ホムンクルス、ついに買われる!~爆乳専門店の元・売れ残り~   作:ツインテスキー

20 / 23
3-6 小さな姉と大きな妹 

「ほら、4号。挨拶なさい」

 

「……コホン。私、チモック様製ホムンクルス4号ですわ。お姉様方、よろしくお願いいたしますわ」

 

 10年前、製造されたばかりのチモック製ホムンクルス4号はマリアに促されて、先達の3人に挨拶をした。

 

「改めてみても大きいね~」

 

「大きい3号ちゃん」

 

「……そうですね」

 

 挨拶された3人は、4号のその巨大さに驚きを隠せなかった。調整失敗の3号のリベンジとして造られた4号は、3号と同じ顔をしていながらもその大きさは圧巻だった。

 

「それじゃあ三人も自己紹介をしてちょうだい」

 

「はい。それじゃあ私から。1号です。4号ちゃん、これからよろしくね~」

 

「はい、1号お姉様。これからよろしくお願いいたしますわ」

 

 マリアの指示によって、1号から3号までの自己紹介が始まった。金髪ロングの1号は元気よく4号の手を握り、4号もその手をしっかりと握り返して返した。

 

「私、2号。よろしく」

 

「はい、2号お姉様。これからよろしくお願いいたしますわ」

 

 青髪ショートの2号は1号と比べて素っ気ない挨拶だったが、元々そういう性格であり、4号も気にせず笑顔で返した。

 

「3号です。よろしくお願いします!」

 

「はい、3号お姉様。これからよろしくお願いいたしますわ」

 

 最後の3号は少し焦り気味だったが、4号は特に気にはしなかった。

 

「それじゃあ私はチモック様の手伝いに戻るから、この子のことよろしく頼むわね」

 

「了解しました~」

 

「了解です」

 

「了解しました」

 

 マリアは自己紹介が終わるのを見届けると、すぐに5号ホムンクルス制作の準備を行っているチモックの元へと戻っていった。これが3号と4号の初めての出会いだった。

 

___________________

 

 

「あら、明かりが……」

 

 ホムホムが制作されてから十日が過ぎた日の夜、お手洗いから自室に戻ろうとしたホムホムは、資料室から明かりが漏れているのを発見した。

 

「3号お姉様!?」

 

 ホムホムがゆっくりと資料室の扉を開くとそこには何かの本を読んでいる3号の姿があった。

 

「あっ、4号。こんな時間にどうかしたの?」

 

 4号に気づいた3号は、4号に声を掛けた。

 

「私はお手洗いの帰りですわ。お姉様こそ、こんな時間に一体何をしていらっしゃったのですか?」

 

「ちょっと料理の勉強をね」

 

 3号はそう言いながら読んでいた料理の本をホムホムに見せた。

 

「そうでしたか。3号お姉様は勉強熱心ですのね」

 

「だって私は失敗作だから。少しで皆との穴を埋めないと」

 

 自身の体に負い目のある3号は、それを補うためにほとんど毎日夜遅くまで読み物や家事、障壁の練習などを行っていた。

 

「失敗作と言っても見た目だけではありませんか? はっきり言いますが、私はもちろん1号お姉様や2号お姉様よりも3号お姉様の方が料理も掃除もお上手ですよ」

 

 その日々の努力によって3号の実力は他の販売用ホムンクルスよりも全体的に高く、4号もそのことには気づいていた。

 

「そうかもね。でもやれるだけのことはやっておきたの」

 

「……そうですか。私が言うだけ時間の無駄のようですし、私はもう休みます。ですからお姉様も早く切り上げてお休みになってくださいませ」

 

「ええ、ありがとう。お休みなさい。4号」

 

「ええ、お休みなさいませ。お姉様」

 

 この夜を機に、4号は3号のことを特に慕うようになった。それから販売用ホムンクルスの頭数が揃うまで、長いようで短い数カ月の日々が続いた。

 

___________________

 

 

「さて諸君、今日は待ちに待ったオープン記念だ。今日買われるものもいるだろうから今のうちに言っておこう。こんな立場でこんなことを言うのはおかしいかもしれないが、私はお前たちのことを商品であると同時に娘のような存在とも思っている。だから買われた先でも幸せであることを願っているよ」

 

「「「「「「「はい」」」」」」」

 

