遺言 作:歪み神
フォン・ブラウン市防衛作戦の為に、俺たちは戦艦ドックに訪れた。今後旗艦として活用するチベと、シャクルズというサブフライトシステムを確認するためだ。ムサイが二隻無くなっていて、チベがかっこよくなっていた。
「リッキー・ヘンダーソンに工作機械を納めた帰りの船で、チベのアップグレード部品を融通してくれたものを運んだんだ。大戦後期の改造はこのドックで出来る物だったからな。何でもレイ・シュミットの乗艦は緑に塗装しなければならないらしいじゃないか?塗装色も変更しておいた。」
ガザDの塗装色で一度揉めたからだな、紫やピンクの機体色がずっと嫌だった私は
「緑は、散ったジオン兵数十万人の魂や志を同じくする意味が有る、なぜ変える必要がある?」
と、無茶を言ったのだ。連邦にジオンと志を同じくする組織ではありませんよ、という政治的意味が有ったらしいが、紫やピンクはないだろう、私の言葉に特に年をとった将兵が賛同し、アクシズでのパーソナルカラーは緑となったのだ。
「しまったな、戦艦の火器管制のできる人間もキープしておくべきだったな。主砲の打てない戦艦ってかっこ悪いよな」
「ああグラナダ市民の、シーマの部隊が快く搭乗を引き受けてくれたぞ。」
カールトン・フィスク・・・仕事が出来る男だが、そいつらまだ戦いたいなら何故アクシズに合流しない?シーマ様命とかそういったやからではないだろうな?・・・少しばかり合流する人員に不安を覚えた。
私は部隊の名前をヴァーユ隊、クラクサ隊と呼ぶ癖が出来ていたので、チベ改に新たに名を付けることにした。ツバイのMS運用がチベ一隻で賄えるため、船名と部隊名がややこしくなるのを解消するためだ。
『イメル』
クリス・エバートが既に考えていたのか、名前を仲間に募集して数秒で決まった。
今後はイメルを旗艦にして、ヴァーユ隊、クラクサ隊の2小隊運用となる。
少し窮屈になるが10機のMSを運用可能なチベタイプが、一年戦争初期にはすでに運用されていた事に、ジオンの先見を感じたが、『負けてしまえば全く意味がない』とも感じた。
我々はイメル《チベ改》をフォンブラン市の上空に着けた。リッキー・ヘンダーソンの立場上、《出撃しないは》あり得ないというので、本当に渋々出撃した。
「我々はフォンブラウン市に命を懸けて戦ってやる義理は無い。我々の役目はアーガマの防衛ラインを超えたMS若しくは艦船を叩くことだが、イメルで相手にできる旧式艦船でなかったら退却、若しくは距離を取り再起を伺う。最終的にはエゥーゴが勝利を収めるはずだからな。潮の目を伺う作戦で行く。撤退しやすいようにMS隊は艦内待機でいい。」
クラクサ隊が『どの口が?』という顔で見ていたが、今度こそは無理をするつもりなど無い。
フォンブラウンとティターンズの交渉が決裂し、そのままエゥーゴと戦闘状態になった。
私は偉く高い位置にある艦長席で戦況を見守った。
「あーあ、やっぱりエゥーゴは波状攻撃に弱いよなー、船が少ないからしょうがないけど・・・」
アーガマと交戦している別の位相から、2隻の船が抜け出してきた。艦影を見るとアレキサンドリア級で間違いなさそうだ。『頑丈なんだよなーあいつ、今回は縁がなかったな』
私は撤退を指示しようとした。だが思いとどまる。
フォン・ブラウンの丘陵の岩石が開き、見覚えのある要塞砲がせりあがっているのを確認したからだ。勝ち戦で逃げ出したなんて言うレッテルを貼られたくはない。
二条の光線がアレキサンドリア級の艦船を貫いて爆散させた。もう一隻の船は慌てて急速反転し退却を始めた。要塞砲の砲兵は経験の浅い兵なのだろう、逃げる船に追撃する苛烈さが不足していた。
「MS隊全機発進、チベも全速前進、奴らに撤退戦の難しさを思い知らせてやる」
私は意気揚々と指示を出した。
チベ改は前に2つのカタパルトを装備しているので、MSの展開も早い。だが機転を利かしシャクルズを伴って出撃したのはシーマ機だけだった。彼女だけが敵船を追う資格を持っていた。
アレキサンドリア級の戦艦から、迎撃の為にMS隊が出撃した。光芒を見ると10機近くは射出されたはずだ。全速で撤退する艦船からの出撃は、もう帰還を諦めることを意味する。若しくは最終局面で味方が勝利するかだが・・・『偉い奴が乗っているのか?』私は敵のMS隊の覚悟にそう思うのだった。
戦況を見守る。
2機のマラサイがオ-レル・ハ-シュハイザ-のガルバルに距離を取り牽制していた。残りはハイザックの様だ。この部隊でも厄介な相手はオ-レルに擦り付けて形成の有利を図る戦術が固定されている様だ。シーマは船を諦めて全体遊撃か・・・なんだかんだと面倒見のいい性格だよな彼女は。
結局火力不足で船には逃げられた。殿を務めた敵MS隊は全滅だった。MSの戦力比は少し敵の方が上回ったが、撤退戦という物はそういうものだ。私はア・バオア・クーからの長い航海を思い出していた。
要塞砲があるなら、何故エゥーゴの艦艇は、前に出て必死の消耗戦を強いられている?。
『フォン・ブラウン市の政治屋も胡散臭いな・・・』
私はあったであろう下らない政治駆け引きにウンザリするのだった。