隕石落とすやついるなら触手出しても大丈夫でしょ 作:五足歩行
ようやくタイトル回収
最近は先生の手伝いをすることが増えた。とはいえ書類なんぞ見てもどうしようもないので専ら護衛が多いが。
“今日はトリニティに行くよ。”
幾度か訪れたことのあるトリニティ。白を基調とする制服のお嬢様校。ティーパーティーという組織がここのトップらしい。まだ会ったことは無い。
先生から聞いた話によるとメンバーはキヴォトス最強格の問題児と未来が視えるキツネ耳。あともう1人は紅茶好きの苦労人らしい。かわいそう。
“もうそろそろトリニティだよ。今日もよろしくね。”
…あぁ、任せてくれ。
木の葉を隠すなら森の中、今回狩人は教会の白装束を着ている。
服装が既に浮いているんだよなぁ…せめて学徒の服にしろ。*1
「あっ!先生!と誰…?」
後ろから声をかけてきたのはピンク色の髪の生徒。珍しい立体的なヘイローが目を引く。先生を見て顔を綻ばせるも束の間、隣にいた狩人を不審者を見る目で見ている。*2
…桿ましくも素晴らしい神秘。気をつけたまえよ、先生。
“大丈夫。この子も私の大切な生徒だから。”
“おはよう。ミカ。朝から元気だね。”
「おはよう!今日先生も一緒にロールケーキパーティしない?紅茶もいいのが入ったんだ!」
“いいね。狩人も行こうか。”
…ケーキ、という事は甘味。勿論行こう。
…おっと、紹介が遅れたな。私は狩人、今は先生の護衛役だ。
「狩人さんね!私は聖園ミカ、よろしくね!」
れっつごー!と先生の手を引いてずんずん歩くミカ。狩人も愉しそうに追いかける。
今日、”恐ろしい”の一言ではとても片付けられない夢を見た。
墨を振り撒いたような夜の空から2人の異形が降り立ち、不気味な歌声を上げながら歩く。仕立てのいいドレスに頭は脳みそと沢山の目玉。
見た者全てを発狂させる歩く災害。恐れを知らない獣が勇敢にも挑み、身体から血をぶちまけて噛み殺される。現実であって欲しくは無いけどこれは予知夢。近いうち必ず現れる。でも光もあった。これは…なん…なにこれ?ヌルヌルテカテカした黒いイカ?これでどう対処しろと!?
「…はぁっ!?」
最悪だ…汗が酷い。とりあえず今日の茶会に遅れないように支度しよう。イカ……
もやもやしながらもティーパーティーに出席する。
「今日はね!豪華ゲストをお呼びしてます!じゃーん!先生と狩人さん!」
「先生…は確かに豪華ですね。ですが狩人さん?は一体何者なのですか?」
「先生の護衛だって!姫を護る騎士!カッコいい〜!」
この人から夢で見たイカの気配がする…!きっとこの人があの悪魔を!
「私は百合園セイア。狩人さん…いきなりで失礼ですが貴方はドレスを着た脳みそを知っていますか?」
余りにも突飛な質問に狩人以外が固まる。質問の内容で先生は若干察した。*3
…恐らくほおずきのことか?あいつは悪夢にしか現れないはず…セイアよ…一体何を視た?
「やはりか。近いうち、そのほおずきとやらが夜のトリニティ校舎に来る。」
2人して何言ってるか分かんないじゃんね☆とミカとナギサが顔を合わせる。
…私から説明しよう。あいつはほおずき。視界に入れた生物全てに発狂を齎すもの。
あいつを先に見つけたり、歌声を聞いたら、絶対に見つかるな。もし見つかったら逃げろ。立ち向かうなど、死に行くような物。
対処は私がする。だから絶対に部屋からむぐごっ!?
