遺言 作:歪み神
U.C.88年 12月25日
けたたましい警報音の中、私は彼女の部屋を訪ねる。
彼女はトレーシー・オースチン、私の隊長を殺した女だ。
彼女はハマーン・カーンの地球侵攻作戦に従軍して補佐役をしていたが、鬱の症状がひどくなり、現在アクシズで療養していた。
「グレミーがクーデターを起こしたわ、付いてきて」
正確にはもうすく始まるだが・・・
「嫌やー」
恐怖で歪んだ顔でうずくまるので、スタンガンで黙らせた。予想していたとうりの行動だった。
「オジー・スミス お願い」
さすがに女の私では運べないので、彼に運ぶようにお願いする。
慣性航行を続けるイメルの中で彼女は目を覚ました。
「貴方たちは準備が良すぎる、なぜこんなに早く脱出できたの?」
彼女は状況をすぐに理解したようだ。当然に思うであろう疑問をぶつけてきた。
「私は彼が死んだ後、彼の部屋を使わせて貰ったわ。あったの。彼の作戦立案ノート。」
私は、ノートの文章をそのまま読み上げる。
「奴は鹵獲した所属不明船をドックに誘導する。船の中からは重武装の陸戦隊が出てきてMSパイロットを皆殺しにする。辛うじて出撃できたMSは奴のクインマンサと部下のキュベレイに面白いように狩られる。アクシズの守備隊は全滅する。ノートだとそう予想されているわ。」
「グレミーが所属不明船をドックに入港させたのが今から25分前、私は所属不明船がドックに停泊する前に緊急警戒警報を鳴らしたわ。この船で拾った画像を確認すると、重武装の陸戦隊が100人ほど出てきたみたいね。」
「私達はずっと奴を警戒して見張っていたの、この数ヶ月、24時間、ローテーションを組んで。隊長は予想を外さなかったから。あのとき奴を処分しておけばこんな事にならなかったのに、どうして隊長を殺してしまったの?、彼はグラナダでの生活をあんなに楽しみにしていたのに。」
ああ、我慢してきた言葉をぶつけてしまった。もう今更何も変わらないというのに。
二日後、ア・バオア・クーからドゴスギアがつれてきた来たエース部隊が操るガブスレイに、グレミー軍はそれはもうあっけなく制圧された。彼らはNT部隊が、グレミーをロストするとまるで案山子のように動かなくなることを知っていた。所属不明の陸戦隊は跡形も無く消えて居なくなっていた。
その二日後、地球方面軍を残してシャトルでやってきたハマーン・カーンは、パイロットの全滅の報告を受け、深く目を閉じてこう言ったそうだ。
「何故私には感じ取れなかった・・・」
私はどうでも良かった、もうこんな戦争どうでもいいじゃないか、グラナダへ行こう。彼の作りたかったお散歩MSを見にいかなけらば成らないじゃないか、私はNo.2なのだから。
カールトンマテリアルの社長室で、カールトン・フィスクはモニター越しに陸戦隊の隊長の報告を聞き終わると、写真立てを見て言った。
「これで他のグレミーユニットも全て処分されるだろう。これで良かったかい?レイ・シュミット」
集合写真の中の少年は、つまらなそうに口を尖らせカメラのレンズを見つめていた。
fin