ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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クリスマスっぽい扉絵パート2です。
ホント、女の子キャラは意外と難しい!


【挿絵表示】



STAGE.10 アイドルを始めよう

「お断りします」

 

夕飯時の高坂家で起きた一悶着もとりあえず収まり、改めてテーブルを囲む俺たち。

さっきまで激しく取り乱していた海未も今は冷静さを取り戻し、開口一番に拒絶の一声を放つ。

穂乃果とことりが不服そうな反応を見せるが、そんなことよりもハッキリとさせておかなければならないことがひとつある。

 

「海未よ………仕切り直す前に何か言うべきことがあるんじゃないのか?俺に……!何か………!」

 

どうしても納得できない俺は怒気を孕ませた視線を海未に突きつける。

 

「………………………コホン」

 

だが是が非でも弁解を求める俺の思惑とは裏腹に、しばしの沈黙の後にいかにも白々しい咳払いが木霊しただけ。

今の間は何だ、今の間は?

 

「お断りします」

 

結果、海未の返答は先ほどと同じ拒絶の一言だった。

こいつ………俺への仕打ちを丸々なかったことにしようとしてやがる!

 

「えー?なんでなんで?」

 

「絶対イヤです!中学の時のだって、思い出したくないくらい恥ずかしいんですよ!」

 

今すぐ怒鳴りあげてやろうかと思ったが、穂乃果とことりが海未に倣って話を進めていく。

俺を無視して進行していく状況を前に、儚くも込み上げてくる怒りは霧散していった。

……………うん、もういいやちくしょー。

涙が出そうなのをぐっとこらえる俺を余所に、依然として拒絶の意を崩さない海未に穂乃果がさらに詰め寄っていく。

 

「アイドルの恥はかき捨てって言うじゃない?」

 

「言いません!」

 

「それを言うなら、旅の恥はかき捨てだろ……」

 

確かにアイドルは恥を捨ててなんぼかもしれないが、捨てちゃいけない恥もあるだろうよ。

明らかに意味を履き違えた説得で勢いのまま言い包めようとする穂乃果だったが、結局はあっさりと海未に切り捨てられて終わってしまう。

だが、今の俺たちに足踏みをしている時間はないのも事実だ。

できることから消化していかなければ来月に控える初ライブには到底間に合わない。

今回の初ライブのターゲットは音ノ木坂の生徒に限られるが、まずは彼女たちの存在を知らしめなければ俺たちの目標である廃校阻止は果たせなくなる。

衣装の仕立てはことりがまかせてとのことでクリア済み。

音響や照明などの裏方作業は俺が請け負うとして、残る問題はやはり作詞と作曲だ。

曲を作って歌詞を作るのか、歌詞を作って曲を作るのか。

現状を鑑みるに、残念ながらここにいる誰も作曲のスキルを持ち合わせてはいないため、優先的に後者を選択せざるを得ないことになる。

最悪の場合はダメもとで恵さんに相談するという手もあるが、やはりそれは無いものとして動かなければならない。

一番の課題であるからこそ、こんなところで躓いていてはこれから先の活動で必ず暗礁に乗り上げてしまうことになるだろう。

 

「でも私、衣装作るので精いっぱいだし……お願い!海未ちゃんしかいないの」

 

「私たちも手伝うから!なにか、元になるものだけでも!」

 

あくまでも本当の最終手段として頭の片隅に追いやっていると、今も尚、必死に懇願する穂乃果とことりに対して海未は難色を示したままだ。

作曲に関しては穂乃果の当てに望みを託すとして、可能ならばやはり海未には何としても了承しもらいたいところだ。

海未だって今更後には引けないということはわかっているはずだ。

それでも責務と羞恥の葛藤で一歩を踏み出せないでいるのかもしれない。

そんな彼女をさらに追い詰めるようで申し訳ない思いでいっぱいになるが、それほどまでに事態は切羽詰まっているのだ。

 

「すまない、俺からも頼む」

 

「清麿くんまで………ですが…………」

 

すがる思いで頭を下げる俺にわずかに戸惑いを見せる海未だったが、そんな時、何かに気付いたようで怪訝な様子を見せる。

俺も追うように視線を向けた先にいたのは思いつめた面持ちのことりがいた。

こちらも少し様子がおかしい。

 

「海未ちゃん………」

 

胸元できゅっと拳を作り、うるうると潤ませた瞳でまっすぐ海未を見据え、そして一言。

 

「――――おねがい!」

 

果たして、放たれた言霊が反響したように聞こえたのは気のせいか?

しかし、そんなどうでもいい疑問はすでに忘却の彼方へと消えていった。

か、かわいい………。

常識に捉われたあらゆる理論や理屈をふっとばしてしまうほどの甘い声音は俺に向けられたものではないとわかっていても、思わずときめきを感じさせてしまうほどだ。

いや、だがそんなんで海未が折れるわけ―――

 

「もう……ズルいですよ、ことり……」

 

ウソだろ、おい………。

あの海未を一方的に無血開城させた、だと………!?

