ホムンクルス、ついに買われる!~爆乳専門店の元・売れ残り~   作:ツインテスキー

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1章 旅立ち
1-1 ホムンクルス、ついに買われる!


「……51号、買われるの早かったですね」

 

「そうね」

 

 共歴1300年、チモック製販売用ホムンクルス3号は後輩のホムンクルス47号と共に部屋の片づけを行っていた。この部屋は彼女たち二人のものではなく、つい先ほど買われたホムンクルス51号が使っていた部屋だった。

 

「3号先輩、冷たいです」

 

 3号の素っ気ない返事に47号は拗ねてその場に座り込んだ。ただそれだけの動作だがチモック製ホムンクルスらしい常人離れした胸部は大きく揺れた。

 

「……はあ、そんなんじゃ日が暮れちゃうわよ」

 

 3号はそんな47号を一瞥だけすると片づけを続けた。彼女の製造から10年ほど経過したが、ホムンクルスという成長しない存在である彼女の小柄な体つきに一切の変化は見られなかった。彼女の見た目の変化といえばリボンで二つ結びにされるようになった髪型ぐらいだった。

 

「……だって、48号も先に買われたじゃないですか」

 

「気にし過ぎよ。あなたはまだ3カ月でしょ。確かに早い子は早いけど大体4、5カ月ぐらいよ」

 

 座ったまま弱音を吐く47号に3号はようやく片づけの手を止め、彼女のことを励ました。

 

「そんなものですか?」

 

「そうよ。たまに半年ちょっとかかる子もいるけど今まででも精々5、6人。一番長かった32号でも8カ月だったわよ」

 

「結構なが……あれ、先輩は?」

 

「……私? 私は数にいれちゃ駄目よ。不良品なんだから」

 

 47号の質問に3号は自らの胸の前で手を振り、手が当たらないほど小さな自らの胸を自虐的に笑った。チモックがホムンクルス販売を始めてから52体のホムンクルスが製造されたが胸囲が100cmを下回るホムンクルスは未だに3号だけだった。

 

「そんなに胸って重要なんですかね?」

 

「チモック様もそうだし、そうなんじゃないかしら」

 

 チモックが大の巨乳好きなのもあって客層も同類ばかりだった。そのため開業当時からいる3号は未だに買われることなく、3号の中で巨乳こそがいいものという片寄った認識になっていた。

 

「さあ、無駄話はこれぐらいにして片づけを終わらせないと」

 

「そうですね」

 

 そういって3号は話を打ち切ると部屋の片づけを再開した。

 

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「……うん、これはおいしいな。今日の食事当番は3号だったかな」

 

「はい、今日は隠し味にグリーンスパイスを入れてみました」

 

「3号、また腕を上げたわね」

 

「ありがとうございます」

 

「3号先輩が当番の日はおいしいからね」

 

「これが経験のなせる技……」

 

 時は流れ夕方になると、3号はチモックとマリア、47号を含めた他の販売用ホムンクルスたちへ夕食を振舞っていた。そして彼女のアレンジを加えた新作料理は中々の好評だった。

 

「よかったら後でレシピをまとめておきますね」

 

「やったー!」

 

「ありがとうございます!」

 

 チモック製販売用ホムンクルスには最初から家事知識が記録されていた。その上で3号には10年分の研鑽があったため料理の腕前は並の料理店を上回るものだった。そのため3号が料理当番の日には他ホムンクルスのテンションはいつもより高めだった。

 

____________________

 

 

 夕食後、自室に戻ったマリアが書類の整理をしていると部屋の扉が小さくノックされた。

 

「……3号ね。どうぞ、入ってちょうだい」

 

 長年の付き合いからノックの相手を3号と察したマリアは、彼女を快く部屋の中へと迎え入れた。

 

「失礼します。マリアさん、何か手伝うことはありますか?」

 

「大丈夫よ。それからこの前の消耗品の補充ありがとうね」

 

「いえ、お忙しそうでしたから。……それでは錬金素材の在庫確認だけしておきますね」

 

「いつもありがたいけど無理はしないでね」

 

「はい、お気遣いありがとうございます」

 

