ラブライブ!~金色のステージへ~   作:青空野郎

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STAGE.9 一緒に

学校からの帰りの道すがらに海未の話に耳を傾けていた俺はもどかしさを感じていた。

その日のことは俺も覚えている。

しかし、改めて語られるとなんだかくすぐったいものがあるわけで、正直、どんな反応をすればいいのかわからない。

 

「……まあ、そういやそうだったよなぁ、うん………」

 

そうして、どうにかひねり出したのがそんな気の抜けた一言だった。

あの日は入学式を終えた後、俺はしばらく町中をぶらついていた。

当時は受験以外にもいろいろとごたごたしていたからそれどころじゃなかったんだよな。

改めてこれからお世話になる学校がある町並みを見ておきたかったんだ。

隣町でもあったからか、秋葉原、神田、神保町という大きな街と隣接しているわりには俺の住んでいる町とどことなく似通った印象を受けた。

そんな時に事件に出くわしたわけだ。

ちなみに、話の途中で出てきた巨人と光の龍の件で冷や汗をかいたのは内緒だ。

巨人と光の龍の正体は間違いなくファウードとバオウ・ザケルガのことだ。

あの時はなりふり構ってられなかったとはいえ、大勢の人の前でやらかしてしまったにも拘らず、誰も俺が渦中の人物であることに気付かなかったことはある意味奇跡だと言えよう。

あの日から2年以上経つわけだが、今になって墓穴を掘る事態は避けたいためこの件についてはあえて触れないでおこうと思う。

しかし、私にはないものを持っている、か………。

 

「さすが買いかぶりすぎじゃないか?」

 

当時のことを海未は誇らしげに語ってくれているが、むしろ俺はそれほどまでに大きな影響を与えたことに戸惑いを覚えていた。

頼ってくれるのは素直にうれしいという気持ちは確かに俺の中にある。

最初の頃は会話するにも心なしか距離感を感じていたが、今はこうして自然体で振る舞えるということはそれなりに信頼してくれているということだろう。

それでも、果たして海未の言うきっかけを教えられるのだろうか。

俺の胸中にそんな不安が過った時、煽るような口調で海未が問うてきた。

 

「何を弱気なことを言ってるんですか。つい先ほど最後まで付き合うと言ったのは清麿くんじゃないですか」

 

勝ち誇った微笑を向ける海未に俺はぐうの音も出せなかった。

 

「一緒に前に進んでくれるんですよね?」

 

さらにここぞとばかりに畳みかける彼女は言い返す暇すら与えてくれないようだ。

 

「一緒に『答え』を作ってくれるんですよね?」

 

強気ににじり寄る海未に呆気にとられる俺だったが、いつの間にか立場が逆転していることに気付いた時にはひとりで勝手に悩んでいたことがバカらしく思えていた。

本当、今さらだよな。

 

「わーったよ。そういう約束だもんな」

 

「フフ、お願いしますね」

 

わざとらしくため息を吐きつつ、潔く降参する俺に海未は満足げな笑みをたたえている。

痛いところを突いてくる容赦のなさは、さすが穂乃果の幼馴染といったところか。

伊達に今まで振り回されてきただけではないというわけだ。

そんなこんなで他愛もない会話をしている間にようやく目的地が見えてきた。

和菓子屋『穂むら』

穂乃果の家族が経営する老舗の和菓子屋だ。

ここに来るのは今日で何度目になるのだろうか。

と言うのも、実は入学式の日に道草をくっていたのにはもうひとつ別の目的があったりする。

その日は久々に親父が日本に帰ってくるということで土産を探していたんだ。

先の事態を収拾させた後も土産を求めて町中の店を見て回っていたのだが、どれもしっくりこなくていい加減決めあぐねていた時に丁度通りかかったのが穂むらだった。

海外から帰ってくる親父にとっては新鮮でいいかもしれない、と最初はそんな安易な考えだった。

時間も時間だったこともあり、そうと決まればと暖簾をくぐれば割烹着姿の穂乃果と再び出くわしてしまったんだ。

向こうも俺に気付くなり満面の笑顔で迎えてくれた。

だがこの時、タイミングが良かったのか悪かったのか、すでに穂乃果がその日の出来事を話していたらしく、ぜひお礼をと半ば強引に自宅に連れ込まれてしまったんだ。

しかし、招いたことはあってもこちらから女の子の家にお邪魔するのは初めてのことだったため少しばかり緊張を覚えていたのは確かだった。

それでも意を決して穂乃果の部屋の襖を開ければ、今度は談笑していた海未とことりと鉢合わせになってしまったんだっけな。

さすがにあの時は数時間前にまた明日と言った手前、かなり恥ずかしかったのを覚えている。

まあ、その日を境に自然と話す機会が増えて俺たちは友達になったことを考えると、返ってよかったのかもしれない。

 

「っん!?あら、2人ともいらっしゃい…」

 

さっそく表の扉を開く海未に続いて店内に足を踏み入れた俺たちを穂乃果の母親の美穂さんが出迎えてくれた。

油断していたのか、まだ営業時間なのにもかかわらず売り物らしき団子を頬張る姿を目撃されたわけだが、こういう抜けているところが親子だと感じさせる。

 

「お邪魔します」

 

「こんばんは、穂乃果は?」

 

「上にいるわよ。そうだ、お団子食べる……?」

 

後ろめたさからか美穂さんはとっさにお茶を濁そうとしていたが、俺にとってはすでに日常茶飯事の一幕となっているので特に気にはならない。

 