神妙な空気に耐えきれなくなったミカが狩人の口にロールケーキをぶち込んだ。
「そんな事より、ロールケーキ食べよ!ほら皆席に座って!」
…んぐ、せめてこれを持っておいてくれ。
人数分に配られたのは鈍い光沢のある小さな鐘。
…皆の内誰かがほおずきを見たらこれを鳴らしてくれ。直ぐに私が駆け付ける。今鳴らすんじゃ…
ミカが持った瞬間鳴らすと狩人がその場から消え、ミカの隣に現れた。
…効果は分かったな?ロールケーキ、頂くぞ。
その後は狩人を抜いた4人で今後の事だったりを議論した。当然狩人はついていけず、聞いても脳内に宇宙を展開しだすので、*4普段ならミカの口に突っ込まれるであろう分のロールケーキも1人で平らげていた。大量に食うもんじゃないのにね。
美味しかったって?ならいいや。お粗末様。
あの後ティーパーティーより暫く夜間は部屋から出ないようにと厳戒令が出され、皆が静まり返った夜。
狩人は1人で校内を巡回している。しかし中々出くわさない。セイアは近い頃と言っていたので数日張り込むつもりで覚悟している。
すると教室に光が灯っているのを見た。…何してんの先生?ここで仕事?ワーカホリックめ。
休憩がてら談笑していると鐘が反応する。狩人は直ぐに応じた。
少し遡って夜の校舎1階の教室。寮を抜け出しミカは忘れ物を取りに来ていた。
「え〜っと、最後に使ったのがここの教室だから、あった!」
いざ帰ろうとしたその時、校庭に人影を見た。
らぁ〜ん…らんらんらぁ〜ん…
「何…あれ…」
奇妙な歌を口ずさむ脳みそに目玉、昼狩人が言っていたあいつだ。想像よりもグロテスクな見た目に腰を抜かす。
「ひっ…あ、か…鐘、鳴らさなきゃ…」
リィーン…リィーン…
地面に波紋が浮き立ち、狩人が現れる。
…どうした、見つけたか。
あそこ…と校庭を指す。月の光に晒されたほおずきが徘徊している。
…よくぞ鳴らしてくれた。後は任せろ。ここから動くんじゃないぞ。いいな?
狩人はミカを落ち着かせると、石ころをほおずきの近くに投げる。
音に釣られた隙に窓から飛び出し接近。
獲物が来たと分かると狩人を捕食すべく触手と隠していた大きな口を開く。
狩人の身体からブシュブシュ血の棘が生え、あわや捕まるかと思われた瞬間、エーブリエタースの先触れを発動。
突如として生まれた触手に姿勢を崩されたほおずき。容赦なく右手を突き刺し、内臓を抉る。
噴水のように血をぶち撒けた後、ほおずきは塵になって消えた。
…これでよし、セイアの憂いも消えただろう。立てるか?ミカ。
ミカの元に行こうとした血塗れの狩人、しかしその身体から血の棘が生える。
…一体だけでは無かったか!身を隠せ!
狩人達は教室の壁に身を隠す。発狂値が溜まりきってしまいそうだ。1度鎮静剤を飲む。一息ついていると横でミカが呟く。
「あいつ…私でもやれそう。」
…対策無しで挑むのは蛮勇のする事。…狂ったか?*5
涙を湛えながらも瞳には決意の光が灯っている。おもむろにミカが祈るような姿勢をとる。目に見えて神秘が増大していく。狩人は思わず冷や汗を流す。
「大丈夫、見てて。」
神秘を解放したかと思うと、空が一瞬紫色に瞬き、数発の小隕石がほおずき目掛けて降り注ぐ。
校庭がボコボコのクレーター塗れになった後、ほおずきは影も形も残っていなかった。
…素晴らしい…星輪幹の失敗作が数人がかりで行使していた秘儀をたった1人で行うとは…その勇気に力、誇るといい。
…私は君を侮っていたようだ。君はただの高神秘ロールケーキ馬鹿では無いのだと。
「ふふっ、それ褒めてる?貶してない?」
一応先生の所に行って大丈夫か確認したけど書類ばっか見てて隕石が降るとこしか見てなかったらしい。まぁ…無事だしいいか。*6
かくして人知れずトリニティの危機は消え去った。厳戒令があった事、校庭のクレーター群など、いつか見た夢のように忘れ去られてゆくのだった。セイアは暫くイカが食べられなくなった。
狩人の小さな鐘
キヴォトスで困難が訪れた時、救援として狩人を呼ぶもの。
狩人の手製なため、狩人だけを召喚できる。
たくさん鳴らされると狩人があちらこちらをワープしだす。
タイトル回収のために銃パリィでいいとこを無理やりえぶたそにお願いするバカ