遺言 作:歪み神
いつも強力なSPを付けているターゲットを狙う際、移動の船ごと狙うことがあった。
直径30mくらいの岩をくり抜き、生活コンテナを放り込み、ビーコンとレーダーの反応を待ち襲撃のチャンスを伺う。この生活が数十日も続くと、宇宙の深い闇にのまれ発狂しだす仲間が出る。私は岩に穴を明ける土木作業が好きだった。待つ時間は宝物の音楽再生機だ。広い宇宙の狭い空間での生活をそれほど苦しいとは感じていなかった。
我々の戦闘機はジッコと呼ばれる作業船を改良したもので、連邦に遠慮して武装が陳腐なスペースクルーザーを落とすには十分だった。
そろそろか、目を開けた私は用意したテンプテーション型連絡船の客席を見て思う。
「任務の巻き添えで何人死んだんだろうな?」
地球の衛星軌道まで一時間のところで、私はレンタルしたテンプテーション型連絡船を止め戦闘の行方を見守った。
二度目のソーラレイの照射後、また苛烈な戦闘が始まったが、救助活動を行うならこのタイミングだろう。脱出が叶わない状況はパイロットの自殺を促してしまうからな。なにせバスクは捕虜に過激だ。バスクを支持している奴らも、なんだかんだとスペースノイドに恨みを抱えているので抑えが効かないのだ。
テンプテーションをさっき見たの激戦区に慣性航行で乗り付け、ガイドシグナルをα0001のコードで出す。
背面の貨物デッキからプチモビルスーツに乗り込み、広い宇宙を集中して見渡す、深い闇と太陽の影となった黒い穴のような地球が存在を主張している。
目を細め意識を宇宙に溶かしていくと、炎の揺らめきが見える。私は魂の揺らめきだと思っているが、正解を誰が教えてくれる訳でもない。一度ハマーンとニュータイプについて話してみるか・・・。少ない統計でだが、この揺らめきが強いやつほと大きな事を成したり、強烈な素質を持っている者が多い気がする。今の私にとって命は平等ではなく、この揺らめきが強い者を優先して救出する。
まず一人目、パイロットスーツで宇宙に投げ出されて気を失っている女性を見つけた。シーマだ。成す者の魂なのだろう、普通は奇跡だろうが、私には見つけやすかった。
もう一人ドムのパイロットを牽引して、ガイドシグナルで方向を確認しながら船を見つける。この体になると、船の方が見つけにくいのだから、不思議な事だ。
厄介なことに、船の近くにはジム改がいた。
「ちッ 勘のいい奴がいたか」
ガイドシグナル無しに動力を殺した船を、ミノフスキー粒子下で見つけるのは難しいのだが・・・
私は舌打ちし、ジムを観察する、ハッチが開いていて奪ってくれと言わんばかりだ。混乱した状況だが、ドムのパイロットは意識がある。戦闘になっても二対一でどうにかなるかと、船に入った。
中には最初から両腕を上げた連邦兵士が私たちを待っていた。
「父の派閥争いで、命を狙われています。僕も連れて行ってくれませんか?」
幼い、まだ十五に届いていないように見える。面倒だなー、殺してしまおうかなーと考えていると、
「お前が狙われているなら、先ずジムを違う領域に流せ」
と、ドムのパイロットが話を進めてしまった。私はこれだけは譲れないことを確認する。
「誓え!お前の父親がジャミトフ、バスク、ジャマイカンでないことを」
殺してしまいたいが、一応はドムのパイロットの顔を立てることにした。
「はい!父の敵対勢力です」
彼はうれしそうにMSに戻っていった。
あの年で最新鋭のMSが与えられるって、どれだけ面倒な父親か・・・私はため息をつくのだった。
最初にガイドシグナルを頼って合流したザクのパイロットがとても優秀で、私が6人救出する間に20人もの救出に成功していた。パイロットを優先したいと伝えようか迷ったが、まあこの船には120もの席がある。好きにやらすことにした。
結局36人の救出に我々は成功した。
作業が4時間を超え、宇宙に静寂が広がっているのを私は確認し、
「すまない、手術の後遺症で長く作業ができないんだ、誰か船の操縦をやってくれないか?」
と、この場ではとても格好のつかないお願いを怪我の少なそうな人を見渡して頼んだ。
「あんた、一人も見つからなかったらどうするつもりだったんだ?」
ドムのパイロットが大笑いしながらパイロット席へ歩いて行った。
私は声の大きな奴だと思いながら、その後を追った。