ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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STAGE.26 センターは誰だ?

早々に部室での茶番をやり過ごした俺たちは場所を中庭に移した。

 

「た、タスケテ……」

 

まずは1年生組にも召集をかけてから部活紹介の撮影を再開させたわけだが、トップバッターに選ばれた小泉は明らかに現状に緊張していた。

 

「緊張しなくてもへーき。聞かれたことに答えてくれればいいから」

 

「編集するからどんなに時間かかっても大丈夫やし」

 

カメラを向けられて笑顔を取り繕うも助けを求める小泉を星空と希が励ますが、やはり困惑が拭えずにいるようだ。

まあ、普段から気弱な性格の彼女からしてみれば当然の反応と言えるか。

 

「真姫ちゃんもこっちくるにゃー」

 

戸惑う小泉の次に星空はカメラを動かし、渡り廊下に設けられた桟にもたれる西木野を呼ぶ。

 

「私はやらない」

 

しかし、無関心な一言を返す西木野は徹底して外野を決め込む腹積もりのようだ。

 

「ええんよ?どうしてもイヤなら、無理にインタビューしなくても」

 

そんな頑なな西木野を見て、意味深な言葉で希は星空に合図を送る。

断言しよう………あれはなにかを企んでる笑みだ。

 

「真姫だけはインタビューに応じてくれなかった。スクールアイドルから離れれば、ただの多感な15才。これもまた、自然の――――」

 

「なに勝手にナレーションかぶせてるの!?」

 

あろうことか、希は横髪をいじる西木野をカメラで捉えたまま語りを入れ始めた。

西木野もそれに気付くや、憤慨してカメラを抑えるためにこちらにやってくる。

結局、希の思惑にはまってしまったわけだ。

 

「だって部活紹介の取材なのにひとりだけ不参加ってのはよくないやろ?」

 

「だからって勝手にあることないこと吹き込まれたらたまったもんじゃないわよ!」

 

「なら取材に応じてくれるよね?」

 

「―――っ。そ、それは……」

 

最初は依然として抵抗を見せる西木野だったが、希の正論にバツが悪そうに視線を泳がしてしまう。

 

「あきらめろ、西木野。こいつは碌でもないこと考えたら一切躊躇がない。いちいち本気にしてたらキリねえぞ」

 

「もー、人聞き悪いなキヨちゃんは。いくらなんでも考えすぎやって」

 

嘆息する俺に対して、小さく口角を上げる希。

そこに悪びれた様子はない。

 

「確信犯が何を言ってやがる……。あと、キヨちゃん言うな」

 

苦々しく冷めた視線を向けるが、希はただおもしろおかしそうに片目をつむる。

だが、この程度で目くじらを立てていたらこっちの身が持たない。

それはあの時にイヤというほど思い知らされたことだから……。

その時、呆れて再び溜め息をついてると、今までの一連を静観していた穂乃果が徐に口を開いた。

 

「清麿くんって希先輩からキヨちゃんって呼ばれてるんだね」

 

………………………あ。

いつものやり取りだったから完全に油断してしまった。

気付いた時にはもう遅く、俺は周りのみんなから好奇の眼差しを向けられていた。

 

「なら、私も今度からそう呼んじゃおっかな?ね?キヨちゃん」

 

「たのむことり勘弁してくれ」

 

そもそもお前には『きーくん』があるだろ?

 

「ずいぶんと希先輩と仲がいいんですね、キヨちゃん?」

 

「海未、なんか笑顔が怖いんだが......」

 

もしかしなくても怒ってるよな?なぜだ?

 

「気にすることないにゃ、キヨちゃん!」

 

「お前はホント迷わないよな、星空!」

 

とりあえずお前は遠慮と言うものを覚えろ!

 

「えっと……とってもかわいいですよ?き、キヨちゃん……」

 

「小泉、それ結局なんのフォローになってないからな?」

 

く.........なぜか怒るに怒れねえ.........!

 

「なんでもいいから早く始めましょ?時間だって限られてるんでしょ?……………キヨちゃん」

 

「西木野も恥ずかしいなら無理に合わせるな!」

 

キヨちゃんに恥を忍ぶほどの価値はねえぞ!

あれー、俺の黒歴史が瞬く間に伝播していく……。

つーか、なんで俺はみんなからキヨちゃんコールを浴びてる?

まさかと思い振り向くと、案の定、希はニヤリと口角を上げていた。

は、謀りやがったな希………!

