気がついたらデジタルワールド!? リ・デジタライズ   作:星乃 望夢

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第8話 踏み出そう、次の一歩を

 

「それは、遥か太古のデジタルワールドを駆け馳せたロイヤルナイツの一体が所持していたものだと聞いている」

 

 館に戻ったナイトモンに、俺は事の顛末を語った。

 

 黒い歯車に支配されたグレイモンとタンクモンが館を襲撃したこと。グレイモンから逃げていた芹香とギルモンを保護したこと。そして、タンクモンの攻撃によって宝物庫の壁を突き破った先で、気づけば奇跡のデジメンタルを手にしていたことを。

 

「マグナモンというデジモンの力を封じ込めていると、ロードナイトモン様から聞いたことがある」

 

「ロイヤルナイツの、マグナモン……」

 

 ナイトモンの説明に、俺の記憶の中の引き出しが繋がった。

 

「知っているのか? アルト」

 

「なんとなく、な」

 

 というのは嘘だ。実際のところ、俺はガッツリと知っている。太古のデジタルワールドで繁栄したという進化形態──『アーマー進化』。

 

 デジモンは経験や環境によって、その進化先は多岐にわたる。

 

 アグモンを例に挙げれば、グレイモン、ジオグレイモン、さらにはティラノモンといった具合に分岐していく。

 

 だが、アーマー進化は経験などに左右されることなく、決まったデジモンへと進化することができる進化形態だ。

 

 そのために必要なアイテムが、デジメンタルなのである。

 

 そして、この奇跡のデジメンタルは、ブイモンが使用することで究極体クラスであるマグナモンへと進化させることができるのだ。

 

 他のデジメンタルによる進化が成熟期や完全体クラスの実力に留まることを考えれば、究極体クラスの力を引き出す奇跡のデジメンタルの特異性がわかるだろう。

 

 マグナモンは、映画で初登場し、本編でも一度だけ姿を見せた後、いつの間にか『X-evolution』でロイヤルナイツの一員に名を連ね、究極体クラスの存在にまで格上げされていたことに驚いた記憶がある。

 

「これもマグナモンの導きだろう。ロードナイトモン様しか触れられなかった物を触れることができたきみは、なにか特別な存在なのかもしれない」

 

 どうやら、怒ってはいないようだ。だが、何やら壮大な勘違いが生まれそうな雰囲気が漂っている。

 

「デジメンタルについては私からロードナイトモン様に伝えておこう。きっとわかってくださるはずだ」

 

「え、あ、うん。わかった…」

 

 ナイトモンの口添えは有り難いが、このまま奇跡のデジメンタルを持ち歩くことになりそうな流れに、一抹の不安を覚える。

 

 一応はロイヤルナイツの所有物だというものを、赤の他人が所持していても良いのだろうか。

 

 しかし、下手に口を挟んで話をややこしくしたくもない。俺はナイトモンに任せることにした。

 

 ロイヤルナイツ──それはデジタルワールドの秩序を守る聖騎士型デジモンたちで構成された組織の名だ。

 

 ホストコンピューターであるイグドラシルの意思を遂行する存在でもある。

 

 暗黒の力に染まったデビモンやダークマスターズと戦うだけだと思っていたのに、まさかロイヤルナイツまで絡んでくるとは。デジモンアドベンチャーの物語に、ロイヤルナイツは出てこないはずだ。

 

 正確には、オメガモン、マグナモン、インペリアルドラモン・パラディンモードは映画に登場する。02のテレビシリーズでもマグナモンは一度だけ現れたが、組織として本格的に登場するのはセイバーズからだったはずだ。

 

 その前に『X-evolution』でもオメガモン、マグナモン、デュークモンがロイヤルナイツとして登場するが、新年の特別放送という一度きりの放送だったため、知名度は低い。

 

 そういう意味でも、ロイヤルナイツの名が広く知られるようになったのは、セイバーズの影響が大きいという印象がある。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 デジタルワールドに来てから六日目の朝。おそらく、今夜にはデビモンによってファイル島はバラバラになるだろう。

 

 俺は朝食をとりながら、今後の身の振りを考えていた。

 

 このトロピカルジャングルから最も近い場所に子供たちがやって来るとすれば、はじまりの街、オーバーデル墓地、そしておそらくはダイノ古代境。

 

 朝起きて適当にファイル島の地図を描いて状況を整理してみた。子供たちは、迷わずの森あたりからシーラ岬に出てシェルモンと戦い、竜の目の湖でシードラモンと戦い、ミハラシ山でメラモンと戦い、ギアサバンナのファクトリアルタウンでアンドロモンと戦い、おもちゃのまちでもんざえモンと戦い、フリーズランドでユニモンと戦い、そして今日はムゲンマウンテンに登ってデビモンの罠に掛かる。

