ホムンクルス、ついに買われる!~爆乳専門店の元・売れ残り~ 作:ツインテスキー
「今日は一日よろしくお願いします」
「ああ、来たか。3号」
「おはよう、3号くん。今日はよろしく」
ゴーツの指示によって大浴場で働くことになった3号は、指定された時間よりかなり早めに大浴場へと向かった。すると大浴場の入り口は開いており、中ではデレーヌとケフェッチが彼女を待っていた。
「お二人ともお早いですね」
「……まあね」
3号の言葉にケフェッチは間をおいて答えた。
「……?」
「なに、3号。こいつはただ今日一日お前の髪を堪能できるのが楽しみだっただけだ」
3号がケフェッチの言動について気にしていると、デレーヌがその内心を代弁した。
「ちょっとデレーヌ! 何も本人の前でいうことないじゃないか!?」
デレーヌの言葉は図星だったため、ケフェッチは声を荒げた。
「……本当だったんですね」
ケフェッチの髪馬鹿っぷりに3号は呆れていた。
「……まあ、そうだね。今日も3号くんの髪は綺麗だし、時間がある時にじっくり観察……よかったらまた少しさわ……あいたたた」
「デレーヌさん!?」
そんな状況であってもケフェッチは自分の欲望に忠実だった。しかし、その欲望はわき腹をつねったデレーヌによって強制的に止められてしまった。
「……あいたたた」
「3号、今日私がいるのはこういうことのためだ。何かあったらすぐに私を呼べ」
つねられた場所を摩るケフェッチを横目にデレーヌは自分がここにいる理由を答えた。
「……了解しました」
3号はデレーヌのいる理由に納得しかなかった。
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「……と、こんな感じで掃除とかは魔法陣が勝手にやってくれるから、僕達がやるのは受付と物の補充、それと魔法陣に不具合がないかの定期的な確認ぐらいだよ」
「了解しました」
まず3号はケフェッチとデレーヌから大浴場の大まかな仕事内容を教わった。大浴場の大部分は魔法陣によって自動化されているのでその動作確認、受付での集金、消耗品の補充が主な仕事だった。
「私は酒場の方で働いたことはないけど、正直こっちの方が楽だと思うぞ」
「給料もこっちの方が安いしね。生活できないほどじゃないし、お風呂上がりの髪が間近で見られるから僕にとっては天職だけど」
そういいながらケフェッチは風呂上がりの髪を想像してにやけた。
「……なあ、3号。番頭としてこいつ大丈夫だと思うか?」
デレーヌは妄想するケフェッチに対して嫌な顔をすると、3号に同意を求めた。
「……まあ」
3号はケフェッチをフォローしようとしたが言葉を濁すのが精いっぱいだった。
「3号くんまで……ってまあ、そろそろ時間だね」
「そうだな。それじゃあ3号、何かあったら私かこいつに聞いてくれ」
「はい。了解しました」
そうこうしているうちに開店時刻に迫り、大浴場の入り口が開かれた。少しすると客がまばらに来店し始め、そのまま特に問題なく業務は続いた。
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「いらっしゃいませ」
大浴場が開店してから1時間ほど経った頃、一人のローブを被った仮面の人物が大浴場にやって来た。
「……ほう、禁忌を破りし創造物よ。此度は此処が汝の拠り所か」
「……えっと、チューニーさんでしたよね? 今のは一体どういった意味でしょうか?」
ローブの人物、チューニーは番台にいた3号に話しかけたが、彼女はチューニーの言葉の意味が分からず説明を求めた。
「……ふむ」
するとチューニーはどう説明するかを思案し始めた。
「『3号くん、今日はこの大浴場で仕事しているんだね』って感じであってるかな? チューニーくん」
そんな中、少し離れた場所にいたケフェッチが代わりに答えた。
「……左様。汝に我が祝福を与えん」
「どうもどうも」
「ケフェッチさん、ありがとうございます」
チューニーはケフェッチの翻訳に頷き、翻訳を聞いた3号はケフェッチに感謝を述べた。
「仕方ないよ。チューニーくんの言葉使いは慣れないと難しいからね」
「……チューニーさん。私チューニーさんの言葉が理解できるように頑張ります」
ケフェッチのフォローを聞いた3号は、チューニーに向き直るとチューニーの言葉をいち早い理解出来るようになると誓った。
「……ふむ、精進せよ」
「はい。頑張ります!」
3号の言葉にチューニーは頷き、3号はそれに応えた。
「では我は“封印の間”へと向かおう」
3号とのやり取りを終えたチューニーは大仰にケフェッチへ個室代を支払った。
「はいはい。それじゃあ1番の個室でよろしくね」