 3号はマリアへ頭を下げると部屋から出て行った。

 

「……十分無理してるようにみえるのよねえ」

 

 3号が出て行って少しして、マリアは天井を見上げながら一人呟いた。

 

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『マリア、こんな時間にどうした?』

 

『すみません、3号のことで少し話したいことがありまして』

 

『そうか。ならちょうどよかった。私も3号のことで相談しようかと思っていたところだ』

 

「私の話……?」

 

 在庫確認を終えた後、3号がチモックの部屋の前を通りかかると中からチモックとマリアが何か話しているのが聞こえてきた。その内容が自分の話だと気づいた彼女はいけない事とは思いつつも扉にそっと耳を当てた。

 

『最近の3号の様子はどうだ?』

 

『相変わらずいい子ですよ。自分の仕事に加えて、新人への教育から他の雑務まで進んでやってくれています。本来は私がやらなければいけないことまでやってくれていますし大変ありがたいです』

 

『そうだな。私も3号にはかなり助けられている』

 

「……」

 

 3号は息を殺してチモックとマリアの言葉に聞き耳を立てていた。しかし、二人の会話から自分が二人の役に立てていると知り、ほっと安堵した。

 

『……ただ』

 

『ただ?』

 

「……ただ?」

 

「……!」

 

 しかし安堵したのも束の間、続いたマリアの言葉によって3号に緊張が走った。

 

『引け目を感じているように見えますね』

 

『……お前の目から見てもそうみえるか』

 

『はい。それは』

 

「……!?」

 

 3号は自分にできうる限りの仕事を毎日こなしていた。しかし、それが売れ残りから来る焦りであることにチモックもマリアも、そして彼女自身も気づいていた。

 

『一番いいのは買われることだとは思いますが……』

 

『私も知り合いに声を掛けてはいるがさっぱりでな。ホムンクルスに興味がないか、他で買っているかのどちらかだ』

 

 チモック製ホムンクルスの品質は間違いなく最高級だが他の愛玩用ホムンクルスと比べて数倍から数十倍の値段がした。そのため極度の巨乳好き以外への人気は振るわず、3号のような体格のホムンクルスが欲しければ多少質は落ちてもよそのホムンクルスで十分だった。

 

『値段を安くすることも考えたが、お前はどう思う?』

 

『……そうですね。それでは余計にあの子を傷つけてしまうでしょうし……それにそれでも買い手が現れなかったら今以上にショックを受けてしまうかもしれません』

 

『お前もそう思うか』

 

『はい』

 

『……やはり値下げは最終手段だな。マリア、この話はくれぐれも他言無用だぞ。あの子も私の大切な娘の一人なのだから』

 

『……承知しました』

 

 3号の容姿はチモックの好みとはかけ離れていたが自分が造ったホムンクルスである以上、チモックは彼女のことを他のホムンクルスと同様に気にかけていた。これは当時からチモックに連れ添い、長年彼女のことを見てきたマリアも同様だった。

 

「……」

 

二人の話を聞いた3号は重い足取りで自室へと戻っていた。

 

____________________

 

 

「……私はどうしたらいいんだろう?」

 

 部屋に戻った3号は倒れこむようにベッドに横になって天井を見上げた。

 

『いや、自分。小さい子には興味がないので』

 

『確かにかわいいけど……これぐらいなら他で買った方が……』

 

『ワシは巨乳を……じゃぞ。……いらんでおじゃる』

 

『……俺は……買って……』

 

 3号の脳裏に造られてから今まで会った客の顔とその時の言われた言葉が次々と蘇っていった。

 

「……どうしてこんな体に」

 

 3号は周囲には気丈に振舞っていたが常に否定され続けてきた彼女の精神は限界寸前だった。チモックやマリアのことを恨めればもっと気は楽だったかもしれないが、自らのことを気にかけてくれている二人を恨むことは彼女には出来なかった。

 

「…………本当にどうすればいいんだろう」

 

 このままチモックやマリアの補佐をしながら新人ホムンクルスたちの教育係をするという生き方も決して悪いものではなかった。しかし、彼女はそのことに納得出来ずにいた。

 

____________________

 

 

