ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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STAGE.11 その理由は...

「ふぅ、とりあえずこんなもんかな」

 

昼休みも図書室に訪れていた俺は頃合を見計らって、ノートに走らせていたペンを置いた。

時計を見れば、あと少しで昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る時間にまで迫っていた。

俺と同じように図書館を利用していた生徒たちの数もまばらになりつつある。

昼休みも、と言ったのは朝にも図書室に来ていたからだ。

その間に穂乃果たちは作曲してくれる子と話をつけに行く手はずで別行動をとっていたのだが、教室で3人そろって落ち込んだ姿を見れば結果は簡単に想像することができた。

くわしく話を聞けば、作曲の子に一蹴されたところに絵里に簡単な考えは逆効果だと正論を突きつけられたとか。

そういやまだ件の子の名前を聞いてなかったが、また後で聞けば分かることだろうし、気にする必要もないか。

 

「あいつら、引きずってなきゃいいんだがな……」

 

不安が過ぎり、ついついひとりごちっていた時だった。

 

「ずいぶん気合入ってるんやね」

 

後ろから声をかけられ、振り向けば今朝方ぶりの希が立っていた。

 

「希………珍しい場所で会うもんだな」

 

「ここにはたまに本を読みにくるんだけど、たまたま見覚えのある背中を見かけてな」

 

「そっか。で、いつから見てたんだ?」

 

「キヨちゃんが向こうの棚から何冊も本を引っ張り出してた時から、かな?」

 

「ほぼ最初からじゃねえか……。あと、キヨちゃん言うな」

 

苦笑する俺に希はいつもの得意げな笑みを浮かべている。

今、机の上には数冊のノートと、その周りにいくつかの書物が広げられている。

どれも身体能力を伸ばすためのトレーニングに関する本ばかりだ。

時間は限られているが無理のないトレーニングメニューを作らないといけないからな。

まずは今朝の穂乃果たちの記録と照らし合わしながら最初の目標である基礎体力を効率よく向上させていく方法を俺の『能力』を駆使して模索していた。

特に海未と穂乃果、ことりの2人とでは体力的に大きく差が開いている。

海未は海未で主にメンタル面に懸念を抱えている節が見受けられる。

その点も考慮した上で、それぞれに応じたトレーニングメニューを作成していたんだ。

歌やダンスの振り付けに関してはまだ手を付ける段階ではないが、時間を見つけて関連する書物には目を通しておこうと思っている。

 

「キヨちゃんはどうしてあの子たちに協力しようと思ったん?」

 

手早く片付けを始めると、唐突に希がそんなことを問うてきた。

 

「なんだよ、藪から棒に?」

 

「ウチな、てっきりキミはあの子たちに思い留まるよう説得するんじゃないかと思ってたんよ。いくら友達に頼まれたからって安請け合いするほどキミは阿呆やない。でも現にキミは彼女たちに尽力してるし、キミ自身もとても楽しそうに見えたから不思議に思ってね」

 

楽しそう、か……。

前々から感じていたことだが、希は勘が鋭いというか、人を見る目が非常に長けていると思う。

普段ののほほんとした様相とは裏腹に、物事の核心を突いてくる的確さは舌を巻くほどだ。

まあ、確かに疑問に思うのも当然か。

今までスクールアイドルなんて存在しなかったこの学校で、果たしてどれほどの可能性を見出せるのだろうか。

成功する確率は皆無といっていい。

それこそ、生徒会の活動に徹する方がまだ現実的である。

そんなことは問われれば誰もがそう答えるはずだ。

希の言うとおり、最初に穂乃果たちから話を聞いた時にあきらめさせようと思ったのもまぎれもない事実だ。

俺だってこの学校が無くなってほしくはないけど、失敗して傷つくのはあいつら自身だからな。

だが現に俺はそれをわかった上で、図書室に籠って作業に没頭しているわけだ。

俺が穂乃果たちに協力する理由、それは――――

 

