ホムンクルス、ついに買われる!~爆乳専門店の元・売れ残り~ 作:ツインテスキー
「デレーヌさん、クロースルさん。今日はよろしくお願いします」
「ああ、3号。おはよう」
「こちらこそよろしく」
3号がメモリアに来てから10日経った日の早朝、3号、デレーヌ、クロースルの三人は酒場に集合した。彼女らが集まったのは、デレーヌとクロースルの二人がゴーツの依頼で3号を封魔の大地の案内を任されたからだった。
「二人とも、3号のことは任せるぞ」
「報酬に見合った仕事はしますよ」
「大丈夫そうとはいえ無理そうなら引き返すからな」
そんな中、いつものようにゴーツが話の輪に入りこんできたが、誰もツッコまなかった。
「まあ、3号はある程度戦えるように作られておるから大丈夫じゃろう」
「確かに3号の身のこなしを見たら、大丈夫そうには見える。ただ格好はそれでいいのか?」
デレーヌは勘を含めた観察眼から3号にある程度戦闘力があることを察していた。しかし、戦闘には向いていなさそうなメイド服については看過出来なかった。
「服がこれしかないのもありますけど、それ以上になんだか落ち着かなくて……駄目でしょうか?」
「まあ、3号がその方がいいならそれでいい。なあ、クロースル?」
「ええ、3号さんがそれでいいなら別に」
「ありがとうございます」
3号の返答にデレーヌは納得し、クロースルもそれに同調した。そして3号は少し大げさに頭を下げた。この後、三人は軽い食事を取ると封魔の大地へと出発した。
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「よし、来たな」
準備を終えた三人が封魔の大地入り口地点に向かうとそこにはゴーツが待ち構えていた。
「もしかしてお待たせしてしまいましたか?」
「いいや、そういうわけではない」
3号は待たせてしまったことをゴーツに謝罪したが、ゴーツは手を左右に振って否定した。
「この儂は封印の監視係として四六時中ここにおる。じゃから何も気にすることはない」
封魔の大地の入り口は封印の外周部であり、そこに異常がないかゴーツは分体を常駐させていた。
「……それならよかったです」
ゴーツの言葉を聞いた3号はほっと胸をなでおろした。
「ついでに各地点に設置された転送ポイントへの転送もやっておる。今回は案内が主目的であるから行きは使わぬが帰りは使って帰って来てもよいぞ」
更にゴーツは続けて封印内の転送の仕組みについても説明した。
「了解しました」
「説明も終わったみたいだしそろそろ行くか」
「「はい」」
ゴーツの軽い説明が終わると三人は早速、封魔の大地へと入っていった。
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「……思っていたよりも普通の森といった感じですね」
三人は封魔の大地に入ってから一本道を5分ほど歩いたが、その様子は普通の森と大差がなかった。
「まあ、この第一層は封印から遠いからね」
拍子抜けしている3号にクロースルは説明を始めた。封魔の大地の封印は第一層から第四層までの多重構造になっており、一番外側である第一層は封印されている“国喰らい”の魔力の影響も少なかった。
「私はこの辺りに来るのは久しぶりだな」
「デレーヌさんは最深部ばっかりですからね。自分は素材集めとかでちょくちょく来ますけど……っと、3号さん。あれが魔物だよ」
会話の途中、クロースルが魔物を発見し足を止めた。つられて3号がその視線の先を見ると50メートルほど先の場所に小さな黒い塊が鎮座していた。
「あれが魔物ですか? 思っていたのとだいぶ違いますけど」
20メートルほどまで距離を詰めると魔物の姿がはっきりとした。魔物はソフトボールぐらいの大きさの楕円形で3号が軽く話に聞いていたものとはかなり違っていた。
「あれは戦闘経験がなくても勝てる最弱の魔物だからね」
「とりあえずもう少し近づくか」
「そうですね」
「……了解しました」
警戒するような相手でもないのでデレーヌとクロースルはそのまま進み、3号もその後に続いた。そして楕円形魔物との距離が10メートルほどになると魔物も三人のことに気づき、その体をゴムマリのように跳ねさせて突っ込んできた。しかし、その速度は遅く、躱すのは容易だった。
