遺言 作:歪み神
**【 UC0079 】**
私はシーマ・ガラハウと作戦を共にしたことがある。
特殊先行部隊……だったか、そのような名前の部隊に配属された私は、サイド2のコロニー『アイランド・イフィッシュ』へ貨物と一緒に潜入し、制御室にいた人間を皆殺しにした。
その時の同僚は、まるで気味の悪い者でも見るような目で私を見ていた。
脱出のためドックへ向かう通路で、先を行くコロニーのスタッフがあり得ない倒れ方をした。異変に気づいた私は、急いで近くの重力隔壁を閉めて強制換気システムを起動させ、船外作業服へ着替えた。4人の同僚が何をしているんだという顔で私を見ていたが、それはこちらのセリフだ。
「何をしている、早く着替えろ」
その言葉より先に、迂闊にも同僚の一人が隔壁を開けた。
4人は苦しむ時間すらなく、その場に倒れて息絶えた。
作戦の詳細を知らされず危険に晒されるのは、シュタージで慣れていた。
その後、私は堂々と貨物船で帰還を果たした。
(毒ガスを使うなら、我々の作戦はまったく無駄だったのでは……?)
とは思ったが、まあ、作戦参謀に何も言わないでおいた。
---
**【 UC0085年7月31日 】**
私はサイド1・30番地の制御室にいた人間を皆殺しにした。
緊急通信ワイヤーを展開し、コロニー全域のカメラ映像をリンクさせて非常用レーザー通信に乗せる。
緊急通信ワイヤーとは、高濃度ミノフスキー粒子下に置かれた環境から、発信装置を影響圏外まで搬出して友軍へ救助信号やデータを伝送するシステムのことだ。
「悪いな。死ぬのが数時間早いか遅いかの違いだ」
30番地の制御室を後にした。
◇
『クラクサ』を領域外へ退避させ、MS隊を展開する。今回は3機生産が完了したガルバルを全機連れてきた。私も出撃している。
このガルバル、見た目はガルバルディαだが、中身はほぼ連邦の量産機ガルバルディβである。
当初はガルバルディαに連邦系リニアシートを装着する考えだったが、量産計画機であるガルバルディβの部品の機密管理が甘く、入手がとても容易だったのだ。旧ジオンの技術系譜を引き継いでおり、目新しい新技術が投入されていないのも原因かもしれない。
ガルバルディαの集中生産ラインをガルバルディβに対応させた方が、MSの信頼性も部品の供給安定性も断然有利だった。アクシズのR・ジャジャへ展開されていく強力なジェネレーターを諦めることにはなるが、運用の方が重要だろう。
私が搭乗するMSは「ボール狙撃カスタム」。脳波によって制御されるサイコシリンダーによって、砲身が高速にかつ精密に制御され、視界に収める相手に常に照準を行うことができる。サイコミュ試験型ザクのアクチュエーターを簡素化したのだと、カールトン・フィスクは話していた。
ただ砲身の制御角度は12度で、狙撃には十分だが、寄られたらまあどうすることもできない。
超精密に研磨されたタングステン弾を、8メートルもの長さのコイルを持つレールガンが射出する。敵の熱源感知にとらわれないための狙撃システムだ。弾数は6発。余計な機構で精密性が台無しにならないように、装弾は船外作業で人が行わなければならない。バレル寿命は200発だそうだ。
隠密性を重視するため、高速移動以外はすべてイオンパルスノズルで姿勢制御し、目視で視認できないようカバーされている。
僚機のガルバルは小さくコロニーを視認できるくらいだろうが、私はスコープ越しに確認できている。
小隊は──
* **シュテフィ・グラフ(シーマ)**
* **オーレル・ハーシュハイザー(元親衛隊)**
* **エディー・マレー(乗り込んできた連邦軍士官)**
の3人と私で構成している。
まだ若いエディー・マレーが緊張しているのは分かるが、オーレル・ハーシュハイザーの顔が固いのが気になる。
(おいおい、あんたにかかれば一人でも余裕だろ?)
コックピットシートの仲間の表情を確認した私は、声に出さず呟いた。
1時間経過すると、物物しいタンクを牽引したハイザックが4機コロニーに取りついた。ハイザック……ジオンの敗北の象徴であるそれらをすぐに破壊したくなる衝動を堪え、奴らが作業を完了するのを待つ。
「私の発砲を合図にMS隊は襲撃をかけろ」
ガルバルはじっと合図を待っていた。
スコープ越しのハイザックは解像しきれていないが、ここは私の権能が仕事をする。
「見えた」
そう口にした後、そういえば、シャア総帥がよくこんなことを口にしていたことを思い出しながら引き金を引く。外すとコロニーに穴が開くが、もはやどうでもいい壁のはずだ。
着弾を確認せずに、3機のガルバルはコロニーに向かった。
「3対3に数を揃えたんだ、初陣とはいえ、この程度は簡単にこなしてもらわないとな」
1機のハイザックの狙撃による撃破を確信して、私は一人呟いた。