遺言 作:歪み神
私はシーマ・ガラハウと作戦を共にしたことがある。
特殊先行部隊?だったか、そのような名前の部隊に配属された私はサイド2のコロニー「アイランド・イフィッシュ」に貨物と一緒に潜入し、コロニーの制御室にいる人間を皆殺しにした。
その時の同僚が、私を気味の悪い者でも見ているような眼で見ていた。
脱出の為に、ドックに向かう通路で、先に見えるコロニーのスタッフがあり得ない倒れ方をした。私は急いで近くの重力隔壁を開け強制換気システムを起動させてから、船外作業服に着替えた。4人の同僚が何をしているのかといった顔で私を見ていたが、それは私のセリフだ。
「何をしている、早く着替えろ」
という言葉より先に、迂闊にも同僚が隔壁を開けた。
4人の同僚が苦しむ時間もなく、その場に倒れて死んだ。
作戦の詳細を知らされず危険にさらされるのは、シュタージで慣れていた。
その後私は堂々と貨物船で帰還を果たした。
毒ガスを使うなら、我々の作戦は全く無駄なのでは?とは思ったが、まあ作戦参謀には何も言わないでおいた。
U.C.85年7月31日
私はサイド1 30番地の制御室の人間を皆殺しにした。
緊急通信ワイヤーを展開し、非常レーザー通信に、コロニーの全てのカメラの画像とリンクした。
緊急通信ワイヤーとは、ミノフスキー粒子に覆われた環境から、友軍に救助信号を出すために、発信装置をミノフスキー粒子の影響外に運ぶシステムの事だ。
「悪いな、死ぬのが数時間早いか遅いかの違いだ」
私は30番地の制御室を後にした。
クラクサを領域外に逃がし、MS隊を展開する。今回は3機生産が完了したガルバルを全機連れてきた。私も出撃している。
このガルバル、見た目はガルバルディαだが、中身はほぼ連邦量産機ガルバルディβである。
当初、ガルバルディαに連邦系リニアシートを装着する考えだったが、量産計画機であるガルバルディβの部品の機密管理が甘く、入手がとてもしやすかったのだ。旧ジオンの技術を系譜しており、目新しい新技術が投入されていないのも原因かもしれない。
ガルバルディαの集中生産型ラインを、ガルバルディβに対応した方がMSの信頼性も、部品の供給安定性も断然有利だった。
アクシズのRジャジャへ展開されていく、強力なジェネレータを諦めることになるが、運用の方が重要だろう。
私が搭乗するMSはボール狙撃カスタム、脳波によって制御されるサイコシリンダーによって、砲身が高速に、かつ精密に制御され、視界に収める相手に常に照準を行うことが出来る。サイコミュ試験型のザクのアクチュエーターを簡素化したのだと、カールトン・フィスクは話していた。
ただ砲身の制御角度は12度で、狙撃には十分だが、寄られたらまあどうすることもできない。
超精密に研磨されたタングステン弾を、8mもの長さのコイルを持つレールガンが射出する。敵の熱源感知にとらわれない為の狙撃システムだ。弾数は6発。余計な機構で精密性が台無しにならないように、装弾は船外作業で人が行わなければならない。バレル寿命は200発だそうだ。
隠密性を重視するため、高速移動以外は全てイオンパルスノズルで姿勢制御し、目視で視認できないようカバーされている。
僚機のガルバルは小さくコロニーを視認できる位だろうが、私はスコープ越しに確認できている。
小隊は
・シュテフィ・グラフ(シーマ)
・オ-レル・ハ-シュハイザ-(親衛隊)
・エディー・マレー(乗り込んできた連邦軍士官)
の3人と私で構成している。
まだ若いエディー・マレーが緊張しているのは分かるが、オ-レル・ハ-シュハイザ-の顔が固いのが気になる。『おいおい、あんたにかかれば一人でも余裕だろ?』コクピットシートの仲間の表情を確認した私は、声に出さず呟いた。
1時間経過すると、物物しいタンクを牽引したハイザックが4機コロニーに取りついた。ハイザック・・・ジオンの敗北の象徴であるそれらをすぐに破壊したくなる衝動を堪え、奴らが作業を完了するのを待つ。
「私の発砲を合図にMS隊は襲撃をかけろ。」
ガルバルはじっと合図を待っていた。
スコープ越しのハイザックは解像しきれていないが、ここは私の権能が仕事をする。
「見えた」
そう口にした後、そういえば、シャア総帥がよくこんなことをよく口にしていたことを思い出しながら引き金を引く。外すとコロニーに穴が開くが、もはやどうでもいい壁のはずだ。
着弾を確認せずに、3機のガルバルはコロニーに向かった。
「3対3に数を揃えたんだ、初陣とはいえ、この程度は簡単にこなしてもらわないとな」
1機のハイザックの狙撃による撃破を確信して、私は一人呟いた。