「それじゃあ3号、やれ」
「あんまり強くやると魔結晶がどこかへ行くから手加減はしてね」
「了解しました。……えいっ!」
3号は再度跳ねて来た楕円形魔物にタイミングを合わせてチョップを繰り出した。そのチョップは魔物に直撃し、地面へと叩きつけられたそれは黒い靄となって霧散した。
「……これでいいんですよね?」
「ああ、上出来だ」
3号は手ごたえのなさに困惑していたが、デレーヌは彼女のことを褒めた。
「ありがとうございます。……魔結晶は?」
「ああ、これだよ。これ」
3号はデレーヌの言葉に感謝を述べると、戦利品である魔結晶を探したが見当たらなかった。そんな3号に対し、クロースルがしゃがみ込み米粒程の魔結晶を拾い上げた。
「こんなに小さいんですか⁉」
3号は魔結晶にあまりの小ささに驚きの声を上げた。
「最弱のやつだからね。正直こいつらを延々と狩るぐらいなら町中で働いた方がいいよ」
「そうでしたか」
「でもある程度はここで戦い方を身につけないと奥の方じゃやっていけないからな」
「奥に行けば行くほど強さも数も段違いになっていきますからね」
クロースルとデレーヌの言う通り、魔物の強さと魔物の落とす魔結晶の質は奥になっていくほど高くなっていくため、第1層は戦いのイロハを知らない初心者が戦い方に慣れるための場所だった。
「そうでしたか」
「まあ、先は長いしサクサクいこう」
「そうですね」
3号初の魔物退治を終わらせた三人は先へと歩みを進めた。途中、魔物が何度も現れたが出てくるのは最弱の楕円型や生物の頭や手、足など一部位しかない魔物のため3号は難なくそれらを徒手空拳で倒していった。
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「……なんだか森の雰囲気が変わってきましたね」
「第二層に入ったからな」
三人が一時間ほど封魔の大地を歩くと周囲の木々が一層と生い茂るようになった。これは中央に近づいたことで国喰らいの魔力の影響が強くなり、その影響で木々が異常に成長しているからだった。
「そろそろ半身のやつが……ちょうど来たな」
「手とか足だけも不気味でしたけどこれはこれで不気味ですね」
「Woooo……」
第二層に入ると変わるのは周りの風景だけでなく、出現する魔物の種類も変わっていた。今回現れたのは犬の上半身の姿をした魔物だった。
「この辺からただ這ったり跳ねたりするだけじゃなく手足を使って移動してくるから注意しろ」
「はい」
「Wow!」
デレーヌへの返事をしている間に犬型(上半身のみ)魔物が3号に向かって来た。
「せいっ!」
「Wo⁉」
しかし、上半身だけではそれほどの勢いはなかった。そのため3号はその横腹へと回し蹴りを叩き込み、見事一撃で魔物を撃破した。その後も半身の魔物が現れたが3号の敵ではなかった。
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「……森が」
「ここからは私達も手を貸そう」
「了解です」
三人が更に一時間ほど進むと生い茂っていた木々がどんどんまばらになっていき、ついにはところどころに草が生えているだけになった。これは植物が国喰らいの強すぎる魔力に耐えられなくなったせいであり、木々の減少と反比例して周囲には欠損のない五体満足な魔物があちらこちらに闊歩していた。
「Woooo!」
「えいっ! ……固い」
そんな中、一体の人型魔物が3号を狙って突っ込んできた。3号はそれの胴体に対して拳を叩き込んだが、少し後ずさっただけだった。
「ならこれで!」
「Woo⁉」
3号は二度目の拳を叩き込む直前に拳の周辺に障壁を展開した。障壁のついた拳は人型魔物に確かなダメージを与え、その体をふらつかせた。
「これで止めです!」
「Wo……」
3号はそのまま人型魔物に障壁付きのハイキックを放った。すると人型魔物は霧散していき、小石程度の魔結晶がその場に残された。
「三回か。やるな。3号」
「……三回。三回かあ」
3号が三回で人型魔物を倒した傍らでデレーヌとクロースルはそれぞれ違う面持ちで3号に視線を向けた。その後も三人は魔物を倒しながら最深部へと進んでいった。
