隕石落とすやついるなら触手出しても大丈夫でしょ 作:五足歩行
「誰か…俺のアイデアを知らないか…
思考の海に、落としちまったみたいなんだ
ここはずっと…白紙なんだよ…」
チュパ…チュパ…チュパ…
ピチャ…ピチャ…ピチャ……
「…聞こえる…耳をすませば…アイデアの音が聞こえる…」
がんばって捻出、短くてごめんよ
絵付きのおまけ(に値しないかも)つけたからゆるして
あ、あけましておめでとうございます。今年も以下略。
トリニティに単身で訪れた狩人はカタコンベに行き着き、墓場=聖杯ダンジョンのふざけた思考を持つ狩人は探索を続け迷子に。
ベアトリーチェの支配無き今でも、あいも変わらず重苦しく灰色の空気漂う惨憺たる地。
狩人は人の気配一つも感じ取れぬ音の無い世界を歩く。ヤーナムの方が少なくとも活気はあったと思う。あ、殺気の間違いだった。
しばらく歩き、古ぼけた教会を見つけた狩人はウキウキと不法侵入。すると1人の女性が行く手を塞ぐ。アリウススクワッドの錠前サオリだ。
「誰だ貴様は、ここが何処だか理解しているのか?」
…灯はあるか?おぉ、あったあった。
「灯?照明のことか?何だか分からんが、貴様はここにいるべきでは無い。見た所ヘイローもない一般人のようだし、死にたくないなら帰るんだな。」
銃を向けられて帰れと脅される。啓蒙の無いサオリには見えない灯を目の前にして、旧市街の警告文が書いてある掠れた貼り紙を思い出した狩人は警告を受けても前に歩き出す。入っちゃダメ?じゃあ入りますね^^*1
足元にタン、と一発発砲される。
「二度も言わせるな。帰れ。」
…どうやら歓迎されていないようだ。遺憾ではあるが大人しく引くとしよう。
狩人の確かな徴を使用し、そこに居たことが夢であったかのように消え去る。
「な、消えた…!?一体何者なんだ…」
翌日諦めずにこっそり来て灯を付けた。ちなみに先生は灯を活用して狩人をタクシー役にしている。手を取り目覚めた先は思い描いた地、それはまさに夢のよう。キヴォトスを引っ張り回される狩人からすれば悪夢だが。
さらに次の日、狩人はブラックマーケットに来ていた。ここは合法非合法混ざり合う文字通り法律を黒塗りした商店街。だからこそ、ここでしか見つからない珍品奇品もあるのだ。
例に漏れず狩人もそれ目当てでこの場にいる。見たことの無い武器に道具があると期待を込め、自身の発見力にプラスする『瞳』のカレルを3つ装着しており体制は万全だ。
「らっしゃいらっしゃい、今日の一品は砂漠から出土したオーパーツだ!」
「たった一粒で2時間獣になれる薬だよぉ〜」
「誰か瞳を…瞳を恵んでくだされよぉ…若いのが良い…生きているのでも良い…」
…なんともまぁ賑やかなことだ。オドン教会にいた赤ローブの男もこの景色を夢見ていたのだろうか。悲しい事に赤い月で皆狂死してしまったが。
ふと視線の端に見慣れたものが映り込む。あれはまさかイズの碑!
「ん?お客さん、これが気になるのかい?こいつはな、古びた廃教会にポツンと祀られてたんだ。とりあえず貴重そうだから置いてるが見た目のせいで誰も買っちゃくれねぇのさ。」
…買おう。
「即決かい…商人の俺が言うのもなんだが、いいのかい?名状しがたい気配がするんだぜ?なんかこう…青白くヌメヌメしたような…」
態度を示すように無言で輝く硬貨で詰まったはちきれそうな袋を隣に置く。この重さだ、狩人とて、僅かに笑みがこぼれ…こぼれない。使えないし…*2
「…その目、本気か。それにこの硬貨…見たことねぇデザインだが価値はあると見た。いいぜ、持っていきな。」
おずおずと両手で受け取り口元に運んで嗅ぐ。間違いない、宇宙の臭いがする。全て商人のお蔭だった。そして聖杯の時間だ。
「狂ってる…」
正解。
早速自作聖杯を作ろうと人気のない裏路地に入り狩人の確かな徴で帰還しようとすると、見覚えのある生徒と出くわす。
「お前はあの時の…邪魔だ、どけ!」
何やら逼迫した状況のサオリ。所々流血している姿から考えられるとすると、大方ドンパチやっていたのだろう。疲弊しているようだし手を貸すことにする。
…これを持ってそこから動くな。
「?何だこれは…うわっ!?」
サオリが黒い霧に包まれ、使者に擬態する。渡したのは使者からの贈り物。使用すると使者に化ける秘儀の一つ。児戯幻想とて一時の目くらましにはなるだろう。ちょうど追手であろう奴らが走ってくる音が近づいてくる。
「どこに行った!探せ!」
「おいそこの変な服装のお前!細身の女を見なかったか!?」
…知らぬ。先程からここには私以外誰も居ない。
「そうか、止めちまって悪かったな、変なの。」
「あんがとな、変なの!」
ヘルメットを被った不良どもが走り去っていく。
…もういいぞ。
擬態が解け、元の姿に戻る。
「…すまない、助かった。これを返そ…怒っているのか?」
…何度も変なのと言われたが別に決して本当に憤慨している訳では無い。
「(やはり怒ってるのでは?)…そうか。だが呑気に話をしている余裕は無い。」
踵を返して行こうとするサオリの腕を掴み、引き止める狩人。
…怪我をしているぞ?よくもまぁ1人で無茶をするものだ。仲間は居ないのか?
