遺言   作:歪み神

32 / 34
#32. 終焉の序章

 ツヴァイのメンバーはグラナダに集まり、組織の解散式を行った。まあ、会議室に集まって、退職金を説明する程度だが。現在メンバーはイメルの火器管制員も追加され、保全スタッフも含めて58人の構成員になっている。

 

「みんなのお陰でティターンズに勝利することができた。ありがとう。退職金は、全員一律だ、評価する機関が無いからな。」

 

「隊長はこれからどうするつもりですか?」

 

 クリス・エバートが私に尋ねた。

 

「俺はアクシズでもうひと頑張りしたらここに戻る。恐らく半年もかからないだろう。アクシズにはガンキャノンが無いからな。アクシズで全員受け入れてもらえるが、今後の身の振る方は皆の好きにしたらいい。」

 

「僕は、エゥーゴに合流してもいいのか?」

 

 エディー・マレー、お前の願いは想定内だが、俺は意地悪だからすぐには頷かない。

 

「何かエゥーゴでしかやれないことが有るのか?」

 

「今まで黙っていてごめん、僕の父親はブレックス・フォーラなんだ。父の遺志を継いで父の作った組織を活動の場にしたい、僕の本当の名前はエディー・フォーラなんだ。」

 

「勝手にしてくれ、エゥーゴがアクシズと敵対しないように気にしてくれたら助かる」

 

 結局、アクシズに合流するのは26名だった。ここでの生活は4年以上だ、結婚を予定している者もいるらしい。

 ガルバルをメンテしてくれた仲間の中には、私のお散歩MSを手伝うために残ってくれた者もいた。私も一刻も早くグレミーを殺して帰ってきたいなと思っている。

 

 

 

 アクシズに戻った我々は、軍隊整列で迎えられた。ミネバの横のハマーンから、こう伝えられる。

 

「サイド6との結びつきによるアクシズ経済の貢献、新型MSデータ奪取による技術向上への貢献、グリプス2鹵獲への大きな貢献、ア・バオア・クーを勝利に導く貢献、お前たちは全員2階級特進でもおかしくないが、一階級の昇進とする、許せ。そもそもアクシズはジオンと異なる組織だが、ジオンでの階級を引き継いでいる。落ち着いたらこのいびつで整っていない辺は見直しをかける。全ての人間が暫定と思ってくれていい。レイ・シュミットこれからは落ち着いて私を支えてくれるのだろう?」

 

「ああ、あんたがジオンの味方なら、俺はあんたの味方だ」

 

 我々は、踵を返し、ミネバとハマーンの謁見を終了した。

 帰りを歩くすがら、まだ幼い瞳の奴を見つけた。

 

『すまないなハマーン、あんたとは短い付き合いになりそうだ。』

 

 私は長年追い続けたターゲットを見つけて、頬が緩んだ。

 

 

「大尉の・・すいません少佐の部屋はそのままにしてあります。ご活躍は皆に届いています。おかえりなさい」

 

 部屋へ案内してくれた若者は、そう話してくれた。『そうか、部屋はそのままか、それは助かるよ。奴を何の準備をしなくても殺せるじゃないか。』

 

 支給された幹部用PDAを使い、奴のスケジュールを確認する。

 

「おいおい、4時間後に ア・バオア・クーへ移動してしまうじゃ無いか?もう乗船してしまったか?」

 

 私はパイロットスーツに着替えた。そしてドックに停留している奴のムサイ改の真上にある梁に張り付き、様子をうかがった。何故パイロットスーツなのかは言うまでも無いだろう。

 既に小隊を任され、艦長待遇なのか?奴の出自はどうなっている?

 

 以前俺が暗殺を成功した為だろう、エネルギー反応を検出するドローンがドックを飛び交っている。奴らに攻撃能力は無いようだ。

 

 三時間ほど粘ると、やつが四人の部下を連れて歩いてきた。隊長格だからだろう、狙いやすい先頭を歩いてくれていた。

 

 エンツォ大佐と同様に、一射目は一番的の大きな胸を、二射目に額、三射目に喉、四射目に心臓を撃つ。二射目以降すべての着弾が急所に命中したと確信した。

 

 エネルギー反応を検知したドローンが私を撮影に来た。私は堂々と勝利のVサインをしてみせた。

 

 さすがに今回は懲罰は免れないが、まあ銃殺はないだろう。

 

 私は部屋に戻り長い独房生活となってもいいように、温度調整機能が抜群の下着を着た。そして少佐の真新しい階級章のついた軍服に袖を通す。準備万端だ。

 

 MP(ミリタリーポリス)が入ってきたら、椅子に足を組んだ姿勢で『やあ待っていたよ』と迎えるつもりだったが、MPが現れるまでそれから六時間も要したため、彼らが入ってきた時には疲れてしまい、ベットに転がった冴えない格好になってしまった。

 

 

 

 

 ドローンがグレミー・トトを殺した者を写していた、そいつは生意気にもVサインをしている。腹立たしい奴だ。

 

「ハマーン様如何しますか?」

 

 アクシズの警察組織の長が私に尋ねる。奴はアクシズで支持者が多くいる。如何しますかとは逮捕するか?という意味だろう。

 私はグレミー・トトを殺したレイ・シュミットを呼びつけた。

 幸い、グレミーの外傷は小さく、治療がうまくいったと言う定で問題ないだろう。

 

 あの銃創、間違いない、エンツォ大佐をやったのも奴だ。父はエンツォをやった暗殺者に感謝していたな、不甲斐ない司令官で済まないと。待てよ、父が奴に依頼したのか?。

 

 当時まだ私は14だったな。父からシャア・アズナブルの出自を聞き、悲劇の王子様の様だと憧れていた。父はアクシズをシャアに託したかったが、奴はそれを頑なに拒んだ。シャアの煮え切らない態度がもう一人の実力者エンツォの台頭を許し、テラーズフリートへの合流等という破滅の道を進みそうだった。だが奴が殺されて、あっさりと事態は収束した。

 

 今回の奴の凶行は、総統の御落胤として教育したグレミー・トトの存在を危ぶんでの事だろう。

 だが、テラーズが玉砕して、総統の派閥は弱小だ。新兵の8割がサイド6からの志願兵である今、総統の威光でクーデターを起こすなど不可能な話だ。数少ない総統派閥のロートルを働かすのに都合がいいではないか。ニュータイプ部隊のリーダー種にするのは多少危険だが、ニュータイプ研が八年もの歳月で準備してきたのだ、いまさらクローン部隊を無くす訳にもいくまい。

 

 全く、冷凍保存されたグレミーを準備するのに時間がかかってしまった。

 

 奴の心証を考慮して、奴の一年戦争の部下を呼んだ。NT研に、グレミーユニットの説明をさせる為に呼んだ、グレミーがクローンであることを証明するために、グレミーも用意した。こいつはクローンだ。何を心配する必要がある。

 

 奴の一年戦争の部下が、グレミーを同席する事を危険視している。

 

「隊長は苛烈で残虐です。グレミーを同席させるのは危険です」

 

と、本当か?奴のいつもの間の抜けた私への対応からは想像出来ないが。奴の部隊はずっと過酷な最前線にいたと聞く。環境がそういったイメージを植え付けたのだろう。

 

 大丈夫だ、奴はこれまで私が損をすることを一度も行っていない。奴は私の話を聞く。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。