スペシャルウィークは激怒した。
先日勝利したレースの賞金で乳牛を買おうとしたら止められたのだ。
「なんでダメなんですか!!」
「だって、牛さんを飼うのって大変でしょう? 世話できないと思うわ」
「できますよ! 家でずっと飼ってましたから!」
ルームメイトのサイレンススズカが宥めようとするが、スペシャルウィークの怒りは収まらない。
「飼う場所もないじゃない?」
「ありますよ! 川を渡って少し走ったところに牧場ありますから!」
「東京のど真ん中なのに?」
「東京のど真ん中なのに!!」
「ウソでしょ……」
府中近辺には意外と牧場があるのをロードワーク中のスペシャルウィークは目ざとく見つけていた。
東京農工大学やモグサファームなど、牛を飼っている牧場はちょこちょこあるのだ。
「東京にはセブンイレ〇ンだって○ーソンいっぱいあるんですから、牛だって飼ってもいいはずです!!」
「どうしよう、スぺちゃんの言ってることが全く理解できない……」
「北海道ではセブンイレ〇ンなんて100km先にしかなかったんですよ!」
「ウソでしょ……」
近くにコンビニがありすぎていまだにどこに行っていいかわからなくなるスペシャルウィークの八つ当たりである。
「なので、怒った私は部屋で牛を飼うことにしました!」
「ウソでしょ!?」
「もうついてます。花子です」
「もぉ~」
「ウソでしょ!?」
そうして唐突に部屋に牛を引き入れたスペシャルウィークにサイレンススズカは困惑した。
どうしていいかもうわからない。というか二人で住むにも結構狭めな部屋なのに、牛が来たら本当に狭くてしょうがない。
あと臭い。
サイレンススズカは泣きたくなった。
「スぺちゃん。牛はさすがにいやよ……」
「そうですか……」
サイレンススズカの全力の拒否にスペシャルウィークはションボリした。
「こらっ! 寮内に動物をつれこんじゃだめじゃない」
「わっ、フジ先輩ごめんなさい!」
さすがにこの大きさの動物を連れ込んだことは寮長にもすぐばれた。
「やっぱりだめですか?」
「寮内で動物を飼うのは原則禁止だよ」
「え、でもエルちゃんは部屋で動物飼っていたような……」
「そういえばエアグルーヴも部屋で時々猫にえさを上げていたような……」
「ふむ、なるほど…… なんにしろ部屋で動物を飼うのはダメだよ。牛は理事長とかと相談してきなさい」
「わかりました……」
こうしてスぺが東京でべこを飼う計画は失敗に終わった。
そしてマンボを飼っていたエルコンドルパサーと捨て猫を拾ってきたエアグルーヴも寮長にバレてしこたま怒られることになったとさ