 

「それでは清麿くん改めキヨちゃん。カメラに向かって今の心境を一言お願いします!」

 

「お前ら取材忘れてるだろ!?」

 

                    ☆

 

中庭でのひと悶着をどうにか治めて三度軌道を修正。

カメラを受け取り、今度は小泉だけでなく、星空と西木野も一緒に並んで撮影を始める。

 

「まずは、アイドルの魅力について聞いてみたいと思います。では、花陽さんから」

 

「え?えーと、えっと……」

 

「かよちんは昔からアイドル好きだったんだよねー?」

 

改めて希が小泉に質問を投げかけるが、未だどう答えればいいかわからずに戸惑う彼女に代わって星空が答えてくれた。

小泉も安堵し、自信がついたのか星空の橋渡しにはい!と元気に応じる。

 

「それでスクールアイドルに?」

 

「あ、はい。えっと………?」

 

星空のおかげで小泉がいくらか緊張が和らいだ面持ちを浮かべた束の間のことだった。

 

「……ぷ、ぷぷっ」

 

何かを見た小泉が口元を抑えて小さく吹き出した。

 

「ちょっと止めて!」

 

何事かと思えば、眉根を寄せた西木野が詰め寄ってくる。

彼女の視線の先―――背後を振り返ると穂乃果がひょっとこのように口元をとがらせた変顔をしていた。

 

「穂乃果……何やってんだ?」

 

「いやー、緊張してるみたいだからほぐそうかなーと思って」

 

穂乃果が呑気な笑顔で言うが……まずい、また目的が脱線し始めてきたぞ……。

 

「ことり先輩も!」

 

「がんばっているかね?」

 

さらにその後ろには、穂乃果のような中途半端なモノマネではない、本物のひょっとこがいた。

いや、どこから取り出したのか、ひょっとこのお面をかぶったことりがいた。

彼女の声音に違和感を覚えたが、それは単にくぐもっているだけだと思いたい。

これには海未も投げやりな苦笑で嘆息するのだった。

 

「まったく、これじゃµ’sがどんどん誤解されるわ!」

 

確かに、撮影を始めて小一時間経つわけだが………残念かな、これが音ノ木坂スクールアイドルµ'sの現状である。

こんな映像見せられてもきっとアイドルさは伝わらないだろうな……。

しかし………まさか西木野の口からµ'sを想う言葉が出るなんてな。

やはり素直になれないだけで、心は正直なようだ。

 

「おお、真姫ちゃんがµ'sの心配してくれた!」

 

「べ、別に私は………」

 

今になって恥じらいを見せる西木野だったが、そんな姿が微笑ましく思えてくる。

すると、感嘆する穂乃果が俺の手からカメラを抜き取り、そっぽを向く彼女にレンズを向けていた。

性懲りもなく撮影を試みる穂乃果に西木野がたまらず一括する。

 

「撮らないで!」

 

しかしながら、良くも悪くも、これがアイドル研究部の日常だ。

 

                    ☆

 

部室でいじけていた矢澤さんを回収した後、屋上に移動したµ'sはさっそく練習に取り掛かる。

最初にストレッチで筋肉を解した後でメンバーは次の練習に移る。

 

「みんなはなにしてるん?」

 

希が視線を移す先には、静かに瞑目する穂乃果たちの姿があった。

俺と希は彼女たちから離れた位置で練習風景を見ているわけだが、やはり目の前の光景は予想していたものと違っていたようで、腑に落ちない様子で訊ねてきた。

 

「呼吸を整える練習だよ」

 

「呼吸?」

 

「ああ。呼吸は平常心と集中力を高める最適な手段なんだ。極限にまで高めた集中力はトラブルやプレッシャーに関係なく自分の力を引き出してくれる。スポーツのトップアスリートはみんな呼吸を大切にしているし、もちろん、大勢の観客の前でパフォーマンスを披露するアイドルもこの呼吸法が力を発揮するんだ」

 

過去の経験を思い返しながら説明するが、まさかこうしてデュフォーの指導を今度は俺が教えることになる日が来るとは思ってもみなかったな。

内心で苦笑してみんなの様子を観察すると、メンバーになってまだ日が浅い矢澤さんはともかく、他のみんなは呼吸を繰り返す間隔が安定してきている。

中でも海未は普段から弓道部だけでなく自宅が道場であることもあってか、その姿はかなり様になっていた。

 

「ようするに座禅みたいなもん?」

 