「これ、そこのお二人さん。ここがチモック・モウルの屋敷かの?」

 

「はい。こちらで間違いありません」

 

「もしかしてお客様でしょうか?」

 

 次の日の昼下がり、3号と47号は館の前の掃き掃除をしていた。そんな時、二人に低くしわがれた声の老人が近づいて来た。

 

「ああ、その通りじゃ」

 

「そうでしたか。それでは他のホムンクルスもいるので中へどうぞ。……47号、ここは私がやっておくから案内は任せるわね」

 

「は、はい。先輩。……それではお客様。こちらへどうぞ」

 

 老人を客と認識した3号は、案内を47号に任せると掃除を一手に引き受けた。手際のいい対応ではあったが、それは自分はどうせ選ばれないという彼女の負の自信からくる行動だった。

 

「待った。それには及ばん。儂が今回、買いに来たのはお主じゃ」

 

 しかし、老人は47号の案内を断ると3号へと手を差し伸べた。

 

「……え?」

 

 老人の言葉に3号は言葉を失った。老人の言葉は彼女が長年待ち望んでいた言葉であり、だからこそすぐには受け止められなかった。

 

「…………本当に? 本当に私でいいんですか!?」

 

 しばしの沈黙後、3号は老人に詰め寄った。彼女の声は嬉しさと戸惑いから震え、顔は今にも泣きだしそうだった。

 

「もちろんじゃよ。そのために遠路はるばるやって来たのじゃからな」

 

「先輩、大丈夫ですよ。夢じゃないですよ」

 

 それに対して老人は優しく微笑み、それを見ていた47号も強く同意した。

 

「それじゃあ47号、ちょっと頬っぺた引っ張って。強めで」

 

「……失礼します」

 

 それでも信じられなかった3号は47号に自分の頬を引っ張るように指示し、47号は言われた通り彼女の頬を強めに引っ張った。

 

「……痛い。……それじゃあ本当に……夢じゃない。……夢だったけど夢じゃない!!」

 

「良かったですね。先輩!」

 

「ありがとうございます。本当にありがとうございます!」

 

 夢か現実かの確認が出来た3号は改めて老人へと深く感謝を述べ、何度も頭を下げた。そしてその嬉しさから彼女の頬には大粒の涙があふれていた。

 

「でも本当によろしいのですか? 私は見ての通りこんな見た目ですし、そういったホムンクルスをお求めであれば他の場所の方が安いかと思われますが……」

 

 現実の確認が出来たものの長年の経験から自己評価の低い3号は未だに不安を隠せずにいた。

 

「いやなに、その方が色々楽しめそうじゃと思ったのでな」

 

 それに対して老人はあやふやな答えを返した。

 

「それはどういう……そういえばお名前をお伺いしていませんでした」

 

「ああ、そういえばまだ名乗っておらんかったな。儂の名前はゴーツ。ゴーツ・ゴーマンじゃ。これからよろしく頼むぞ」

 

「はい、よろしくお願いします。ゴーマン様。……もしやチモック様のお師匠様のお師匠様だったゴーツ・ゴーマン様ですか!?」

 

「えっ!? あっ、そっか。聞き覚えがあると思ったらあの大天才!!」

 

 老人の名前を聞いた二人は驚きの声を上げた。なぜなら彼、ゴーツ・ゴーマンはホムンクルス技術の基盤などを含め数多くの技術革新を起こした人物だったからだ。

 

「面と向かって言われると照れるのう」

 

「……あれ、でもゴーマン様って何だか凄いのを自分の身を犠牲に封印したとかそんな感じになっていたような……」

 

「確か何年か前に復活されたとかは聞いた気がするわ」

 

 照れるゴーツに対して47号が疑問を浮かべるとそこへすかさず3号が補足を加えた。

 

「すみません、ゴーツ様。その認識で間違いありませんでしょうか?」

 

「ああ、大体は合っておるよ。細かく言うなら今も儂は封印されたままでこうして外に出ているのは本体が造り出した分体じゃがな」

 

 確認のため尋ねた3号にゴーツは事の詳細を話した。ゴーツは50年以上前に“国喰らい”と呼ばれる強大な存在を自らと共に封印していたが、近年になって封印内から魔力で出来た分身体を飛ばす術を身に着けていた。

