遺言   作:歪み神

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#13. 幹部会

 

**【 UC0079 】**

 

私の小隊が連邦の輸送船を鹵獲した時の話だ。

ゲルググのエネルギー・キャパシタ開発に大変参考となる物資が含まれていたらしい。報告を受けたキシリア閣下に呼び出され、こう告げられた。

 

「お前が少佐に上がれんのは、出自の問題だけではない。少佐ともなれば政治もこなせねばならん。ジオンはザビ家が一枚岩でないおかげで、ただでさえ派閥が複雑だ。お前には無理だろう?」

 

「ああ、確かに面倒そうですね」

 

「少佐になれば、大隊規模の作戦を任されるやもしれん。お前はその規模の作戦で、何かやりたいことはあるか?」

 

「そうですねー。ソロモンを衛星軌道まで引っ張っていき、南アメリカが消滅するまで隕石落としでも敢行しますかね」

 

閣下は私をじっと見つめた後、静かに言った。

 

「意外とまともだな。ギレン総帥も同じような作戦を立案された」

 

「ああ、じゃあ近々やるんですか?」

 

「やらんよ。それが政治だ」

 

「はあー……」

 

どうでもよくなり、私は差し出されたコーヒーを啜った。

 

「レイ・シュミット大尉、私の前で音を立ててコーヒーを啜るのはやめたまえ」

 

「ハッ」

 

形式的に敬礼し、部屋を後にした。

 

『……やらせてみるか』

 

閉じかけた扉の向こうから、不穏な呟きが聞こえた気がした。

 

---

 

**【 UC0083 】**

 

意識が覚醒する。過去の記憶を振り払い、私は新組織の幹部会へと気持ちを切り替えた。

 

「──これより、エゥーゴ支援組織『ツヴァイ』の幹部会を開始する。まず幹部の順位を定める。上位者に不測の事態が生じた際、円滑に組織を引き継ぐためだ」

 

1位:レイ・シュミット

2位:クリス・エバート(工作艦『クラクサ』艦長)

3位:シュテフィ・グラフ(元シーマ・ガラハウ)

4位:オジー・スミス(元ドム・パイロット)

5位:オーレル・ハーシュハイザー(元親衛隊)

6位:マルチナ・コーリー(工作船2番艦『ヴァーユ』艦長)

7位:カールトン・フィスク(キシリア機関3rd)

 

「カールトンは重要なパトロンだが、軍人ではないからな」

 

「別に構わんよ」

 

席上のカールトンが肩をすくめる。

 

「幹部諸君には、これから起こる情勢の流れを把握してもらいたい」

 

私はこれから巻き起こる時代の趨勢を、大まかに解説した。

 

 デラーズ・フリートが派手に暴れた結果、連邦内に過義的な治安軍事組織が結成される。ジャミトフやバスクを中核とした『ティターンズ』だ。

そして、彼らの苛烈な暴走に抗する反対勢力『エゥーゴ』が誕生する。

 

 やがて両者は武力衝突へと発展するが、戦力規模はティターンズが圧倒している。

多面作戦を強いられるティターンズは、スポンサーの多い月面都市の防衛を最優先するため、サイド2の壊滅を許容する事態に陥る。

 ティターンズはG3ガス、艦隊砲撃、そしてサイド7で建造した移動型コロニーレーザーを用い、サイド2を焦土と化す。

 

「我々の出資者であるカールトン・フィスクは、サイド2の崩壊を望んでいない。そこで、私が考案した大まかな作戦だ」

 

 元々経済的に困窮しているサイド1で、ティターンズの締め付けに対抗する反連邦運動が再燃する。

 これを鎮圧すべく『30番地』でティターンズが行う大規模虐殺の映像を、サイド6で生々しく流布させ、現地をパニックと恐慌状態に陥れさせる。機関の人間が煽り続ける以上、この暴動は収まらない。サイド6行政も『次は自分たちが標的になるのでは』と底知れぬ恐怖を抱くことになる。

 

 そこで──アクシズがサイド6の防衛権を引き受ける。

 これによりアクシズは正式な自治組織として認知され、テロリストの汚名をそそぐことができる。同時にサイド6から巨額の防衛予算を獲得する。

 

 サイド6とサイド2は同じラグランジュ・ポイント(L5)に位置する。サイド6に常駐させた艦隊を、サイド2へ派遣するのは容易だ。サイド2、あるいはエゥーゴからの要請という形で、アクシズの戦力を注ぎ込みサイド2を防衛する。

 

「周知の通り、サイド2とジオンは不倶戴天の敵同士だ。この政治的腹芸はカールトン・フィスクに任せる。サイド6とアクシズの橋渡しも同様だ。私もアクシズ内なら多少は顔が利くが、こういう泥臭いネゴシエーションは手慣れた人間に任せるに限る」

 

カールトン以外の幹部全員が、狐につままれたような顔で私を見つめていた。

 

シュテフィ・グラフ(シーマ)が最初に沈黙を破り、私に問いかけてくる。

 

「ティターンズもエゥーゴも、まだ出来たばかりの組織だろう? 先を読みすぎているんじゃないかい? 戦争そのものを回避するよう誘導することだって、今なら可能なはずだ。ジャミトフもバスクも、暗殺してしまえばいい」

 

「だめだ。この戦争は、最終的にサイド3の独立自治へ繋がる。戦火の発端を潰すのは、ジオンの国益にならない。我々の優先順位はあくまで【アクシズ > キシリア機関 > サイド2 > エゥーゴ】だ。アクシズに益のない工作など、誰がするものか」

 

私は言葉を切らずに続けた。

 

「……組織の順位を定めたが、私には何としてでも成し遂げねばならない個人的な目的がある。《グレミー・トトの抹殺》だ。生き汚いと思われるかもしれないが、容認してほしい」

 

「成し遂げねばならない目的とは何だい?」

 

「シュテフィ。あんたを完全に信用できたら話すよ」

 

その後も幹部たちからの質疑応答は、何時間にもわたって続いた。

 

 

 

 

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