学園一堅物で真面目なウマ娘は誰かと言われたら、生徒会長のシンボリルドルフを挙げる生徒は珍しくないだろう。生徒会副会長のエアグルーヴも、シンボリルドルフのことは真面目な人だと思っていた。
「エアグルーヴ、屋台にラーメンを食べに行こう」
「……は?」
そんなシンボリルドルフが消灯時間後、いきなりエアグルーヴを連れ出そうとするのは、エアグルーヴにとって予想の範囲外だった。
「もう門限は過ぎていますが」
「大丈夫だ、鍵はある」
何も大丈夫じゃないが、マスターキーをもってどや顔を決めるシンボリルドルフを止めるのは難しいのは、エアグルーヴも理解していた。
きっとこの横紙破りも何か重要な意味があるのだろう。
そう思ったエアグルーヴはしぶしぶシンボリルドルフに付き合うことにした。
「はい、ウマ盛チャーシュー麺二丁、餃子20個」
「ふむ、これが屋台のラーメンか」
誘ったシンボリルドルフは全くのノープランだった。
どこの店に行くかも決めていなかったので、エアグルーヴがファインモーションから教えてもらったおすすめのラーメン屋台に連れていくことにした。
ルドルフはラーメンの注文の仕方もわからなかったので注文する料理を決めたのもエアグルーヴだ。まったく、ルドルフはどれだけ箱入りのお嬢様なのか。よく考えたらシンボリ家のお嬢様中のお嬢様か。そんな内心でセルフツッコミをしてしまう程度にはエアグルーヴは疲れていた。
「それで、なんで急に屋台のラーメンを?」
「ほへ? ほへもへほへほへ」
「食べてから話してください」
口いっぱいにチャーシューを頬張りながらしゃべろうとするルドルフにエアグルーヴが待ったをかける。
ハムスターのように間抜けずらなルドルフを見ると、何となく毒気を抜かれてしまう。
「いや、先日ファインモーション君が門限破りで怒られていただろう」
「はい、後始末が大変でした」
寮長からだけでなくSP隊長からも怒られたファインモーションは目に見えて落ち込んでいた。ルームメイトというだけでそのお叱りに巻き込まれたエアグルーヴにとっては迷惑千万であったが。
「で、理由を聞いたらラーメンを食べに行くためと聞いたのでね」
「実地調査ですか?」
「いや、単純にラーメンが食べたくなった。ファインモーション君も進めてきたのでね」
完全な私欲に基づく門限破りであった。
「会長は私欲でそういうことをしないと思っていました」
「たまには羽目を外すのも、他の学生を理解するには重要かなと思ってね」
「ふむ」
どことなく生真面目な意見が返ってきてやっぱり会長らしいと思いなおすエアグルーヴ。
「そういう意味では君には悪いことをした、エアグルーヴ」
「いえ、たまには問題ないでしょう」
「それに、キミと食べると料理がよりおいしく感じるからね」
しっとりとした感じでそういわれると、エアグルーヴはどことなく恥ずかしくなって赤面してしまうのであった。