 

「……分体。そんなことができるんですか?」

 

「儂じゃからな。それでもそれなりの時間はかかったが」

 

「……流石、大天才」

 

 3号の質問にゴーツは軽く答えたがゴーツの言う通り、他の人間が真似できることではなかった。

 

「それはそうと儂のことはゴーツと名前で呼んでくれたら結構じゃぞ」

 

「「……はい、了解しました。ゴーツ様」」

 

 ゴーツの言葉に二人は改めて会った時同様元気のいい笑顔を彼に向けた。

 

「立ち話もなんじゃしそろそろ本交渉といこうかのう」

 

「了解しました。それでは中へご案内しますね。47号、片づけはお願いするわね」

 

「はい、任せてください」

 

 こうして3号とゴーツは47号を残し、館の中へと入って行った。

 

____________________

 

 

「まさかホムンクルスの創始者様に会えるとは思いもしませんでした」

 

「なに、そうかしこまることもない。儂が造ったのは基礎の基礎。ここまで人として見た目も能力も高めたのはパラケルやお主らの功績じゃ」

 

 館の応接室でゴーツと対面したチモックは、最初は緊張の色が顔ににじんでいたが話が進むうちに話していくうちにつれてその緊張は和らいでいった。なおパラケルというのはゴーツが開発したホムンクルス技術を改良したゴーツの弟子であり、チモックの師匠のことだった。

 

「いえいえ、パラケル先生はともかく私は趣味に走っただけですから」

 

「なに、ここまで高められたのならそれで充分じゃよ」

 

「身に余る光栄にございます」

 

 ゴーツの言葉にチモックは謙遜して答えたが彼の作成したホムンクルスは胸部以外の完成度も高く、その技術は業界随一だった。

 

「それでは改めまして詳しい契約の話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「そうじゃな。始めるとしよう」

 

 こうして仲を深めた二人は本題である3号の売買契約を進めた。その後も契約は特に問題なく進み、彼女の売買契約が成立した。

 

____________________

 

 

「ろくな歓迎が出来なくてすみませんでした」

 

「いやいや、何の連絡もなくやって来た儂に問題があるから気にせんでよい」

 

「チモック様、マリアさん。長い間お世話になりました」

 

 数時間後、荷物をまとめ後輩ホムンクルスたちへの引継ぎと別れを済ませた3号はゴーツと共に屋敷の外へと出た。そしてその見送りのためチモックとマリアもついてきていた。

 

「それではチモック様、マリアさんいってきます」

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

「いってらっしゃい」

 

「……はい!」

 

 三人の別れの挨拶は一見あっさりとしたものだったが、長い時間をこの屋敷で過ごした3人にはそれだけで充分だった。

 

「別れの挨拶はすんだようじゃな?」

 

「はい」

 

「では行くとしようか」

 

「え!? これは……」

 

 別れの挨拶が済んだ直後、ゴーツが軽く指を弾くとゴーツと3号の足元に魔法陣が出現した。そして驚く間もなく、彼女とゴーツは魔法陣と共に一瞬で姿を消した。

 

「……3号、大丈夫でしょうか?」

 

「唐突なところがあるというのはパラケル先生もおっしゃっていたからな。まあ好き勝手やっているようで案外周りに気を配る人だともおっしゃっていたから大丈夫だろう。……不安がないかというと嘘になるが」

 

その場に残されたマリアとチモックは、ゴーツと3号について不安を隠せないでいた。

 

「だがあの子の顔を見ていたら断ったりはできないよ」

 

「……そうですね。私もあの子があそこまで喜んでいる顔を見たのは初めてかもしれません」

 

 二人は3号がゴーツを連れてきた時の光景を思い浮かべた。その時の彼女の表情は10年以上の年月を共に過ごした二人でも初めて見たもので例え相手がどれだけ胡散臭そうな人物でも断ることは出来なかった。

 




【キャラ情報】

名前:チモック製販売用ホムンクルス3号 
種別:ホムンクルス♀ 
稼働年月:10年 
身長:136㎝ 
胸囲:AAカップ
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