これが世間一般でいう、かわいいは正義というやつなのか?

だとしたら恐るべし、南ことり。

がっくりと肩を落とす海未の姿に戦慄すると同時、初めてことりに脅威を覚えた瞬間だった。

 

「―――ただし」

 

だが、やったーと穂乃果とことりが喜びを分かち合うのも束の間、緩んだ空気を断ち切るように海未が立ち上がる。

さきほどまでの情けない様相とは打って変わって、彼女は真剣な眼差しで2人を見下ろして言う。

 

「ライブまでの練習メニューは私と清麿くんで作ります」

 

「「練習メニュー?」」

 

その明言に揃って首をかしげる2人に海未はひとつ頷き、俺に視線を移す。

お互い似通った境遇に身を置いてきたせいか、ある程度の意思疎通は視線を合わせるだけで可能となったのは余談だが、おかげで彼女の意図を難なく読み取り、俺も首肯でこたえる。

 

「穂乃果、パソコン借りるぞ」

 

一言断りを入れてパソコンを拝借、慣れた手つきでキーボードを操作する背後から2人が覗き込んでくるのを感じつつ例のスクールアイドルのポータルサイトを経由して、A-RISEのライブ映像のページに辿り着く。

さっそく再生ボタンを押して数秒、静寂が支配していた高坂家の一室に曲が流れ始める。

最初は真っ暗だった画面にはスポットライトの光が暗闇を切り裂き、姿を現すのは3人の少女。

曲名は『Private Wars』

パソコンから離れれば、入れ替わるように穂乃果とことりが食い入るように画面を見つめる。

少女たちの歌声がメロディと調和し、自らの存在の御旗を立てるように踊り舞うステージはまさに彼女たちの独壇場。

光輝の下で魅せるパフォーマンスは何度見ても圧巻の一言に尽きる。

だが、彼女たちが築き上げた輝かしい栄光はその裏で血の滲むような努力を重ねてきた賜物なんだ。

頃合を見計らい、ライブ映像に釘付けになっていた2人に海未が説く。

 

「楽しく歌ってるようですが、ずっと動きっぱなしです。それでも息を切らさず笑顔でいる。かなりの体力が必要です。穂乃果、ちょっと腕立て伏せしてもらえますか?」

 

海未に言われ、幾分か訝しながらも腕立ての体勢をつくる穂乃果。

 

「こう?」

 

「それで笑顔を作って」

 

「こーお?」

 

「そのまま腕立て、できますか?」

 

そうしてゆっくりと腕を曲げ始めるが、次第に穂乃果の笑顔が引き攣っていく。

 

「………ぁっ、ぅ………ぅぁっく……………うわぁぁぁあーっ!?」

 

それでも踏ん張ろうと気張れば気張るほど、笑顔はさらに歪なものになるが最後、ついに彼女の細腕は自身の体重を支えきれずに崩れ落ちてしまった。

 

「いったぁ~!」

 

途端に穂乃果の喚泣が頂点を極めた少女たちの楽曲を掻き消した。

あーあ、鼻から行ったぞ。

あれは痛いよな。

 

「弓道部で鍛えている私はともかく、穂乃果とことりは楽しく歌えるだけの体力をつけなくてはなりません」

 

「そっかぁ、アイドルって大変なんだね」

 

赤くなった鼻を押さえながらのた打ち回る穂乃果を尻目に淡々と言い連ねる海未と納得することり。

なんともシュールな光景に穂乃果が不憫に思えるのだが、まあ、いい教訓にはなるだろう。

 

「はい、ですから………」

 

                      ☆

 

翌日の早朝。

春先とはいえ未だ肌寒さを感じさせる澄んだ空気に身が縮む上、本能が睡眠を欲しているせいか油断してるとあくびが出そうになる。

さて、穂乃果たちの地元には神田明神という神社が存在する。

古さを感じさせるが、きちんと手入れが行き届いているようで壊れている様子は一切うかがえない本殿が建つ境内からは長い石造りの階段が伸びている。

そして今、その階段を駆け上る少女が2人。

今にも泣きだしそうな穂乃果とことりは息も絶え絶えで、フォームも完全に瓦解している。

途中で足が止まったりした時はリタイアも時間の問題かと思ったが、それでも2人は一段一段着実に登りつめていき、そしてようやく頂上にそびえる神田明神男坂門に辿り着いた。

瞬間、俺と海未も同じタイミングでストップウォッチを切りタイムを確認する。

10分を軽く越えているが、まあこんなものだろうとさして驚くことはない。

むしろ、見事走り切ったことに驚嘆を覚えた。

 

「これ、きついよ~」

 

「もう足が動かないぃ~」

 

「ほい、おつかれ」

 

