遺言   作:歪み神

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#26. 覚悟の時

 

 エゥーゴを代表して、シャア・アズナブルが間もなく到着するという。

 我々は、軍隊整列をして迎え入れてやることにした。私は大尉の階級章を付けたジオン軍服に数年ぶりに着替えて、整列して奴を待つ。

 突貫でミネバとの謁見の間のようなものを作り、最初の挨拶はそこで行われることになったのだ。ザビ家の権威を示しておきたい、政治的パフォーマンスだそうだ。

 

「私はウォン・リーという。スペースノイドは危機に瀕している、共に手を携えて乗り切ろうじゃないか」

 

 えらく営業的な話し方をするおじさんが喋り始めたが、ハマーンはシャアをじっと見つめ、奴が喋り始めるのを待った。

 

「月ではゼダンの門(ア・バオア・クー)にも睨みを利かせなければならない。サイド2に展開するティターンズ艦隊を打つには戦力が足りない、力を貸してほしい」

 

(えらく上からの話し方だな。あの格好は何だ、袖の破れた服など着て舐め腐っている。俺が正装を着たのが馬鹿馬鹿しいじゃないか)

 

「それは、命令ですか、シャア・アズナブル大佐」

 

「いいや、エゥーゴを代表しての交渉だと思ってもらいたい」

 

「命令だと言えばいいじゃないかー」

 

(ウォン・リー……正直なおじさんだな。あいつも握手して機関の人間でないか確かめておこう)

 

ハマーンは集まった将校を見渡して、ミネバの前に出て話し始める。

 

「私はこれよりミネバ・ラオ・ザビ様がご成人を迎えるまで、摂政を名乗り、ザビ家とジオンを支えます。既にここにいる幹部たちの賛同を得ていますが、異論はありますか? シャア・アズナブル」

 

「ない」

 

「ならば、シャア・アズナブル、摂政の名においてお前を罷免する。別の組織の幹部であるお前に、ジオンを率いる権限を残すわけにいかない。だがエゥーゴとは良い距離を保ちたいと考えている。同盟の詳細を煮詰めよう、こちらへ」

 

 近衛の警備と共に、ハマーンと客人たちが歩き出した。覚悟が決まったのだろう。地球侵攻作戦を指揮した彼女の目になっていた。

 

「お前は行かないのか?」

 

隣に立つハインツ少佐が私に尋ねた。

 

「政治は偉い奴がやればいい」

 

「お膳立てをしておいて……」

 

彼は呟きながら、会議に向かう面々について行った。

 

 アクシズ内の規模の大きなブリーフィングルームを借りて、私はイメルに乗艦しているツヴァイのメンバーすべてを集めて次の作戦の説明を始めた。

 

 これから我々は、グリプス2に奇襲をかける。

 

 隊は二つだ。一つはザクII C型にアトミック・バズーカを装備させ、グリプス2を狙う部隊。一つはグリプス2を護衛する旗艦ドゴス・ギアを狙う部隊だ。

 

グリプス2を狙う部隊は私が指揮する。ドゴス・ギアを狙う部隊はシュテフィ・グラフに指揮してもらう。

 

「まず、ドゴス・ギアから話そう。前回鹵獲したギャプランと、鹵獲したMAのデータから製造されたMSガブスレイの2機を当てる。ガブスレイはシュテフィ、君が使え。そして僚機のパイロットをここで指名しろ」

 

「誰でもいいのかい?」

 

「俺以外のパイロットであれば誰でもいい」

 

「ならオーレル……」

 

「駄目だ!」

 

シュテフィ・グラフの話を遮り、オーレル・ハーシュハイザーが話に割り込んだ。

 

「シュテフィ、すまない! 俺はその任務に相応しくない。俺は射撃戦が全然できないんだ。この部隊でも、ビームライフルを一度も当てたことがない。任務が怖くて言ってるんじゃない、信じてくれ」

 

 恐ろしい新型MSに密着して戦う君が、任務が怖いなんて誰も思わないだろう。しかし、あれほどMSの扱いに長けた人間が、ビームを当てられないなんてことがあるのか? 隊員の全員が口を開けて驚いている。

 

「そうかい、じゃああんたが決めてくれ」

 

 俺に投げられた。暗にオーレル・ハーシュハイザー以外は誰でも同じだと言っているようなものだが、何年も隊長を務めた私は見るべきものは見ているのだ。

 

「カービー・パケット、君の戦い方はMAに向くだろう。むしろ一年戦争ではMAに乗っていたんじゃないか?」

 

「ああ、ビグロに乗っていた。しかしよく分かったな」

 

私はヴァーユ隊の、ちょっとMSの扱いに癖がある隊員をシュテフィの隊にあてがった。

 

「幸いこの2機は船より速い。慣熟訓練はグリプスへ向かう四日の間にやってくれ。攻撃のタイミングさえ合わせてくれたら、後は好きに戦術を組んでもらってかまわない。装備する武器も自由にするといい。シャクルズより速く長く飛べる2機だ、やれることも多いだろう」

 

私はドゴス・ギアを狙う部隊の話を切り上げた。

 

「さて、ザクC型でグリプスを狙う部隊だが。俺、オジー・スミス、エディー・マレーでいく。後は船の護衛を頼む。船にはC型が4機積んであるが、一機はコクピットを改造したシミュレーターになっている。シャクルズは改造してあって、計算ではターゲット付近で音速の5倍の速度に到達している。ザクのアクチュエーターで照準すると全く動作が遅くて間に合わない。シャクルズの通過角度をうまく利用してターゲットに当てろ。目視でターゲットを確認したら瞬きをするな。まあシミュレーターがあるんだ、やってみるといい」

 

その後いくつか質疑に対応し、解散をした。イメルの発進はこの6時間後だ。

 

 シーマも覚悟の決まったいい目をしていたな、きっとこれからいい仕事をするだろう。エディー・マレーは終始青い顔をしていたな、あれは外すな(アトミック・バズーカを)……。

それにしても、オーレル・ハーシュハイザーの告白には驚かされた。

 

 

 

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