遺言 作:歪み神
MPに連行される最中も、私は上機嫌だった。記憶の年月を考慮すれば十年近くの積年の恨みを晴らしたのだ。
「どうだ、仕事はきついか?」
MPを気遣う余裕すら有る。
「今のアクシズは事件らしい事件が起こることの方が希でして、今回は戸惑っています。」
「そうか。それは悪かったな」
私は、潔くMPの言うことを聞いたため、手錠をはめられなかった。
MPに案内されたのは会議室だった。右に一年戦争の時の部下、左にNT研、向かいにハマーン、そして居てはならない奴がいた。
「お前に話さなければ・・・」
ハマーン・カーンが話し始めるが、聞く必要など無い。この布陣はグレミーの有用性を説明する布陣だ。私はMPの背中に回り込むように動いて銃を奪い、すぐにグレミーの額を打ち抜いた。
「まさか、作り物だったとはな・・・こいつは何匹殺せばこの世から居なくなるんだ」
私はゆっくりハマーン・カーンへ歩みを進める。
「君だってニュータイプだろう!何故奴の危険が分からない!」
叫びと同時に、私の胸に強烈な痛みと、血煙があふれ出した。
『打たれたのか?殺気など微塵も・・・』
「あ・・・ご・ごめんなさい、だけどいきなりこんな少年を殺すなんて」
一年戦争の仲間が、震える手で私に銃口を向けていた。
『トレーシー・オースチン、記憶ではこの当時付き合っていたが、今の時間軸は他人だものな、だが死ねない、奴の危険性を伝えなくては』
「グゥルアアアー」
気絶を防ぐ為の気合いが、おぞましい言葉に化けた。俺が過去に殺した男の何人かが同じような声を上げていた。そうか奴らは『まだ死ねない』と言っていたのか。
私は片膝をつき、祈りを捧げる様な姿勢をとる。
『死間の一撃』
シュタージで教わる。自分の死を覚悟した時、最後の射撃がこの姿勢からだと当てやすいという。死ぬ間際なんてどうやって統計したんだと、仲間と笑っていたが、私は仲間がこの姿勢から最後の一撃でターゲットを屠る所を見たことがある。そしてこの姿勢は、私につかの間の時間を与えてくれた。
『さすがにグレミーは危険視され、クーデターは無理だと思いたい・・・。』
『作り物に個性があるならば、私の復讐は最初の仕事で完了していたと思いたい・・・。』
『私を殺すトレーシー・オースチン、私の過剰なここでの人気が彼女を生きにくくさせるだろう。ああ、誰か、彼女を守ってやってほしい』
「ばかった(わかった)」
声が闇に沈みそうな私を再び覚醒させる。ハマーン・カーンと目が合う。震える唇で彼女は『わかった』と言ったのか?。通じたのか?
『どうだダイクン 私の遺言はこんなにも素敵だ。』
『俺はいつから思念を飛ばしていたんだ?、恥ずかしく思った』 などと残念な結びになっていたので消しておきました。レイ・シュミットらしいですがww