遺言   作:歪み神

30 / 34
#30. サイコガンダム

 翌日は、二種戦闘配備が続き、訓練は無かった。

 エゥーゴの艦隊が近づいているのだ、当たり前か。軽薄な工作員の言葉に信憑性が生まれて私は少し安心した。

 

 私は夕食を済ますと、目的の場所へ向かう。

 

 

「そこのお前、気配が怪しいな、手を上げろ」

 

 男にいきなり銃を突きつけられる。

 

「気配?なんだそれ、俺に何か用か?」

 

 私は迷惑そうに返事をしたが、男は構うことなく私の隊員証を確認した後、サングラスを外して目を状態を確認した。サングラスが顔を隠す手段でないことを確認する為だろう。

 私の目は強化人間手術後、常に充血している。正常ではないと思うはずだ。

 

「瞳孔がうまく動かないんだ、間違っても明るくしてくれるなよ」

 

「チッなりそこないか、その先はムラサメ研究所の管轄だ、お前のカードではゲートを入れないが、ちょろちょろするな」

 

 奴はサングラスを返そうとする。私はそれをうっかり落とすふりをした。

 サングラスを拾う為に屈むとそのまま奴に足払いをし、奴が床に手を着くことを許さず頭を決めて、奴の落下のエネルギーも利用し首の骨を折った。

 

「おいおい、どうした、俺が部屋まで運んでやるよ」

 

 私は奴に肩を貸すふりをして、近くの気配のない部屋へ入った。

 

 

 私は奴のパイロットスーツに着替え、隊員カードも奪った。殺した男は、御あつらえ向きに、腰にヘルメットまでブラ下げてくれている。飛んだボーナスステージだった。

 

 

 ゲートを堂々と通過し少し歩くと、

 

「ゲーツ・キャパ!第二種戦闘配備中だ、バウンドドックへ行け」

 

 と声をかけられる。

 

「サイコガンダムが俺を呼んでいるんだ」

 

 嘘はついていないぞ。私はサイコガンダムに向かっている。

 

「全く強化人間ってやつは・・・」

 

 この後、二度同じように声をかけられたが、まったく同じ返しで事が足りた。

 

 

 巨大なMSデッキに着くと、パイロットノズルを利用して巨大なガンダムの頭部へたどり着く。

 

「パスワードはL338っと」

 

 パイロットゲートが開き、サイコガンダムの操縦席へ私はたどり着くことが出来た。

 

 システムの電源を起動し、パスワードをα0001に変更する。これで勝ちが確定した。この施設内で奴らはサイコガンダムを破壊するすべを持たない。せいぜい人が運ぶビームバズーカーだろう。こいつの装甲は抜けない。

 MSの応援を呼んだとしてもだ。この長い滑走通路をやってくる敵機はいい的でしかない。

 

 作戦開始時間のAM4時までまだ8時間以上ある。今から暴れれば、要塞砲の他にまだ出撃していない戦艦も狙えるだろう。エネルギーを確認する。敵が目前に迫っているのだ。当然だが100%だった。

 

 私は動力を起動し、サイコガンダムを歩かせる。ようやく周りが騒がしくなり盗まれたことに気が付いたようだ。

 

「一発撃っておくか」

 

 施設中枢方向にターゲットをして引き金を引こうとすると、蛇が頭をのた撃ちまわるような険悪感が襲ってくる。なるほど、連邦に登録された設備に殺意を向けると、サイコガンダムのシステムが邪魔をするのか、NTに裏切らせないようにコントロールさせるための研究機体でもあるんだな。

 しかし、私は連邦の白い悪魔に『殺気の無い奴』とあだ名される男だ。機械の様に引き金を引くことなど容易なのだ。

 引き金を引くと、すさまじいエネルギーの奔流が生まれた。どんな攻撃をしたのか分からなかった。

 

 MA形態に変形し、長い滑走通路を抜けだす。近くの要塞砲に照準し引き金を引く。ミサイルが選択されたようだ。

 

 このMS困ったことに武器を選択する権利がパイロットにない。敵を認識し、アタックレバーを引くと勝手にサイコガンダムが兵器を選択する。幸い距離が近く当たったようだが、このミノフスキー粒子の濃い中ででミサイルを選択するおバカコンピューターが嫌になった。

 

 まず最初に向かうのは、一番戦艦の格納数が多い12番ドックだ。私は真っ直ぐそこへ向かった。

 ドックに入ると、目に見える全ての戦艦にターゲッティングしてアタックレバーを引く。勝手にMS形態に切り替わり、多様な箇所からミサイルやメガ粒子砲をサイコガンダムが打ち出した。

 

 すさまじい衝撃波で、サイコガンダムは弾き飛ばされてア・バオア・クーと距離を取ってしまう。すぐに360度スクリーンがオレンジ色に染まった。

 

「要塞砲に撃たれたのか?」

 

 強力なIフィールドを展開した為、エネルギーが15%も減っていた。

 

「いかん、いかん、要塞砲を叩かないとエゥーゴが撤退してしまう」

 

 私はMA形態に変形し、機動戦に切り替える事にした。

 

 

 ア・バオア・クーに纏わり付くように飛行する、巨大だがMA形態での機動力はなかなかだ。目視できる要塞砲をターゲットする。またミサイルが選択される。今度は外した。私はため息を付きながら要塞砲に近づき攻撃すると、拡散ビーム砲が選択された。威力が不足し中破といった所だ。私はもう一度攻撃しなおした。

 

 2機目の要塞砲を破壊すると、MSも纏わり付き始め、ア・バオア・クーの外に展開していた戦艦からミサイルを混ぜたメガ粒子砲の攻撃を受けるようになった。ア・バオア・クーに被害が出ても構わないと指示が出ているのだろう。戦艦からの砲撃はア・バオア・クーに少なくない被害を出しているが、構うことなく続けられている。

 

 私は戦艦をターゲットにするのをやめた。こいつは戦艦に向けて攻撃すると、勝手にMSに変形して動きの止まる攻撃を行うのだ。おかげで戦艦からの砲撃をもろに受け、また10%位エネルギーを無駄に消費してしまった。

 纏わり付くMSにターゲットすると、拡散ビーム砲が選択される。こいつは優しい性格をしているのか?30%位の確率で相手は行動不能にはなるが、一発で大破にはならない。拡散ビーム砲でエネルギーゲージが動かないので、ガンガン撃てという事なのだろう。

 

 サイコガンダムは強い、強いがどうなんだ?私がこの状況にガルバルで放り込まれたら、要塞砲の1機も破壊できないうちに撃墜されるだろうが、私はこの幼稚な戦闘システムに辟易としていた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。