「うむ」
ケフェッチから個室の鍵を受け取ったチューニーはそのまま個室へ向かっていった。
「……ああはいったもののどうすればチューニーさんの言葉が分かるようになるでしょうか?」
チューニーが個室に向かった後、3号はチューニーの言葉の理解に頭を抱えた。
「さっきもいったけど慣れだよ。正直ぼくも慣れるまでは2,3カ月ぐらいかかったよ」
「慣れ、ですか」
ケフェッチのフォローにも関わらず、3号は不安を隠せなかった。
「……深刻な顔をしてどうかしたのか?」
別の場所で仕事をしていたデレーヌが戻ってきた。すると彼女はすぐに3号の表情に気づき、何があったのかを尋ねた。
「ああ、デレーヌ。チューニーくんの口調のことでね」
「ああ、そういうことか」
ケフェッチはデレーヌに端的に話を伝えた。新人がチューニーの口調に苦戦するのはいつものことなので、それだけで十分だった。
「……今は時間に余裕もあるし、チューニーの設定の話からいくか?」
「そうだね、それが無難かな」
状況を把握したデレーヌは、ケフェッチと3号にチューニーの言葉をどう理解させるかの相談を始めた。
「……というわけで3号くん。チューニーくんへの理解を深めるためにちょっと昔話をしてもいいかな?」
デレーヌとケフェッチは、最終的にチューニーの詳しい説明をすることに決めた。
「もちろんです!」
ケフェッチの確認に対し、いち早くチューニーの言葉を理解したい3号は強く頷いた。
「了解。それじゃあ早速始めるけど、チューニーくんもここに来たばかりの頃……5年ぐらい前だったかな。その時は見た目も言葉遣いも普通だったんだ」
3号の同意を確認したケフェッチは、宣言通りチューニーの昔話を始めた。ケフェッチの言う通り、チューニーはメモリアに来たばかりの頃は至って普通の立ち振る舞いだった。
「そうだったんですか?」
ケフェッチの言葉に3号は目を丸くした。
「ああ、昔は仮面も包帯もあんな大きなローブもつけてなかったし、チューニーなんて偽名は名乗ってなかったな」
「え? チューニーさんって偽名だったんですか?」
更にデレーヌが補足を加えると、偽名という事実に3号は再び驚いた。
「ああ、本名は……なんだったか」
「僕も忘れちゃった。チューニーくん本人が『以前の名は棄てた』って言ってから誰も呼んでないし、誰も覚えてないんじゃないかな」
デレーヌとケフェッチはチューニーの本名を思い出そうとしたが、何年も本名で呼ぶことがなかったので完全に忘れていた。
「そうでしたか」
「まあ、この町にははぐれ者も多いから、偽名もそれなりにいるけどな」
「そうなのですか!?」
3号はデレーヌの言葉に驚き、大声を出してしまった。
「隠したい過去を持ってる人は結構いるみたいだしね」
「私も偽名にするか考えたこともあるしな」
「そうでしたか」
デレーヌの言葉に彼女の過去を知る3号は偽名を名乗る者の心理に納得がいった。メモリアは出稼ぎの者が大半だが、過去に傷がある者にも都合のいい町だった。
「ひとまず話をチューニーに戻そう。あいつが今の恰好になった理由、それは自分を古代の王の生まれ変わりだと思い込むことで魔法の力を強くしているからだ」
「……古代の王の生まれ変わりですか?」
3号は古代の王という唐突な言葉に戸惑った。
「もちろんそういう設定ってだけだけどね。2000年以上前に栄華を誇った帝国の初代帝王、チューニー・ジャキガーンだったかな」
「……は、はあ」
ケフェッチの説明に3号は理解が及ばず、空返事を返した。
「まあ、私も今でも何をやってるんだとは思っている。ただ今の設定を思い込むようになってからチューニーの魔法の威力や範囲がこの町トップになったのは確かだ」
「……本当ですか?」
デレーヌの言葉に3号は驚いたが、その冗談のような話に半信半疑だった。しかし、その思い込みは強力な自己暗示となり魔法となり魔法の効果を高めていた。それはラブが最強の王子様を夢見て造ったロマンが強いのと同じ理屈だった。
「あの時は結構な人数がチューニーくんを真似してそういう設定を作ってたよね?」
「懐かしいな。まあ、後追いの連中はチューニーほど程設定に集中できなかったせいかそこまで魔法も強くならなくてやめていったけどな」
ケフェッチとデレーヌは当時のことを思い出しながら語った。二人の言うように当時はチューニーを真似て魔法を強くしようした者が何人もいた。しかし、設定に粗があったり、設定に成り切れなかったりして成功した者はいなかった。
「……凄いですね」
チューニーの昔話を聞いた3号は、言いたいことがうまくまとめられずただ一言「凄い」と述べた。