 チモックの販売用ホムンクルスが7号まで造られ、ついにチモックのホムンクルス販売が本格始動することになった。そしてその初日には大々的な開店記念パーティーが開かれた。

 

「……ほほう、流石はチモック氏のホムンクルス。噂に違わぬ出来栄えだ」

 

「この料理も彼女達が作ったものらしいが、下手な店よりも出来がいいな」

 

「なによりよそのホムンクルスにはない搾乳機能だ。これだけでその値段分の勝ちはある」

 

 パーティーには貴族や大商人といった、3000万Gという大金の支払いに苦労しない金持ちが大勢集まっていた。そして料理やホムンクルス同士の組手などデモンストレーションを交えた宣伝が功を奏し、初日にして最初に用意されていたホムンクルス7体のうち6体が売れ、以降の予約も殺到するという上々の結果になった。

 

___________________

 

 

「……」

 

 夕方、パーティーはお開きとなり、一人売れ残った3号はその後片づけをしていた。本来はチモックとマリアも片づけに参加する予定だったが、新しいホムンクルスの予約が予想以上に多かったため、3号は片づけを一手で引き受けた。

 

「お姉様!」

 

「……4号⁉ あなた、どうしたの?」

 

 そんな中、とある商人に買われたはずの4号が3号に声を掛けてきたため、3号は思わず振り返った。

 

「お姉様が買われなかったと耳にしたので、少しだけお時間をいただいてきました」

 

 ホムホムがやって来たのは、3号が買われなかったことを知ったからであり、買い主に無理を言って別れの挨拶の時間を貰っていた。

 

「……そう。4号、ありがとう」

 

 ホムホムの言葉に、3号はいつも以上の笑顔で返した。

 

「いえ、それほどでもありません。それより今回は残念でしたが、お姉様は私たち7人の中でも真面目で勉強熱心で料理も掃除も全て一番出来るのですから絶対に買われるはずです。だから、だから、頑張ってください!」

 

「……ありがとう」

 

 この時、4号の励ましに3号は涙が流れそうだったが、弱気を見せたくない彼女はそれを抑え、笑顔を返した。

 

「すみません。私、そろそろ……」

 

 4号は、3号相手にもっと話したいことがあったが、買い主を長時間待たせるわけにもいかないため会話を打ち切った。

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

「はい、行って参ります」

 

 4号のおかげで気持ちの切り替えが出来た3号は、4号の新しい門出を祝福し、4号はそれに応えて元気よく出発していった。

 

___________________

 

 

「……ということがありましたの」

 

「大変だったみたいね」

 

 4号が買われてから一か月程経った頃、ホムホムが一人で館へと帰って来た。最初は何事かと3号たちは身構えたが単に一日休暇を貰い、屋敷に遊びに来ただけだった。

 

 そして4号は買われてから一悶着あったこと、そして自分にホムホムという新しい名前が与えられたことを3号へと伝えた。

 

「まあ、私としては戻ってきてお姉様と一緒に過ごすのも悪くもなかったのですが……」

 

「なんていうこというの。4……いえ、ホムホム。私達は誰かに仕えるために造られたのにずっとここにいるなんて」

 

 場合によっては本当に返品されていた可能性があったホムホムは本音交じりの冗談を言ったが、それは買われたくても買われなかった3号にとっては地雷の言葉だった。

 

「……そうですわね。すみません」

 

「ううん、ホムホム。私こそムキになり過ぎたわ」

 

 3号とホムホムはお互い頭を下げ、その場を収めた。

 

「それで結局、あなたの主はその女の子ってことでいいのよね?」

 

 落ち着いた3号は話題をホムホムの買われた先での話に戻した。

 

「はい。主というかお世話対象に近い気がしますけどそうなりますね」

 

 ホムホムは商人に愛玩用として買われたが、それが向こうの奥方にばれ夫婦喧嘩になった。あわや返品かと思われたが、その前に商人の一人娘がホムホムに懐いてしまった。そのため、ホムホムはその子のお世話係という形で返品を免れることになった。

 

「まあ、よかった……のかしら?」

 

「どうなのでしょうか? 巨乳好きなのは父も娘も同じで、子供で同性な分、遠慮なく触ってきますけど」

 

 3号の言葉にホムホムは商人の娘のことを思い浮かべた。規格外といえるホムホムをいの一番に買い取った父親の血を引いた彼女は、日常的にホムホムの胸を触っていた。

 

