隕石落とすやついるなら触手出しても大丈夫でしょ 作:五足歩行
※最後らへんから独自の妄想あり
「ぱんぱかぱーん!おはようございます!先生のパーティに勇者アリスが加わりました!」
“おはよう、アリス。”
太陽が眩しくこんにちはと挨拶を告げる頃、勢いよく扉を開いて今日の当番であるアリスが元気よくやってくる。
「アリスのレベルを上げるためにお手伝いをします!」
“じゃあ、レベル上げの旅に出る前にお菓子食べよっか。”
「わぁーい!」
徹夜明けの先生もここで一旦小休憩をとって、戸棚にしまってあるクッキーと温かいココアを2人分用意。アリスの好感度が上昇しました!
穏やかにのほほんと過ごしていると、アリスがふと部屋の隅っこに誰かがいるのに気付く。
「先生、あの人は誰でしょうか?重要NPCですか?」
“狩人って言うんだよ。私のパーティの仲間で、ジョブは…そのまんまハンターだね。朝だし起こそうか。”
ウィレームから奪い取った安楽椅子で足を組み静かに眠っている狩人。狩人を起床させるクエストを受注したアリスは近づいてゆさゆさと椅子を揺らす。
「起きてください、先生のハンターさん!」
ピクリと指が動いて目が開く。開ききってない目は眠気を堪えている。大きくのびをして立ち上がり傍に置いてあるヤーナムの狩帽子を被る。
“おはよう、狩人。よく眠れた?”
…あぁ、やはりこの椅子は良く眠れる。先生も疲れた時はコレで寝るといい。
あのウィレーム先生も老いさらばえるまでずっと愛用していた安楽椅子、朝を迎える事に貪欲な狩人にもってこいの代物。
「
…?
“この子はアリス。勇者を夢見る生徒さ。”
…勇者とな…勇者など、どんなに持て囃されようがいずれは醜い獣に堕ち、過去の栄光のよすがにも縋れず死ぬ運命…
まだ頭が覚醒していない狩人はひっでぇ言葉をボソボソと呟く。光の剣で撃ち抜かれたいですか?
「!アリスは凄いハンターに出会ってしまったかもしれません…」
しかし純粋かつゲーム脳なアリスは何らかのフラグに値する発言だと判断。よって狩人のことを歴戦のハンターだと認識した。間違ってはない。
そしてゲーム開発部としての嗅覚がこれを捉え、もしかしたら新ゲームのヒントになるかも!と即決し、狩人の手を掴むと部室へ引っ張って行く。
“そして一人…と。…ユウカなら来てくれるかな。”
「みなさーん!新しいメンバーを連れてきましたよ!」
明かりを消し、暗い部屋の中3人でゲームをしているとアリスが帰ってくる。
「あれ、もう帰ってきて今日の当番はどうしたの?」
「アリスは新しいアイデアを思いつきました!だから当番のクエストは一時停止です!」
「ねぇ、それより後ろの人怖いよ…太もも大魔神よりでっかいし…」
居づらそうにしている狩人に視線が集まる。ユズは先程素早くロッカーに逃げ込んだ。
「この人はハンターさん、新作を生み出す鍵になる重要人物です!」
…あー、狩人だ。好きに呼べ。
「…!」
さすがはゲーム開発部、その佇まいから発せられた一言でシナプスが爆発して制作モードへ。
「お姉ちゃん、記憶喪失の主人公ってのはどう?」*1
「記憶を紐解く旅にするか設定に留めておくのかで迷う…」
「あ、ねぇ、そこで立ったまま腕横に広げて!写真撮るから!」
こうなったら止まらない姉妹は矢継ぎ早にあれやこれやと手を出す。然しもの狩人もこの剣幕には従う他なかった。
「世界観はどうしよう…」
そこで狩人は設定と称して古都ヤーナムの風習、獣の病、仄暗く汚れた世界を濁さずその全てを伝える。
「し、シナリオライターの才能の原石…」
「ずっとあっためてた?」
続いてに懐からバッサバッサと道具やら装備やらを山積みに吐き出す。
「ストップストップ!部室埋もれちゃう!」
「この前ユウカに怒られて綺麗にしといて良かった…」
…お前たちのゲームに対する熱意は本物のようだ。カメラを貸せ、素材提供の時間だ。
置いてあるカメラを取り、部室を出てヤーナムやら地下死体溜りやら余さず撮影しまくる。敵や人物ごと巻き込んで撮るので登場人物の見た目もバッチリ。
アメンドーズはどうしても映らなかった*2ので医療従事者でスケッチに慣れてそうなヨセフカさんに特徴を伝えて上位者全員を描いてもらった。*3
シャーレに戻ってきた狩人は写真とスケッチを見せ、事細かく説明していく。モモイとミドリが食い入るように聞き、いつの間にか出てきたユズも隣でメモを取っている。
各モーションの撮影や人物の背景など、そうして必要な物は揃い、*4青ざめた血を求める宇宙悪夢的アクションRPGの死にゲーができた。
「タイトルはどうしよう?」
「うぅーんと、ダークソウ…」
…それ以上いけない。
「はい、アリスは
…もうやめておけ。
「あ、あの、
パズルの最後のピースがピッタリとハマるように全員に電流が走る。
「ゲーム史に残る革命よ…!」*5
「今年のゲームオブザイヤーは貰ったも同然!」*6
「これで廃部も防げるはず…」*7
構成が決まったところで早速作業開始。たった4人だというのにトントン拍子で進んで行き、なんとひと月経つ頃にはベータ版が完成していた。
「ということで、立役者であるハンターさんにプレイ権を進呈します!」
…コレで操作するのか?