「なんていうか………似てたんだ」

 

「似てた?」

 

ああ、と頷き、机の上に積み重ねていた一冊のノートを手に取った。

『ガッシュ・ベル』と書かれた表紙を見つめながら、俺は懐かしい心地で思いを馳せる。

 

「どんなに可能性が小さくても希望を捨てなかったあいつらが、誰かのために一生懸命だったあいつに、似てたんだ……」

 

共に過ごした日々の中でずっとそばで見てきた。

何があってもあいつは絶対にあきらめることをしなかった。

非情な現実に悩み、苦しみながらも信念を貫いて王になったあいつは俺の誇りだ。

そして今、あいつと同じように決意の光を宿した奴らがいた。

 

「いきなり廃校なんて言われてもさ、俺たちでできることなんてたかが知れてるだろ?だから結局、みんなはそれを現実として受け入れちまう」

 

「まあ、普通はそうやね」

 

俺の言葉を希は素直に肯定する。

そう、本来ならそれが普通なんだ。

 

「でも、あいつらは違った。受け入れて、そこから自分の意志で『答え』を見つけようとしている」

 

穂乃果の言葉が俺の心に強く響いた。

海未の決意が俺の中の熱い想いに火をつけた。

ことりの覚悟が俺に可能性を感じさせた。

そして誰もがあきらめる中で、光を作り出そうとしていたあの時の3人の姿がガッシュの面影と重なって見えたんだ。

 

「確かに方法としては無茶かもしれないけど、あいつらだって承知の上さ。それに、どんなに無茶でも不可能ってことは絶対にないんだ。だから、俺はあいつらの可能性を信じる。今度はあいつらと一緒に前に進む。そう決めたんだ」

 

もちろん、不安がないと言えばウソになる。

でも、俺が固く見据えるのはいつか見たような光り輝く未来ただひとつ。

だからこそ、俺も一度心に決めたからには不安なんかで立ち止まってられるかってんだ。

図書室の一角で俺の本心を打ち明けたところで昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。

そういや片付けがまだ途中だったな。

 

「そっか………なるほどな」

 

やがて予鈴も鳴り止んだ静寂の中、静観していた希が納得したようにひとつ頷き、そして穏やかで優しい笑みを浮かべていた。

 

「フフ、そんなんじゃまたエリチが機嫌悪くするよ?」

 

「………なんでそこで絵里が出てくるんだ?」

 

何を思ってかの一言に思わず拍子抜けを食らう俺。

確かに絵里は快く思ってはいない節を見せていたが、それはすでに分かっていること。

今さら持ち出すことでもないはずだろうに。

 

「フフ、ナイショ」

 

だが、怪訝に思う俺に希はおどけるように小さく笑むだけ。

とりあえず、俺の反応を楽しんでることだけはわかった。

すぐに聞き返そうと思ったのだが希はほなね、とこちらに背を向ける。

 

「少なくとも、ウチはエリチがキミ以上に信頼してる男の子なんて見たことないからね」

 

呼び止める間もなく、この場を後にした希が去り際に意味深な一言を残していったがが、結局俺は彼女が紡いだ言葉の意味を知ることはできなかった。

 

                      ☆

 

事態が動き出したのはその日の放課後のことだった。

今日もいつかのように誰もいなくなった教室に残る俺たち。

ただ、唯一違う点を挙げるとすれば、それはこの場に穂乃果の姿がないことだ。

今彼女は投票箱を確認しに行っているのだが、教室を出る時に見せた足取りの重さが悲壮感を窺わせていた。

 

「やはり相当堪えてるみたいですね……」

 

「穂乃果ちゃん……」

 

終いには海未とことりまでもが弱気になる始末だ。

まずいな………。

このままではこの後のトレーニングに絶対影響がでる。

 

「海未、ことり。今のうちにこれ渡しとくぜ」

 

空気を入れ替えるついでに俺が鞄から取り出したのは2冊のノート。

青いノートには海未の名前が、グレーのノートにはことりの名前が書いてある。

 