「いや、少し違うな。座禅のように心を落ち着かせるんじゃなくて、むしろイメージトレーニングと並行して呼吸のタイミングを意識させてるんだ」

 

たかが呼吸とバカにしてはいけない。

むしろ穂乃果たちにとっては呼吸法で培われるスキルこそ体力以上に重視すべき能力だと言ってもいい。

もちろん、呼吸法の他にも基礎体力を伸ばすトレーニングや身体能力や瞬発力を鍛える『答え』はすでに彼女たちのノートに記してある。

俺の『能力』を基にして、関連書物を読み漁り、改めて俺とガッシュのトレーニングメニューを見返して、µ’sそれぞれの『答え』までの途中式に当てはめていった。

あとは明確化した途中式の確実性をより高めるために状況に応じて内容を変更、補強していく。

 

「へえ、結構考えてるんやね」

 

「まあな。……つっても、ほとんど受け売りみたいなもんなんだけどな」

 

「ふーん。でも、ならキヨちゃんはどうやってこのメニューを考えたん?」

 

「......それは企業秘密だ」

 

希の疑問は最もだが、こればっかりは答えるわけにはいかない。

………いや、答えたくないというのが正確だな。

穂乃果たちに俺の『能力』について明かしていない。

話せないということはないのだが、やはりどうしても肝心なところで憚れてしまうものがある。

それでも、もう引き返すことができにいところまで来てしまっているのも事実だ。

罪悪感を押し殺して意識を練習に戻すと、うとうとと舟を漕いでる頭を3つ見つけた。

.........これもよくある光景だったりする。

溜め息をついて俺は穂乃果、矢澤さん、星空の背後に歩み寄りゆっくりと狙いを定め――――

 

 

スパン!スパン!スパン!

 

 

「いてっ」

 

「あだっ」

 

「ふにゃっ」

 

小切れのいい炸裂音と、3人の少女の呻きが青空に吸い込まれた。

今日もµ'sは平常運転でなによりだ。

 

                    ☆

 

「1、2、3、4、5、6、7、8………」

 

呼吸の練習を済ませて次はダンスの練習に移り、カウントを刻む海未の指揮のもと、手拍子に合わせて各々がそれぞれの振り付けでステップを踏んでいく。

 

「花陽はちょっと遅いです!」

 

「はい!」

 

「凛はちょっと速いです!」

 

「はい!」

 

「ちゃんとやりなさいよー」

 

「にこ先輩、昨日言ったところのステップ、まだ間違ってますよ!」

 

「わ、わかってるわよ……」

 

海未に指摘されリズムを整え直す小泉と星空に矢澤さんが野次を飛ばすが、すかさず彼女も注意を受けてしまう。

事ある毎に立つ瀬を無くしていく矢澤さんがいい加減不憫に思えてきた。

 

「真姫、もっと大きく動く!」

 

「ハイ!」

 

「穂乃果、疲れてきた?」

 

「まだまだ!」

 

「ことり、今の動き忘れずに!」

 

「うん!」

 

大きく返事をする西木野に続いて、穂乃果は根性を見せ、ことりは自信に繋げていく。

 

「ラストー!」

 

そして海未の掛け声でみんなが一斉にフィニッシュを決める。

誰も最後まで笑顔を忘れていなかった。

 

「かれこれ1時間。ぶっ通しでダンスを続けてやっと休憩。全員息は上がっているが、文句を言う者はいない」

 

ダンスの練習にも一区切りつき、その場にへたり込んで息を整える穂乃果たち。

希の言う通り、ダンスを始めてからの間で誰も脱落することはなかった。

本番では踊りながら歌も歌わなければならないため相応の体力が必要になるわけだが、みんなボーダーラインを超えている。

特に練習量が一番少ないはずの矢澤さんがすさまじい追い上げを見せている。

ダンスの出来はまだ拙い部分が目立つが、かつてはスクールアイドルとして活動していた頃の意地からか必死に練習についてきている。

 

「さすが練習だと迫力が違うね。やることはやってるって感じやね」

 

「まあな。最低でも人様に見せられるものに仕上げなきゃいけないんだ。手を抜いてる余裕なんてねえよ」

 

今の彼女たちのダンスを見て、『能力』で導き出した『答え』をノートに記していく横で希が称賛する言葉をくれる。

 

「でも、練習ってふつうリーダーが指揮するもんじゃない?」

 

「………まあ、ふつうはそうだよな」

 

