現代超能力バトル世界に転生した俺の寿命はあと一日 作:テムテムLvMAX
ここでいきなりだが『好き』という感情について考えたい。
俺の主観から『相手を肯定し心惹かれる感情』とまず暫定的に定義さてもらう。世論上この概念は非常に曖昧であるため容赦願いたい。
上記の定義を使うと俺は澪崎玲沙は好きである、これは変えられない事実であり否定する要素はない。
また澪崎玲沙も俺、時月宗志を好きであり、事実であるのは本人の口から聞いたとおりである。
だから何だよ俺は付き合うとか思っても無かったよ定義した所で俺は澪崎玲沙を好きだが付き合うとか恐れ多いこと出来ねぇのよ。
「ごめん俺はお前と付き合えない」
「ここで振るとか有り得ないからね、返事はYESかハイ」
なんだコイツ無敵か? お前恋愛強者通り越し恋愛グラディエーターだよ、その返答はあまりにも横暴過ぎる。
「ねぇトッキー、私が君にされた事思い出してみ、1から全部」
「何したっけ……いちいち覚えてねえ」
なんと玲沙は椅子から立ち上がり俺の膝上に腰を下ろした、近づく顔と顔、僅かな呼吸音ですらお互い聞き取れる位置にいる、その腕は肩から首へ回され俺にもたれかかる、その未熟ながら色香漂う仕草や熱いくらいに感じる体温が伝わってくる。
ちょっとこれかなり青年向けだねぇ! 原作少年誌だけどなぁ! 君そんなSexyなStyle押し付けていくキャラじゃなかった気がするんだけどなぁ!
「ふふふ……興奮してる?」
「そら……お前の顔近いし……」
「これでもカリスマモデルになるくらいには顔と体は自信あるんでね〜、バレンタイン様から教わったオトコの落とし方その1は効果があったみたいね」
や っ ぱ り ア イ ツ か !
碌な事しねぇなあの人、倫理観母親の中に忘れた? なんでそんな事するのそう言うことばっかり……木谷さんにチクってやろう。
「なんだ……バレンタインさんに吹き込まれたのか……じゃあさっさと降りてくれよ、あんまり外でこう言うの良くないと思うぞ」
「つまらない男ね」
「男心を必死に抑制して冷静さを失わないよう努めてるだけですが?」
「そういうとこも好き」
「そこを説明してくれ、なんで俺なんか好きになるんだ」
話のついでに玲沙の肩を掴んで引き剥がそうとするも頑として動かない、動かざること山の如し、俺は膝の上に山を抱えているのか!
「そうだねぇ、同じゲームが趣味でしょ? それに誘拐犯から助けてもらったし、私のために命懸けだってバレンタイン様言ってたし「え?」それに入院中は私のことばかり気にしてたって聞いたよ「ふーん?」そんなに想ってくれてると思うとこっちもその気になるのは当然じゃない? 好きになるなって言うのが無理な話だよね〜」
「その話バレンタインさんから聞いたんだろうが、後半2つは嘘だぞ、命懸けだったのは俺が死にたくなかっただけだし、入院中にお前のことばかり話してたわけじゃないし……ゼロじゃないけどな……」
「それでも良いよ」
「なんでそうなる」
「だってもうその気なんだもん」
恋は盲目だって本当なんだな……ここまで素直に好意を伝えられると俺としてはなびきそうになる、なびいてしまっては俺の苦労とこの先の主人公の物語が水の泡だろう、俺が主人公なら寝取られどころの話ではない……
非常に不本意だが俺が付き合うことで起きる変化は好ましからざる影響を及ぼす可能性がある……というのは表向きの話、本音を言えば俺と付き合っても良いことがないから胸を張っていい男と言える蒼葉進と付き合ってほしい。
「俺より良い男いるぞ、本当に」
「そんなに振りたいの?」
「いや嘘じゃない、本当にそうなんだよ」
仕方ない、最後の切り札をここで使うか……
「昔から好きな幼馴染の男、居るんじゃないのか?」
「……えっ、なんで……知ってるの?」
これに驚いたようで流石に離れていく、俺は更に言葉を続ける
「人に言えない能力があってね、これは誰にも言ってないんだけどそれを使えば過去の事をすこしだけ知ることができる……無断で見たことは謝る、でも断るならこれしかないと思ってな」
「デュアルホルダー……?! いや、そんなことより……なんでそんな……私だって言われるまで忘れてたのに……今更そんな事言われてもアイツは居ない、私が一方的に片思いしてるだけだもの……だから近くで私のことを好きになってくれる人と付き合うのはおかしいの? 私は好きになったのに……それがおかしいの……ねぇおかしいのは私なの!?」
「いやそんなつもりは」
「うるさいっ! ……もう知らないッ!」
彼女は俺を突き飛ばし激情のまま走り去っていった。
涙を浮かべた目を見て引き止める声も、手も出せず、俺は見ているだけしか……
俺はそんなつもりじゃない……つもりじゃなかったのに……俺はなんてことを……
「秘密があると思ってたが……なるほどね、中々……」
「バ、バレンタインさん!? いつからそこに……」
