気がついたらデジタルワールド!? リ・デジタライズ 作:星乃 望夢
「くそっ! しつこいんだよ全く!!」
何処まで逃げても追ってくるメガドラモン。
あまり離れすぎてもエンジェモンの進化に間に合わなくなる。だからデビモンの頭上でグラニにドッグファイトをさせているのだが。
時折見える地上の様子は全くよろしくない。アグモンを進化させる前に上空に来てしまったから、このメガドラモンをどうにかしないとならない。
それをどうにか出来る一撃が、グラニにはある。
ユゴスブラスター──。
ネット情報監理局がリアルワールドにリアライズしようとするデジモンの消去に使っていたプログラム『ユゴス』を用いた武装。あのテイマーズ好きの芹香のリアライズさせたグラニならば備わっているはずだ。
「グラニ、ユゴスブラスターは使えるか?」
「キュアアアアア!!」
俺の言葉に答える様に鳴くグラニ。多分持っているんだろう。ならばやり様はいくらでもある。
ただ、それにはユゴスブラスターを確実に当てる為にメガドラモンの動きを一瞬止める必要がある。
その為には──。
「もっと俺に力があればっ」
クロンデジゾイド製のメタルパーツの使われているメガドラモンを止めるには、強烈な攻撃が必要だろう。
ちなみにクロンデジゾイドを拳で殴る勇気は流石にない。あんなん殴ったら拳の骨が粉々になってまうわ!
「ギュアアアアアアアアア!!!!」
後ろからはメガドラモンが追ってきている。メガドラモンを倒さないと、デビモンの方に向かえない。
デビモンを倒すのはエンジェモンに任せるにしても、自分の命を投げ棄ててまでやって欲しくない。
ここに居る意味があるのかもしれないという芹香の言葉を思い出した。
俺がここに居る意味──。
それがどんな意味なのかわからないけれど、今居る意味ならある。
メガドラモンを倒すことだ。そしてエンジェモンがその身を犠牲に散る未来を変えたいと思っている。ならば泣き言を言っている暇はない。
「グラニ、俺が奴の動きを一瞬止める。そこにユゴスブラスターをブチ込め」
「キュアアア!!」
グラニの鳴き声を聞いて、俺は覚悟を決め、頭で描く作戦をグラニに伝える。
「《ジェノサイドアタック》!!」
メガドラモンの両手から有機体ミサイルが発射される。
「俺のことは気にするな。ブッちぎれ!」
「キュアアアアア!!」
「ぐぅっ」
俺が指示すると、グラニは急加速してミサイルを置き去りにする。グラニの機体に必死にしがみついていなかったら振り落とされていただろう勢いがあった。
「行くぞ、グラニ!!」
俺が覚悟を決めてグラニの名を叫ぶと、グラニは急上昇する。その後ろを有機体ミサイルとメガドラモンが着いてくる。
俺はグラニの背から降りると、ミサイルとメガドラモンに対峙する。目前に迫っている有機体ミサイルはその口は笑っていて、弾体から生えている腕の手で親指を下に向けて見せつけてくる。
「ハアアアアあああーーーッ!!」
擦れ違い様に身体を捻ってミサイルの直撃を避け、その側面を蹴り飛ばす。
背中でミサイルが爆発する。その爆発の勢いも背中に受けて、重力と掛け合わせてさらに加速する目の前には、もうメガドラモンが迫っている。
「《アルティメットスライサー》!!」
メガドラモンが3本の爪を束ねた右腕を突き出してくる。先ず普通に喰らったら、人間の身体なんて真っ二つ所かミンチが良いところか。
「でぇぇぇぇやあああああ!!!!」
迫り来るメガドラモンに腕を突き出す。
今までに感じた手応えよりも硬い手応え。まるで地面を金属バットで殴ったかの様な衝撃が腕を伝って身体全体に流れる。
「うおおおおあああああーーーーっっ!!!!」
力押しで負けない為に、魂の底から雄叫びを上げて、今練れるだけのデジソウルをすべて腕に集める!!
