遺言 作:歪み神
サイド6より防衛隊としての協力要請があり、調印式の為にハインツ少佐とハマーン・カーンがサイド6に来るらしい。病床のマハラジャ・カーンの代行なのだとか。マハラジャ・カーンまだ存命らしい。私が早々にエンツォ大佐を暗殺したのでストレスが軽減したか?若しくは毒殺だったのか?
ハマーンと同行するハインツ少佐も、エンツォ大佐が起こすクーデターで死亡する人物だ。
私はハマーンの要請により、調印式に合わせてサイド6に向かうことになった。同乗者はクリス・エバートとシュテフィ・グラフ(シーマ)
シーマはテラーズ紛争後合流した部下の待遇など、確認したいことがあるのだとか。
調印式を行うコロニー周辺には、アクシズの旗艦グアダンから出撃したMSガザDが100機近く見世物の様に展開していた。
クラクサがグアダンに近づくと、20機ほどのガザDが道を作りグアダンとのドッキングポイントに案内してくれた。
「なんだいこの待遇は?、あんた大尉でなく大佐だったのかい?」
「ああ、アクシズでは人気者なんだ」
接続パイプを抜けるとまた20人ほどの兵士が整列し、その先にハマーン・カーンがいた。
「あなたは!、一方的に秘匿暗号通信で、ジャミトフを殺したら戻るとか、サイド6に反連邦の暴動が起こるとか・・・・」
説教が始まる早々、一人の男が私を連れ去った。
「レイ・シュミット大尉、ムーバブルフレームを使った次期MSについてすぐに相談したいことがあります!」
この男はリッキー・ヘンダーソン大尉。MS開発局の局長で私をアクシズの人気者にした張本人である。ハマーンの愚痴よりはいいかと私は連れていかれることにした。
強化人間プログラムを終えた私は、二週間くらい部屋に籠った。次に成すべきことがあるのだ。
当時次期量産MS開発は、可変MSガザC型の試験機がロールアウトしていた。このガザCがどうしようもない欠陥MSである。私も3年このMSに乗ったが、戦闘云々の前に故障しずに帰ってこれるかが心配なMSだ。また構造の脆弱で加減速に弱く、うまくMSを扱う者ほど帰ってこれなくなる悲劇のMSなのだ。
開戦派が何としてもテラーズの戦争に間に合わせる為に量産を急がせ、最終的には300機ものガザCの生産を行ってしまうのだ。むろんそんなことはさせない。
1週間後部屋を出た私は、128項目にも及ぶガザC型の不具合指摘事項と、その改修案を持ってMS開発局に出かけた。
このガザなのだが、四年後とんでもない大変身をする。ガザCにより上がった不具合項目を妥協無くすべて対応したのがガザD型だ。こいつはとても信頼性が高く、保全スタッフを伴った長期任務でもD型なら全く問題なかった。しかもその技術レベルはガザCが生産された頃のもので十分生産可能であり、私は量産すべきガザをC型からD型まで導くために行動したのだ。偉そうに言ったが、私の改良案はガザCからガザDへの変更項目を述べているだけなのである。
私の改良案はMS開発局の人間を唸らせた。当然だ、数年かけて君たちがたどり着いた改良案なのだ。私が提示した不具合指摘事項が本当ならば、私でもこう解決するな等と思うに違いないのだ。
だがここでその傾向を良しとしない人間が現れる、開戦派の残党だ。
そこで私は彼らに提案した、
「ザクF型とガザC型で武器無しで戦おうじゃないか、ガザが勝てば私も口をつむろう」
娯楽の少ないアクシズで、この戦いは大注目となった。狭い格納庫ではできないので、勝負は宇宙空間で行われたが、アクシズ中のTVスクリーンに中継された。
勝負は数秒で終わった。近づいたガザにザクがショルダータックルをかますと、ガザは沈黙した。このザクのパイロット、マイク・スコット中尉は私の小隊の隊員で格闘戦の天才なのだ。私は万に一つも負けるとは思っていなかった。事前に相手の弱点も筒抜けなのだから。
この結果にはアクシズ中すべてが衝撃を受けた、量産?まだまだ早いに決まっているではないかと、ここでガザCの量産を訴える者などスパイか工作員扱いである。まあ開戦派もここまで完成度が低いと思っていなかったんだろうな。
そして私は四ケ月もの間、MS開発局の人たちと苦楽を共にし、もう難しいことは分からないので、2年間ガザD型に乗った感想や挙動を意見にして述べた。時に『剛性の高い軸受けを並べても最初の物に衝撃が集中してしまう、弱いものを並べて面を作る必要があるのだ』などと、リッキー・ヘンダーソンが5年後にガザDを見せた時に語った言葉をそのまま引用して語ったりした。
四ケ月後、試作一号機が出来、その二か月後先行量産機がちらほらし始めるとパイロットは分かるのだ、あれは使えると。そして私について色んな評判がいい方向にばかり起こる。
・アクシズのMS技術を10年昇華させた男。
・アクシズのパイロットを100人救った男。
・身を挺して強化人間プログラムの危険を伝えた男。
今のアクシズの歓迎ぶりの原因である。
「どうしてあんなに仰々しくガザが展開してるんだ」
私はリッキー・ヘンダーソンに尋ねた、
「サイド6に合流した艦がたった一隻なので、その威容を示してもらいたいというサイド6側の要望なのだとか。それよりも、ムーバブルフレーム搭載機の開発に難航しているのです」
リッキー・ヘンダーソンの話では、アナハイムからの技術提供は中途半端なもので、モノコックのMS生産ラインが全く使えないので、機械開発からなのだという。その機械も従来のものと必要とされる技術がまるで違って、アクシズでは入手困難な物も多い様だ。
私は彼とカールトン・フィスクの直接なパイプを作っておくことにした。カールトンはこういったことには役に立ちそうだし、工作員である私を仲介しては、対応が遅れてしまうからだ。
「だが、次世代MSはムーバブルが標準になるからな、この開発では負けられない。ゼロからMSを開発する部署と、データ蓄積の部署を分けたらどうだ?リゲルグの腕だけをムーバブルに改造した試験機を作って、平行に進めるとか《たしかジムⅢがこうした仕様でなかったか?》」
私はリッキー・ヘンダーソンと3時間語り合い仲間と合流した。
『そうかムーバブルフレームは難航か、盗みに行ってみるか・・・』
私は密かに思うのだった。