「仲間だと…貴様に何が分かる!吹きすさぶ風の中で身を寄せ合い明日の生活だけを考える…全ては虚しいだけ、希望なんて一欠片も存在しない!」
その単語がサオリの逆鱗に触れたのか、感情の爆発がとめどなく溢れ出る。自身の人生は須らく虚無だということ。ベアトリーチェの魔手により、全ては虚しいと洗脳されてきたサオリは元凶無き今も孤独と自罰を抱いて日々綱渡りのように生きている。
…ふむ。お前が言う虚無は諦観に近いもの。希望に浮つく心を冷たい奥底に沈め込むために唱える、なんとも愚かな思考なことよ。
「…なんだと?」
…聞いた話だが、お前たちを支配していた親玉は斃れたのだろう?まだ十とそこらしか生きていない子供ではないか。
こちとら病気の治療でヤーナムに来たら覚めても覚めても繰り返す悪夢を約10年*3強制で繰り返してきたのだ。もはやそこに情や発見など無く、ひたすらに殺すだけの作業。これこそ虚無では?
でもこれより更に虚無虚無プリンしてる聖杯ダンジョンはノーカウントね。
…お前は、一人じゃない。私やシャーレの先生も居るのだ、何時でも頼るといい。
「っ…それは…大人など皆下卑た獣!先生など表面で取り繕っているだけだ!」
…果たしてそうかな、着いて来い。
「っ何をする!?」
手を掴み狩人の確かな徴を使用。シャーレの部屋にワープする。
“おかえり。あれ、サオリ?”
「な…ここは…それに瞬間移動だと…」
連れてこられて先生の部屋へ。あまりにも現実離れした技を体感し、動揺を隠せずにいる。
…暫くサオリとその仲間たちを匿う事にした。身辺警護人が増えたということだ。
“別にいいけど…急な風の吹き回しだねぇ。”
…未来ある子供から夢を奪うなど獣以下の所業。私はそれが許せなかっただけだ。
“カッコつけちゃって。”
…言うな。私とて少し恥ずかしい。
「どうして…どうしてそこまで優しくしてくれる…!」
“それはね、私の役割であり義務だから。もちろん迷惑だなんて1ミリも思ってはいないよ。寧ろ迷惑バッチコイって感じ。私強いし。”
そっとサオリを抱きしめる。
“辛かったね…でももう大丈夫。二度とそんな思いはさせないよ。”
サオリから一筋の雫が零れ、やがて先生の服に染み付く。徐々に先生を抱擁する力が強くなり、しずしずと光に縋るように涙を流した。
「すまない…服まで汚してしまって…」
“気にしなくていいよ。他の皆も呼んでこようか。”
「っああ!これからよろしく頼む。」
こうしてアリウススクワッドのチーム全員が先生に雇われる形でシャーレに住めるようになり、何かに怯える必要の無い温かく安全な環境は、次第に緊張を和らげ以前よりも笑顔の回数が多く見られるようになった。
それを風の噂で聞いた粘ついた水属性の生徒たちは先生に交渉するも一蹴されたのは別の話。
狩人にもメモロビがあったなら
シャーレから少し離れた場所、一面の星が自由に瞬き輝く丘に狩人が変なポーズで立っていた。
…おや、この場所が知られてしまうとは、また2人だけの秘密ができてしまったな。
…ここはシャーレにしては宙が広く写る。だから、たまにこうして眺めているのさ。
“確かに絶景だね。”
…あの輝く星々一つ一つに未知が込められていると思い馳せる。善悪どちらに傾くかは別として、想像力こそ人の持ち得る長所だと私はそう思っている。
“さっきのポーズは何?”
…交信の意味を持つジェスチャーだな。まぁ…深い意味はないが、1分でも続けてみると良い事があるかも知れんぞ?*4
“よく分かんないけど面白いね。”
…ふふ…そうだな……ん…ふむ、狩り以外で笑うのは何時ぶりか…久々に純粋に笑えたよ。ありがとう。
“あの笑みもある意味純粋だと思うけどね…”
…そうか?まぁほら、ここに酒もある。普段生徒の前では格好をつけるために自粛しているのだろう。どうだ、ここらで飲み明かそうではないか。
“酒の時間だ!”
恵みをナマでイッた為当然二日酔いに苦しんだ。まともに事務処理に手がつかないのでその日当番だったユウカに怒られた。
双イズの大聖杯
地下遺跡各所の封印を解く、聖杯の一つ
特に大聖杯は、遺跡の秘部に通じるものだ
ビルゲンワースに持ち出されなかった大聖杯、その一つ
白く淡く光るそれは、はるか遠くで輝く星の信号を受け取り、健気に明滅して何かを伝えようとしている
文明の発達した今、光は周りに埋もれ交信が届く事は無い