遺言   作:歪み神

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#32. 終焉の序章

 ツヴァイのメンバーはグラナダに集まり、組織の解散式を行った。まあ、会議室に集まって退職金について説明する程度だが。現在のメンバーはイメルの火器管制員も追加され、保全スタッフも含めて58人の構成員になっている。

 

「みんなのおかげでティターンズに勝利することができた。ありがとう。退職金は全員一律だ、評価する機関がないからな」

 

「隊長はこれからどうするつもりですか?」

 

クリス・エバートが私に尋ねた。

 

「俺はアクシズでもうひと頑張りしたらここに戻る。恐らく半年もかからないだろう。アクシズにはガンキャノンがないからな。アクシズで全員受け入れてもらえるが、今後の身の振り方は皆の好きにしたらいい」

 

「僕は、エゥーゴに合流してもいいのか?」

 

エディー・マレー、お前の願いは想定内だが、俺は意地悪だからすぐには頷かない。

 

「何かエゥーゴでしかやれないことがあるのか?」

 

「今まで黙っていてごめん、僕の父親はブレックス・フォーラなんだ。父の遺志を継いで、父の作った組織を活動の場にしたい。僕の本当の名前はエディー・フォーラなんだ」

 

「勝手にしてくれ。エゥーゴがアクシズと敵対しないように気にしてくれたら助かる」

 

 結局、アクシズに合流するのは26名だった。ここでの生活は4年以上だ、結婚を予定している者もいるらしい。

 ガルバルディをメンテしてくれた仲間の中には、私のお散歩MSを手伝うために残ってくれた者もいた。私も一刻も早くグレミーを殺して帰ってきたいなと思っている。

 

 

 アクシズに戻った我々は、軍隊整列で迎えられた。ミネバの横のハマーンから、こう伝えられる。

 

「サイド6との結びつきによるアクシズ経済への貢献、新型MSデータ奪取による技術向上への貢献、グリプス2鹵獲への大きな貢献、ア・バオア・クーを勝利に導いた貢献……お前たちは全員2階級特進でもおかしくないが、一階級の昇進とする。許せ。そもそもアクシズはジオンと異なる組織だが、ジオンでの階級を引き継いでいる。落ち着いたらこのいびつで整っていない部分は見直しをかける。すべての人間が暫定と思ってくれていい。レイ・シュミット、これからは落ち着いて私を支えてくれるのだろう?」

 

「ああ、あんたがジオンの味方なら、俺はあんたの味方だ」

 

 我々は踵を返し、ミネバとハマーンとの謁見を終了した。

 帰り道を歩くすがら、まだ幼い瞳の奴を見つけた。

 

(すまないなハマーン、あんたとは短い付き合いになりそうだ)

 

 私は長年追い続けたターゲットを見つけて、頬が緩んだ。

 

「大尉の……すいません、少佐の部屋はそのままにしてあります。ご活躍は皆に届いています。おかえりなさい」

 

 部屋へ案内してくれた若者はそう話してくれた。(そうか、部屋はそのままか、それは助かるよ。奴を何の準備をしなくても殺せるじゃないか)

 

支給された幹部用PDAを使い、奴のスケジュールを確認する。

 

「おいおい、4時間後にア・バオア・クーへ移動してしまうじゃないか。もう乗船してしまったか?」

 

 私はパイロットスーツに着替え、ドックに停泊している奴のムサイ改の真上にある梁に張り付き、様子をうかがった。なぜパイロットスーツなのかは言うまでもないだろう。

既に小隊を任され、艦長待遇なのか? 奴の出自はどうなっている?

 

 以前俺が暗殺を成功させたためだろう、エネルギー反応を検出するドローンがドックを飛び交っている。奴らに攻撃能力はないようだ。

 

 3時間ほど粘ると、奴が4人の部下を連れて歩いてきた。隊長格だからだろう、狙いやすい先頭を歩いてくれていた。

 

 エンツォ大佐の時と同様に、一射目は一番ターゲットの大きな胸を、二射目に額、三射目に喉、四射目に心臓を撃つ。二射目以降すべての着弾が急所に命中したと確信した。

 

 エネルギー反応を検知したドローンが私を撮影しに来た。私は堂々と勝利のVサインをしてみせた。

 

さすがに今回は懲罰を免れないが、まあ銃殺はないだろう。

 

 私は部屋に戻り、長い独房生活となってもいいように温度調整機能が抜群の下着を着た。そして少佐の真新しい階級章がついた軍服に袖を通す。準備万端だ。

 

 MP(ミリタリーポリス)が入ってきたら、椅子に足を組んだ姿勢で「やあ、待っていたよ」と迎えるつもりだったが、MPが現れるまでそれから6時間も要したため、彼らが入ってきた時には疲れてしまい、ベッドに転がった冴えない格好になってしまった。

 

 

 

 ドローンがグレミー・トトを殺した者を映していた。そいつは生意気にもVサインをしている。腹立たしい奴だ。

 

「ハマーン様、いかがいたしますか?」

 

 アクシズの警察組織の長が私に尋ねる。奴はアクシズで支持者が多くいる。「いかがいたしますか」とは逮捕するか?という意味だろう。

 私はグレミー・トトを殺したレイ・シュミットを呼びつけた。

幸い、グレミーの外傷は小さく、治療がうまくいったという体(てい)にすれば問題ないだろう。

 

 あの銃創、間違いない。エンツォ大佐をやったのも奴だ。父はエンツォをやった暗殺者に感謝していたな、「不甲斐ない司令官で済まない」と。待てよ、父が奴に依頼したのか……?

 

 当時、まだ私は14だったな。父からシャア・アズナブルの出自を聞き、悲劇の王子様のように憧れていた。父はアクシズをシャアに託したかったが、奴はそれを頑なに拒んだ。シャアの煮え切らない態度がもう一人の実力者エンツォの台頭を許し、デラーズ・フリートへの合流という破滅の道を進みそうだった。だが奴が殺されて、あっさりと事態は収束した。

 

 今回の奴の凶行は、総帥の御落胤として教育したグレミー・トトの存在を危ぶんでのことだろう。

 だが、デラーズが玉砕して総帥派閥は弱小だ。新兵の8割がサイド6からの志願兵である今、総帥の威光でクーデターを起こすなど不可能な話だ。数少ない総帥派閥のロートルを働かせるのに都合がいいではないか。ニュータイプ部隊のリーダー種にするのは多少危険だが、ニュータイプ研究所が8年もの歳月で準備してきたのだ、いまさらクローン部隊を無くすわけにもいくまい。

 

 まったく、冷凍保存されたグレミーを準備するのに時間がかかってしまった。

 

 奴の心証を考慮して、奴の一年戦争時の部下を呼んだ。NT研にグレミーユニットの説明をさせるために呼んだ。グレミーがクローンであることを証明するために、グレミーも用意した。こいつはクローンだ。何を心配する必要がある。

 

 奴の一年戦争時の部下が、グレミーを同席させることを危険視している。

 

「隊長は苛烈で残虐です。グレミーを同席させるのは危険です」

 

……本当か? 奴のいつもの間の抜けた私への対応からは想像できないが。奴の部隊はずっと過酷な最前線にいたと聞く。環境がそういったイメージを植え付けたのだろう。

 

 大丈夫だ。奴はこれまで私が損をすることを一度も行っていない。奴は私の話を聞く。

 

 

 

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