至極当然な疑問かもしれないが、俺はそれを肯定的に受け止めることはできなかった。

後に、その問いがµ'sにひとつの波紋を生み出すこととなる。

 

                    ☆

 

「リーダーには誰が相応しいか……。だいたい、私が部長についた時点で一度考え直すべきだったのよ」

 

開口一番に矢澤さんが真剣な声音で一石を投じた。

取材から一夜明けた放課後、場所はアイドル研究部部室。

俺から見て左側を2年生組が、右側を1年生組が、そして真正面に矢澤さんを見据える形でテーブルを陣取っている。

雰囲気作りのためか窓から差し込む日の光だけで室内は薄暗い。

…………いや、電気消す必要あるのか?

そもそもは昨日、取材の一環として穂乃果の自宅を訪れた希の疑問から始まる。

 

『なんで穂乃果ちゃんはµ'sのリーダーなん?』

 

今さらだが、µ'sのリーダーは穂乃果ということになっている。

今日の会議をきっかけに今までの穂乃果の役割を思い返してみた。

主に練習メニューは俺が、歌詞は海未が、ステップや衣装づくりはことりが中心に、作曲は西木野が担当している。

穂乃果と言えば…………うん、見事になにもしてないな。

それでも穂乃果がリーダーのポジションについていたのは単にµ'sの発起人だったからだ。

だが、それでµ'sは機能していたから特に気にすることはなかったわけだ。

 

「私は、穂乃果ちゃんでいいと思うけど……」

 

「ダメよ。今回の取材ではっきりしたでしょ?この子はリーダーにまるで向いてないの」

 

おずおずという感じでことりが言うが、矢澤さんはそれを一蹴する。

 

「そうとなったら、早く決めたほうがいいわね。PVだってあるし」

 

「PV?」

 

「リーダーが変われば必然的にセンターだって変るでしょ?次のPVは新リーダーがセンター。それでいいわよね?」

 

確認するようにまっすぐこちらを見つめてくる矢澤さんに逡巡することなく俺は頷いた。

 

「ああ、別に問題はない。タイミング的にもちょうどいいんじゃないか?」

 

むしろ部活紹介とともに新曲のPVを披露できれば、相応の効果が期待できる。

 

「でも、誰が……?」

 

「リーダーとは!」

 

戸惑う小泉に応えるように立ち上がるや、矢澤さんはそばに立てかけてあったホワイトボードに手をかけ、ひっくり返す。

すると、半回転した白い板面には『リーダーとは!!』という題目で関連した内容が記されていた。

 

「まず第一に、誰よりも熱い情熱を持ってみんなを引っ張っていけること!」

 

「………いつの間に用意したんだ、ソレ?」

 

しかし俺の疑問を華麗にスルーして矢澤さんは声高らかに力説していく。

 

「次に、精神的支柱になれるだけの懐の大きさを持った人間であること!そしてなにより!メンバーに尊敬される存在であること!この条件を備えたメンバーとなると……!」

 

そして初めて先輩らしい威厳を見せて矢澤さんが続きを口にしようとした瞬間――――

 

「海未先輩かにゃ?」

 

「なんでやねぇええんっ!」

 

……ぶち壊しだよ。

せっかくの真面目な雰囲気がたったひとつのツッコミで台無しになってしまった。

 

「そうだよ、海未ちゃん。向いてるかも、リーダー!」

 

あとはいつものように流れるまま、意外にも乗り気な笑みで穂乃果が海未に促していた。

 

「それでいいのですか?」

 

「え?なんで?」

 

「リーダーの座を奪われようとしているのですよ?」

 

「それが?」

 

「………何も感じないのですか?」

 

「だって、みんなでµ'sやってくのはいっしょでしょ?」

 

単にこだわりがないのか、それとも深く考えていないだけなのか?

懐疑的に眉を顰める海未とのやりとりの中で穂乃果は疑問符を浮かべていた。

 

「でも、センターじゃなくなるかもですよ?」

 

「おお、そうか!」

 

取り乱す小泉に言われて初めて事態を理解したようで、ポンと手を打つ穂乃果は腕を組んでしばし考え込む。

 

「ま、いっか」

 

「「「「「えぇっ!?」」」」」

 

「軽いな……」

 

思索に耽ること数秒、なんとも楽観的な答えに俺たちは揃って唖然としてしまうのだった。

 

「そんなことでいいのですか?」

 

これにはたまらず海未が問いただすが、尚も穂乃果の反応は軽い。

 