「そういえばその子って今、何歳ぐらいなの?」

 

「先日、6歳になったばかりですわね」

 

「……6歳か。それならホムホムって名前も仕方ないのかしら」

 

 話の途中で、ホムホムという名前が商人の娘が付けたものと聞いていた3号は彼女の年齢を聞いて納得していた。

 

「立場上拒否が出来ませんでしたけどやっぱりおかしいですわよね。この名前」

 

「うん、まあ。私の感覚が正しいかの自信はないけど愛称としてはともかく名前なのはちょっと気になるわね」

 

 ホムホムという名前にはホムホム本人も納得はしていなかったが、立場上意見しづらかった。

 

「……そろそろチモック様やマリア様のところに行った方がいいんじゃないかしら?」

 

 ふと時計を見た3号はホムホムと話しているうちにそれなりに時間が経っていることに気が付いた。

 

「……そうですわね。心苦しいですがそろそろ……っと、これを忘れるところでした。お姉様、これを」

 

 3号の言葉にホムホムは部屋を出ようと立ち上がった。しかし、途中で何かを思い出し、鞄の中から小箱を取り出した。

 

「……これはリボン?」

 

「はい。お姉様へのプレゼントです。お姉様はそのままでも素敵ですが、髪を……こう、二つ結びにした方がより可愛くなると思うのです!」

 

 小箱の中身は青いリボンだった。そしてそれはホムホムから3号へのプレゼントだった。

 

「……ありがとう。早速つけてみてもいいかしら?」

 

「ええ、もちろんです」

 

 ホムホムの言葉に3号は、リボンを取り出すと鏡を見ながら装着を始めた。

 

「……これでどうかしら?」

 

 リボンの装着が終わった3号はホムホムの方へと振り向いた。彼女の髪はリボンによって二つ結びに綺麗に纏まっていた。

 

「とってもお似合いですわ、お姉様! これで買われやすく……ゴホッ」

 

「……ホムホム」

 

 ホムホムは3号の姿に感動し、つい口が滑ってしまった。咳払いをして誤魔化そうとしたが手遅れだった。

 

「私が買われやすくなるためにくれたってことね?」

 

「はい。少しでもお姉様のお力になりたくて……」

 

 問いただす3号を前にホムホムは目を泳がせた。

 

「……そんなこと気にしなくたっていいのに。でもありがとう。大事に使わさせてもらうわ」

 

 3号はため息の後、ホムホムへ改めて感謝を伝えた。

 

「……お姉様。……大好きです!」

 

「ちょっ⁉ ホムホム!! やめっ、こらっ……」

 

 3号に怒られるかと思っていたホムホムは、3号の感謝に彼女へと思い切り抱き着いた。その突然の行動に3号は抵抗したが、体格差ゆえに抵抗は厳しかった。

 

「いい加減チモック様やマリアさんのところに行ってきなさい~!!」

 

「分かりましたわ~。また後で挨拶に参りますわね~」

 

 あまりに離さないためついに3号の堪忍袋の緒が切れた。するとホムホムは一目散に3号を解放し部屋から出て行ったが、その顔に反省の色は見えなかった。

 

「……困った子ね」

 

 部屋に一人残された3号はため息をついたが、その表情は柔らかかった。

 

 この後もホムホムは一ヶ月に一度か二度のペースで館に訪れ、3号とお互いの近況報告などを行っていた。しかし、月日が経つほど買われない焦りから3号には焦りが目立つようになっていった。

 

___________________

 

 

「お姉様~」

 

「あらホム。いらっしゃい」

 

 いつものようにホムホムが3号の元まで遊びに訪れるとそこには上機嫌な3号の姿があった。

 

「いつもよりご機嫌が良さそうですがどうかされましたか?」

 

「分かる? この間街に買い出しに出た時に私のことを買いたいって子に会えたの」

 

 3号が上機嫌なのは先日クロースルと出会い、買うと宣言されたからだった。

 

「本当ですの!? それはよかった……でもそれならどうしてお姉様はここにいますの?」

 

 上機嫌の理由を聞いて歓喜したホムホムだったが、すぐ目の前にいる3号を見て冷静になった。

 

「買いたいっていってくれた子は私と同じくらいの背丈の子供だったし、家も私達を変える程の富豪ってわけでもなさそうだったからすぐには無理よ」

 

