「────ハンス?」
「え?ゲルト?……え?」
おれの口から久しぶりに漏れ出たのは、そんな間抜けな声だった。
どうにかダンジョンから脱出しようと、入り口を塞ぐ岩たちの撤去を始めてからしばらく。突然岩が崩れて日の光が差し込んできたと思えば、聞こえてきたのは自分の名前を呼ぶ声。
眩しさに目を細めながら声のした方を見るも、逆光のせいではっきりと顔は見えない。だが、一瞬聞こえた声と陽光を受けて燃える赤い髪は、間違いなくゲルトのものだ。
……なんでゲルトが?頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされる。あれからどれだけ時間が経っているのだろうか?どうして彼女がここにいるのだろうか?何をしていたのだろうか?
混乱した思考はうまく働かず、言葉すらも出てこない。
けれども、固まってしまった頭に反して、ふらふらと足は前に出て。そんなおれに向かって、震える手がゆっくりと差し伸ばされて。
徐々に距離が縮まっていこうとしたその時、そこに突然別の声が響いた。
「ゲルト?どうかした……っ!?」
ぽっかりと空いた穴から見えるシルエットがふたつに増え、聞こえてきた男の声が驚愕に染まる。
「……ハンス……なのか……?」
おれに向かってそう問いかけたのは、ハインツに違いない。ゲルトだけでなく、彼までもがこんなところにいるなんて。もしかすると、イングリットまでもがいるのだろうか。
……そんなことを考えたおれは、明らかに頭がきちんと働いていなかった。突然のことに混乱し──有り体に言えば、浮かれていた。
自分が、バケモノであるということを忘れて。
「…………いや……そんなわけがない。そんな……都合のいいことが……!」
緩み切った思考を切り裂くように、金属の擦れる高く澄んだ音が響き渡る。目に映る、きらりと光る白刃は、今まさにおれが剣を突きつけられていることの証左だった。
「!?貴方、一体何を……」
「……下がれ、ゲルト。魔族には人間に化ける奴がいると聞いたことがある」
ハインツの、その言葉に。おれはようやく思い出すことができた。果たしておれが、どんな存在だったのかということを。
普通に考えればおかしいのだ。あの状況で生きている人間などそういるはずはない。ましてや、それが魔術を使えない人間ならなおのこと。
熱に浮かされていたようだった頭が急速に冷えていく。冷静な思考が頭の中を巡っていく。
今、ハインツは魔族と口にした。確かに彼の言うように、人間に化けることのできる魔族はいる。それがダンジョンの中にいて、魔物を嗾けた後に出てきたというのは、少なくともおれが生きていたというよりはありそうな出来事だ。
……それが、良いのかもしれない。元々、もうみんなに会うつもりはなかった。ハンスという人物はあそこで死んで、それで終わり。そうするつもりだった。
……これまでずっと、そうしてきたように。
だから、これは何かの事故のようなものだ。おれがダンジョンからの脱出に手間取ったのと、みんながどうしてかここにやってきたことで起こった事故。
けれども、それもおれが魔族だということにすればここで終わる。
みんなのために残って死んだハンスの姿かたちを真似た卑劣な魔族を、倒して仇を取るという形で。
おれは、改めてハインツの方を向く。
「っ……!」
こちらに突き付けられていた剣先は、震えていた。
……そうだよな。魔族かもしれないと言ったって、仲間と同じ顔をした奴を躊躇なく斬れるほどハインツは冷血な奴じゃない。震えた剣先からは、彼の迷いや葛藤、微かな願望が伝わってくるようだ。
それでも剣を向けることを止めないのは、きっと決意の重さ故だろう。表情は見えなくとも、確かに伝わってくるものがある。
その様子を見てわかった。ハインツは、ゲルトは、きっとイングリットも、既に受け入れていたはずだ。乗り越えようとしていたはずだ。
ハンスという人物の死を。
だったら、それ以上何かをする必要はない。おれはただ、この場から退場するだけでいい。
それがきっと、本来人間のあるべき姿なのだろうから。