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「ユウリさん、イバラさん、お疲れ様です」
「これは、これは。団体様の登場だな」
「あっ、3号ちゃんにデレーヌさん。私に会いに来てくれたのね♪」
「違う、違う」
「3号さんの案内です」
三人が第四層。封印最深部に着くとそこではユウリとイバラが数多くの魔物達と戦っていた。この最深部の魔物達は完全体に加えて巨大な複合型も出現する上に、その量も他と比べ物にならなかった。
「なるほどねえ。それだったらちょっと狩っていく?」
「いいのか?」
三人の事情を聞いたユウリは交代を提案した。それは第四層が他三層に比べてかなり狭いため、五人で戦うのは窮屈だったからだ。
「そろそろ休憩してもいい頃だしね。イバラはどう?」
「いいぜ。そもそも俺はお前と違ってそこまでやる気はないからな」
「だってさ」
ユウリがイバラに確認を取ると、そこまで金が必要でない彼は彼女に同意した。
「ありがとうございます」
3号は狩場を譲ってくれた二人に対して頭を下げた。
「それからクロースル。休憩ついでにポーションとか売ってくれない?」
「ああ、そうだな。クロースルがいるなら俺も何か買おう」
「デレーヌさん、離れても別に大丈夫ですよね?」
「ああ、3号なら大丈夫だろうし行ってこい」
「では後はお願いします」
ユウリとイバラから休憩ついでにポーションの直販の要請してきた。そのためクロースルはデレーヌに許可を取り、二人と共に安全地帯である転送ポイントに向かった。
「それじゃあやるぞ。3号」
「はい!」
第四層に残ったデレーヌと3号は改めて群れる魔物達へと向かった。確かに第四層は他三層と比べ物にならない魔物の質と量だったが、三強であるデレーヌがいるおかげもあり3号は十二分に戦えた。
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「デレーヌさんは当然として3号ちゃんも中々強いな」
「デレーヌさんの露出した肌もいいけど、3号ちゃんのちらっと見える肌もいいわね」
「どこ見てるんですか」
デレーヌと3号が魔物と戦っている最中、転送ポイントで休憩中のイバラ、ユウリ、クロースルはその様子をポーション片手にのんきに観戦していた。
「いいじゃないの、別に。それにしても3号ちゃん、普通に強いし一回戦ってみたくはあるわね」
「それは俺も同感だな。中々いい勝負が出来そうだ」
「二人とも好きですね」
3号といい勝負が出来そうな二人は彼女との戦いに乗り気だった。一方で負ける未来しか見えないクロースルは冷めた反応をしつつも彼女のことはしっかりと眺めていた。
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「それじゃあいいもの見させてもらったし復帰するわね」
「見世物じゃないがまあいい。3号、私達も休憩しよう」
「はい。ユウリさん、イバラさん、ありがとうございました」
20分ほどで休憩を切り上げたユウリとイバラは戦線に復帰し、デレーヌと3号は二人と入れ替わる形でクロースルの待つ転送ポイントへと向かった。
「二人ともお疲れ様です。何か飲みますか?」
「オレンジで」
飲み物を尋ねるクロースルにデレーヌは注文する共に小銭を取り出した。
「はい、確かに。それじゃあこれを」
「ああ」
代金を受け取ったクロースルは、注文の品のオレンジ味のマナポーションをデレーヌへと手渡した。
「3号さんはどうする?」
「いえ、私は大丈夫です」
クロースルは改めて3号に注文がないか尋ねたが、相変わらず倹約家である3号は注文を断った。
「大丈夫。マナポーションの初回はタダでやってるから」
「……ありがとうございます」
しかしそんな3号に対し、クロースルは半ば強引にデレーヌと同じオレンジ味のマナポーションを手渡した。なお初回無料サービスは3号への贔屓ではない。
「気にするな、3号。それは初回無料で味を覚えさせて次回以降有料で買わせる手口だ」
「いや、デレーヌさん。そういうこというのやめてくれませんかね」
3号の申し訳なさそうな顔を見かねたデレーヌが初回無料の理由をバラした。そのためクロースルはデレーヌに対して文句をつけた。