「……こういっては難ですがその子がお姉様を買いに来る可能性は低いのではないでしょうか?」

 

「そうね。私もあの子が買いに来てくれるとは正直思ってないわ。それでもそういう人がいるって分かっただけでも嬉しいの」

 

 クロースル本人は至って本気だったが3号は子供のクロースルがそこまでするとは考えていなかった。それでもクロースルのように自分を買いたいと思う人間がいることが分かっただけでも3号にとっては収穫だった。

 

「そうですわね」

 

 3号の久々に見せる心からの笑顔にホムホムは安堵した。しかし、この後も3号が買われることなく月日は過ぎていき、3号の心は以前よりも荒んでいった。

 

___________________

 

 

「……誰もいないということはないと思いますけど静かですわね」

 

 更に数年が経ったある日、ホムホムがいつものように遊びにやって来たがその日はやたらと静かだった。常であればチモックやマリア、3号に加えて4,5人のホムンクルスがいるチモックの館だったが、全くといっていいほど人気がなかった。

 

「……こちらのようですわね」

 

 静かな屋敷の端の方で物音が聞こえたので、ホムホムがそちらに向かうとそこには一人で部屋の片づけをしている3号の姿があった。

 

「お姉様~、お久しぶりです!」

 

「あ、ホム。おかえりなさい」

 

 元気良く声を掛けたホムホムに気づいた3号は、返事をしたがその声は震えていた。

 

「……お姉様、元気がないようですが大丈夫ですか?」

 

「正直、大丈夫じゃないかもね」

 

「……何があったのですか?」

 

 ホムホムの質問に3号は大きなため息をついて答えた。それは3号がホムホムに初めて見せた弱音であり、それを見たホムホムの表情も深刻なものへと変わった

 

「今日ね。私、以外のホムンクルスがみんなまとめて買われたの。その時、チモック様もよかったら私もって言ってくださったんだけどチビで貧乳の私はいらないって言われちゃった」

 

「……お姉様」

 

 普段であれば相手の見る目がないなど言って励まそうとするホムホムだったが、3号の落ち込みようからすぐにその言葉が出てこなかった。

 

「……でもあの時の少年のようにお姉様を買いたいという方もいらっしゃるでしょうし……諦めるのはまだ早いかと」

 

 そんな中でホムホムは一時的とはいえ3号を上機嫌にさせた少年のことを思い出し、3号へと伝えた。

 

「……まだ? それはいつまで? ……あの子に言われてから他の人には言われなかったし、あの子も何年も経って私の事なんて忘れちゃってるわ。もし覚えていても向こうは私と違って背も伸びて大きくなってるだろうし、こんな私の事なんて眼中にないわよ」

 

 しかし、ホムホムが絞り出した答えも3号には届かず、3号は自虐しながら溜まりに溜まった心の膿を吐き出した。

 

「……そんなことは」

 

 それでもホムホムは3号を励まそうとしたが、続く言葉が出てこなかった。

 

「……ホム。やっぱり私は誰にも必要にされていない失敗作なんだよ」

 

「……そんなことは」

 

 3号の言葉をすぐに否定したいホムホムだったが言葉を詰まらせた。3号をずっと見てきたからこそ彼女には3号がどれだけ追い詰められているか、生半可な励ましでは無意味なことも分かっていた。結局、その後もホムホムは何も答えられずに館を後にすることになった。

 

___________________

 

 

「ナンバ様、ミヤコ様。私、一生のお願いです。どうかお姉様を買い取ってはいただけないでしょうか?」

 

 買い主の元へと帰ったホムホムは、3号の危機的状況を解決するため、自らが3号を買い取るという最終手段を取ることにした。

 

そしてそのために、実質的買い主かつ家長であるナンバとその妻ミヤコに頭を下げた。ナンバは国有数の商会であるアキンド商会の会長であり、3号を買う資金を賄うことは難しくなかった。

 

「なあオトン、オカン。ホムがこんなに本気で頼んどるんやし聞いてあげられんやろか?」

 

「「……」」

 

 ホムホムに続き、ホムホムの主のミナミも二人に頭を下げた。実の娘にまで頭を下げられたナンバとミヤコはお互いに顔を見合わせた。

 

「とりあえず二人とも、顔をあげ」

 

 ナンバの言葉に従いホムホムとミナミはゆっくりと顔を上げた。

 