そうして、おれはハインツに向かって飛び掛かろうとして。
「違う!」
ゲルトの叫び声に足を止めた。
「魔族なんかじゃない!ハンスよ、絶対に!」
「ゲルト!あれで、ハンスが生きてるわけ……!」
「ハインツ?ゲルト?今、ハンスって……」
言い合いを始めた二人の声に、もう一つ少女の声が混じる。イングリットの声だ。
「来るな、イングリット!」
「いいえ、来なさい!」
「?どうしたの、二人とも。そんなに叫んで…………ハン……ス……?」
そうして、白い少女の口からも、その名前が漏れ出る。
もう二度と揃わないはずだったパーティーメンバー。その全員が、こうして集まった。
そんな、イングリットがやってきたことによって静まった場に、ぽつりとゲルトの声が零れ落ちる。
「……名前を」
「…………」
「名前を、呼ばれたの」
「…………あ」
喉の奥から、小さな声が漏れる。
そうだ。最初に、ゲルトに名前を呼ばれたとき。おれがつい呟いた、彼女の名前。
「……もう、二度と聞けないと思っていた声に」
ゲルトの頬を、何か光るものが伝って落ちる。
それを直視して、ドクン、とおれの心臓が大きく跳ねた。
ずっと見ようとしてこなかったもの。知っていたのに、知らないふりをしていたもの。
「ハンスっ!ハンスだよね?!良かった……!」
イングリットが、目尻にキラキラと光の粒をたたえながら叫ぶ。
「……ハンスが、生きてて……本当に……!」
「……ああ、クソ!」
悪態をついたハインツが、懇願するかのような声を絞り出す。
「……なあ。もし、お前が本当にハンスなら。……何か……何か、言ってくれ……!」
残された者の、失った者の悲しみ。それは、どれだけ時間が経っても決してなくならないものだ。
時間が解決してくれるなんて嘘っぱちで、心の中には永遠に残り続ける。それは他の誰でもない、おれが一番よく知っていることだ。
時間が解決してくれるように見えるのは、ただその気持ちを心の中へと押し殺しているだけで、奥底ではずっとあの日のことを思い続けているって。
何度も、考えたことがある。これは何か悪い夢なんじゃないか。目が覚めたら、またいつも通りに会えるんじゃないか。
何かの間違いでもいいから、もう一度あの人に会いたい。そう、考えたことが。
おれは、みんなのことを見る。
心臓が、痛いほどに脈を打つ。口の中が、からからに乾く。
ハインツが、イングリットが、ゲルトが。まだ、こんなおれのことを求めていてくれたのならば、おれは。
「…………ただいま、みんな」
「っ!」
その言葉を発した瞬間、赤い影がダンジョンの中へと飛び込んでくる。慌てて両腕で受け止めると、彼女は何も言わないまま胸に顔をうずめた。
ぽたぽたと落ちる熱いものの感触を感じながら、おれはそっとその背中を撫ぜる。
「……ごめんな、ゲルト。色々、辛いことを頼んで」
「…………馬鹿」
「ハンスー!」
と、大きな声と共にこちらに飛び込んできたのはイングリットだ。ゲルトごと抱きついてきた彼女は、涙を流しながら大輪の笑顔を咲かせている。
おれはいつかのようにそんな彼女の頭を撫ぜると、謝罪の言葉を口にした。
「イングリットもごめんな。心配かけて」
「……ううん。また、ハンスに会えたから。それで十分だよ」
そう言って微笑むイングリットは、なんだか記憶の中よりも輝いて見えて。随分と、大人になったような気がした。
「……あ、でもやっぱりもっと撫でてほしいかも」
「……ああ。いくらでも撫でてやるさ」
……やっぱり気のせいかもしれない。
「……はあ。あれで生きてるって、お前…………」
もう一つ。近づいてくる足音に、おれは顔を上げてその方向を向く。
ハインツはまるで呆れたと言わんばかりにため息を吐くと、そんな言葉を漏らす。
思えば、彼には相当に酷なことをさせた。リーダーという立場を押し付け、非情な決断を強いて、挙句再会してもなお剣を向けざるを得ない状況。その心労は、並大抵のものでは無いはずだ。
「ハインツ……」
だから。おれがすべきことは彼に謝ることでは無い。
「……ありがとう」
ただ、感謝することだ。耐えてくれて、踏ん張ってくれて、そしてもう一度会ってくれて、ありがとうと。
