現代超能力バトル世界に転生した俺の寿命はあと一日 作:テムテムLvMAX
かの合衆国大統領は、超級の超能力者だ。そんな噂がまことしやかに囁かれる。
あのアイドルは、実は超能力で変身した男だった。そんな事件が業界に走る。
超能力者集団が、とある犯罪組織を壊滅させ表彰を受ける。そんなニュースが一般家庭に流れる。
この物語は超能力が日常にありふれている現代世界で、なりたい自分になろうとする若者たちの悪戦苦闘を描くものである。
___『サイキック・グラフィティ』
の、世界に転生したのが俺だ。
記憶が戻ったのはほんのつい先日で今も曖昧になっている事もあるが、俺の頭を整理するために状況を書き起こしていきたい。
ここは冒頭で語ったように『サイキックグラフィティ』の世界、俺の転生前の世界で有名な超能力青春ラブコメだったもの、主な舞台は超能力大国となった日本にある国立碧蘭高等学校で、その1年生が主人公になる。
碧蘭高校で繰り広げられるドタバタを解決しながら仲間を増やし、時には幼馴染を、時には転校生を落としつつ卒業を目指すのが物語の中心にある。
その主人公は蒼葉 進(アオバ ススム)、誰しもが超能力を持つ世界で稀な後天的に超能力を得た男。能力は『蓄積』、しかしその本当の能力は……それが明かされる所で俺は転生していたようで、そこから先が思い出せない。
と、言った所で俺が記憶を取り戻した場所は碧蘭高校……ではなくてその附属中学のグラウンドだった、どうやらボールに頭をぶつけ気を失い、その時の衝撃で思い出したようだ。転生したことを簡単には信じられず1週間は寝込んでいたがここが『サイキックグラフィティ』だと受け入れるしかないと思うようになった、そうとしか言えない要素が日常に溢れているからな。
そんなこんなで俺は転生したことを受け入れている、転生したことを悲しむよりこの世界で楽しむことに力を入れる方が前向きになれる、それとだ、頭にボールを受けた衝撃で記憶以外にもこの体に眠っていた超能力も呼び起こされたらしく、今日は病院にその検査に向かう。これも楽しみの一つにしている、好きで読んでいた物語の中でその力を得るというのは夢がある、ロマンがある、空想の中にあるものが全部現実になったらそれはもう心が沸き立つんだ。
「大変申し上げにくいのですが寿命があと一日ですね」
超能力の検査に来たら余命宣告されたでござる。死ぞ。
そして我が家庭に駆け巡る衝撃は測り知れず、俺の寿命があと一日である事を宣告された母は世界中から治療系超能力を持つ人間に片っ端から連絡を取ろうと奔走し、父はぶっ飛んだ、何もおかしいことはない、文字通り能力を暴走させぶっ飛んだ、3ヶ月入院。
そして俺はというと、暴走した両親を無視して医者から更に詳しい話を聞いていた。
「先生……どうやってもそれは治せませんか?」
「現状尽くせる手を尽くしても、どうやっても寿命は一日です。寿命があなたの能力と結びついていることが原因と思われます」
この医者も大概冷静だな、父も母も暴れまわっているというのに。
医者いわく能力が寿命と結びついてる事には治せないと言う、じゃあ能力を消せばいいかと言われたらそう簡単な話でもないのだとか。
「良いですか? 超能力はあなたの脳が核となって発現する物理現象なんです、熱が出たり風邪を引いたり、過度なストレスを与えられたり、そういう軽い物や大病して脳に負担が掛かると能力はほぼゼロになります。それなら能力は消せるのかと言えば答えはNOです、能力は脳が持つ機能の一つとして根づき重要な部分を占めています、無理に能力で消したりその部分を摘出すれば人は廃人になります」
「じゃあ俺の寿命が能力と結びついてるって話にそれがどう関係するんです?」
「さっき言ったように脳に負担の掛かることの中に能力の行使も含まれます、君の場合はかなり特殊な症例で世界的にも片手で数えられる大変に珍しい病、病名を『キール・ヨハン・フラメス』と言います、この名の由来はこの病に掛かった3人の研究者から付けられましたが……今は良いでしょう。
辛い話ですがよく聞いて下さい、この病は能力が後天的かつ驚異的な人間に発症し、能力に馴染んでいない脳の大事な領域を自分で壊してしまうのですよ。これは脳が眠っていた能力のために無理矢理リソースを割くために起こる回避し得ないもので、誰にでも起こっていることなのですが、能力が脳と比べ大きすぎると、こうなるようです」
「つまるところ、俺の能力に脳が追いついてなくて、壊れるってこと?」
「簡単に言えば、そうなりますね、君のその冷静さは良いことですが、僕からすれば信じられない状態ですよ」
と、締めくくり医者は話を終えた。俺から質問したいことは大体聞けたので最後に俺がなんの能力を持っているかを聞くことにした。
「あぁそうでしたね、元々は君の能力検査でしたね、えぇと……そう、時間干渉系能力の、5段階評価の内の1です。最低評価と言えど時間干渉系は強いのですが……それ故に……と言う奴ですね……」