「ホムには長年、ミナミの世話を見てもらっとるし、感謝しとる。ただあそこのホムンクルスがそんなホイホイ出せる金額でもないことはホムも分かっとるな?」

 

「……うぐっ」

 

「私もホムがいつも一生懸命に働いてくれているのは知っています。それでもホムンクルス二人目は流石に高すぎます」

 

「……そう、ですか」

 

 薄々分かっていたことではあるが、ホムホムは肩を落とした。

 

「悪いなあ。できればどうにか……あっ、せや。ええこと思いついたで」

 

 肩を落とすホムホムを見かねたナンバは何かいい方法がないか思案を始めた。その結果、妙案を思いついたナンバの言葉に一同は目をやった。

 

「いいことですか?」

 

「ああ、辺境にあるからうちどころか他の商人達も商売ルートが確保できてないカナイ地方っていうのがあってな。出来れば早めに手を出したいとこなんやけど、手が空いてるのがおらんくてな。そこをうまくやれれば将来的にホムンクルス代以上の利益になるから金を出したるわ」

 

「それはミナミと一緒にということですか?」

 

「もちろんや。そろそろミナミにも大口の仕事をしてほしいと思っとったところやしな」

 

 ナンバが思いついたのはミナミとホムホムに仕事をさせ、その報酬として3号を買い与えるというものだった。

 

「……ミナミに仕事を覚えてほしいのは同意しますが、いきなり大口すぎませんか?」

 

「なに、ミナミはワイらの娘や。これぐらい出来る、出来る」

 

 ミヤコはまだ経験の少ないミナミとホムホムに大きな仕事を任せるのを心配していた。一方で、ミナミと同じぐらいの年齢から一代で成りあがったナンバは、娘であるミナミのことを信頼していた。

 

「一応、聞いておきますが二人はやる気ありますか?」

 

「上等や。ホムのためもそうやけど今までは細々な取引しかやらせてもらえんかったからな。ウチの実力見せたるわ」

 

「私もミナミさえよければお姉様のため誠心誠意全力で務めさせていただきます」

 

 ミヤコがミナミとホムホムに意志確認をすると、ミナミとホムホムはそれに頷いた。

 

「決まりやな。二人とも期待しとるで」

 

「商会の名に恥じないようにね」

 

「当たり前や」

 

「了解しましたわ」

 

 こうして二人は街道もろくに整備されていない辺境に赴き、交易ルートを作り上げることになった。しかし、ベテランでも難しいと思われる仕事を二人はわずか2年で完遂させた。

 

___________________

 

 

「お姉様~、どこにいらっしゃるのですか~?」

 

 仕事を完遂し、3号購入のための資金を手に入れたホムホムは3号の購入に向かったが時すでに遅く、既にゴーツによって買われた後だった。

 

それからホムホムは様々な伝手を使って3号の居場所を探っていたが、2週間経っても3号の所在を掴めていなかった。そのためホムホムはソファーの上で一人うなだれていた。

 

「これだけ探しても見つからへんってことは大分遠方か隠されたところっぽいなあ」

 

「……うぅ、お姉様~」

 

「ホム。気持ちは分かるけど少しはシャキっと……」

 

 ホムホムのあまりのうなだれ具合にミナミは苦言を呈しようとした。しかし、そんなタイミングで屋敷の使用人から二人に来客が来ていると連絡が入った。

 

「もしやお姉様!」

 

 連絡を聞いたホムホムはソファーから跳び起き、応接間へと駆け出していった。

 

「……現金なやっちゃなあ」

 

 一方で部屋に残されたミナミはほどほどに急いで、ホムホムの後を追った。

 

___________________

 

 

「やあ、ミナミ。久しぶり……って程でもないか」

 

「なんや。サブはんか」

 

「……」

 

 ミナミが遅れて応接間にたどり着くとそこには一人の黒髪の男性がいた。彼、サブはミナミとホムホムの商売ルート開拓中に知り合った人物で、ミナミ達の商売ルート開拓がスムーズに終わったのは彼の働きによる部分も少なくなかった。

 

「……はぁ、お姉様かと思いましたのに~」

 

 また応接間にはソファーにもたれかかっているホムホムの姿があった。

 

「……ごめんな、サブはん。積もる話もあるかもやけど今ちょっと取り込んどってな」

 

 落ち込むホムホムの姿を一瞥したミナミはサブへ謝り、帰ってもらおうとした。しかし、サブは軽く指を振った。

 