「っ!」
ハインツの瞳から、涙が滂沱として流れ出す。今まで堪えていた分が堰を切って溢れ出したかのように、止まることなく。
「……ハンス……!良かった……!本当に……俺は……!」
肩に手を置きながら震える口で言葉を紡ぐ彼の姿に、おれは少し目線を外して上を向く。
身体のあちこちから熱が伝わってきた。自分のものとは違う熱。誰かと触れ合うことで、初めて感じることができるもの。
久しく忘れていたその温もりが、どうにも温かくて。おれはしばらく目を閉じて、その熱に浸った。
「……でも、どうやって生き残ったんだ?」
ダンジョン内でひとしきり再会を喜んだ後、地上に出たおれたちは街に戻るために歩みを進める。その中で当然飛び出してきたのが、ハインツが口にしたこの疑問だった。
「……まあ、気になるよな」
正直なところ、こうして再びパーティーに戻る決断をした時点でこれが聞かれるのは決まっていたようなものだ。何なら、ダンジョンを出てからこれまでの間ずっと、どうやって説明しようかと考えていたほどに。
話は、おれが一人ダンジョンに残った日に遡る。
犬の魔物に右足を喰いちぎられ、右腕は粉砕骨折、左腕は木の魔物に肩口から持っていかれて、右目は串刺し。散々な状況に陥った挙句、最後はオークに頭部を粉砕されたおれだったが、結局死ぬことはできずに五体満足な状態へと戻った。
百歩譲って戻ったのはいいのだが、問題は魔物が普通に近くに残っていたことだった。
当然、そのまま魔物とおれの第二ラウンドが始まる。曲がりなりにも剣や盾などを手にしていた先ほどまでとは異なり、今回からは素手でスタートだ。魔術を一切使えないおれは、武器がなければあまりにも殺傷能力が乏しすぎる。
相手が人間ならまだやりようはあるだろうが、基本的に人間より丈夫な魔物には本当にどうしようもない。オークを絞め落とそうとしたところで強靭な首の筋肉に阻まれるのがオチだし、トレントの首をねじ切ろうとしたところでどうやって人力で太い木の幹をねじれるのかという話だ。
そこで、おれは取りあえず武器を手に入れることを目指す。剣はもうどこにあるのかわからないが、幸いなことに目の前には武器を持った奴らがゴロゴロと居た。
その中の一体、手ごろなオークに目を付けると、おれは全力でその豚面を殴り飛ばす。
何の魔術的強化も受けていない拳は、その衝撃に容易く砕けた。腕の骨はひび割れ、肩から外れて脱臼まで起こしている。岩を殴ったようなものだ、こうなるのも当たり前だろう。
だが、何の問題もない。一瞬オークが怯んだ隙を見逃さず、おれはその手から棍棒を奪い取る。既に、砕けた拳と腕は元通りに治っていた。
何度も体感しているとは言え、相変わらずの自分の身体のバケモノ具合に乾いた笑いが出るが、まあいい。無事に武器を手に入れたおれは、フルスイングをこの棍棒の元持ち主に食らわせる。頭に命中した一振りは、オークの強靭な首を容赦なくへし折った。
こうして手に入れた念願の武器であったが、やはりこれは魔物用の武器で、人間のものとは勝手が違う。
奴らが片手で軽々と扱っていた棍棒も、人間には両手でないと取り扱えない。持ち手から徐々に太くなっていく構造をしているため、重心がかなり先端に寄っていて操るのが難しい。
その証拠かのように、おれは棍棒を振り切ったその体勢のまま、繰り出されたスケルトンの槍を避けきれずに首から上を失った。
やはり、棒として捉えるよりはハンマーやメイスの類と同じように考えた方がいいのかもしれない。首から上を生やすと、おれは思考を巡らせる。
まともに使ってきた武器は剣と槍くらいのものでメイスの心得は全くないのだが、そこは回数を積んでいくしかないだろう。幸いというべきか、練習相手には困らないし、こちらの方も何度でもやり直せる。
昔見たことのあるメイスの構えを何となく真似しながら、おれは襲い掛かってくる魔物を迎え撃った。
オークの振り下ろしを半身になって躱し、返す刀で棍棒を振り上げて顎を粉砕する。そのまま急速に手首を返し、突っ込んできたもう一匹のオークを真上から叩き潰した。