「最初から」
そこへ現れたのはバレンタインさん、事の一部始終を観ていた白の女傑はニヤリといつもの笑いを……していなかった。普段の喜劇じみた振る舞いは鳴りを潜め、突き刺すような視線、真剣な顔で俺を見ていた。
「いやすまない、私は君の特異性を舐めていたようだ。それと同時に彼女にも悪いことをしたよ、だが謝罪は後だ……彼女を追おう」
「バレンタインさん……?」
「乙女の心を癒やすには、どうするべきか聡い君ならわかると思うが? これは不慮の事故、互いに思う故に起きた事故だよ」
「でも俺は」
「まだ隠していることがあるのは承知だよ、それでも、それを頼りに人生を歩むのが君の本当の人生なのかい? そんなことに縛られて本当の人生なのかい?」
本当の人生……そんな事、言われてもわからない。本来なら居なかった俺が、本来あるはずだった物を壊すのはたまらなく嫌なんだ。誰だって本来あるはずの事を壊したくないし、壊されたくないはずなんだ、俺はそんな人間になりたくない。誘拐犯から助けたのは不幸は見過ごせなかったからだけど、本当はアレもどうかと思っているんだ。
「まだ踏ん切りがつかないのかッ!」
ぐん! と胸ぐらを掴まれ、鬼顔負けの眼力で俺を睨みつけるバレンタインさんの目は怒りと悲しみと何かを失った色に染まり、アルビノの赤い目は今だけは黒く見える。
「よく聞けっ! お前が抱えてるもんで世界はどうにも動かせると思ってんのか! 甘いな! 仮に未来が見えて時間が自由に動かせてもこの世界に生まれたもんは変わんねぇんだよ! 行けよ若人! 例え人に言えない秘密があっても個人が持ってる秘密程度この世界は受け止めてくれるッ!」
地面へ降ろされ背中を思い切り叩かれ店から体が飛び出した!
とても痛い、骨が折れたかと思ったが……やっと目が覚めた、バレンタインさんの言うとおりだ。
俺はこの世界は原作がある作られた世界で俺はいてはいけない存在だと思っていた、同時に分かりきった世界だと高を括って上から目線だったんだ。
そうだ、そんな事この世界には関係なかったんだ、この世界に生きる一員となった今では些細な問題、問題にすらならないことだった!
あぁそうだ! この世界に生きるのは現実の話だ! 俺は全てに向き合わないといけない、現実と向き合わないといけない!
「俺、目が覚めました。俺の想いをぶつけて来ます。甘ったれた男の精一杯の感情を彼女に伝えてきます!」
「行きな、誰でもないソウシの言葉を待ってるんだからな!」
俺は全身全霊で澪崎玲沙を探した、場所の検討はついてる、彼女がゲーセン以外で向かう場所は近所の本屋だ、自分が掲載された雑誌やゲーム雑誌を買い漁っているのを知っている。
ものの数分で到着しすぐに見つけた。
「玲沙!」
「……!」
「俺が悪かったよ! 俺が全部悪かった! 何もかもわかった気で君のことを蔑ろにした俺が全部! だけど聞いてほしい! 俺は澪崎玲沙が好きだ! 実は俺も同じ趣味、同じ感覚で話せるお前に心底惚れていた! だから、俺よりふさわしい人がいるからと身を引こうとしたが、考えを変えた! 君が俺を好きなら俺も君が好き! それでいいじゃないか!」
__だから! 付き合おう!
「ソウシ……! うん……、うんうんうん!」
俺は駆け寄り、彼女も駆け寄り互いにハグを交わす。良いじゃないかこれで。
原作上等だ、青春ラブコメなんだからこういうことだってあるさ、『サイキック・グラフィティ』に新しい展開が増えただけだ、俺という転生者が新しく増えた、それだけのこと。
蒼葉進との関係は残念だが彼だって彼女が幸せなら文句はないはずだし、何より俺は不幸にさせる気はない。
俺の決意は固いぞ、どこまでも楽しく生きていこう。二人で。
「アレ……澪崎玲沙……?」
「あの男は? 盛大に告白してたけど……!」
「ドラマの撮影じゃね?」
「そんな事言ってたっけ」
「じゃあ……」
「ただの告白って事……!」
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」」」」
「「あっ」」
俺と玲沙の声がきれいに重なった瞬間だった、そう、ここは公共の場、人目が多い場所で盛大に告白したから翌朝の週刊誌がとんでもない事になったのは、想像に易いところだったんだけど……
『大人気カリスマモデル澪崎玲沙、一般男性から書店プロポーズ!』
『一般男性は英雄か? 澪崎玲沙を誘拐犯から救う!』
『世界的超能力者バレンタイン氏とも関わりあり! あの一般男性は本当に一般男性なのか!』
俺の記事多くね? エグい勢いで週刊誌の表紙を飾っていく俺のモザイク処理された顔をただ見ているしかなかった。バレンタインさんは笑ってるし木谷さんも民事不介入とか言って遠回しに面倒くさいと言われ玲沙に至っては芸能界入りしよ? って言ってくるしで……
俺の人生、どうなっちゃうの?