コントローラー*8を手に持ちプレイ開始。見慣れたヨセフカの診療所から始まり、素手で罹患者の狼を相手にする。
…懐かしい…あの時はこいつが怖くて怖くてな…
不慣れな操作を披露しつつ立ち向かう。数回被弾し瀕死になりかけるも打ち倒し、獣と狂気に溢れた街を地元民感覚で進む。
かの上位者栗本*9に並ぶ記録を樹立しかけたところでジェスチャーの暴発でせいけもに拳を叩きつけられ死亡。*10 死んだことで狩人の夢に到着。啓蒙を一つ得た事で人形が初めから稼働している。
…驚いた、まさか声まで一緒だとは…
「ビビッときた人に手伝ってもらったの!」
「人形さんの声はトリニティのナギサさんです。」
一通り工房やテキストなどを見て満足したのかプレイを止める。
…見た範囲では全く同じだった。素晴らしい出来。まるで本物のようだ。
「やったぁ!」
「薄々感じてたんだけどヤーナムって実在するんじゃ…」
「しっ!」
そして更にひと月後、遂に発売されたそれは難しすぎるだの序盤から進めないだのコアなファンが一部生まれる程度だったのだが、圧倒的な難易度故の没入感、死闘を経てボスを撃破した時の達成感、個性豊かなキャラクター達*11が再び評価されると瞬く間にキヴォトスを席巻した。
…先生、生徒会から招集が…おや、先生もそれを遊んでいるのか。
“うん。中々難しいけど楽しいよ。”
画面を見るとビルゲンワースに到達したようだ。蔭から飛び出てきた瞳の苗床に抱きつかれて発狂死している。
“あー死んじゃった。まぁ丁度いいか、呼ばれてるようだし行ってくるね。良かったら狩人もやっていいよ。あ、ストーリー進めない範囲でね?”
…了解した。
敵を倒したあとゆっくりとビルゲンワースを探索する。
改めてステージを見ても驚くほどの再現度。屋内にある瞳の詰まった瓶や蜘蛛の巣まで緻密に作り込まれている。最後の学徒、ユリエも仕込み杖を振るい秘儀も使用してくる。
灯からのショートカットを開こうと屋外に出ると蛍花の横の柵が朽ち欠けており、一歩前に出てみたまえと言わんばかりに目立っている。
先生よ、許してくれ、ノーカウントの時間だ。
下の湖目掛けて落下。ロードが入り、降り立った先は教室棟に酷似したステージ。違う点を挙げるとするならばそこかしこに血がこびり付き、赤黒い人型に近い何かが徘徊している。
なんと狩人も知らぬオリジナルの追加ステージ。今すぐ隅々まで探索し尽くしたいが、しかしこれは他人のデータ。いっときの感情で進めてしまう程狩人は子供ではないのだ。
大人しく狩人の確かな徴を使用してビルゲンワースに戻り狩人の夢に帰っておく。そしてタイミングよく先生が戻ってきた。
“提出した書類に不備があるなんて…これじゃあゲームは当分おあずけかな。あ、輸血液マラソンお願いしていい?”
…それくらい自分でやれ。あと私もこれを始めたい。新しくこの機械を買えばいいのか?