「チューニーくんの帝国の設定は面白いから時間があったら聞いてみるといいよ」
「そうですか」
一通り聞いても3号はチューニーの設定の話をうまく理解できなかった。しかし、理解できなかったからこそ彼女はその詳細に興味を持った。
「ああ、でも3号。面白いには面白いけど時間に余裕がある時にしろよ。チューニーは一度設定を語り出したらファンのハーゲン様語りぐらいなかなか止まらないぞ」
「それは確かにそうだね」
デレーヌの言葉にケフェッチは苦笑いを浮かべた。チューニーの設定は事細かく練られていたが、一度語り出すと中々終わらないので注意が必要だった。
「……了解しました」
3号は初日に聞かされたファンのハーゲン様語りを思い浮かべながらゆっくりと頷いた。
「そういえばチューニーさんはいつも個室なのでしょうか?」
3号は話が一区切りしたため、チューニーが封印の間(個室)に向かったことについて尋ねた。
「ああ、チューニーは女だけど帝王時代は男だったらしいからな。設定に変えてからはそうしている」
チューニーが個室を使っているのは肉体が女で精神が男なので、男湯にも女湯にも入るわけにはいかないという理由だった。
「そのせいかチューニーくんのことを男性と勘違いしてる人がたまにいるよね」
また個室を使っていること、ローブや仮面のせいで体型や声が分かりづらいこともあり、チューニーはたまに性別を勘違いされていた。
「普通、間違えないと思うんだけどな」
デレーヌは節穴が多いことにため息をついた。
「そういうわけでしたか」
何はともあれ個室の使い道に納得のいった3号だった。
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「ラブさんにロマンさん。いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「早速ですが個室は空いているでしょうか?」
チューニーの一件から数時間後、ラブとロマンの二人が大浴場へとやって来た。
「……個室ですか? お一人ずつの個室でよろしいのでしょうか?」
「いえ、私達はいつも一緒ですから、一つの個室に二人です」
3号が確認すると、ラブは個室を二人で使用すると答えた。
「……そうでしたか。……えっと、それは……」
ラブの返答に対し、個室の同時使用につての説明を受けていなかった3号は言葉に詰まってしまった。しかも、こんな時に限ってデレーヌもケフェッチも近くにいなかった。
「3号さん。いつも僕達は二人分の料金を払っているからそうさせてもらうよ」
言葉に詰まった3号を見かねて、ロマンが口を出した。
「……すみません」
「君は今日が初めてでしょ。だったら仕方がないよ。それじゃあ、これを」
ロマンは謝る3号へフォローを入れ、そのまま二人分の個室代を支払った。
「あっ、はい。受け取りました。今なら3番が空いていますのでそちらをどうぞ」
個室代を受け取った3号は戸惑いながらも空いている個室を案内した。
「ありがとう」
「ロマン様~、相変わらずお優しいですわ~♡。大好きです~♡」
ロマンが個室の鍵を受け取ると、一連の流れを傍観していたラブがロマンへと抱き着いた。
「はは、僕もだよ。それじゃあ、行こうか」
「はい、たっぷり愛してください♡」
ロマンは抱き着いたままのラブを抱えて、個室へと向かった。
「……あれでよかったんでしょうか?」
「ん、3号。どうかしたか?」
ロマンたちへの対応について悩んでいる3号のもとに、デレーヌが戻ってきた。
「あっ、デレーヌさん。ちょうどよかったです。今、ロマンさんとラブさんが一緒の個室に行かれたのですが、二人分の料金をいただく形で大丈夫でしたか?」
「……ああ、そういえば説明していなかったか。それで大丈夫だ」
3号の質問にデレーヌは状況を察し、説明の不備があったことに謝罪した。
「了解しました。……それからデレーヌさん、個室ってそういう風にも使われているのですか?」
3号はデレーヌの謝罪に納得した。その後、3号はデレーヌへ近づくと耳元で小さく個室の使用法に尋ねた。
「本音を言えばよそでやって欲しいけど、この町じゃシャワーが万全なところは少ないからな」
「そうですか」
メモリアでは、まだシャワーの設置が不十分だった。そのため個室を派手に汚さない限りは、そういったことも見逃されていた。
「それから改めて言っておくけど、個室に誰が誰と入ったとかももちろん他言無用だからな」
「了解しました」
個室を使う者は何かしらの理由があるため、大浴場の番頭には個室での出来事を周りに言いふらしたりしない誠実さが求められた。ロマンとラブに関しては既に周知の事実だが、二人での使用の場合には特に気をつける必要があった。