 

 そう考えると、子供たちはファイル島を時計回りに冒険していることになる。

 

 今日一日でムゲンマウンテンまで行けるのかとナイトモンに尋ねてみると、かなりの強行軍でなければ辿り着けないという。正直なところ、無理をして敵と対峙し、疲労困憊で戦えなくなるのでは話にならない。

 

 となれば、あまり気は進まないが、分断された子供たちの誰かと合流する方が、後の戦いを考えれば合理的だろう。

 

 問題は、何処で合流するかだ。先ほど挙げた三つの場所には、はじまりの街にタケル、オーバーデル墓地に丈と空、そしてダイノ古代境あたりに光子郎とミミがいるはずだ。

 

 そう考えると、やはり一番幼いタケルの元へ行くのが最善だろうか。

 

 他の子供たちも二人一組でデジモンも一緒だから危険ではあるが、ある意味では心配ないとも言える。

 

 だが、タケルのパートナーであるパタモンは、まだ進化できない。

 

 物語として考えれば無事に終わるはずだが、ここは現実だ。何が起こるかわからない。

 

 大人としては、一番か弱い子供のことが気になってしまう。余計なお節介になるかもしれないが、やはり昨日芹香に語った通り、タケルがいるであろうはじまりの街へと向かうことにしよう。

 

 朝食を終え、荷造りを済ませてから、俺はナイトモンの元へ行き、はじまりの街へ向かうことを伝えた。

 

「そうか。このファイル島の危機になにも出来ず、申し訳ない」

 

「気にするな。稽古をつけてくれただけでも充分助かった。お前はお前の使命を果たしてくれ。……今日まで短い間だったが、世話になったな」

 

 俺はナイトモンに改めて礼を言い、頭を下げる。この騎士の館で過ごした数日は短かったが、非常に充実していた。

 

 いつになるかはわからないが、また訪れたいとも思う。

 

「これは私からのせめてもの餞別だ。今後の役に立てて欲しい」

 

 そう言ってナイトモンが渡してくれた袋には、あの秘伝の薬が入っていた。

 

「なにからなにまで、本当にありがとう。ナイトモン」

 

「礼には及ばない。もしなにか困ったことがあれば、何時でも立ち寄ってくれ。我が騎士団が、その時は全力で助けになろう」

 

「ああ。その時は、よろしく頼む」

 

 ナイトモンと握手を交わし、俺は彼の部屋を後にする。

 

 あとは館の者たちに適当に挨拶を済ませ、外へ出た。

 

「なんか、あっという間なのに、長く居た感じがするね」

 

「ああ。またいつか、ここに戻ってこよう。次は、もっと強くなってさ」

 

「そうだね。アニキみたいに、オイラ、もっともっと強くなるよ!」

 

「ははっ、期待してるよ、アグモン」

 

 俺はアグモン、芹香はギルモンを連れてナイトモンの館を出発した。

 

 騎士団のポーンチェスモンやコテモンたちが、見送りに来てくれた。

 

 その中にクロの姿は無かった。

 

 忘れそうになるが、アイツは人見知りだ。

 

 次にまたナイトモンの館に訪れた時に声を掛けてやれば良いだろう。

 

 デジモンたちの声を背に、俺たちはジャングルの中へと足を踏み入れた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「さて。夜が来る前にこの迷わずの森を抜けられれば良いんだけど」

 

 川沿いをムゲンマウンテンに向かって、俺たちは歩みを進めていた。

 

 昼前にナイトモンの館を出て、休憩を挟みながら歩き続けている。今はとにかく、ファイル島がバラバラになる前に、迷わずの森を抜けなければならない。

 

 さもなければ、はじまりの街に辿り着くことはできなくなる。

 

「とまって……!」

 

「どうしたの? ギルモン」

 

「なにか、くる……!」

 

 気配に敏感なギルモンの言葉に、俺たちは足を止めた。

 

 立ち止まり、耳を澄ませる。風の音、水の音、木々のざわめき。

 

 だが、それ以外の音が聞こえる。大きな翼が空気を打つ音。

 

「な、なに……っ、なんの!?」

 

 夕焼けの空に、黒い影が浮かんでいた。それは、徐々にこちらへと近づいてくる。

 

「……とうとうデビモン配下のお出ましって事か」

 

「え?」

 

 俺の呟きに、隣にいた芹香が反応する。だが、俺が答える前に、空からの刺客は舞い降りてきた。

 

