ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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STAGE.6 前途多難

放課後のひと騒動の後、家に帰った俺はさっそくスクールアイドルについて調べることにした。

いざネットで検索にかけてみると、もう出るわ出るわ。

今、俺が覗いているのはスクールアイドルの公式の総合ポータルサイトだ。

このサイトには古今東西すべてのスクールアイドルのホームページにつながっている。

試しにA-RISEのページを開けば、メンバーの紹介やグループについての概要欄、楽曲のPVにライブ映像の動画はもちろん、UTX学院のURLまで掲載してある。

なんとなくライブ映像を視聴してみると、次第に言葉を失うほどの衝撃を受けた。

曲調や歌詞、ダンスの運びに照明の当て方、その他もろもろのクオリティが半端じゃない。

前にお袋も言っていたが、これ本当に俺と同じ高校生なのか?

素人目の判断だが、本職の恵さんのライブとそこまで大差がないように思える。

いや、確かに恵さんも高校生のころからアイドルとして活躍していたが、むしろ本業が学生である彼女たちの方が身近に感じられる。

『本職』と『学生』の違い、もしかしたらこれがスクールアイドルの一番の強みなのかもしれない。

そしてこのポータルサイトのもうひとつの特徴がランキングシステム。

文字通り、ファンやユーザーの投票によりランキングが上昇し、スクールアイドルのスコアとして表示されるシステムだ。

ランキングの一位がA-RISEであることを確認し、後は適当に画面をスクロールさせてみたがとても一晩で閲覧できる量ではない。

今になって俺もスクールアイドルの規模のデカさを甘く見ていたことに気付かされた。

最終的には穂乃果たちのグループもこのサイトに登録することになるのだろうが、正直なところ今更ながら不安になってきた。

電源を切ったパソコンの画面には悩ましげな俺の顔が写っていた。

 

                      ☆

 

穂乃果たちがスクールアイドルの結成を見届けた翌日のこと。

よくよく考えれば俺たちの目標は入学希望者を集めて廃校を阻止することただひとつなんだ。

何もスクールアイドルの頂点を極める必要はない。

そうだ、何事もプラス思考だ、プラス思考、うん。

残された時間は限られているがまずは確実に地盤を固めて行こう。

 

「……………………」

 

しかしあくまでポジティブに考えながら登校するなり、俺は掲示板の前で盛大に脱力していた。

その原因は目の前に張り出されている一枚のポスターだ。

『初ライブのお知らせ!』

『welcome みんな来てね!!』

『場所・音ノ木坂学院講堂前!』

かわいくデフォルメされた穂乃果、海未、ことりの3人イラストに添えられた吹き出しの内容に開いた口がふさがらない。

さっそくやらかしやがった………。

残念ながら、俺はこんなことをしでかす人物をひとり知っている。

なんかひとりで考え込んでいた自分がバカらしく思えるほどの破壊力に朝っぱらから茫然となっていたそんな時、廊下の向こうから血相を変えた海未が駆けつけてきた。

だが、俺の気の抜けた姿を見るなりすべてを悟ったのか、溜息を溢しながら額を押さえていた。

同時に、俺の予想も確信に変わった。

 

「……海未」

 

「お願いします何も言わないでください」

 

ですよねー。

逆の立場だったら俺も同じことを言っていたと思う。

 

「あ、清麿くん。おはよー」

 

後から現れたやらかした人物―――穂乃果の呑気なあいさつに示し合せるわけでもなく、俺は海未といっしょに大きく溜め息を吐くのだった。

 

                      ☆

 

「勝手すぎます!」

 

怒気をはらんだ海未の声が響く。

 

「あと一ヶ月しかないんですよ!まだ何ひとつできていないのに見通しが甘すぎます!」

 

教室への廊下を進む俺の前を大股で歩く彼女は大変ご立腹だ。

聞けば今朝方に講堂の使用許可をもらうために再び絵里の元に出向いた時に、穂乃果がバカ正直に初ライブを行うと宣言したとか。

もうすでに頭が痛い。

一応、希が上手くやってくれたようで許可自体はもらえたらしい。

だが、絵里のことだから露骨な妨害工作はしないと思うが、完全に目をつけられてるだろうな。

そして出だしから段取りが崩れたところへ海未がポスターの件を耳にして今に至る。

さっそく行動に移るのはいい傾向だがいくらなんでも段階をすっ飛ばしすぎている。

 