あまり詳しい検査結果ではなかったが、これはごく一般的なものでどんな能力は使って初めて詳細が分かると言う、例えば炎系能力と判断されてもそれがビーム状に放たれるものか遠隔で火を起こすものかは使ってみなければわからない、と言うことだ。
もう病院で出来ることはない、あとは家で好きなように過ごしてほしいと言われ俺はそれに従った。
結局最後まで暴れ散らかした両親を鎮圧してくれた警備員から引き取り家に帰った。
そして自分の部屋で人生最後の時を過ごすため、ベッドの上で物思いにふけっている。
前世のことはよく覚えていないし、記憶を取り戻してすぐにもう死ぬというから、死ぬことへの忌避感がかなり薄くなっている自分に驚いている。明日このベッドで息を引き取るのだろうか、それとも朝ご飯の途中かな、そんな事を考えては笑った。
そんな俺は時間干渉系能力という能力の中でも強い力を運良く手に入れた、だが、そのせいで死ぬらしいから超能力と言うものも使い勝手が悪いんだな、何が“超”能力だ、超えすぎて死ぬじゃないか、とんだ皮肉だよ。
「死ぬ前に見たかったな、ナターシャちゃん」
ナターシャちゃんはサイキックグラフィティのヒロインの1人で、北欧系の顔立ちのイケメン美女だ。主人公のライバルかつ主人公に恋する乙女、かわいいよあの子は、雪のような肌に艷やかなブロンドヘア、蒼い目は引き込まれそうな魅力がある。それが現実になったならそれはもう……どうなんだろうな、転生したら実写化失敗ってパターンもあり得るかも知れない、ヤダな……
そう思うと気になってきたな、リアルのナターシャちゃんは一体どれほどの女性だろうか、気になって夜も眠れない、まぁ今寝たら朝には死んでるんだが
「生きる理由出来てきたな……よし」
本来なら家庭での能力使用は法令により制限されるが、ある程度は黙認されている所がある。なので俺も黙認される程度に能力を使ってみる事にした。
明日死ぬのに何考えてるかだって? そりゃ時間干渉系能力だからワンチャンあるかなって思ってるんだよ。
「さて……」
能力を使うには色々とコツがある、人によってクセがあるから一概に使い方は統一されていないようだ、例えば耳たぶを触ることが能力使用の合図だったり指パッチンが合図だったり叫ぶのが合図だったり色々ある、原作からしてそうだったからな。
で、ある程度無意識的に体が知っているので目をつぶり、ピンときた事をするといい、そう主人公の師匠は言っていたので、それに習い俺もそうする。
目をつぶり、一分……二分……五分……さて、どれだけの時間が流れたのだろうか、まだ感覚が来ない。
更に五分……二十分……一時間、来た……!
ピンときた、すかさずその行動を起こす!
「……あれ?」
……ピンときた行動は、こめかみに人差し指と中指の腹をつけることだった。あの某漫画の瞬間移動のポーズによく似ているがそれはどうでも良くて……おかしいな、今たしかに発動した感覚があった。今までにない脳の躍動感と言うか普段刺激されない部位への圧迫感と言うか……なんとも言えない負荷感があったのに、能力が働いていない……?
それともあの感覚は失敗だったのかと思いベッドから立ち上がろうとして側に置いてあった机から目覚まし時計を落としてしまった……と、思ったら……
「浮いている? いやゆっくり落ちているッ! そうかッ俺の能力はそう言うことかッ!」
手に当たって落ちていく目覚まし時計は非常にゆっくりと地面に向かって進んでいく、対して俺はそれをいつも通りに掴んで元の位置へ戻せた。つまり俺の能力は『加速』それも時間の加速だ!
「加速かぁ〜、へ、へ、へっくしゅ!」
くしゃみが出てしまったが……おや? 飛沫がゆっくり進んでいる……待てよひょっとして加速じゃないのか……? 仮に加速しているなら俺から放たれたものは普段通りの速度で俺から見えるはず……俺が速くなったんじゃなくて周りが遅くなっているのか……?
そう思うとそんな気がしてきたので他にも色々と試した、枕を投げたり目覚まし時計を持ち上げて投げてみたりやった結果
「これ減速だわ」
と結論に至った。
時間の減速、それが俺の能力だ。
「そうかそう言うことか、神様ってやつがいるならかなり粋だね、回りくどいけどさ」
この能力を自分を対象にして使えば、肉体の時間を減速して寿命が伸ばせることになる、そうすると回りより遅くなるが……時間干渉系と言うそもそも概念的な能力だからそこは調節できるはずだ
「おれ、誰よりも長生きできるな……」
ともあれ、明日までに自分の肉体の時間だけを減速出来るように調節出来ないと死ぬんだがね。
この晩は寝る間も惜しんで能力の調整をし続けた、命を懸けて命懸けの能力操作を特訓して夜が更けていく……
翌朝、元気に登校する俺の姿があったと言う。
両親は狂喜乱舞してまた通りがかりの警備員に鎮圧されていたよ、警備員つえー!