あとは今は考えない! 今全力を出さないとメガドラモンを倒せない!!
メガドラモンを倒さなければ、エンジェモンの死の未来を変えられない。
それで確かにタケルくんは強く優しい子に成長していく。でも、心に傷を負って、それはそう遠くない未来に本人の闇を作る。
それを変えるなんて傲慢かもしれないし、自己満足だし。
でも、パタモンは仲間だ。タケルくんには笑っていて欲しい。辛い思いはさせたくないと思うのは身勝手なのだろうか。
あの無邪気な笑顔が曇ってしまうのは、とても悲しい。見たくない。
子供たちだけの力では見ているしかなかっただけだとしても、この世界には俺たちが居る。
少しくらい未来を変えても、バチは当たらないだろ!!
「俺のありったけのデジソウルだ! 受けてみやがれえええええええっ!!!!」
腕に力を込め、デジソウルを──魂を燃え上がらせる。
「ギュアアアアアアアアア!!!!」
雄叫びではなく、痛みに喘ぐメガドラモン。その右のメタルパーツの手は無惨にも砕かれ、データの粒子となって消えた。
そのままメガドラモンの頭部に、拳を叩き付ける!
「グュアアアアアアアアア!!!!」
「撃てえええっ、グラニぃぃぃ!!!!」
頭上で青く光る閃光へ向けて、俺は顔も向けずに叫ぶ。
メガドラモンの頭に拳を叩き込んだ事で、そのひび割れたクロンデジゾイド製のメタルパーツを蹴り抜き、離脱する。
重力に引かれながらも振り返った先には、グラニがその口に溜め込んでいた三つの光の玉がトライアングルを作り、その中心に凝縮されたデリートプログラムが放たれる時を歓喜して、メガドラモンを閃光の中に呑み込んだ。
「無敵の喧嘩番長には及ばないけど。俺だって悪くないだろ?」
大爆発を起こし、爆炎とデリートプログラムの奔流の中へ、メガドラモンの姿は消えた。
◇◇◇◇◇
「セリカ…」
「やるよグラウモン。有音君は、自分の命を懸けてメガドラモンを引き付けてくれた。今度は私たちが頑張らなくちゃ」
子供たちのデジモンたちはデビモンにまったく歯が立たずあしらわれて行く。あと通用するとしたらカードで能力を強化出来る私とグラウモンだけ。
「デビモン、グラウモンが倒す!!」
「その程度の力しかないデジモンが粋がるな!」
「カードスラッシュ──キングデヴァイス!!」
能力を強化したグラウモンがデビモンに向かっていく。
「《プラズマブレイド》!!」
グラウモンはプラズマを纏った肘の刃でデビモンに斬りかかった。
「この程度で私を倒そうなどと、片腹痛いわ!」
「ぐりゅるっ、ぐあああああああっ」
デビモンはグラウモンの攻撃をその手で受け止めると、グラウモンですら打ち払ってしまった。
「グラウモン!!」
キングデヴァイスで攻撃力を強化しているのに、それでもあっさり受け止められてしまうなんて。
「最も小さき選ばれし子供よ。お前さえ居なくなれば、もはや恐れるものはないのだ」
やっぱりどんなに暗黒の力を集めて大きくなっても、エンジェモンは恐いらしい。
「タケルはやらせない!」
「ひとりでは進化も出来ぬデジモンが喚くな。《デスクロウ》!!」
デビモンが私たちに向かって──後ろに居るタケルくんを殺すために腕を伸ばしてくる。
「《ベビーフレイム》!!」
「ぐあっ、雑魚がっ。小賢しい!!」
「ぐっ、うわああああああ!!!!」
有音君のアグモンの攻撃を顔に受けて、デビモンは一瞬怯むけども、そのままアグモンを口から吐いた暗黒の波動で吹き飛ばしてしまう。
「アグモン! きゃああああ!!」
デビモンによって吹き飛ばされたアグモンが私の方に飛んできて、私はそれを受け止めてしまうけれど、勢いが強すぎて山肌に背中を打ち付ける。