と、その隙を狙ったかのように振り払われるトレントの枝。おれはそれを下からかちあげることによって上に逸らす。棍棒の重さに振られるようにして回転し勢いの付いた一撃を幹に叩き込めば、壮絶な打撃音と共にトレントの顔面が陥没した。
武器の重量自体と先端寄りの重心をうまく使って勢いを維持する。手首を使うことで軌道を柔軟に変化させる。始動の遅さをステップで誤魔化す。
何百回か魔物に食われた末に編み出した、おれなりの棍棒の使い方だ。ちなみに、手首を使うと急激な負荷でよく骨が折れるのであまりおすすめはできない。あくまでおれ用のやり方だ。
さて、ある程度棍棒も使いこなせるようになり、一回食われるまでにかなりの数の魔物を倒せるようになってきたのだが、ここに至って一つの懸念が生じた。
それは、ここまでやっても一向に魔物の数が減らないことだ。そもそも、おれがこうして一人残る前の時点で相当数の魔物が倒されている。人数が多かったことももちろんだし、ゲルトという大火力・広範囲の魔術を使える人物がいたこともあって、普通の魔物の群れならとうに全滅しているはずだ。
加えて、一人になってからもおれは奴らを倒し続けていた。一度食われるまでに最低でも1匹はやれている筈なので、少なくとも数百匹は倒してきたことになる。それにも関わらず未だにいなくなる気配がないというのは、もはやただ数が多いだけとは考えられない。
つまり、おれが言いたいのはこのダンジョンのどこかで魔物が生産されているのではないかということだ。
そして、その場所の目星もついている。ダンジョン最奥部の大広間、その壁にできた黒い穴。あそこから魔物が湧いてきたことを考えると、あの穴の向こう側に魔物を製造する何かがあるのでは無いか。
全てが推測の段階だが、当たりの可能性はそれなり以上にあると思う。
仮にこのままここで戦い続けても、そういった装置があるのなら延々と魔物に食われ続けるだけだし、逆にただ多いだけなのならば道中で奴らを倒すうちに数も減るはずだ。
そう考えをまとめたおれは、これまでと動きを変えて魔物の群れに向かって突っ込む。すなわち、魔物を倒すための動きから、とにかく先に進むための動きへと。
当然、進むことを優先すればその分被弾は増えていく。棍棒は勿論振るっているものの、単純に目の前を邪魔する連中を退かしているというだけだ。
躱しきれなかったオークの一撃が骨を砕き、トレントの薙ぎ払いが内臓を破裂させ、犬の魔物が四肢を喰いちぎり、スケルトンの槍が体のあちこちに穴を開けていく。
そうしてできた傷の全てを
身体の再生には体力を使う。そうして、体力を使い切ったらしばらくは休まなければ戻らない。
みんなを逃がすときにはそれまでの戦いで疲弊したためにこの瞬時の再生は使えなかったが、今なら休養は十分だ。
おれは真っすぐに、前だけを見据えた。
攻撃を喰らいながら、それらすべてを治しつつ、がむしゃらに前に進み続ける。
体力切れに追い込まれ、幾度となく魔物の餌となりながら、それでも進むことしばらく。
遂にあの広間にまで戻ってきたおれを出迎えたのは、想像していた通りの景色だった。すなわち、穴の向こうから魔物が湧いてきているという景色が。
あの時は突然のことに慌ててわからなかったが、今になって見てみると穴によって出てくる魔物が違うことがわかる。確かに、オークとトレントのように豚と樹とでは製造に向いた環境は違いそうだ。
そんな考察も程々に、おれは骨を蹴散らしながら一番手前にあったスケルトンが湧きだす穴へと飛び込む。
入り込んだその部屋は、それほど広い空間ではなかった。視界の端に映ったのは、まるで墓場のように暮石が列をなして並び、そこからスケルトンがはい出してくる様子。だが、おれの意識が向いていたのは、そんな魔物が湧いていることなどではなかった。
部屋の中央。そこに鎮座していたのは、透明な球体だった。妖しく光るその球体は液体で満たされ、中には一体のスケルトンが閉じ込められている。そこから伸びたいくつかの管が地面に突き刺さり、今まさにスケルトンが出てきた墓穴に繋がっているようだ。
