遺言 作:歪み神
「オ-レル・ハ-シュハイザ-少尉、ドラッツェが無理だとザクF2しかありません、正直状態が良くなくて、あまりお勧めできません」
「あれは、戦い方に合わないんだ、すまない」
ルウムで戦果を挙げ、私はギレン総帥の親衛隊に抜擢された。しかしア・バオア・クーの防衛戦でさえ首都防衛隊に配属され、テラーズ・フリートでのこの戦いがルウム以来の戦闘行為となった。
私の戦いはすぐに終わった、意識の外からの狙撃で足首から先を失ったF2は、整備不良により油圧チェックバルブが機能しなかったのだ。F2は全てのアクチュエーターが制御不能となった。
「確かα0001だったか」
テラーズ閣下が出撃式でおっしゃった救難船のガイドシグナルを探す。ある訳が無い、まだ戦闘は続いているのだ。いや、船がいる、近い?
私はガイドに従いバーニアを制御し船を見つけた、下手糞な赤十字がスプレーで書かれていた。
人しか乗せるつもりが無いのだろう、客船だった。
F2を流し、船に乗船すると、
「早いな、背面の貨物に作業用MSがあるんだ、あんたも手伝ってくれ。ああ!いきなり大物だな」
船の中の人に気軽に話しかけられた。
「大物?」
私は首を傾げる。まだ船には彼と私しかいないのだ。彼は誰かと勘違いしているようだった。
よく見れば、私は彼を知っていた。彼を初めて見たのはサイド3の防衛隊での事だった。
彼はア・バオア・クーの撤退艦隊を率いてサイド3にやってきた。そして首都防衛隊の隊長に、艦隊の補給を要求してきた。
「終戦協定により、連邦軍に敵対する勢力に補給する行為は禁じられている」
隊長は優等生な回答をした。
「ならば略奪させてもらう」
目が本気だった。分かる。此処で回答を間違えれば戦闘になると確信した。
「略奪されたことにする。連邦艦隊が到着する前に早急に、乱暴に済ませることだ。」
隊長の判断で事なきを得て、ここでの戦闘は回避された。後から私は隊長に彼の名前を聞いた。
「レイ・シュミットだ」
隊長は短く答える。彼は有名だった。ジオン軍人ならば、ほとんど名前は知っているだろう。私は初めて名前と顔が一致するのだった。彼は燃料と食料などの物資の他に、ザク、ドム系のMSを全てここに捨てていき、ゲルググタイプのMSを言葉のとうり略奪していった。
サイド3で見た野生の虎のような眼は不気味なゴーグルで隠れていたが、間違いない。纏っている雰囲気もそのままだ。
私は彼の指示に従い救助活動を行った。
彼の救助はおかしい。何も見えない闇に飛び込んでいき、人を拾ってくるのだ。私は戦艦の残骸から生存者が居そうな所を予想して動いていたが、彼は何もないところへ飛び込んでいくのだ。
テラーズ艦隊とシーマ艦隊はここで敵対していたが、彼は何の問題が?と、どうでも良い顔で、どちらの軍も構わずに救出していた。そこに連邦軍士官が混ざったときは、流石に困った顔をしていたが・・・。
ガイドシグナルに導かれて4機のMSが流れてきた。どの顔も歴戦の勇者の顔をしていた。私は恥ずかしい思いが込み上げてきた。私はマシンガンの一発も撃っていないのだ。
船に乗せられていた女が目を覚ました、シーマ・ガラハウ・・・大物だった。だが彼女は10年も若返ったのかと思うほど、少女の様に自分に正直に泣き始めた。月に着くまで彼女は寝るか泣くかだった。
レイ・シュミットは興味が無さそうな顔をしていた。
彼が話すには、我々には3つの選択があるらしい
1つ、アクシズへの復帰
2つ、グラナダの市民権を得て民間人になる。彼のパトロンの会社も紹介してもらえるらしい。
3つ、彼が結成する組織のメンバーになる。何でも船を2隻運用したいらしい。
私は2つ目を希望していた。パイロットとしては余りにも不甲斐なく、自信も気力も無くしていた。
月に到着し、各々降艦しだした。シーマが降りるのは最後だったが、銃声が2発響いて彼女の足元に着弾し、彼女の下船を阻んだ。だが彼女はその行為に抗議する気概も無い様だ。面倒そうに睨む彼女に、レイ・シュミットは言う。
「あんたはまだその台地を踏み締める資格はない。早く復讐の火を灯せ、バスクに裏切られた部下の無念を晴らす鬼になれ、あんたはこれから老いで急速に体力を失うだろう、だから何だ、鍛え続けろ、一流のパイロットの技量を維持しろ、必ず俺が4年以内にバスクを殺す《ヤル》チャンスをやる。約束を反古にしたなら、この銃で俺を撃つといい、誓いの証だ、この銃はあんたにくれてやる。その船は何ケ月だってここに留めて借りてやる。魂に火が灯ったならば降りてくるといい。」
ああ、敗戦側でも戦果を挙げる人間はこういう者かと感動した、最後にこんな心が高揚する場に立ち会えた事を誇りに思った。心なしか、銃を手放す顔が寂しそうな気がしたが、気のせいだろう。
私が振り向き、他の同乗した人たちの元へ向かおうとすると、レイ・シュミットに止められた。
「オ-レル・ハ-シュハイザ-、すまないが君は選択権が無い、君には俺の小隊のエースパイロットとしてまだ戦ってもらう」
私は誰かと間違っているのかと思った。
私がキョトンとしていると、シーマ・ガラハウがさっきとは別人のような意志の籠った目をして歩いてきた。
ああ、こういった人たちは魂の強さの次元がまるで違うのだなと理解した。私はまた自分が恥ずかしい気持ちになった。