「ぅっ、っっぅ……」
有音君はメガドラモンを引き付けてくれたのに。私はなにもできないで。
眼鏡が落ちてしまったことで、極端に悪くなった視界でも、デビモンの腕がタケルくんに伸ばされていくのがわかる。その腕を横から突き飛ばしたのは多分ガルルモンだった。
そして他のデジモンたちも飛び掛かってデビモンの動きを封じた。
「ぐぅ、この……くたばりぞこない共があああああ!!」
でもデジモン達の必死の抵抗も、デビモンが暗黒の波動を放つことで為す術もなく吹き飛ばされていく。
その時、頭上の遥か彼方で大爆発が起こった。
「まさか、メガドラモンがやられるとは。やはりあの人間が最も厄介な存在だ」
それはメガドラモンが倒されたことをデビモンの口から聞かされた。
有音君、やったんだ。ひとりで完全体を倒しちゃった……。なのに私は地べたに寝そべっているだけでなにも役に立てていない。
デビモンの巨大な手が、タケルくんを握り潰そうと迫ってくる。必死にパタモンが抵抗するけど、成長期のパタモンの力では、デビモンは止まらない。
「パタモーーン!!」
「タケルーー!!」
私たち目の前で、タケルくんとパタモンが、デビモンに握り潰されてしまった。
◇◇◇◇◇
「タケルーーーッ!!」
メガドラモンを倒した後。スカイダイビングを続ける俺の目にも、タケルくんとパタモンがデビモンに握り潰されたのが見えた。
助かるとわかっていても。ここは現実なのだ。何かの手違いでパタモンが進化出来ない未来だってあるかもしれない。そんな不安から、タケルくんの名を叫んでいた。
だがデビモンの手の内から眩い光が放たれる。その光に狼狽えたデビモンが手を引っ込めてしまった。
「パタモン進化──エンジェモン!!」
光の中から姿を現したのは、三対の天使の翼を持つ天使型デジモンのエンジェモンだった。
「おのれ、もう少しだったのに!」
「お前の暗黒の力、消し去ってくれる! 我がもとに集え、聖なる力よ!!」
エンジェモンが杖を掲げ叫ぶと、子供たちのデジヴァイスから光が放たれ、エンジェモンに集まっていく。
「っ、俺のデジヴァイスが……!」
俺のデジヴァイスを光を放っていた。だがそれは黄金に輝く光で、まるで鼓動を打つ様に光が明滅している。
やっぱり、聖なる光を集めるというのはこの時のことなのだろう。
誰の導きかはわからないが、それでエンジェモンの命が助かるなら、俺はなんだってしてやる!!
「なっ、なんのつもりだ!?」
集まった光が、エンジェモンに取り込まれていく。
「やめろ! そんなことをすれば、お前もただでは済まんぞ!」
「だが、こうするしかない。たとえ我が身がどうなろうと……」
「やめろおおおおおおおーーーっ!!」
俺は黄金に輝くデジヴァイスをエンジェモンへ向ける。
「なっ、聖なる力が…!?」
エンジェモンに集められた聖なる光が、光の筋を伝っておれのデジヴァイスに流れ込んでいくのがわかる。そして、俺のデジソウルもすべてがデジヴァイスに吸収される。
「集まった──聖なる光。今こそ解き放て!!」
頭の中に、夢で聞いた声が響く。
別世界所か、時代の先取りも宜しいくらいの言葉を放つ事に、不謹慎だが高揚感を感じる。
そして勝利を確信しながら、俺は叫んだ。
「デジメンタル──アーーーップ!!」
俺のデジヴァイスの中から、ムゲンマウンテンを包む暗黒の闇を引き裂く黄金の輝きが放たれる。
輝きが放たれた後。グラニの背に再び乗りながら、気だるい身体でその姿をしかと目に焼き付けた。
「奇跡の輝き──マグナモン!!」
お前の野望もここまでだ、デビモン。
デジタルワールドの平和を守る最強のデジモンの1体。ロイヤルナイツのマグナモンが復活したぞ!