“いや、そしたらアカウントを新規で作成してあげればこのままプレイできるよ。メアドは私の別のやつで登録するから。”
…助かる。
新しくアカウントを作ってもらい、とりあえずトゥメル=イルの汎聖杯取得まで進めることにした。ルートと操作は知っているのでステータスに少し持久力と筋力を振り、ヤーナムを駆け回る。 血晶石と秘文字の工房道具も忘れずに回収。血に渇いた獣をアルフレートと協力して殺し、トゥメルの聖杯を入手する。
素材は揃っているので生成してサックリ攻略。貯めておいた血の意志と啓蒙を取引で活用して中央、深きトゥメルと次々に制覇。ちなみに9kvに相当する聖杯はまだ未発見。無いなら作ればいい!そして拡散して世に地底人を増やすのだ!
“ひぃん…生殺しだよぉ…”
道を覚えていない事以外はアクシデントは無く、アメンドーズも赤子の手をひねるように撃破。たった数時間で汎聖杯まで到達。これでようやくスタートラインに立てた。
“よし、終わった!次私の番ね!”
ここで訂正作業を終えた先生が小学生のように変わって変わってとねだる。夜も更ける中ぶっ通しでプレイして、頸を切り落として貰う頃にまだ書類を受け取っていないユウカが怒りの来訪。エンディングを鑑賞できずに首根っこ引っ掴まれて連行されて行く。筋力40は100kgにまだ勝てないようだ。
この先、独自の妄想に気をつけろ
啓蒙を嫌う者よ、引き返したまえ
ビルゲンワースの外、血で朽ち果てた柵から湖に飛び降りてワープした先に新マップ『黒血の学院』
『…おやおや、今更ここに何の用だ?あぁいや、招かれざる者とはいえ久々の客だ。私は学院長のエジリ。我々は君を歓迎しよう。』
『奴らエジリ派は皆腐れきってやがる。瞳よりも血が優れているなど、あってはならない事だ。』
『瞳を失おうが死ぬ訳じゃあない。だが血はどうだ、賢い君なら分かるだろう?クククッ…』
『学長室の鍵』
エジリが実験を繰り返していた部屋の鍵
ビルゲンワースの学徒エジリはある日を境に黒く淀んだ血を触媒とした研究に没頭し始めたが、それを良しとしない者たちによって学院の研究棟ごと湖にその存在を消された。
瞳を追わずして何が人間、ましてや血に堕したおまえなど汚れた獣畜生以下よ
『どす黒く淀んだ死血』
血の意志を宿した淀んだ死血
使用により多大な意志を得る
血は黒いほど鏡のように全てを映しやがて神秘を授かるとエジリ派は嘯く
『黒の薬』
べっとりと瓶に満たされた薬
黒く固体に近い液体を飲み込むことで血流を固め、皮膚を硬化させる
鉛の秘薬の前身だと言われている
学院をうろつく生徒どもは皆これを飲むことから始まる
『沸血』*12
学院の生み出した成果の一端
熱く沸騰した血を前方に撒き散らかす
危険な為これを使う者はほとんど居なかったが、初の成果に生徒たちは沸き立った
『スティレット』
永い間保管されていた血が完全に凝固し、それを削り出して鋭く歪な短剣としたもの
自らに突き刺すことで血を吸い、刀身を伸ばし長身の細剣となる
岩よりも硬く、岩よりも黒く、岩よりも鋭い
なんと素晴らしき偉大な血よ
『血石の外套』
学院の生徒が制服の上に合わせて羽織るもの
血質補正を高める
血で作られた美しい装飾が散りばめられた黒い外套は一目でエジリ派だと識別するためでもある
『融化』(回避の無敵時間が少し延びる)
ビルゲンワースの学徒、筆記者カレルの残した秘文字の一つ
「血」の意味を与えられたカレル文字は幾つか存在する
『融化』もその1つであり特に契約の意味を持つ
自身の身体を巡る血の中に他の血を『融化』させより高次の存在へと至らんとする儀式
エジリ派の初歩とされる実験内容であり、ここから多くの発明と犠牲が産まれ、死んでいった
『だからここは湖に沈められた…数多くの同胞を手にかけたんだ、当然の報いよ。』
『痛い…痛いよ…なぁアンタ…俺の右腕…どうなっちまってるか教えてくれよ…首が固まって動けないんだ…』
『よぉく見せておくれ、君の血の色を!』
それっぽく書けた?