「デビドラモンだ!」

 

 その名を口にすると、場の空気が一気に張り詰める。

 

 赤い四つの目を持つ、黒い竜型のデジモン。

 

 デビドラモンは成熟期デジモンだが、デビモンがダークエリアから召喚する存在だ。それに、グレイモンの時に感じた黒い歯車の気配はない。だが、肌がピリピリするほどの濃密な重圧を感じる。おそらく、これが殺気というものなのだろう。

 

「ギシャアアアアアア!!」

 

 デビドラモンは低空飛行でこちらへと突っ込んでくる。

 

「避けろみんな!」

 

 俺が叫ぶと、一同はデビドラモンの進路上から身を投げ出して避けた。

 

「チィっ、速いなアイツ……」

 

 すれ違いざまに一発殴ってやろうかと思っていたが、想像以上のスピードに、クロスカウンターは事故る危険性が高いと判断し、様子を見ることにした。

 

「《ベビーフレイム》!!」

 

「《ファイヤーボール》!!」

 

 通り過ぎて空に舞い上がるデビドラモンに、アグモンとギルモンが攻撃するが、火球は難なく避けられ、再びこちらへと降下してくる。

 

「くっ、硬い…!」

 

 デビドラモンの爪と俺の拳がぶつかり、弾かれる。手応えが浅い。

 

 旋回して再度攻撃してくるデビドラモンに、もう一度拳を振り上げる。

 

「くぅっ、あああああ!!」

 

「ア、アニキ!? うぎゃっ!」

 

 またしても拳が弾かれた。その衝撃で吹き飛ばされた俺の身体を、アグモンが受け止めてくれる。

 

「いたたた。大丈夫か、アグモン」

 

「お、オイラは大丈夫ぅ…」

 

 しかし、受け止めきれなかったアグモンを尻に敷いてしまい、慌てて退きながらその安否を確認する。一応、大丈夫らしい。

 

「くそっ、交通事故覚悟で直接ぶん殴るか!?」

 

 とにかく、どうにかしてデビドラモンを地上に引きずり下ろすか、殴ってアグモンを進化させるかしないと、戦いにならない。

 

 俺がもっと上手くデジソウルを使えれば、こんなことにはならないのに──。

 

 俺自身、デジソウルが何なのかまだよくわかっていない。ただ、俺だけの力ではアグモンを進化させるにはパワーが足りないことだけは確かだ。

 

 だから俺は、敵を殴ると同時に、そのデジモンからパワーを奪ってアグモンを進化させてきた。……多分。

 

 自信がないのは、戦いの最中は興奮していて、細かいことまで考えて動いていないからだ。

 

 だが、デビドラモンの長い腕を掻い潜って直接殴りに行くのは危険だと、俺の勘が告げている。だから、どうにかして引きずり下ろせないかと考えたが、拳で殴ってもびくともしない。

 

 この際、本当に事故を覚悟で我が身を晒し、デビドラモンを引きずり下ろすか。

 

「有音君、前っ!!」

 

「やばっ!?」

 

 戦いの最中に、思考に没頭しすぎていた。

 

 芹香の声で現実に引き戻されると、目の前にはデビドラモンの赤い爪が迫っていた。

 

 咄嗟に腕を交差させて防御するが、真正面から受けてしまったため、そのまま引きずられ、背中を巨木に強かに叩きつけられた。

 

「ガッ、かはっ!!」

 

 デビドラモンはそのまま、再び空へと舞い上がっていく。

 

「有音君! 大丈夫? しっかりして!」

 

 駆け寄ってきた芹香が声をかけてくる。アグモンとギルモンは、空のデビドラモンを睨みつけていた。

 

「もう逃げよう! このままじゃケガじゃ済まさなくなっちゃう!」

 

「…逃げて、その後どうする……」

 

 デビドラモンの殺気は消えていない。おそらく、どこまでも追いかけてくるだろう。終わりのない鬼ごっこで体力を消耗するよりも、持久戦に持ち込み、好機を窺って逆転の一撃を狙うしかない。

 

「ここはアニメの世界だけど、私たち生きてるんだよ! 一歩間違えたら死んじゃうかもしれないのに、カッコつけないで!!」

 

 ああ。そうさ。ここはアニメの世界なんかじゃない。デジタルワールドという、ひとつの世界だ。そして今ここに、俺たちは生きている。この背中の痛みが、何よりの証拠だ。

 

 だから──。

 

「だから……一歩も退けないな」

 

 膝に手を付き、立ち上がる。再びデビドラモンがこちらに向かってくる。アグモンたちが必死に止めようとするが、その速さに対応できていない。

 

 背後には木、そしてその前には女の子と、その背後にはこちらを狙うデビドラモン。

 

 ……ハッ。余計に逃げられるか、こんな状況で。

 

 芹香の前に躍り出て、足を踏ん張り、腰を据える。

 

 後には引けない。ここでデビドラモンを受け止めてやるッ!!