「邪悪を討ち祓うのは是非もなし。だがそれでパートナーであるテイマーを悲しませては、パートナーデジモン失格だぞ。エンジェモン」
「あなたは…」
「ロイヤルナイツ、マグナモン。義によって助太刀する。共に暗黒の闇を討ち祓すのだ!」
「……わかった。共に闇の力を討ち滅ぼそう!」
エンジェモンの隣に立ち、マグナモンは共闘を告げ、エンジェモンはそれを了承した。
「バカなっ、ロイヤルナイツは遥か太古に滅んだのではないのか!?」
「我が友、ロードナイトモンに我が力の源たるデジメンタルを預け、いつか訪れるだろう私を推せるテイマーを待ち続けた。そしてそのテイマーが現れ、聖なる光の力とテイマーの魂の力により、私は今、現世に甦った」
空を覆っていた暗黒の力はマグナモンの輝きによって既に浄化され、綺麗な夕陽の空を写していた。
「デビモン。お前の暗黒の力は大きくなりすぎた。ここで消し去ってくれる!」
「ロイヤルナイツの名の下に、私がお前に鉄槌を下そう。デビモン!」
エンジェモンとマグナモンから強い聖なる光が高まっていくのを感じる。
「させるかよぉ!!」
「こっちの台詞だコノヤロウ!!」
俺はグラニに頼んで、デビモンの中から出てきたオーガモンに横から割って入ると、拳を叩き込んだ。
「ぎゃはぁ!? 失礼しま~す!」
デジソウルで強化された拳を受けたオーガモンをデビモンから弾き飛ばす事に成功した。
「おのれ、二体共々潰れてしまえ!!」
デビモンが最後の抵抗にエンジェモンとマグナモンに手を伸ばすが、ふたりの高まった聖なる力はもう誰にも止められない!
「《ヘブンズナックル》!!」
「《エクストリーム・ジハード》!!」
エンジェモンの拳から放たれた聖なる波動と、マグナモンのゴールドデジゾイドの鎧から放たれた黄金のエネルギー波がデビモンの暗黒の力を浄化した。
「私の完敗だ……。よもや伝説のロイヤルナイツを復活させてしまうとはな。だが、暗黒の力が広がっているのはファイル島だけではない!」
すべての暗黒の力を浄化されたデビモンは、足元から身体の崩壊が始まっていた。対するエンジェモンとマグナモンには、異常は見られなかった。
「海の向こうには私以上に強力な暗黒の力を持ったデジモンがいる。どこまでその力が通用するのか見れないのが残念だ。はっはっはっはっは!!」
最後までデビモンは嘲笑う様に消えていった。
「たとえ何であっても切り抜けてやるさ。今回みたいにな」
俺はデビモンが消えた空に、そう呟いた。
to be continued…
マグナモン
奇跡のデジメンタルによってブイモンが進化するアーマ体デジモン。そのメタルアーマはクロンデジゾイドの一種、ゴールドデジゾイドで出来ており、攻撃力は究極体と対等に渡り合えると言われている。
ロイヤルナイツの一員であり、どんな窮地であろうとも奇跡の力によって切り抜けられることから、ロイヤルナイツの守りの要でもある。必殺技は奇跡のデジメンタルの全パワーを放つエネルギー波『エクストリーム・ジハード』だ。
正しこの攻撃は本体に激しい負荷を掛けてしまい、データ損傷の危険性を持つ諸刃の剣である。