「でも、ことりちゃんはいいって言ってたよ?」

 

そうは言うが、ことりは穂乃果に甘い節があるからいまいち説得力に欠けるんだよな。

しかし告知したことで完全に後戻りができなくなってしまったわけだ。

悪気がない分、その場で止められなかった俺は怒るに怒れない。

結局やり場のない怒りは本日何度目かの溜め息とともに吐き出す他方法を思いつかなかった。

そんなこんなで教室に入るとことりの姿を見つけた。

 

「ん~と、こうかな?」

 

珍しく一緒にいないと思ったらことりはひとりスケッチブックと格闘していた。

 

「うん、こんなもんかな!」

 

クラスメイトにあいさつしながら席に着くころには丁度ことりも作業に区切りがついたようだ。

海未も気になっていたようで、とりあえず穂乃果といっしょに3人でことりの机を囲む。

 

「見て、ステージ衣装考えてみたの」

 

そう言ってこちらに見せてきたのはひとつのイラストだった。

 

「おおー!かわいい!」

 

「ああ、たしかにすごい!」

 

瞬間、第一声を発する穂乃果が目を輝かせる。

俺も思わず感嘆していた。

赤を基調としたワンピース型の衣装で胸元に大きめのリボンがいいアクセントになっている。

背面の腰の部分にも大きなリボンが備えられていて、余計なものがないシンプルなデザインに目が引かれる。

どうやら掲示板のポスターもことりが手掛けたようだ。

しかし、ポスターのイラストといい、ことりは本当に絵がうまいな。

 

「本当?ここのカーブのところが難しいんだけどなんとか作ってみようかなって。海未ちゃんはどう?」

 

うれしそうにはにかむことりは今度は海未に意見を求める。

先ほどから秘かに狼狽していた海未はイラストのある一転に視線を集中させていたが、やがて意を決したようにその部分を指さした。

 

「……こ、ここの、スーっと伸びているものは?」

 

「脚よ」

 

「素足にこの短いスカートってことでしょうか?」

 

「アイドルだもん」

 

妙に淡々としたやり取りの後、途端に海未は自身の脚を見下ろしながらもぞもぞとし始めた。

海未の謎の行為については、改めて衣装のイラストを見れば合点がいく。

衣装のスカートの丈は膝上にかかる程度の短さだ。

袖も肩口までしかなく、若干露出が多い気もしないでもない。

海未の性格上、決意はしたもののやはりまだ恥ずかしさを完全に捨てきれてないか。

そんな時、何を思ったのか穂乃果が見上げるように顔をのぞかせた。

 

「大丈夫だよ、海未ちゃんそんなに脚太くないよ!」

 

あまりにもド直球な発言に今日で何度脱力したのだろうか。

穂乃果よ、お前には遠慮というものはないのか?

 

「人のこと言えるのですか!?」

 

海未は海未で、どうやら図星を突かれたようで覚えず立ち上がりながら激高を飛ばす。

嘆息しながらやれやれと呆れていると、なぜか肩で息をする海未に睨まれてしまった。

えー?

わずかに赤面しているのは羞恥からによるものだと思うが………俺、何かしたっけか?

内心で首をかしげていると視界のはしで穂乃果が何やらひとりで思考していた。

 

「ふむ、ふむふむ、ふむふむふむ………」

 

しばしの間を置いて、そして一言。

 

「よし、ダイエットだ!」

 

お前のそういうところ、ホント尊敬するよ。

 

「ふたりとも大丈夫だと思うけど……」

 

さすがのことりもただただ苦笑いを浮かべていた。

 

「あー、他にも決めておかなきゃいけないことがたくさんあるよね。サインでしょ?街を歩く時の変装の方法でしょ?」

 

「そんなの必要ありません!」

 

なんだろう、穂乃果の言葉を聞くたびにだんだんとやる気が削がれていく気がする。

いくらなんでも気が早すぎる。

 

「それより………」

 

一刻も早くすでに暗雲が漂うこの状況を打開しなければならない。

しかし、追い打ちをかけるかのようにことりが申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。

本当、これ以上は勘弁してほしいが今度はなんだ?