 

「はあああああああっ!!!!」

 

「《クリムゾンネイル》!!」

 

 俺の拳と、デビドラモンの深紅の爪が激突する。

 

 拳を伝い、全身が吹き飛びそうになるほどの衝撃が走る。

 

 だが、退けない。退かない。退いてやるものか!!

 

「背中に女の子庇ってんだ! 男が根性見せなくてどうする!!!!」

 

 エネルギーを溜める深紅の爪と、俺の拳が激しく競り合う。

 

「うおおおおおおおーーー!!!!」

 

 雄叫びを上げ、根性でデジソウルを練り上げる。一瞬でも競り負ければ、後ろの芹香が危ない。

 

 大人として、そして何より男として、ここは一歩たりとも退くわけにはいかない場所なのだ。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 デビドラモン。

 

 そのデジモンを、私は知っている。テイマーズで、ギルモンがグラウモンに進化する時に戦ったデジモン。

 

「うぅぅぅあああああああーーー!!!!」

 

 声を張り上げながら、有音君は必死にデビドラモンの攻撃を受け止めている。

 

「アニキぃーーー!!」

 

「セリカーーー!!」

 

 ギルモンとアグモンが、私たちの方へと向かってくる。

 

 だが、デビドラモンが彼らを一瞥すると、その赤い四つの目が光り、彼らの動きが止まった。

 

「デビドラモンには、その魔眼で相手の動きを封じる力がある。絶対に、眼を合わせるな、よ…っ」

 

 苦しそうに声を絞り出す有音君。

 

 私よりも小さな身体で、倍以上に大きなデビドラモンの攻撃を受け止めている。私がいるから、有音君は動きたくても動けない。

 

 私のせいで、有音君はしなくてもいい苦労をしている。私は、足手纏いになってしまった……。

 

「もう良いよ! 有音君逃げて!!」

 

「っ、バカいうな。そんなことしたら、俺は自分を赦せないっっ」

 

 ずさ…っと、有音君の身体が後ろに下がる。

 

「ちくしょう……。俺にも、究極体を倒せるくらいのデジソウルがあればっ、こんな成熟期デジモンなんかに!」

 

 少しずつ後退していく有音君の身体が、もう限界であることを私に伝えていた。

 

 有音君がやられてしまったら、真後ろにいる私も、デビドラモンにやられてしまうのだろう。

 

 それでもいい。足手纏いの私など、いない方がいい。

 

 いざとなれば、有音君だって自分の命を優先するはずだ。それでいい。

 

「言っとくけど。梃子でも動いてやらないからな!」

 

 どうして。まだ出会って一日しか経っていない私を、どうしてそんなに必死に守ってくれるの?

 

「俺はナイトモンから、戦うために稽古をつけて貰った。騎士になるとか、そんな気はないけどさっ。こんな俺でも、せめてっ。ナイトモンに顔向け出来ないような男にはなりたくないっ!!」

 

 全身に力を込めても、デビドラモンの勢いはもう有音君の力を上回っている。

 

 私はどうすれば良いのだろう。私に、何ができるのだろう。こんなに頑張っている有音君のために、私には何ができるのだろう!?

 

「ここに居る意味があるかもしれないって言った自分の言葉にくらい、責任持てよなっっ」

 

 ここに居る意味……。私に出来ること……。私は、ギルモンのテイマー。でも、私は何も……。

 

 テイマー……。

 

 そうだ。私はデジモンテイマーなのだ。できることは、いくらでもあるじゃないか。

 

 私はデジヴァイスを構える。有音君が見せてくれたように。私が好きで、憧れた子供たちのように!

 

 私の目の前に光が集まり、それはカードの形となって、くるくると回転している。

 

 私はその光に手を伸ばし、人差し指と中指でそれを挟んだ。

 

「カードスラッシュ!!」

 

 力強い波動を感じるカード。無限の可能性を秘めたカード。私が待ち望んだカード。それを、力強くスラッシュする!

 

「超進化プラグインS!!」

 

 EVOLUTION_

 

 デジヴァイスから強烈な光が放たれる。デジタルコードがギルモンを包み込み、光のデジタマを形成する。

 

「ギルモン進化──グラウモン!!」

 

 デジタルコードのデジタマが爆発し、中から現れたのは、ギルモンが進化した成熟期デジモン——グラウモンだった!

