遺言   作:歪み神

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#30. サイコガンダム

 

 翌日は第二種戦闘配備が続き、訓練はなかった。

エゥーゴの艦隊が近づいているのだ、当たり前か。軽薄な工作員の言葉に信憑性が生まれて、私は少し安心した。

 

 私は夕食を済ませると、目的の場所へ向かう。

 

「そこのお前、気配が怪しいな。手を挙げろ」

 

 男にいきなり銃を突きつけられる。

 

「気配? なんだそれ、俺に何か用か?」

 

 私は迷惑そうに返事をしたが、男は構うことなく私の隊員証を確認した後、サングラスを外して目の状態を確認した。サングラスが顔を隠す手段でないことを確認するためだろう。

私の目は強化人間手術後、常に充血している。正常ではないと思うはずだ。

 

「瞳孔がうまく動かないんだ。間違っても明るくしてくれるなよ」

 

「チッ、なりそこないか。その先はムラサメ研究所の管轄だ。お前のカードじゃゲートに入れないが、ちょろちょろするな」

 

 奴はサングラスを返そうとする。私はそれをうっかり落とすふりをした。

サングラスを拾うために屈むとそのまま奴に足払いをかけ、奴が床に手を着くことを許さず頭を固定し、落下のエネルギーも利用して首の骨を折った。

 

「おいおいどうした、俺が部屋まで運んでやるよ」

 

 私は奴に肩を貸すふりをして、近くの気配のない部屋へ入った。

 

 私は奴のパイロットスーツに着替え、隊員カードも奪った。殺した男は、お誂え向きに腰へヘルメットまでぶら下げてくれている。とんだボーナスステージだった。

 

ゲートを堂々と通過し、少し歩くと、

 

「ゲーツ・キャパ! 第二種戦闘配備中だ。バウンド・ドックへ行け」

 

と声をかけられる。

 

「サイコガンダムが俺を呼んでいるんだ」

 

嘘はついていないぞ。私はサイコガンダムに向かっている。

 

「全く、強化人間って奴は……」

 

この後二度ほど同じように声をかけられたが、全く同じ返しで事が足りた。

 

巨大なMSデッキに着くと、パイロットノズルを利用して巨大なガンダムの頭部へたどり着く。

 

「パスワードは『L338』っと」

 

パイロットゲートが開き、サイコガンダムの操縦席へ私はたどり着くことができた。

 

 システムの電源を起動し、パスワードを『α0001』に変更する。これで勝ちが確定した。この施設内で奴らがサイコガンダムを破壊する術を持たない。せいぜい人間が運べるビーム・バズーカ程度だろう。こいつの装甲は抜けない。

 MSの応援を呼んだとしてもだ。この長い滑走通路をやってくる敵機は良い的でしかない。

 

 作戦開始時間の午前4時まで、まだ8時間以上ある。今から暴れれば、要塞砲の他にまだ出撃していない戦艦も狙えるだろう。エネルギーを確認する。敵が増援に来て間もないのだ。当然だが100%だった。

 

 私は動力を起動し、サイコガンダムを歩かせる。ようやく周りが騒がしくなり、奪われたことに気づいたようだ。

 

「一発撃っておくか」

 

 施設中枢方向にターゲットして引き金を引こうとすると、蛇が頭の中をのたうち回るような悪寒が襲ってくる。なるほど、連邦に登録された設備に殺意を向けるとサイコガンダムのシステムが邪魔をするのか。NTに裏切らせないようコントロールするための研究機体でもあるんだな。

しかし、私は連邦の白い悪魔に『殺気のない奴』とあだ名された男だ。機械のように引き金を引くことなど容易なのだ。

 引き金を引くと、すさまじいエネルギーの奔流が生まれた。どんな攻撃をしたのか自分でも分からないほどだ。

 

 MA形態に変形し、長い滑走通路を抜け出す。近くの要塞砲に照準して引き金を引く。ミサイルが選択されたようだ。

 

 このMS、困ったことに武器を選択する権利がパイロットにない。敵を認識してアタックレバーを引くと、勝手にサイコガンダムが兵器を選択するのだ。幸い距離が近く当たったようだが、このミノフスキー粒子の濃い中でミサイルを選択するおバカコンピューターには嫌気がさした。

 

 まず最初に向かうのは、一番戦艦の格納数が多い12番ドックだ。私は真っ直ぐそこへ向かった。

ドックに入ると、目に見えるすべての戦艦にターゲティングしてアタックレバーを引く。勝手にMS形態に切り替わり、多様な部位からミサイルやメガ粒子砲をサイコガンダムが撒き散らした。

 

 すさまじい爆発の衝撃波でサイコガンダムは弾き飛ばされ、ア・バオア・クーと距離を取ってしまう。直後、360度モニターがオレンジ色に染まった。

 

「要塞砲に撃たれたのか?」

 

強力なIフィールドを展開したため、エネルギーが15%も減っていた。

 

「いかんいかん、要塞砲を叩かないとエゥーゴが撤退してしまう」

 

私はMA形態に変形し、機動戦に切り替えることにした。

 

 ア・バオア・クーに纏わりつくように飛行する。巨大だが、MA形態での機動力はなかなかだ。目視できる要塞砲をターゲットする。またミサイルが選択される。今度は外した。私はため息をつきながら要塞砲に近づいて攻撃すると、今度は拡散ビーム砲が選択された。威力が不足して中破といったところだ。私はもう一度攻撃し直した。

 

 2機目の要塞砲を破壊すると、敵MSも纏わりつき始め、ア・バオア・クーの外に展開していた戦艦からミサイルを交えたメガ粒子砲の攻撃を受けるようになった。ア・バオア・クーに被害が出ても構わないと指示が出ているのだろう。戦艦からの砲撃はア・バオア・クーに少なくない被害を出しているが、構うことなく続けられている。

 

 私は戦艦をターゲットにするのをやめた。こいつは戦艦に向けて攻撃すると、勝手にMSに変形して動きの止まる攻撃を行うのだ。おかげで戦艦からの砲撃をもろに受け、また10%ほどエネルギーを無駄に消費してしまった。

 纏わりつくMSにターゲットすると、拡散ビーム砲が選択される。こいつは優しい性格をしているのか? 30%くらいの確率で相手は行動不能にはなるが、一発で大破にはならない。拡散ビーム砲ではエネルギーゲージがほとんど動かないので、ガンガン撃てということなのだろう。

 

 サイコガンダムは強い。強いが、どうなんだ? 私がこの状況にガルバルディで放り込まれたら要塞砲の1機も破壊できないうちに撃墜されるだろうが、私はこの幼稚な自動戦闘システムに心底辟易としていた。

 

 

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