「今朝の練習と海未の意見を元にある程度だが当面のトレーニングメニューを作ってみたんだ。とりあえず目だけは通しておいてくれ。これはことりのな」

 

穂乃果のノートはまた後で本人に渡すとして、俺はもう一冊を海未に手渡す。

 

「で、これが海未の分だ」

 

「私の、ですか?」

 

「ああ、お前はお前でクリアしなきゃならん課題があるだろ?」

 

おずおずとした面持ちで受け取る海未だったが、不思議そうにノートを開いた途端に大きく目を見開いた。

同じように中身に目を通していたことりもすごぉい、と感嘆の息をこぼしている。

 

「まさか、これ全部ひとりで作ったんですか?」

 

「やるからにはちゃんとしたライブをやるんだろ?」

 

関連書物の内容だけでなく過去の経験や資料を参考にした部分で組み立てているが、やはり朝と昼の短時間で3人分のトレーニングメニューを作成するのはさすがに骨だった。

それでも俺はあくまで裏方だ。

これから彼女たちが直面することになるプレッシャーと比べればこれくらいの手間はなんてことない。

 

「ありがとうございます、清麿くん……」

 

驚く海未にいつかの仕返しで勝ち誇った笑みを向ける俺だったが、逆にノートを胸元で抱きしめる彼女はにかんだ笑顔に思わず見惚れそうになってしまった。

そんな純粋な反応で返されるとこっちも対応に困る。

本当、そういうのは卑怯だと思う。

 

「おう……。まあ、何かわからないところがあったらいつでも聞いてくれ」

 

内心で羞恥をごまかそうと努めていた丁度その時、教室のドアが勢いよく開け放たれた。

現れたのはおそらく廊下を走ってきたのだろう、肩で息する穂乃果だった。

 

「大変だよみんな!」

 

俺たちの姿を確認するなり声を上げる穂乃果。

 

「入ってた!」

 

それは何の脈絡のない一言。

しかし教室を出ていく時とはまるで違い、生き生きとした輝きに満ち溢れていた表情で彼女の言葉の真意を容易に察することができた。

 

「入ってた!?」

 

「本当に!?」

 

海未もことりも期待で席から立ち上がり穂乃果も元へと駆け寄っていく。

 

「あったよ!一枚!」

 

そう言って穂乃果が高く掲げるのは折りたたまれた小さな便箋。

さっそく便箋を開いて中身を確認する。

 

『μ’s』

 

それが便箋に書かれてあった内容だった。

 

「ゆー、ず?」

 

「いや、ミューズだな」

 

「ああ、石鹸の?」

 

いや、どう考えてもそれはねえだろ。

天然を発動する穂乃果にもれなく場の空気が苦笑で包まれた。

 

「違います。おそらく、神話に出てくる女神からつけたのだと思います」

 

穂乃果のボケはさておいて、海未の言うとおり確か芸術を司る9人の女神の総称をもじっているのだろう。

 

「……いいと思う。私は好きだな」

 

「私も素敵だと思います」

 

不思議と引き付けられる2文字の言葉に、ことりと海未はうれしそうに微笑みを浮かべる。

どうやら2人ともお気に召したようだ。

 

「μ’s……」

 

そして噛みしめるように呟く穂乃果に笑顔が弾ける。

 

「うん!今日から私たちはμ’sだ!」

 




遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
皆様は正月をどうお過ごしだったでしょうか。
今年最初のサプライズは、ようやく僕の地域でもラブライブの放送が始まってテンションアゲアゲな青空野郎です。
この作品も今話でようやく「μ’s」という言葉が出せました。
個人的にはようやくエンジンがかかり始めたのではと思っています。
今年からDXDとDOG DAYSの3期が始まるようでしょっぱなからキャッホーな心境にいます。
僕の作品の方も頑張って投稿していきたいと思います。
応援、感想、意見、その他もろもろよろしくお願いします!
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