 

「っ、今だ! うおりゃあああああっ!!!!」

 

 その進化の光に気を取られたデビドラモンを、有音君は殴り飛ばした。

 

 殴り飛ばされたデビドラモンは、弾丸のように物凄い速さで吹き飛んで行った。

 

「待たせたなアグモン! 進化だ!!」

 

「待ちくたびれたよアニキ!」

 

 光が有音君の右手に集まっていく。左手にはデジヴァイスが握られている。

 

「デジソウル──チャージ!!」

 

 光に包まれた右手を、デジヴァイスを握る左手に添えると、光はデジヴァイスに移り、そこから強い光がアグモンに向かって放たれる。

 

「アグモン進化──ジオグレイモン!!」

 

 光に包まれたアグモンが、ジオグレイモンに進化して光の中から現れた。

 

「やられっぱなしはカッコ悪いからな。たっぷり礼はさせてもらうぞ!」

 

「ギシャアアアアアーーー!!」

 

 デビドラモンは体勢を建て直すと、そう宣言した有音君へ一直線に向かっていく。

 

「有音君!!」

 

 新しくカードをスラッシュしようとする前に、ジオグレイモンが有音君とデビドラモンの間に割って入った。

 

「捕まえたあああ!!」

 

 突進するデビドラモンを、ジオグレイモンは真正面から受け止めてその動きを封じた。

 

「でかしたジオグレイモン! メガフレイムだ!!」

 

「わかったよアニキ! 《メガフレイム》!!」

 

 ジオグレイモンに捕まって身動きが出来ないデビドラモンを至近距離で攻撃するジオグレイモン。

 

 メガフレイムの直撃を受けたデビドラモンは地に落ちる。

 

 これなら勝機は充分ある。

 

「カードスラッシュ──高速プラグインB!」

 

「《プラズマブレイド》!!」

 

 体勢を建て直そうとするデビドラモンを、グラウモンの一閃が両断する。

 

「グシャアアアアアアア!!!!」

 

 痛みに叫ぶデビドラモン。可哀想だけど、これは命を懸けた戦いだから、情けはかけられない。

 

「トドメだ、ジオグレイモン!!」

 

「おう! 《メガバースト》!!」

 

 ジオグレイモンの口から放たれた大きな火の玉がデビドラモンに直撃すると、デビドラモンは爆発の中に消えていった。

 

 爆発の中からデリートされたデータがジオグレイモンとグラウモンに吸い込まれていく。

 

「終わったな」

 

 有音君のその声を聞いて、私は膝を崩してヘタってしまった。

 

「ありがとう。助かったよ、芹香」

 

「ううん。有音君が居てくれたから、私も自分の出来ることを見つけられたの」

 

「よしんさい。照れるでしょーが」

 

 そっぽを向きながら、有音君は手を差し出してくれる。私がその手を取ると、力強く引っ張り上げてくれた。

 

「ありがとう。有音君」

 

「どう致しまして。お互い様さ」

 

「そうだね……」

 

 そうは言ったけど、私だけじゃダメだった。恐くて、逃げてばかりだったと思う。だからありがとうって、心の中でいっぱい感謝した。

 

「アニキぃー!!」

 

「セリカぁー!!」

 

 ギルモンとアグモンが走ってくる。

 

「カッコ良かったよアニキ! やっぱりアニキ、すげー!!」

 

「芹香が居てくれたからさ。アグモンもギルモンも、お疲れさん」

 

「ぎるぅ……ギルモンお腹すいた…」

 

「よし、少し早いけど飯にするか」

 

「良いの? 今日中にはじまりの街に行かないとならないんじゃ…」

 

「デビドラモンに足止めを食らっちまったからな。無理して進むより、今は休んで次の戦いに備えた方が良い」

 

 夕陽は暮れ、夜がやって来る。日の入りの夕焼けに照らされながら、また私たちは歩き出す。目指すのははじまりの街。

 

「あの力は危険だ……。しかし、暗黒の力の前にはその力も無力であることを今に思い知らせてくれよう」

 

 闇に紛れ、堕天使の悪魔が見ていたことも知らずに。

 

 

 

to be continued…




 
デビドラモン

赤い四つ目を持つ成熟期の邪竜型デジモン。

ダークエリアよりデビモンに召喚されて有音たちを襲った。

異常に発達した四肢を持ち、長い腕はそれだけでも脅威である。

必殺技は両手の深紅の爪で相手を切り刻む『クリムゾンネイル』。さらに相手の動きを封じる魔眼『レッドアイ』も持つぞ。
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