との舌戦の後、お前自らが小鳥遊ホシノの身柄を渡したらしいじゃないか」
「ええ、その通りです。私がここに来たのは別件でして。あなたが、このデカグラマトンを用いて行おうとしている実験に私も興味があり……」
「成る程。データが欲しいと。ならば構わない。見ていくと良い」
その黒い人影は、ゲヘナの魔王の隣へ恭しく侍る。『彼』の、喉の奥で擦れる押し殺した笑い声を気にも留めず、マコトはその実験を開始した。
「……神名のカケラは此処に。『音にならない魔なる十の言葉』を綴る。堕落の道である『
桃色の結晶が天にかざした手の上に、浮き現れる。
「汝の魔性を証明する過程である私が、虚無の背徳に至る道、『
神名のカケラに刻まれる、忘れられたはずの悪魔の真名。
「その悪魔はルキフゲ・ロフォカレ。十の地獄の七処にて、いと高き者どもの地獄に住まう。これなる偽預言者は、クリファの最下位に位置する、
カケラが粒子となってビナーの残骸に集い、禍々しい光を放ち始める。全体が心臓になったかのように鼓動し跳ねる筐体。白い体に闇が集い、痛々しい赤い脈が体表を走る。
「異名は『違いを認めぬ干渉の拒絶者』。それ即ち…………『
—————幾つもの瞳に、赤い光が燈る。
「『デカグラマトン』の
夜の砂漠に、どす黒い機械仕掛けの蛇が鎌首を擡げた。
「おお、これは……ビナーが、黒く……!素晴らしい……!」
「—————実験は一先ず成功だな。しかし、声が大きいなお前……」
「クックック……失礼、興奮が抑えきれず————しかし流石ですね。神秘において、あなたは一学生でありながら、このキヴォトスで比類すること無き知識を有している」
ビジネススーツのそのヒトガタは、拍手と共に饒舌に語る。
「貴女が保有する幾つもの神秘……かの『魔王』から別たれたそれら。例を挙げれば、『光掲げる明けの明星』、『世界惑わす年老いた赤蛇』、『高き舘の蠅王』、『焔より創られし絶望』、『人の肉体と世界を混沌より創りし叛逆者』、『華美なる拝金者』、『滅怒の大王』、『憂鬱の中傷者』、『無価値なる者』、『金星の首座悪霊』、『荒涼の地の犠牲神』、『最強の被造物』、『深淵の蝗帝』、『杯持つ大淫婦』、『黙示録の獣』—————そして『天の雷帝』。貴女はあらゆるその符号を
羽沼マコトの瞳が、すっと細まった。
「ヘレル・ベン・サハル……否、『暁のサタン』。千年難題を遊戯と捉え解き明かした『想起のデミウルゴス』を引き連れ、あなたは何をするのですか?」
「それは、『羽沼マコト』という生徒の立場でのことか?それとも、お前たち
影が蠢く。蛇のように、竜のように。666の数字が、影に炎として広がった。
「ゲヘナは、お前風に言うなれば私の実験場だ。『
ゲマトリアの二人は向かい合う。
「死の
黒服は、ゲヘナの魔王の背に広がる『漆黒の輝きを宿す黄金に染まった六枚の翼』と、『蜥蜴の鱗が生えた蝙蝠の六枚羽』を幻視した。
「だが、誰にも渡さない。あの場所も、『キヴォトス最強の神秘』も、ゲヘナの全ては—————私のものだ」
■
ゲーム画面のみが輝く薄暗い部屋。空のプリンのカップが積み重なった机の上、そこに置かれたデスクトップパソコンに、文字の羅列が流れていく。キーボードを絶え間なく叩き、血走った眼で記号を追う少女は、突如として唇を歪ませ笑い出した。
「ふ、ふふふ!さぁ、キヴォトスの娯楽に餓えた、満たされない全ての者に伝えましょう!禁断のエンターテインメント、前代未聞にして空前絶後の、究極の神ゲーの始まりよ!コンティニューは許されない、一度限りのゲームの機会を与えてあげる!この、『想起のデミウルゴス』—————……
才羽 アルティメット・オーバーゴッドが!」
『才羽アルティメット・オーバーゴッド』は、舞台俳優もかくやとばかりに、仰々しく両手を広げて立ち上がる。PC画面上には、—————『Divi:Sion』という単語が点滅していた。
「ああ、この手で世界を変えるゲームを!この神を超越した究極の才能で創ってみせる!タイトルは、そう!—————……
『
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■ッ■ム■■予■■■ぬ■■タ■■信■■■し■■
■ッ■ムの■■予■■ぬ■ータ■受信■■■し■■
シッ■ムの■に予期■ぬデータ■受信さ■■した。
シッテムの箱に予期せぬデータが受信されました。
—————奇跡は起きなかった。■■■ちゃんの言った通りだった。私は責任を持たないといけなかった。
—————そのせいで、■■■ちゃんを苦しめた。辛かったよね、痛かったよね、怖かったよね。駄目な先輩で、ごめんね。
—————だから、■■■ちゃんが目醒めるまで、私がここを守るよ。
—————また、来るね。■■■ちゃん……。
—————………………。
ホルスは足の自由を奪われ、
—————ぐ…、騙されてたまるもんか、どいつもこいつも……。
—————おい!?…………大丈夫か、お嬢ちゃん。腹減ってるなら……ほら、これ。
—————何よ、犬のオッサン。私のことなんかほっときなさいよ……。何よこれ…………ラーメン?
バステトは戦いに明け暮れる
—————これで、良かったのでしょうか……?
—————どうかしたの?セミナーの仕事は慣れたかしら。
—————え、あ…はい。大丈夫です、会長。
トートは千年の栄華窮める
—————規則違反者め……、今日こそお前に首輪をつけてやる‼
—————ん、イオリ。私は私より強い人にしか従わない。空崎ヒナでも連れて来て。
—————お、お前ぇぇッ‼
アヌビスは地獄にて
—————初めまして、ですね。私はハイランダー鉄道学園生徒会長……、『十六夜ノノミ』です。借金返済についてのことで、あなたに耳よりの提案を一つ。興味深いかと思いますよ?
ネフティスは抗うこと無くその責務を引き継ぎ—————。
—————今更、セイント・ネフティスがこの学校区に何の用?もう、アビドスにはめぼしい利権は無いと思うけれど。
—————だからこそです。私はセイント・ネフティスの人間としてではなく、ハイランダーの生徒会長としてでもなく…………一個人として、あなたと手を取りたいと思っています。
—————アビドス高等学校に一人残った最後の生徒……『
死なず、生き残ってしまったオシリスは、一体何者になるのだろうか————。
今日も、一歩ずつ生きていこう