ホムンクルス、ついに買われる!~爆乳専門店の元・売れ残り~   作:ツインテスキー

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1-3 約束

「……このまま、このまま」

 

 共歴1292年、チューオ皇国首都セントラ。その端に佇むある一軒の民家にて一人の少年が魔力による結晶生成の練習を行っていた。少年が広げた両手の内側には少年の放出した魔力が炎のように揺らいでおり、少年はそれを包み込むようにゆっくりと手を閉じた。

 

「……これでどうだ!」

 

 少年は思い切って手を広げた。しかし、そこにあったのはあちこちに突起の生えたでこぼこした魔力の結晶だった。

 

「駄目だ。何回やってもうまくいかない」

 

 歪な結晶を見た少年は床へと倒れこんだ。その周りには歪な魔力の結晶がいくつも転がっていた。

 

『……ません、すみません』

 

「……ん? 何の音だ」

 

 そんな少年の耳に何かを叩くような音と少女の声が聞こえてきた。それは中々止まず、気になった少年は体を起こして音のした方へと向かった。すると隣の魔法道具店の扉を叩くとても可憐なメイド服姿の少女の姿があった。

 

「その店なら親戚の子供が生まれたからって今日はお休みだよ」

 

 少年は店に誰もいないことを知っていたため、少女に声を掛けそのことを伝えた。

 

「あ、あなたは?」

 

「ここの隣の家に住んでるものだよ」

 

 少女の質問に少年は今出てきた家へと振り返った。

 

「そうでしたか。ありがとうございます。よろしければ一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 

「何?」

 

「このメモ書きの商品を取り扱っているお店をこちら以外に知っていらっしゃいますか?」

 

「えっと、どれどれ」

 

 少女が差し出したメモには魔法や錬金術で使う素材が書かれていた。

 

「……ごめん、探せばあるかもしれないけど俺の知ってる範囲だとここだけだね」

 

 セントラは首都だけあって広く、そういった素材を扱う店自体はそれなりにあった。しかし、少年が知っている店はここだけだった。

 

「そうでしたか。ありがとうございます」

 

 少女は教えてくれた礼として少年に丁寧に頭を下げたが、その顔には焦りが見て取れた。

 

「明日には帰って来るって言ってたけど急いでるの?」 

 

 少女の焦りを感じ取った少年は確認のために少女へと尋ねた。

 

「……そうですね」

 

「それならそのメモの中身なら家にもあるから代わりにそれを持っていくといいよ」

 

 焦っている少女を見かねて、少年は家にある素材を代わりに買うことを提案した。

 

「よろしいのですか?」

 

「いいよ、いいよ。こっちはまた明日改めて買えばいいだけだから。もちろん代金は払ってもらうけど」

 

 不安そうに尋ねる少女に対して、少年は親切に頷いた。

 

「ありがとうございます」

 

 素材を代わりに売ってくれるという少年に対して、少女は再び頭を下げた。

 

「それじゃあここで待っててもらうのもなんだし家に入ってよ」

 

「はい、了解しました」

 

 こうして少年は少女を家まで招き入れ、メモにあった素材をまとめ始めた。

 

____________________

 

 

「……それじゃあ最後にもう一度確認するよ。石灰3袋に、燃焼石5つ、液体中和剤3本、アスト山の霊水5本、黒精油3本の以上6品でお代も22,000G。これで大丈夫かな?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「それじゃあこれで取引成立だ」

 

 十数分後、少年と少女の素材の売買は特に問題なく完了した。

 

「ありがとうございました」

 

「困った時はお互い様さ。……まだ雨は止みそうにないな」

 

 二人の取引は問題なく終わった。しかし、素材をまとめている途中で降り出した雨が未だに降り続いていた。

 

「せっかくだから雨が止むまでの間、色々聞いてもいいかな?」

 

「はい、自分に答えられることであれば」

 

 少年は降り止まない雨に雨宿りとそのついでの世間話を少女に提案した。少女も特に断る理由はなかったのでその提案を受け入れた。

 

「君も俺と同じぐらいの年だと思うんだけどさっきのメモを見る限り錬金術師の見習いか、その親族なのかな?」

 

 少女から許可が出たため少年は早速気になっていたことを彼女に尋ねた。彼には周囲に同世代で魔法や錬金術を学んでいる人間がいなかったため、年齢が近そうで素材を買いに来た少女に強く関心があった。

 

「いえ、私はこのような見た目ですがホムンクルスですので生まれてからまだ2年程度です」

 

「……ホムンクルス。話に聞いたことはあるけどやたらとかわいいと思ったらそういうことか。なるほど、なるほど」

 

 少女の答えに少年は彼女の見た目がとても整っていることに納得し、何度も頷いた。まだまだ若いとはいえ魔法や錬金術を少しはかじっている彼はホムンクルスについても知っていた。

 

「あっ、いえ、かわいいだなんてよしてください。私は失敗作ですので」

 

「失敗作? 君が」

 

 少女の失敗作という言葉に少年は自分の耳と目を疑った。

 

「……私以外のホムンクルスは皆背も大きくて……その‥‥‥あの‥‥‥胸も‥‥‥大きくて……同時期に造られた姉妹たちや後から造られた姉妹たちはドンドン買われていって‥‥‥でも失敗作の私だけはいつまでも売れ残って‥‥‥ってすみません。こんな話聞いても迷惑ですよね」

 

 少年の含みのない純真な質問に少女はつい口が滑り、普段押し殺していた本音が零れた。そのことに気づいた彼女はすぐさま少年に謝罪した。

 

「それなら俺が君を買うよ」

 

 何度も謝る少女に、少年は立ち上がると迷いのない瞳でそう宣言した。

 

「……え?」

 

「失敗作だろうと俺は君のことをかわいいと思う。だから俺が君を買う」

 

 少年の突拍子もない言葉に戸惑う少女に対して、彼は躊躇なく購入宣言を続けた。

 

「ええ⁉」

 

「俺じゃ不満?」

 

 あまりに戸惑い続ける少女に対して少年は不服そうに口を尖らせた。

 

「……いえ、そういうわけでは。失礼な物言いになりますけど私たちホムンクルスは子供のお小遣いで買えるようなものではありませんよ」

 

「具体的には?」

 

「うちは一体3000万Gですね」

 

「3000万⁉ ……いや、それでも俺は君を買ってみせる!」

 

 流石の少年も3000万Gという途方もない金額に怯んだ。しかし、すぐに持ち直し、改めて少女を買うと宣言した。

 

「……それでは頑張ってくださいね。未来のご主人様」

 

 一向に諦める気配のない少年に少女は根負けし、応援の言葉をかけた。

 

「ああ、待っていてくれ」

 

 その応援に少年は満円の笑みでそう答えた。

 

____________________

 

 

「……あれからもう8年か」

 

 8年前、一目惚れした少女、3号との約束を果たすためにひたすら金策を続けている少年。もとい、青年のクロースルは仮眠から覚めると懐かしい夢に一人呟いた。

 

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