恐らくは、これが魔物を魔術的に製造する装置なのだろう。原理などは知る由もないが、目の前の光景が全てを物語っている。
だとすれば、おれがすべきことはただ一つだ。
棍棒を振るう。球体に向かってひたすらに、背後から無数の槍に突き刺されるのを気にも留めず。
何かの未知の素材で出来ているのか、はたまた魔術的な防護がなされていたのか、一見脆く見えるその容器は棍棒の衝撃でも割れることはなかった。
だが、その衝撃は無かったことになったわけではない。一撃では割れなかったとしても、そのダメージは確かに蓄積されていく。
そうして何十回か何百回か、繰り返し腕を振るい続けた果てにその時は訪れた。
今までとは違う、確かな手ごたえと何かにひびが入ったような音。はじめは一つだったその音は、瞬く間に大合唱へと変わっていく。それに伴い透き通っていた球体に無数の亀裂が走り、やがて粉々に砕け散った。
溢れ出す液体と中に入っていたスケルトン。後者については取りあえず叩き潰してみたが、特に強力な個体だとかそういったことはない様で、他の奴らと同様にばらばらになった。
同じ調子で部屋にいた他の骨連中も倒していったのだが、そこでおれは変化に気付く。これまでは倒す度に墓穴から湧き出ていたスケルトンが、どれだけ倒してももう出て来ないのだ。
それはつまり、やはりあの球体が魔物の製造装置であったということを示す。
このダンジョンでの戦いに、初めて明確な終わりが見えた瞬間だった。
おれは同じようにして残りの魔物たちの製造装置も破壊し、これ以上の増殖を食い止めた後、残った魔物たちも倒しきった。
魔物の返り血はトレントの湧き部屋にあった貯水槽で洗い流し、数えきれないほど食われたせいで糸のレベルにまでボロボロになった衣服は魔物たちの死骸を使って新調し。外に出る準備を万全に整えたおれは、出口についてからはたと思い出した。
自分が、ゲルトに出入口を塞ぐように頼んだことを。
他に出口はないかと探しもしたのだが、そんなものは見当たらない。唯一の出口はものの見事に崩壊したこの場所だけだ。
仕方なく、おれは再び棍棒を振るって岩を砕き、それを取り除くという作業をひたすら繰り返すこととなり。
そうして、みんなと再会したのだった。
これらを全部話せたら。話して、みんなに受け入れてもらうことができたのならば。
それはきっと、とても素敵なことなのだろう。
みんな、いい奴らなのだ。おれのことをあんなにも悲しんでくれて、喜んでくれて。
もしかすると、こんなおれのことも受け入れてくれるのではないか。そんな考えが頭を掠めたりもした。
けれども。
おれは…………怖いのだ。
もし、受け入れられなかったら。それを言ったことで、このパーティーに居られなくなったら。
いい奴らだからこそ、おれのことを想ってくれていたのが伝わってきたからこそ。
それがひっくり返ってしまうのが、どうしようもなく怖い。
死ぬことよりも、何よりも。
だから、おれは嘘を吐いた。
「……いや、流石におれも死んだと思ったよ。あのダンジョンに、回復装置がなければさ」
「回復装置?そんなものがあったの、ハンス?」
「ああ。なんか、あの魔物たちやけに多かっただろ?あれはその装置があったせいだったんだ」
「……へえ。つまり、倒しても回復されたせいで数が減らなかったと?」
「その通りだ、ゲルト。で、おれはたまたまそれを見つけて、回復できたから生き残れたんだよ」
ありもしないことをでっちあげて、まるでおれが普通の人間であるかのように取り繕って。
「……でも、飯はどうしたんだ?」
「……ああ、魔物の肉を食べた。美味しくはなかったけど」
「ええ?!お腹とか壊さなかったの?」
「火を通したら意外と大丈夫だったな」
ここが、本当の居場所にはならなくとも。仮初の居場所に過ぎないのだとしても。
「そうだ、街に戻ったらいつもの店に行こうか、みんな!」
「わあ、賛成!ハンスのお帰りなさいのお祝いしなくちゃだよね!」
「ふ、そうね。……?どうしたの、貴方?」
「…………いいや、なんでもない」
それでも、この温かさをもうしばらく感じていたかったから。