「いえ、結構です。ダイエットしないといけないので」

 

「あ、それ本気だったんだ」

 

「なにか問題でも?」

 

ついついこぼしてしまった本音が気に障ったのか、半眼で睨めつけられてしまった。

 

「いや、なんでも」

 

ここで機嫌を損ねられても困るのでおとなしく引き下がるのが正解だ。

てっきり冗談かと思っていたが、けっこう本気で気にしてたんだな。

いや、やる気があるのはいいことだもんな、うん。

さわらぬ神にたたりなし。

ただ、ダイエットもそうだが、どうにか今日中に曲の目途ぐらいは立てておきたい。

意気込みを新たに、店内を後にする俺たちはさっそく穂乃果の部屋へと向かう。

 

「「2人ともお疲れさま~」」

 

そんな俺たちを待っていたのは呑気に団子を頬張る穂乃果とことりの姿だった。

 

「「…………………」」

 

部屋の敷居を境に生じる温度差に海未とそろって絶句。

まさかの光景に俺は鞄を取り落してしまった。

海未に至っては眉間に皺を寄せ、頬を引き攣らせてしまう始末だ。

 

「お団子食べるー?」

 

「いまお茶入れるね~」

 

立ち尽くす俺の心境など知る由もなく、2人は相変わらずの雰囲気を醸し出していやがる。

だだ下がるモチベーションと反比例して湧き上がるこの黒い感情は晴らさずにしておくべきか……。

だが、俺の気持ちを代弁するように、海未が冷徹な一言を告げる。

 

「…………あなたたち、ダイエットは?」

 

「「――――ッ!」」

 

瞬間、蒼白してしまう穂乃果とことりの両名。

だから気付くのが遅えよ。

 

「お前ら、とりあえず努力という言葉を辞書で調べて赤線引いてこい」

 

「「返す言葉もございません……」」

 

穂乃果と並んで落ち込むことりの無駄に息の合った反省に溜息が漏れる。

本当、今日1日だけで何度溜息をついたのだろうか。

 

「それで、曲のほうはどうなりました?」

 

海未も落胆気味に訊ねるが、意外にも答えを返したのは穂乃果だった。

 

「実は1年にすっごく歌のうまい子がいるの。ピアノも上手で、きっと作曲もできるんじゃないかなって。明日聞いてみようと思うんだ」

 

「へえ、驚いた。まさかもう目処は立ててたんだな」

 

「むぅ、失敬!失敬だよ清麿くん!穂乃果だってちゃんと考えてたんだから!」

 

まさか当てを見つけているなんて思わなかったから覚えず感嘆してしまった俺の反応が不服だったのか、頬を膨らませる穂乃果。

しかし、お前は日頃が日頃だからな。

ほら、海未も目を丸くしているじゃないか。

 

「もし作曲をしてもらえるなら作詞は何とかなるよねってさっき話してたの」

 

「なんとか、ですか?」

 

続くことりの言葉に海未も首をかしげる。

 

「うん。ね~?」

 

「うん」

 

対して、示し合わすように頷く穂乃果とことりがテーブルから身を乗り出すや、意味深な笑みで海未に詰め寄っていく。

 

「な、なんですか……?」

 

傍から見ている俺でさえ気味悪く思えるほどだ、その異様な迫力に海未は笑みを繕うも明らかに怯える節を見せていた。

そして穂乃果が異様な沈黙を破る。

 

「海未ちゃんさぁ、中学の時ポエムとか書いたことあったよねぇ~?」

 

「え゛………」

 

途端に海未の苦笑が固まった。

ポエム?海未が?

 

「読ませてもらったことも、あったよねぇ~?」

 

ことりの追い討ちに、器用に正座のままを後ずさる反応を見るに、嘘というわけでもなさそうだ。

 

「へえ、そうだったんだ。ちょっと意外だ―――」

 

突如俺の驚嘆は遮られてしまう。

いや、決してバカにしたつもりはなかったんだ。

しかし、最後まで言い切る寸前に海未の鞄が俺の顔面を直撃していた。

 

「ブルアアアッ!?!?」

 

ドゴッ!と、鞄でぶたれたのだと理解した時には、俺は錐揉み回転しながら宙を舞っていた。

ガンッ!と、そして壁に激突。

そのまま床に倒れ伏す視界のはしで海未が部屋を飛び出していくのが見えた。

慌てて穂乃果とことりが後を追いかけていく。

逃げた!やめてください!帰ります!海未ちゃ~ん。いいから!よくありません!……………

部屋の外で巻き起こる喧騒を聞きながら思う。

なぜだ? 俺、何か悪いことしたっけか?

そうして、懐かしい理不尽さに俺はひとり涙を流すのだった。

 




どうもー。最近、ヒロインは海未さんでいいかなと思い始めている青空野郎です。
この話を書いている途中で新たな海未さんフラグの話を考え付いたりしましたしね。
実際、2年組は海未さん押しですしね(笑)
個人的に結構お似合いの2人ではないかと思っています。
それはそうと………………ちくしょー!
やっぱ1年組が出せなかった!
気持ちはもう初ライブ終わらせて年1年組が入部してるんですけどね………。
今年中にクウガは原作第2期、ウィザードは第1期を終わらせたいと思います。
頑張るんで、今後とも応援よろしくお願い致します!
P.S.
穂乃果の母親の名前は調べても分からなかったので、勝手に考えさせていただきました。
悪しからず。
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