「お姉さんのことでしょう?」

 

「知っているのですか!? お姉様の場所を!!」

 

「ああ」

 

 サブの言葉にホムホムはソファーから跳び起き、彼へと迫った。興奮したホムホムは巨大な体格もあってかなりの圧迫感があったがサブはそれを前にしても涼しい顔で頷いた。

 

「……いくらや?」

 

「いやいや、僕と君たちとの仲じゃないか。お土産とでも思ってくれればいいよ」

 

 二人の横に回ったミナミはサブへと情報料を尋ねたが、サブは料金はいらないと答えた。

 

「タダより高いものはない。っていうよりも貸しを作っておきたくないんよ」

 

 サブの無償の情報提供は一見、美味しい話だった。しかし、商人であるミナミにとっては貸しという実体のない存在の方が厄介だった。

 

「……そうかい。ならこちらも情報を一つ貰おうかな?」

 

「……とりあえず言ってみ?」

 

 ミナミの言葉を聞いたサブは一考し、貸し借りなしにするために代わりの情報が欲しいと答えた。一方のミナミは、ひとまずその内容を聞くことにした。

 

「ホムホム。君はお姉さんが買われることを望んでいたはずだ。買われたのならそれでよかったんじゃないのかな?」

 

 ミナミの言葉にサブはホムホムの方へと振り返ると、ホムホムの矛盾した行動について尋ねた。

 

「……うっ⁉ それは」

 

「……そう来たか」

 

 サブの質問にホムホムは言葉を詰まらせ、ミナミも失敗したと後悔した。

 

「まあ、こっちは元からタダで教えるつもりだったから答えられないのであればそれでも大丈夫だよ」

 

「……ホム。どうする?」

 

 ホムホムの様子にサブは答えなくてもいいと言い、ミナミも答えを強要する気はなかった。

 

「…………いえ、答えさせていただきます」

 

 ホムホムはしばし悩んだ末、質問に答える決心を決めた。

 

「お姉様は生まれの不幸のせいで今までずっと苦労されていました。だからこそお姉様には幸せになっていただきたい。いいご主人様に出会えたのであれば言うことはないのですが、そうでないのなら私がお姉様を迎えに行きたいのです」

 

 ホムホムは3号を迎えに行きたい理由を語った。

 

「そうか。意地悪な質問をしてすまなかったね。答えてくれてありがとう」

 

 ホムホムの答えを聞いたサブは、質問内容を謝るとともに答えてくれたことへの感謝を述べた。

 

「それでは改めてお姉さんの居場所を答えよう。場所はメモリア。そして現在の主人はその町長のゴーツ・ゴーマン氏だ。これ以上の情報は必要かな?」

 

 続いてサブは、約束通り3号の居場所について答えた。

 

「……メモリア。なんとかって魔物が封印されたっていうあそこか。それでゴーツって言ったら確か封印した張本人やったな?」

 

「そうだね。ついでにいうと買い取りたい人間がいれば原価で売る言っているらしいよ」

 

 場所を聞いたミナミがサブに確認すると、サブはゴーツが3号を売ろうとしていることについても伝えた。

 

「……はあ? せっかく買ったのにすぐに原価そのままで売るんか?」

 

「そうらしいよ。まあ、変人で有名な人物だからね」

 

 商人であるミナミは一銭の得にもならないゴーツの行動に首を傾げた。

 

「……メモリア。金目当ての荒くれ者達のたまり場じゃありませんこと。こうしてはおられません。一刻も早くお姉様を助けに行かなければ……ミナミ、私、すぐ準備をしてきます」

 

 ミナミがゴーツの思考に頭を悩ます一方で、ホムホムはメモリアへ向かう準備のために部屋へと駆け出した。

 

「……ごめんな、サブはん。この埋め合わせは後で必ずするわ。……こら、ホム。待ちぃ!」

 

 そんなホムホムを見てミナミは、サブに頭を下げるとホムホムを追って応接間を後にした。この後、すぐさま準備を終えた二人は全速力でメモリアへと馬車を走らせた。

 

「それでは待っておるからの」

 

 二人の馬車の出発を見送ったサブは、煙のように姿を消した。

 




【キャラ情報】

名前:ミナミ・アキンド
種別:人間♀ 
年齢:16歳
身長:155㎝ 
胸囲:Hカップ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。