確認したタイムをノートに記録した後で地面に倒れこむ2人にタオルを手渡すが、受け取るだけで大きく荒らぐ息が落ち着くのを待っている。

やはり走り終えた直後は汗を拭く気力さえ失ってしまっているようだ。

海未の言う体力づくりとは、この男坂の階段の上り下りを10往復で1セットというもの。

昨日の学校から穂乃果の家までの帰り道での打ち合わせて出した結論がこれだ。

当面の様子見もかねているが、やはり急な生活リズムの変化に2人の身体はついてこれていないようだ。

返事がない、ただの屍のようだ………とまではいかないが、まだ眠っているであろう時間帯に身体を酷使しているんだ。

実際に先に走った海未でさえ呼吸整えるまでに時間を要していたことを考えれば、普段から運動をしていない2人がグロッキーにならないはずがない。

だがこの程度はまだ序の口の域だ。

これからは海未も含めて相応の、いや、それ以上の努力を積まなければならないんだ。

 

「これから毎日、ここでダンスと歌とは別に基礎体力をつける練習をしてもらいます」

 

「1日2回も!?」

 

衝撃的な通告に揃って表情を驚愕に染める穂乃果とことりに、腰に手を当てる海未は至極真面目にそうです、と肯定する。

 

「やるからにはちゃんとしたライブをやります。そうじゃなければ生徒は集まりませんから」

 

「……はぁい」

 

真っ当な正論に返す言葉もあるはずもなく、渋々と返事を返しながらも投げ出すつもりないようだ。

根は上げても、投げ出そうとしない姿勢はいい傾向だ。

 

「よし、じゃあもうワンセット!」

 

海未の活に穂乃果とことりは気を引き締めなおして立ち上がる。

実際に練習を開始して最初は不安を覚えたがこの分なら心配はないだろう。

 

「キミたち」

 

そんな時、俺たちに声をかける人物が現れた。

聞き覚えのあるイントネーションの声音の主は俺の知る限りひとりしかいない。

 

「よう。おはよう、希」

 

挨拶するその先にいたのは、やはり見慣れた柔らかい笑みを湛える希だった。

だが、おはようと返す今の彼女は普段とは違う印象を俺たちに与えていた。

 

「その恰好……」

 

開口一番に穂乃果が不思議そうに指摘した。

そう、今の希は見慣れた制服姿ではなく白衣と緋袴を着こなした、いわゆる巫女装束を身に纏っていたのだ。

お世辞を抜きにしてもよく似合っている。

他の2人もやはり今の希の姿をまじまじと見つめている。

 

「ここでお手伝いしてるんや」

 

神聖な出で立ちが優しげな面持ちを浮かべる彼女の大人な雰囲気をいつも以上に引き立てている。

ちなみに、俺は彼女の巫女姿は去年にこの神社で行われた夏祭りで一度目にしている。

余談としてその時に一騒動起きていたりするのだが、まあその話は機会があれば追々ということで。

 

                      ☆

 

「神社はいろんな気が集まるスピリチュアルな場所やからね。せっかく階段使わせてもらってるんだから、お参りぐらいしてき」

 

スピリチュアル云々は置いといて、そんな希の勧めで練習を切り上げて3人はさっそく賽銭箱の前に並んで二礼二拍手一礼。

 

「初ライブがうまくいきますように!」

 

「「うまくいきますように」」

 

俺と希は少し離れた場所から3人の背中を眺めていた。

 

「あの子たち、本気みたいやな。練習のほうは順調?」

 

「今日始めたばかりだぜ?まだ何とも言えねえよ」

 

訊いてくる希に苦笑気味に答える。

俺が穂乃果たちのアイドル活動に協力することはすでに昨日のうちに伝えてある。

特に何か言われることはなかったが、あの時の絵里の悲痛な顔が、俺に向けていた悲壮や怒りが入り混じった視線が今も頭から離れないでいる。

 

「フフ、生徒会の仕事もきっちり熟してもらわんとあかんよ?」

 

それが唯一の気がかりなのだが、内心で割り切っていると希が釘を刺してくる。

もちろんこの俺に抜かりはない。

 

「それなら大丈夫だ。中には絵里のチェックが必要なのもあるが、新入生歓迎会までの仕事なら昨日の内にほとんど片づけておいた。しばらくは自由に動けるよ」

 

伊達に下校時間を遅らせてまで作業してたわけじゃないんだ。

今頃絵里の奴、机に積み上げておいた仕上げ済みの書類の束に驚いていることだろうな。

さて、俺も本腰を入れるとしますか。

そんなことを考えながら、景気づけに俺も穂乃果たちと入れ替わる形で賽銭箱に小銭を投げ入れた。

 




この日のために貯めてたんでクウガと一緒に投稿します。
……………ウィザードが、ウィザードがァアアアアアアアアアア!!!

今回は思春期な清麿を意識してみました。
これからも照れて照れさせていきたいと思っています。

それではみなさん、今後とも青空野郎の作品をよろしくお願い申し上げます。
よいお年を!
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