「悪いな。ただ3号があまりにも申し訳なさそうな顔をしていたからな」
「……それは確かにそうですけど」
クロースルはデレーヌに言い返したい気持ちはあるものの、先ほどの3号の表情を思い出し言葉に詰まった。
「……すみません」
「まあ、3号。言った私が言うのもなんだけどそんなに気にしすぎるな。とりあえず飲んでみろ」
謝る3号にデレーヌはフォローを入れつつ、改めてマナポーションを勧めた。
「あっ、はい。……おいしいですね」
3号は勧められるままオレンジ味のマナポーションに口をつけた。それは残らないすっきりとした甘さだった。
「だろ? これで100Gなら安いものだ」
「確かにそうですね」
「まあ、これからマナポーションを買って飲むかはお前の勝手だけど、100Gぐらいなら財布も痛まないと思うぞ」
「そうですね。クロースルさん、また機会があれば購入させていただきます」
「いやいや、こちらこそありがとう」
3号の言葉にクロースルは新規の顧客になりそうな彼女へと頭を下げた。
「それからデレーヌさんもフォローありがとうございます」
続いてクロースルはデレーヌにも頭を下げた。
「なに、気にするな。最初に悪印象を与えたのは私だったからそれを払拭しただけだ」
デレーヌはフォローの理由を答えると話を打ち切った。その後、三人はそのまま転送ポイントで昼休憩をすることになった。
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「ところでこれからはどうする?」
転送ポイントにて酒場で購入した昼食を食べ終えた三人は、これからどうするかを話し始めた。
「私は特に予定はないですけどどうしましょうか?」
「解散でもいいのなら素材集めに行ってもいいでしょうか?」
「素材集めですか? それなら私も同行します」
「いや、素材の種類が多いから一人でいくよ」
3号はクロースルの素材集めへの協力を申し出たが、クロースルはそれをやんわりと断った。そのため3号は肩を落とした。
「3号。はっきりいってあれは素人には無理だ。私も一回軽いノリで付き合おうと思ったけど多すぎて諦めた」
「そうですか」
断られて落ち込む3号に対し、デレーヌは以前に自分もやろうとして駄目だったと伝えた。クロースルがポーション等の素材に使う素材の種類は膨大で、それを完璧に把握しているのはクロースルとゴーツぐらいのものだった。
「それじゃあ私達はもう少し第三層辺りで魔物狩りでもするか?」
「そうですね。私は特に予定もないですし、デレーヌさんがそれでよければ」
「なら決まりだな」
3号とデレーヌは魔物狩りを続行、クロースルは素材集めという形に分かれることになった。
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「3号、今日はこれぐらいにしよう」
「はい、了解しました」
クロースルと別れたデレーヌと3号は適当に休憩を挟みつつ魔物を狩っていたが、日が落ちてきたためデレーヌは終了の判断を下した。合計で6時間ほど戦った二人だったが、多少の疲れはあるものの傷といった傷は特になかった。
「3号、帰る前に少しいいか」
「なんでしょうか?」
デレーヌは転送ポイントに着くと、3号に改まった声で話しかけた。
「この町には慣れたか?」
「……はい。ゴーツさんやデレーヌさん、クロースルさん達のおかげです」
3号はデレーヌの質問に素直に頷いた。
「なら良かった。この町はゴーツさんを筆頭に変わり者は多いし騒がしいけど、その分許容は広いしいい町だ」
「……そうですね」
デレーヌはよそではまだ悪目立ちする自らの色素のない白髪に触りながら微笑んだ。その言葉の重みをデレーヌの過去を知る3号は知っていた。また生まれ育った場所が爆乳と爆乳好きで溢れかえった特殊過ぎる場所だった3号も居心地の良さを感じていた。
「これからもよろしくな、3号」
「はい。よろしくお願いします」
デレーヌの言葉に3号は笑顔で返した。この後、二人は転送ポイントを使用し、メモリアへと帰還するのだった。
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