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「お風呂、お風呂~」
「今日も一日疲れた~」
「3号さん、お疲れ様です」
「おお、3号ちゃん。こっちの仕事はどうだ?」
「皆さんも遅くまで食堂のお仕事お疲れ様です」
「3号さんこそ遅くまでお疲れ様です」
夜になると、酒場での仕事を終えたファンやズラたちが揃って大浴場へとやって来た。彼らはお互い仕事の労をねぎらった。
「一応確認するけど、いつも通り俺以外は全員男湯女湯だな?」
「はい」
「もちろん」
「そうでーす」
人数が多いため、ズラが一旦集計を取り始めた。結果、ズラ以外はそれぞれ男湯女湯に分かれることになった。
「ズラさんは個室なんですね」
「ああ、この兜の下の傷は見られたくないもんでな」
3号の言葉にズラは兜をさすった。
「そうでしたか。すみません」
ズラの言葉に3号は余計な事を聞いてしまったとすぐさま頭を下げた。
「いや、こっちこそ悪い。気にし過ぎなのは俺も分かってはいるんだけどどうしても踏ん切りがつかなくてな」
そう言いながら、ズラは個室代を払うと一足早く個室へと向かっていった。
「正直、ここまで周到に隠されると気になるわよね」
「まあ、気になるっちゃ気になるけど、本人が気にしてるんだから駄目だろう」
「ねえ、デレーヌさんやケフェッチならズラさんの素顔を見たことない?」
ズラが去った後で残った食堂の面々はズラの素顔の話を始め、一人がデレーヌとケフェッチに話を振った。
「……正直に言うと見たことはある。確かにあれは本人が気にするのも分かる……分かる気はする」
「いや、あれは誰だって気にするよ。僕も力になれてあげたらいいんだけど」
「え? 本当に知ってたの? 教えてよ」
デレーヌとケフェッチからのまさかの答えに冗談半分で聞いた給仕の女性は話に食いついた。
「駄目だ。私はともかくこの馬鹿はここ以外で働けない」
「いや、デレーヌ。その言い方は酷くない? 間違ってはないけど」
デレーヌは答えられない理由を答えたが、その言葉はケフェッチへと突き刺さった。
「まあ、仕方ないわね。ここは気分を切り替えてお風呂に行きましょう」
「俺もそうしよ」
「……私も」
これ以上は無理だと判断した女性は話を打ち切った。そのため食堂の面々はそれぞれ男湯と女湯へと別れた。
「……ふぅ、食堂の人達が来たってことは、今日はもう終わりだね」
「そうだな。来ても数人がいいところだ。3号、少し早いけどお前も風呂に行ってこい」
食堂の面々がやって来たことで店仕舞いが近いと判断したデレーヌは3号へと早めに上がるよう促した。
「……いいのですか?」
「お前、明日はまた食堂だろう? なら早めに上がるといい。いいよな、ケフェッチ?」
「うん。3号くんもお疲れ様」
本当にいいのか尋ねる3号に、デレーヌとケフェッチは頷いた。それは初日ということもあったが明日からはまた酒場の仕事に戻ると聞いていたからだった。
「……ありがとうございます」
3号は二人の好意に甘え、先に上がることにした。そして好意を無駄にしないためにも彼女は足早に女湯へと向かった。
「ついでにデレーヌも上がる?」
「いいのか?」
3号が女湯に入っていくのを見送ったケフェッチはデレーヌにも先に上がるよう促した。
「だって僕と同じ時間に上がって入ったんじゃゆっくり出来ないでしょ?」
「……ケフェッチ」
「僕としてもデレーヌにはその髪を大事にして欲しいからね」
「……分かった」
ケフェッチの促しはデレーヌの髪のためのものだった。デレーヌは気を使ってくれた優しさに対する嬉しさと結局は髪のことかというツッコミの二つの感情を抱え、個室へと向かっていった。
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「……」
「ファンさん、先ほどから浮かない顔をされていますけどどうされましたか?」
一方その頃、女湯でファンたちと合流した3号は浮かない表情をしているファンに声をかけた。
「ああ、3号さん。……その、どうすればハーゲン様とお会いすることが出来るのかと」
「……ええっと、どうすればいいのでしょう?」
ファンからの返答に3号はまともな回答を返すことは出来なかった。
「ああ、ハーゲン様。一体私はどうすればいいんでしょうか?」
「ファンちゃんにはよくあることよ」
「……そうですか」
この後もファンはずっと同じ調子だったが、3号たちにはどうすることも出来なかった。
【キャラ情報】
名前:チューニー・ジャキガーン
種別:人間♀
年齢:19歳
身長:151㎝
胸囲:Bカップ