遺言 作:歪み神
オ-レル・ハ-シュハイザ-のガルバルは接敵すると、シールドでハイザックを突き飛ばした。
安定した姿勢を失ったハイサックに素早く接近し、誘爆しないようにビームランスで器用にコクピットを焼いた。やはり感じた通りの凄腕だった。
シュテフィの敵は既に、コロニーから離れた空間でコクピットを撃ち抜かれていた。
『ヴァーユ小隊のMSが揃っていたら後ろで控えているアレキサンドリアに届いたのか?』私は自分の部隊の能力を上方修正した。
エディー・マレーは、苦戦し、被弾までしていた。
あいつは最初のターゲットを、ハイザックでなく、G3タンクに切り替えたのだ。
必死にタンクに近づこうとするエディーのガルバルを、ハイザックがマシンガンで邪魔をする構図が十数秒続いた。射撃に自信を持てない奴は、ハイザックと対峙しながらタンクを撃ち抜くことをためらっていた。コロニーに穴を開けないために。
「誰か奴に今回の作戦の目的を話したのか?」
私は笑いながら口にした。
ティターンズによる暴挙を必死に止めようとするジオンのモビルスーツの姿そのものだった。自らの被弾も顧みずに戦うその姿は、後にこの光景をビデオで目にする人々の心をつかむに違いない。
だが煩わしくもある。
「お前ら何でこんな酷いことが出来る!」
思念が飛ぶ。
発見の難しいシャトルを勘で見つけた男だ、ニュータイプだろうとは思っていたが、意識を向ける方向が合うと、思念を避けられないのだ。
しばらく戦況を見ていたシュテフィのガルバルがG3タンクを撃ち抜いた。
敵対するハイザックに集中できるようになったエディー・マレーが、ようやく戦闘を有利に進めるようになった。
シュテフィもオ-レルも動かない、成長し殻を破るには自分で勝利をつかみ取ることが必要だ。まして相手は格下でビーム兵器すら装備していないのだ。
彼のガルバルはようやくハイザックを撃墜すると、膝をつきコロニーをのぞき込みその惨状を目にした。
「どうしてこんな酷いことができるんだー」
オ-レルに腕を掴まれた奴の機体が力なく撤退を始める。
『思念波が鬱陶しかったが、いい映像がとれたな』私はそう満足した。この鬱陶しい思念波・・・対ニュータイプ用の武器に転用できないか?今度アクシズに戻ったとき相談してみるか・・・思考がどうでもいい方向にズレていった。
MSの回収が終わり、クラクサがグラナダへ航路をとると、一息ついた私は、また笑いが込み上げてきた。
「ハハハハハハハハ、どうだサイド6の傍観者どもめ、お前たちの天井《そら》は安全か?安心して眠れる軍備は揃っているか?守銭奴どもが、理解できない暴挙を起こす者が、自分より優位者だと怖いだろー、怖いよなー。ああ、ああ楽しみだ、お前たちの絶望した顔を見るのが。」
私が笑い転げていると、エディー・マレーが胸倉をつかみ殴りかかってきた。私は軽く足を払い奴の背を蹴る。無重力の空間で奴は壁まで飛ばされたが、私への抗議を諦めなかった。
「あんた、コロニーで何をしていたんだ?あんたが狙撃したハイザックは行動不能になっていた。タンクを撃ち抜けば止められたはずだ。いったいあのコロニーに何十万の人が住んでいると思っているんだ。」
「お前の父親にお願いしたらどうだ、あんな酷いことをやめてと」
「何だとー」
私は相手をするのが面倒になりオ-レル・ハ-シュハイザ-に目配せをする。
オーレルはエディー・マレーを羽交い絞めして言った。
「連邦士官だったお前に隊長を責める権利など無いだろう?断じて無いはずだ」
流石一流のパイロットは言葉でも一撃で黙らせる。私は感心して歩みを艦橋に移した。
グラナダではカールトン・フィスクがその後の経過を教えてくれた。
地球を迂回するために月方面に放ったレーザー通信は、月で増幅され、事件から2時間後にサイド6周辺域に届いた。それは今も続いているという。誰かが30番地に行って止めなければずっと続く仕組みが出来上がっているらしい。
最初の民間放送が取り上げてから3時間後小さな暴動が起きた。それを機関の人間がうまく反地球連邦政府の運動へと誘導し、その運動はとどまることを知らず、わずか20時間後にはサイド6の全てのコロニーで反連邦政府運動が起きているそうだ。
「アクシズへの協力要請も時間の問題だよ」
私は彼の話を聞き、サイド1から数日の帰路の間に、すでにこれほど作戦が進んでいるので、
『サイド1ってやっぱり遠いな』と感じたのだった。