 

「グループの名前、決めてないし……」

 

...............まさかの練習以前の問題だった。

 

「「おお!」」

 

遠慮がちな指摘に穂乃果だけでなく海未までもが驚嘆していた。

いや、おお!じゃねえよ。

 

「お前ら、もう少し危機感持とうぜ………」

 

本当にこんなんで大丈夫なのだろうか、頭を抱える俺は心の底からそう思った。

 

                      ☆

 

急遽グループ名を決めるために俺たちは図書室へ場所を移した。

ネーミングに関する書籍を参考に、頭を悩ませるがどうしてもしっくりくる案が思い浮かばない。

こんなところでつまずくわけにはいかないのだが、やはりグループ名ぐらいはある程度の特徴やこだわりはほしいところだ。

だが煮詰まった状況の中でなかなか決まらないままいたずらに時間だけが過ぎていくのかと思ったが、穂乃果の機転で件の告知ポスターに『そして…グループ名募集!』という吹き出しと投票箱が設置された。

 

「これでよし!」

 

廊下のど真ん中で穂乃果がペンを片手に満足げにうなずいた。

 

「丸投げですか……」

 

行き当たりばったりな穂乃果の発想にげんなりする海未の隣で俺は本日何度目かのため息を吐いた。

いい加減、数えるのも嫌になってきた。

 

「こっちの方がみんなも興味持ってくれそうだし」

 

「そうかもね」

 

「物は言いようだな」

 

果たして、これが吉と出るか凶と出るか。

 

「よーし、次は歌と踊りの練習だ!」

 

気を取り直して行動を再開させた俺たちがまず始めたのは練習場所の確保だ。

練習するからには昼休憩だけでは時間が足りなさすぎる。

しかしいざ校内を見まわってみれば、放課後は運動場や体育館と言った代表的な場所は運動部に占領されてしまうため使えない。

空き教室は部活動として認可されなければ使用できない決まりになっているためこの案もアウト。

了見がことごとくつぶされた俺たちが最終的にたどり着いた場所は学院の屋上だった。

 

「ここしかないようですね」

 

確かにここなら邪魔になることはなさそうだ。

 

「日陰もないし雨が降ったら使えないけど、贅沢は言ってられないよね?」

 

屋上を見渡すことりも異議はないようだ。

 

「うん、でもここなら音も気にしなくてすみそうだね。よし、頑張って練習しなくちゃ!」

 

そして俺の目の前で意気込む穂乃果とともに海未とことりが並ぶ。

 

「まずは歌の練習から」

 

「「はい!」」

 

そういえば、3人の歌を聴くのはこれが初めてだな。

さて、まずはお手並み拝見と行こうか。

 

「「「……………………」」」

 

「…………………………」

 

しかし待てど3人が歌いだす気配が一向に感じられない。

沈黙が続く。

…………おい、まさか……

 

「………曲、は?」

 

苦笑を浮かべることりがポツリと漏らした。

 

「私は知りませんが……」

 

海未も笑顔を取り繕っているだけだ。

さて、穂乃果はどうだ?

 

「私も……」

 

案の定、ホント期待を裏切らないよなお前ら、悪い意味で。

何度も思う、本当に大丈夫なのだろうか?

おや、3人が視線で何かを訴えかけてきてるぞ?

そんな彼女たちに俺は笑顔を浮かべて―――

 

「ん、ーーーっん。さーて、今日の晩飯はコロッケだとイイナー」

 

大きく伸びをしながらわざとらしく背を向けてやった。

 

「現実逃避はダメだよ清麿くん!」

 

やかましい、もうこうでもしなきゃやってられねーんだよ。

ここまで来ると落胆を通り越して乾いた笑いが浮かんでくる。

 

「……前途多難だな、こりゃ」

 

俺の儚いつぶやきは無情にも澄み渡る青空に溶けて消えていくのだった。




来年の春にデジモンが帰ってくるそうですね。
太一が17才になって帰ってくるみたいですね。
本当、世代としてはうれしいものがあります。
この作品を書いているとガッシュもリメイクして帰ってくれないかなと秘かに願う青空野郎です。
叶うならアニメでもゼオンと和解してほしいかった!
当時のアニメはファウード編の途中から迷走したまま終わってしまって釈然としなかったのを覚えています。
最近のアニメは第二期に続くことがほとんどですからそうでもありませんけど、昔のアニメは最終回が終わったら心に燻るあの置いてかないでくれよ感が何とも言えないんじゃないでしょうか?
あれが昔のアニメのいいところなのではと今になって思います。
原作のガッシュは何度読んでも涙腺決壊するんでもうたまりません。

これからも応援よろしくお願いします!
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