「じゃあ、リーダーは海未ちゃんということにして……」

 

「ま、待ってください……」

 

そのままリーダーが変わるかと思いきや、途端に海未は渋りを見せた。

 

「無理です……」

 

目を逸らし、あと一押しで泣き出してしまいそうなほど弱弱しい面持ちを浮かべ、海未は今にも消え入りそうな声で紡ぐ。

 

「……面倒な人」

 

「じゃあ、ことり先輩?」

 

クールに嘆息する西木野に続き、小泉といっしょに次のリーダー候補に注目する。

 

「ん?私?」

 

「副リーダーって感じだねー」

 

これに関しては、星空の言うとおりみんなが納得する。

確かにことりにリーダーが務まらないことはないと思うが、どちらかというとサポートに回ってもらった時の安心感が彼女の持ち味だと思う。

 

「でも、1年生でリーダーっていうわけにもいかないし……」

 

「仕方ないわね~」

 

「やっぱり、穂乃果ちゃんがいいと思うけど」

 

「……仕方ないわね~」

 

それとなく名乗りを上げたつもりだったのだろうが、みんなは矢澤さんを無視して討論を続けていく。

 

「私は海未先輩を説得したほうがいいと思うけど?」

 

「仕方ないわねー!」

 

口元を痙攣させながらも矢澤さんは食い下がるが、やはりみんなの反応は変わらない。

 

「と、投票がいいんじゃないかと……」

 

「仕方ないわねええええっ!」

 

しかし、とうとう我慢の限界を超えたのか、どこからか取り出した拡声器で声を張る。

狭い室内の中で大音量が反響し、すげえうるさい。

 

「で、どうするにゃ?」

 

「どうしよう?」

 

だが耳を塞いだのは俺だけで、他のみんなは何事もなかったかのように会話を交わすのだった。

なんだその無駄な団結力は?

一方、矢澤さんはというと――――

 

「…………」

 

ただただ力ない表情で拡声器を下ろしてしまっていた。

リーダーをどうするよりも、むしろ矢澤さんをどうするよ……。

一向に平行線をたどる話し合いに脱力を覚えながら時計を確認すると、そろそろ時間が迫っていたことに気付いた。

 

「悪いが、リーダー云々に関してはみんなに任せるわ」

 

「あ、そっか......。清麿くん、確か今日は生徒会の会議があるんだっけ?」

 

溜息を吐いて席を立つ俺に気付いた穂乃果に頷く。

不安は残るが、もうここに留まっているわけにはいかない。

 

「ちょっと清麿!今はµ'sの存亡がかかってるっていうのに生徒会ってあんた正気!?」

 

「スマナイ。こっちばっかり贔屓したくねえんだよ」

 

声を荒げる矢澤さんの気持ちもわからんでもないが、俺としてはどちらかを優先するようなことはしたくない。

 

「………ゴメン。さすがにちょっと軽率だったわ……」

 

矢澤さんも頭に上った血が下がり、俺の立場を理解してくれたようで申し訳なさそうな面持ちで納得してくれた。

 

「清麿くん!」

 

さて、気持ちを切り替えてドアノブに手をかけようとした時、海未に呼び止められた。

 

「最後に……清麿くんなら、どう思いますか?」

 

振り返ると海未が不安げな眼差しで問うてきた。

リーダー、か。

俺が思うリーダーは、やっぱり………。

あいつの姿を想い描きながら俺は一瞬だけ穂乃果に視線を向けて口を開いた。

 

「俺は、穂乃果でいいと思うぜ」

 

俺の答えに穂乃果はもちろん、他のみんなも目を丸くしていた。

せっかくの会議を根底からひっくり返すことを言ったんだ、逆にみんなの反応は簡単に予想できていた。

 

「その根拠はいったい……?」

 

再度海未が問うてくるが、俺はただ穏やかに笑む。

 

「深く考えなくても、みんなならすぐにわかるさ。きっとな」

 

それだけ言い残し、今度こそ俺は部室を後にした。

 




遅くなったけど…………希、誕生日おめでとう!
スクフェスでもらったラブカストーンで勧誘したら希のSRゲット!
間に合わなかったけど、近いうちに希をメインにしたお話も書くのでヨロシク!

センターは誰だ?編ということで清麿の新たな黒歴史を混ぜつつ、今回はアニメ沿いで進めましたが、次回は生徒会に移ります。
これからの絵里との衝突から和解までの流れをお楽しみに!
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